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福井県小浜市「若廣」が発祥。「焼き鯖すし」は空港のお土産ショップで不動の人気

2023/12/01

空港の「空弁」としてブレイクした「焼き鯖すし」。アッキーこと坂口明子編集長もお気に入りです。福井県で親しまれていた郷土食・浜焼き鯖を棒寿司にしたのが始まりで、22年前に若いスタッフ数人で立ち上げた会社が開発しました。商品誕生から広く知られるようになるまでのドラマチックなお話を、株式会社若廣 専務取締役の佐野博隆氏に取材スタッフがうかがいました。

株式会社若廣 専務取締役の佐野博隆氏
株式会社若廣 専務取締役の佐野博隆氏

―焼き鯖すしはどのように誕生したのですか?

佐野 2000年に、当社創業メンバーと福井県の坂井市三国町の三國神社で行われる「三国祭り」にたまたま縁あって出店する機会をいただきました。「三国祭り」は江戸時代から行われる、北陸三大祭りに数えられるほどの賑やかなお祭りです。
せっかく出店するのだから、福井県らしい特色のある食品を出せないかと考えました。そのとき、当社の現会長が、浜焼き鯖を押し寿司にしたらどうかというアイディアを出しました。
浜焼き鯖は福井の郷土食です。関西では半夏生にはタコを食べる習慣がありますが、福井では焼いた鯖を食べます。「浜焼き鯖を押し寿司にしたらおいしいのでは?」と思ったのです。
実は、私は福井県あわら市の出身で、焼き鯖は小さいころから親しんでいましたが、焼き鯖を棒すしにするという発想はなかったんですよ。しかし、会長は東京出身だったので新しい視点で焼き鯖を捉えることができたのだと思います。

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鮮度の落ちやすい鯖を小浜から京都へ運んだ道が「鯖街道」。

―反応は?

佐野 やっとの思いで作った200本が1時間足らずであっという間に売り切れてしまいました。翌日も同様で大盛況になりました。地元の方も新しい食べ方ですし、とにかくおいしいのでびっくりしたという感じだと思います。
その後、私たちは今でも本社がある小浜市に拠点を移し、本格的に焼き鯖すしの製造販売を始めました。
鯖といえば、古来から京都に鯖を運んだ「鯖街道」の始発地である小浜のイメージが強いからというのが理由のひとつです。

―その人気が現在に続いているのですね。

佐野 いいえ。それが小浜市に移転して「若狭フィッシャーマンズワーフ」などで販売したのですが、まったく売れなかったのです。それまで「焼き鯖寿司」という商品が存在しなかったので知名度がまったくなかったことと、当時は焼いた魚を使ったお寿司がお寿司屋さん含めほとんどなかったことが原因かもしれません。1日数本、週末でも20~30本程度の販売数でした。鯖すしといえば生を使ったものばかりだった当時、「焼いているのは新鮮な鯖じゃないから?」などという声も聞かれました。

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試食販売して焼き鯖すしのおいしさを伝えた。

―対策は?

佐野 味を調整したり、鯖の焼き色にこだわるなど商品自体の改良はもちろん、パッケージの改良、売り場の演出など思いつくことは何でもやってみました。何よりも味を知っていただきたいと試食に力を入れました。「食べていただければおいしさがわかっていただける」という思いで私も現場に立ち、試食したお客様からの声をうかがい商品を改善していくことができました。そのときのお客様からの「おいしいね」「こんなおすしは食べたことない!」というお声はつらい時期に私たちの糧になりました。時には販売本数以上の量を試食に出したこともあります。そうしているうちに徐々に評価が上がっていき、私たちも手応えを感じられるようになっていきました。

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焼くことで鯖の脂が滲み出てすし飯と絶妙にマッチングする。
鯖とすし飯の間に挟まれたガリ(しょうが甘酢漬け)も
全体を引き締める役割をしている。

―ブレイクのきっかけは?

