健康志向の高まりで、いまや海外からの需要も増えているという日本茶。国内でも、日本茶の健康&美容効果にあらためて注目が集まっています。そうしたなか、編集長アッキーの目に留まったのは、日本茶の三大産地の一つである静岡県の森町にあり、120年の歴史を持つ株式会社石川園。お茶本来の美味しさ、すばらしさを追求するだけでなく、新しい試みもされていると聞き、同社代表取締役社長の石川徳好さんに取材スタッフがうかがいました。
静岡老舗製茶・石川園の世界が認めた「遠州一」、「ふんわり山里のお茶畑」、機能性食品「ファイバー抹茶・TEA CARE」
2024/01/09
株式会社石川園 代表取締役社長の石川徳好氏
―静岡県といえばお茶処として有名です。そうしたなか、どのような経緯で石川園が生まれたのでしょう。
石川 おおもとを辿ると、江戸時代の天明年間(1720年~)に私の祖先が現在の森町で商いを始めたようです。以来、代々家長は「石川忠四郎」を名乗っていました。明治になってから茶業を生業とし、地元の農産物も扱うように。その後、昭和に入ってから「石川商店」として森町に工場を建て、茶業専業となりました。
―森町は、古くから高級煎茶の産地として知られていますね。
石川 はい。森町は静岡県の北西部の山あいに位置しており、中央を流れる太田川から立つ川霧と水はけの良い土質が茶葉の栽培にとても適しているのです。森町では、室町時代には茶葉の生産をしていたという記録がありますが、本格的に始まったのは明治になってから。明治初年度には紅茶や輸出用のウーロン茶を作っていました。
森町は、日本におけるウーロン茶発祥の地なんです。そんなこともあり、森町の茶業はずいぶん栄えたのですが、1930年前後から始まった世界大恐慌の影響を受けて輸出が振るわなくなり、内需拡大を図ることになりました。どうすれば、森町のお茶を全国に知らしめることができるだろうと、当時の人たちは頭を捻って考えたんでしょうね。
ちょうどその頃、全国的に有名な浪曲師の広沢虎造が「清水次郎長列伝」を歌っていたので、その枕詞に、森町出身とも言われている「森の石松」を登場させてもらったんです。「遠州森町 良い茶の出どころ~」というように。今でいえばコマーシャルですね。先人のお力で遠州森のお茶が大ブームとなり、全国的に知られるようになったんです。そうした経緯もあって、石川家も茶業に専念するようになったというわけです。
森町は、三方を緑の山々に囲まれた風光明媚な土地。山あいに、お茶畑が広がります。
―石川社長は4代目とのこと。有名な茶処の老舗となればやはり当然、ご自分も家業を継ごうと思っていらしたのですか?
石川 いえいえ、全くやる気はありませんでした。ところが、高校3年の冬に父が心臓病で倒れ、私が継がざるを得ない状況に。そこで私は大学進学を断念。父の容体も少しずつ良くなり、少しずつ手伝いに入るようになったのです。
実質、父1人が切り盛りしていたので、さほど大きな商いをしていたわけではありませんでした。そこで私に任されたのは、とりあえず商売を大きくすること。幸いなことに、その頃の日本は一生懸命やればやるほど商いも大きく成長した時代でした。それまでの小さな工場ではまかないきれなくなり、私が35歳の時に大きな工場を建設。そこから少しずつ商売を大きくしていき、その後も新工場を建築・増築、2014年には大型冷蔵庫を建築しました。
ちなみに、父は91歳まで生きました。ということは、私は騙されたことになりますね(笑)。でも、今では茶業に携わってよかったと思っています。
石川園「山里のお茶工場」。新茶の時期には早朝から、近隣のみならず他県からもお茶を求めて多くの人が訪れます
―今回、ご紹介させていただくお茶の1つ、世界的に高い評価を得ている「遠州一」は石川社長の自信作だと伺っています。どのようなお茶なのでしょう?
