古より海苔の特産地として全国にその名を知られる島根県、出雲。今回、編集長アッキーが注目したのは、日本海で採れる貴重な天然岩海苔をはじめ、豊かな風土を生かしたブランド商品を展開する「岩のり工房」。株式会社海産物松村 代表取締役社長の松村 渉氏に商品の魅力を伺いました。

株式会社海産物松村 代表取締役社長 松村 渉氏

―創業の経緯やこれまでの沿革をお聞かせください。

松村　1987年、父が会社を創業しました。商船会社の外国航路で勤務をしていた父が27歳の時に地元の島根県へ帰郷。海藻に興味があり株式会社海産物松村を立ち上げました。創業当初は山陰や北陸地方の食文化として親しまれている板わかめの製造を主に行っていましたが、扱う海産物や商品を徐々に増やしていきながら事業を拡大。地元のお客さまへもお買い求めいただきやすいよう、2012年には出雲市街に直営店舗となる「岩のり工房」を構えました。現在、出雲市郊外にあった本社も店舗の向かいに移転し、より効率的に運営を行える組織となっています。

―新しい本社で心機一転、環境が整ったタイミングとのことで、改めまして企業理念についてもお聞かせください。

松村　日本海に面した出雲の漁港の街で生まれて、新鮮な魚介類はもちろん、磯遊びをしたり、海で泳いだり、海の恵みに囲まれた環境で育ちました。私が生まれた翌年に会社が創業しましたので、幼少の頃から父母が仕事をする姿を横でずっと見てきました。入社後現在に至るまで、沢山の方との繋がりやご縁で今お仕事をさせていただいています。お手に取ってくださるお客さま、原料となる海産物の漁師さん、豊かな風土を含めて、出雲の国からのご縁を大切にしながら、みなさまから愛される企業を目指しています。

―「十六島海苔100%佃煮」が生まれた背景を教えてください。

松村　島根半島の北西部、出雲市十六島の岬周辺で採れる岩海苔は「十六島海苔（うっぷるいのり）」の名で知られ、その歴史は古く風土記の時代に遡ります。江戸時代に全国各地へ出雲大社の教えを広めていた「御師（おし）」が配っていたお札と一緒に十六島海苔が残っていました。地産地消の海産物として地元島根、広島や岡山の一部地域でお正月、お雑煮に岩海苔を入れていただく風習があります。お札の包みにも「正月の雑煮に入れて食べれば、その年の邪気を払い、難病を逃れることができる」という趣旨の言葉が添えられていました。

高級海苔ということもあって、それ以外の食べ方はあまり知られていないところがありました。せっかく品質の良い岩海苔が採れるのだから、その恵みを日常の食卓でもいただけるような商品を作りたいという想いで、初めに岩海苔と海苔をブレンドした佃煮が生まれました。佃煮を召し上がってくださったお客さまより、岩海苔だけの佃煮を食べてみたいというご要望をいただいたことがきっかけで、岩海苔100％の佃煮作りがスタートしました。

出雲大社のお札から見つかった江戸時代の「十六島海苔」。
（島根県立古代出雲歴史博物館所蔵）

―十六島の岩海苔はとても過酷な環境で収穫されるとお伺いしました。

松村　十六島海苔は1年でも最も寒さが厳しい12月から2月、日本海が荒れる時期にだけ採れる希少な岩海苔です。その採取の方法は「シマゴ」と呼ばれる漁師さん達が、波が穏やかな時を見計らって一枚一枚手で摘み取る昔ながらの手作業。荒波が打ち寄せる岬の岩場へ渡って、命がけで作業をしてくださっています。

波も荒く、強い風が吹きつける冬の日本海で行われる海苔摘み。
その過酷さから“命がけで採る海苔”と称される。

岬の岩場は海苔島と呼ばれ、代々シマゴが手入れをして良質な海苔が育つように守られています。基本的に私たちも島に立ち入ることはできませんので、実際に海苔を摘んでいるところを眼にしたことは1、2度程。十六島の岩海苔は厄や邪気を払ってくれる縁起物として飛鳥・奈良時代から珍重されてきました。

十六島岩海苔は、磯の香りがとても強く、コシのある食感が特徴。

―神聖で特別な十六島海苔を使った「十六島海苔100%佃煮」のこだわりをぜひお聞かせください。

松村　希少性の高い上質な岩海苔だからこそ、材料と調理法を選び抜きました。素材の風味が引き立つよう醤油は生醤油で炊き上げて、保存料は一切加えていません。保存性の高さを保つために何度も試作を重ねて商品化に繋げました。その結果、3ヶ月は美味しくいただける商品に仕上がりました。