佐野 2003年に「狭路博2003」という博覧会が行われました。このメイン会場で実演販売することで「焼鯖すし」をたくさんの方に知っていただき、人気も出ました。もう寝る間もないほどの忙しさでしたが、自分たちがやってきたことがようやく日の目を見ることになったという事実がうれしく、ここが踏ん張りどころだと思って皆でがんばりました(笑)。
また、同じ時期に「空弁」ブームが起きました。当時、国内線の機内食が廃止され、飛行機内で食べるお弁当が注目されていて、羽田空港の販売に当社が参入することができたのです。この空港で販売するお弁当がのちに「空弁」と言われるようになり、多くのメディアに取り上げられるなど認知は次第に広まり、ついに「空弁」5年連続売上1位を記録するヒット商品となりました。
この「若狭路博」と「羽田空港」での展開が、焼き鯖寿司が0から1になったターニングポイントになりますね。

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焼き鯖すしは1つ1つ手作業で製造されている。

―どのように製造していますか。

佐野 鯖は旬の時期に合わせて国産やノルウェー産、そのほかさまざまな産地のものを脂ののりや身質をチェックして使っています。一次加工の際は骨の除去作業にピンセットを使って一つひとつていねいにしています。シャリにガリや鯖を乗せる作業や、お寿司を巻く整形の作業まで、切る以外の工程はあえて職人の手作業で行っているのも当社の焼き鯖すしの特徴です。
米は福井県産コシヒカリです。あまり知られていませんがコシヒカリが最初に誕生したのは福井県なんですよ。ふっくらした炊き上がりで冷めてもおいしいお米です。酢は甘めのオリジナル合わせ酢です。鯖とすし飯の間のガリ(しょうが甘酢漬け)は繊維質の少ないものを、紫蘇の葉は品質の良い愛知県の田原の大葉を使っています。
また、小浜は良質な水が出ることでも有名です。本社工場では地下85mからくみ上げた湧き水を全行程で使っています。

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ちょっとお腹がすいたときの虫養いにも適している。

―焼き鯖すしが人気になった理由をどうお考えですか。

佐野 販売現場でいろいろなお客様の声をうかがってきましたが、意外と鯖が苦手という方は多いんですよ。
でも、この焼き鯖すしなら食べられるという方が多かったですね。生臭さやクセがないので、老若男女いろんな方が食べていただける味である、これに尽きると思っています。

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しょうが醤油でいただくとまた味に変化が出ておいしい。

―おいしい食べ方があればご紹介ください。

佐野 そのままでもおいしく食べられますが、途中で醤油をつけ味変しても。小浜では焼き鯖をしょうが醤油につけて食べます。この焼き鯖すしもしょうが醤油をつけてさらに味変してもおいしいですよ。

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1本は8貫。
1貫ずつ包丁が入っているので手軽に食べられる。

―今後はどう展開していきたいとお考えですか。

佐野 焼き鯖すしは22年前に当社が開発した後、さまざまなメーカーさんが参入して大きなマーケットを創り「すし文化」の1ジャンルとして定着し、今では福井の名物として広く認知されるようになりました。
これからも「いつも同じ味だね!」と言っていただけるよう継続した改善を行いつつ、新しい価値創出となる商品作りに挑戦し続けます。そして「焼き鯖寿司」という食文化を残すべく、30年後も50年後も存在しうる、時代を超えるブランドを目指していきたいと考えています。

―本日はありがとうございました。

焼き鯖すし

「焼き鯖すし」
価格:1本(8貫)¥1,296(税込)
店名:若廣オンラインショップ
電話:0120-893-844
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://wakahiro.jp/?pid=73897525
オンラインショップ:https://wakahiro.jp/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
佐野博隆(株式会社若廣 専務取締役)

1981年福井県生まれ。2001年株式会社若廣に同社創業と同時に入社。営業部門の責任者などを経て、2022年専務取締役に就任。食育推進活動の一環として、地元小中学校に向けた焼き鯖すしの製造体験にも注力している。

<取材・文・撮影/今津朋子 画像協力/若廣>

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