石川 「遠州」というのは森町あたりのことをいうのですが、そこで一番のお茶を目指そうと開発したお茶です。農林水産大臣賞を受賞した茶葉生産農家さんによる厳選された茶葉を、石川園の技術でブレンド、火入れ加工した、いわば「お茶の匠」2人がこだわり抜いて作ったお茶なんです。森町のお茶の特徴は、「香りが高く、甘みとほどよい苦味とコク」ですが、「遠州一」はさらに、のど越しにいつまでもさわやかなお茶の風味が漂う、品のある心地よさがポイントです。
私たちのこだわりと努力を認めていただき、「遠州一」はモンドセレクションにおいて15年連続で最高金賞を、3年連続で金賞を受賞しています。
石川社長が信頼のおける優良茶葉生産農家さんとタッグを組んで見出した渾身のお茶、「遠州一」。
大切な友人やお世話になった方へのプレゼントとしても最適です。
使いやすい袋タイプ(80g平袋/¥1,360税込)もあります。
封を開けたとたん、さわやかなお茶の香りがスッと鼻を抜けていきます。
―極上のお茶を、より美味しくいただくコツを教えてください。
石川 茶葉の量は1人分で茶さじ軽く1杯。一度沸騰したお湯を湯冷ましや湯呑みに入れて冷まし、人数分の量を急須に注いだら、30秒ほど蒸らします。その後、湯呑みに均等に少しずつ注ぎ、最後までしぼり切ってください。この最後のしぼり切りにお茶の美味しさが凝縮されているのです。しぼり切らずに急須にお湯が残っていると、2煎目のお茶が渋くなってしまいます。
お茶請けとしては、和菓子はもちろんですが、洋菓子にも合います。ぜひ、試してみてください。
お湯を冷ましてから急須に注ぎ、蒸らしてから静かに湯呑みに注ぎます。
合わせたのは、「石川園のひと口ようかん」。
ほうじ茶ようかん(左)とお茶畑ようかん(右)の2種類あり、
いずれも一般的なお茶ようかんの6倍ほどのお茶成分が入っているとか。
なるほど、お茶の味をしっかり感じます。そして上品な甘さ。
すっきりした味わいで、マカロンとの相性もGOOD。
―「ふんわり山里のお茶畑」は、どのようなお茶なのですか?
石川 特徴をひと言で表すなら「しっかりした緑茶本来の風味がするお茶」。茶葉は、お茶農家さんが摘んですぐに蒸し、揉んで、乾燥させて「荒茶」という状態にします。蒸し方には浅蒸し、中蒸し、深蒸しがあるのですが、それぞれ個別に火入れをすることで、茶葉の特徴を引き立たせ、旨みが最高の状態になるようバランスよくブレンド。香り、味、水色(お茶の透き通ったきれいな色)の3拍子揃った、しかもお手頃の値段ということで、当園で売上ナンバーワンのお茶です。
このお茶のいいところは、どのように淹れても美味しくいただけること。熱めのお湯をサッと入れて、サッと出すようにすると、すっきり飲んでいただけますよ。重めの食事をした後の一杯やお茶漬けを召し上がるときなどにおすすめです。
長く親しまれている「ふんわり山里のお茶畑」。
お手頃なのに、モンドセレクション3年連続金賞受賞という実力の持ち主です。
お茶漬けには、熱めのお湯を注いでサッと淹れたお茶を。
お茶のいい香りが立って、インスタントのお茶漬けもワンランク上の味わいに!
―お茶づくりに対してのこだわりを教えてください。
石川 第一に、どの茶葉を選ぶか、ということです。たとえば100%のオレンジジュースはオレンジを搾って作りますから、オレンジそのもののおいしさが味の決め手になります。対して、日本茶は、基本的に何種類からの茶葉をブレンドして作るので、まずは自分の作りたいお茶をイメージして、それにはどの茶葉を選んだらいいかを考えます。茶葉にもいろいろな種類がありますし、それぞれ性格が違うからです。
どの茶葉をブレンドするか決まったら、それぞれのいいところを引き出すために、その特徴ごとに火入れなど2次加工をしてお茶に仕上げるのです。この火の入れ方で、お茶の香りや味が違ってきますから、工夫が必要です。それぞれの茶葉をベストな状態に、最終的にブレンドして、お茶というものができるのです。
工程としては、どの製茶業者もほぼ同じでしょう。ただ、同じ茶葉、同じ工程を経ても、作る人によって味や香りが違います。その違いは、どの茶葉を選び、その茶葉のいいところをいかに引き出し、どのような割合でブレンドするか。そこは、作り手ひとりひとり、自分が理想とするお茶の香りと味、色によって違ってくるわけです。
お茶には品の良い香り、色、甘み、うまみ、ほどよい苦みといった、非常に多くの魅力が詰まっています。このような飲み物、そして食品はないと思うんです。私は、こうしたお茶の魅力を1人でも多くの方に知っていただきたい。そのために日々、茶葉と向き合い、試行錯誤しながら加工やブレンドの方法を研究しています。
茶葉の香り、色、味を官能検査(五感を使って品質を検査する方法)し、
科学的な分析を行いながら品質を見極めていきます。
―最近は、機能性表示食品の開発に力を注いでいらっしゃるとか?