―実際にお買い求めになるお客さまは、どんな方が多いのでしょうか？

松村　御自身で召し上がりたいという方はもちろん、贈り物として購入されるお客さまも多いです。結婚式の引き出物にしてくださる方もいらっしゃいます。大切な方へ美味しいものを食べていただきたいという想いで選んでくださっているようです。

―ギフト用の商品もありますね。

松村　木箱入りの商品が一番人気です。特別ご贈答品として重宝していただけるようにパッケージにもこだわりました。墨で書かれた文字は出雲在住の陶芸家、安食ひろ氏へ依頼しました。世界的に活躍されている方で、作品がニューヨークのメトロポリタン美術館にも所蔵されていらっしゃいます。我々の想い入れのある商品です。悠久の歴史が育んだ贅沢な味わいをぜひご堪能いただければと思います。

一番人気の「十六島海苔100％佃煮」（木箱入り）は大切な方への贈り物におすすめ。

―佃煮のおすすめの食べ方やアレンジがありましたら、教えてください。

松村　チーズやバターなどの乳製品とも相性が良いので、トーストに佃煮とバターを少し塗ってから焼いてお召し上がりいただいたり、ビールのお供にはクラッカーにクリームチーズと一緒に添えるのがおすすめです。他にもスティック野菜にディップするなど面白い食べ方もありますので、ぜひお試しください。

―「ふっくらひじき煮」の魅力をお聞かせください。

松村　ヘルシーで栄養価も高い海藻類を日頃の食事に取り入れたいと思っていらっしゃる方は多いですが、生ひじきや乾燥ひじきを水戻ししてから煮込むという手間をかけて調理する時間がないと言った環境の方が多いのが現状です。手軽に簡単に美味しく海藻を食べてほしいというコンセプトの元、「レンジ de 小鉢シリーズ」の3つのラインナップが生まれました。お水を入れて、レンジで加熱、お鍋も包丁も使わず本格的な煮物を食卓にお届けする新しい煮物のスタイルです。

お水とレンジでお手軽に本格小鉢が完成！

人気の「ふっくらひじき煮」を含めシリーズ3商品は、島根県のトビウオのあご出汁を使って調味しています。あご出汁は内臓を全て綺麗に取り除いて粉末にした後、さらに炙ってから使用するので魚のエグ味や雑味がなく、そのまろやかな出汁も味わいの要になっています。素材本来の味や食感、ふわっと香る出汁の風味をそのままに召し上がってください。

カルシウムや鉄分、食物繊維と海の栄養素たっぷりの栄養食品のひじき。
100％国産の原料にこだわった、子どもからご年配の方まで安心して食べられるやさしい味付けも魅力。

―今後の展望をお聞かせください。

松村　国内はもちろんですが、欧米やアジアへ海藻の魅力を伝えていきたいという想いがあります。欧米人は海藻をあまり食べませんが、海外でもお寿司やお刺身などの日本食の文化が注目を集めて久しく、海苔に関してもだいぶ認知をされるようになってきて、徐々に海苔の需要も増え始めているという現状です。海外で試食販売を行った際も佃煮が美味しいという反応をいただいています。日本人だけではなく、海外の方にもこの味が分かるんだという印象です。

今後の予定としては来年、アメリカへ試食販売に行く予定があります。そのような機会を増やすことで、日本の海藻の魅力が広まっていってくれれば嬉しいなと思います。

―貴重なお話をありがとうございました。

「十六島海苔100％佃煮」（ご自宅用）
価格：¥2,520（税込）
店名：岩のり工房
電話：0120-62-3619（8:30～17:00 日曜･祝日･隔週水曜休み）
定休日：インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL：https://www.iwanori.info/SHOP/tsukudani0020.html
オンラインショップ：https://www.iwanori.info

「ふっくらひじき煮」（45g 2人前）
価格：¥412（税込）
店名：岩のり工房
電話：0120-62-3619（8:30～17:00 日曜･祝日･隔週水曜休み）
定休日：インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL：https://www.iwanori.info/SHOP/hijikini01.html
オンラインショップ：https://www.iwanori.info

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

＜Guest’s profile＞
松村 渉（株式会社海産物松村 代表取締役社長）

1986年島根県出雲市出身。東京農業大学卒業。岡山県の食品製造業の会社に勤務後、株式会社海産物松村に入社。専務取締役を経て2019年に代表取締役社長に就任。

＜取材／菊地美咲　文・撮影／渡辺彩子　画像協力／海産物松村＞