石川 はい。もともとお茶には、いろいろな健康効果があると言われていますが、健康志向が高まるなか、そこにさらに工夫を加えたらより多くの方に喜んでいただけるんじゃないかと考えまして。その第1弾が、「ファイバー抹茶・TEA CARE」。有機栽培の茶葉で作った抹茶に、水溶性食物繊維で、お腹の調子を整える働きがあるイソマルトデキストリンを配合した飲み物です。イソマルトデキストリンは食後の血糖値の上昇や、食後の血中中性脂肪の上昇をゆるやかにする働きがあることが報告されています。
健康維持には、腸内環境を整えることが大切だと言われていますよね。そのためには発酵食品を摂ってお腹の中に善玉菌を増やすと同時に、善玉菌のえさとなる食物繊維が必要だそうです。ところが現在、日本人は全世代において食物繊維が不足しているといいます。そこで、私はイソマルトデキストリンに注目したのです。
ただ、イソマルトデキストリンをそのまま飲むのは味気なく、料理に混ぜるのも面倒だという声を耳にしました。ならば、当園のおいしくて安全な有機抹茶をブレンドしたらどうかと考えたのです。そんなときに機能性表示食品の制度が始まり、本格的に開発を始めました。いまから3年前のことです。もっとも効果的で、しかもおいしい配合になるまで何度も試作試飲を重ねました。
その結果、私自身「これなら、おいしく飲み続けられる」と納得できる「ファイバー抹茶・TEACARE」が完成。消費者庁に届け出もすませ(届出番号G337)、現在、販売に向けて準備中です。
3年の月日をかけて開発された「ファイバー抹茶・TEACARE」。1袋(6.8g)✕15袋入。1日1袋が目安です。
抹茶そのもの、という感じ。1袋をカップに淹れ、200ccのお湯、またはお水を注ぎ、よくかき混ぜてからいただきます。
―積極的に新しい試みをなさっているのですね。最後に、今後のビジョンについてお聞かせください。
石川 言うまでもありませんが、お茶は日本の伝統的な飲み物で、家族だんらんの楽しいひとときを演出してくれる、心も体も温まるものです。
おいしくて、体にもよい働きが期待できるお茶の素晴らしさを、茶葉生産農家さんに感謝しつつ、一緒になって多くの方たちにお伝えしていきたい。ペットボトルのお茶も手軽でおいしいですが、茶葉を急須に入れ、お湯を注いで淹れるお茶は、香りも味も色も格別です。また、銘柄によってそれぞれ個性があります。そんなお茶の奥深さに触れていただく機会を、これからもどんどん作っていきたいと考えています。
―今、日本のお茶は世界からの注目も集めていると聞きます。今後が楽しみです。本日はありがとうございました。
「遠州一」150g化粧缶✕2・箱入
価格:¥5,670(税込)
店名:石川園ネットショップ本店
電話:0538-85-3065(平日・祝日 9:00~17:00、土曜・日曜 10:00~16:00)
定休日:不定休 インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.ishikawaen.jp/gift.php#lineup03
オンラインショップ:https://www.ishikawaen.jp
「ふんわり山里のお茶畑」100g平袋
価格:¥1,130(税込)
店名:石川園ネットショップ本店
電話:0538-85-3065(平日・祝日 9:00~17:00、土曜・日曜 10:00~16:00)
定休日:不定休 インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.ishikawaen.jp/gift.php#lineup03
オンラインショップ:https://www.ishikawaen.jp
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
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石川徳好(株式会社石川園 代表取締役社長)
1959年生まれ。1979年、家業である石川商店に入る。1995年に法人化し、株式会社石川園となる。2001年に同社代表取締役社長に就任。
<取材・文・撮影/鈴木裕子 画像協力/石川園>