明治初期に創業した、大阪府枚方市の製茶問屋「多田製茶」。地域に根差し、日本茶に特化した老舗のブランド力に加えて、SNSでの情報発信や新商品開発を通してファンを増やし続けています。今回、編集長アッキ―こと坂口明子が気になったのは「日本茶の新しい楽しみ方」。多田製茶株式会社 専務取締役の多田雅典氏に取材陣が伺い、商品の魅力や日本茶をおいしくいれるコツを教えていただきました。
老舗が送るブレンド茶「milky green」&日本茶と焼き菓子のセット「ICHIGOICHIE」
2024/02/08
多田製茶株式会社 専務取締役の多田雅典氏
―多田専務は、マーケティングが専門だったとか。
多田 祖父母は「長男に家業を継いでほしい」と考えていたようですが、当時の僕は日本茶に関心がなく、現代らしいビジネスパーソンを目指していました。マーケティング会社に就職して6年ほど経った頃、父から「日本茶インストラクター」の資格取得を持ちかけられたことが1つの転機です。「資格を取ったらお小遣いをあげる」という甘いささやきがあり、合格率約30%の試験にチャレンジしました。
同期で受かったメンバーは日本茶好きの方々で、誰もがお茶の産地や生産者などマニアックな話をしていました。僕はよこしまな気持ちで受験した負い目もありながら、他のメンバーが「お茶屋さんでもないのに、なぜこんなに熱意があるのだろう」と、日本茶の魅力に関心を持つようになったのです。
―家業に携わることになったきっかけは?
多田 マーケティング業界では定量化や言語化が基本ですので、日本茶の世界に違和感も抱きました。「お茶を飲むと落ち着くよね」「ほっとするよね」というようなニュアンスの世界だからこそ、何か新しい軸でできることがあるのではないかと気づいたのです。ちょうど事業会社メーカーへの転職を望んでいたこともあり、家業に入りました。
―明治期創業の会社として、代々大切にされていることは?
多田 昔のお茶作りは機械ではなく手もみだったので、お茶を製造しない季節は職人さんが暇になってしまいます。代わりの仕事として、炭の製造・販売なども行っていた弊社は「地域の生活商社」に近い存在だったところ、お茶へ一本化していきました。かつては茶業組合(会議所)とお茶の研究所が併設されていて、営農指導を中心に地域貢献もしていたそうです。そういった成り立ちから、お茶の専門性で地域をはじめ大阪を先導していく会社だったといえます。「業界に奉仕する」という昔のキャッチコピーを見ると、お客様ではなく業界相手というのが面白い立ち位置だと思いました。
―「限定商品 milky green -original blended-」は、どのように誕生したのでしょうか?
多田 ビスケットを食べていたときに、「コーヒーや紅茶にはよくセットにされるのに、日本茶との組み合わせは少ないな」と気付いたのです。日本茶によってビスケットが口の中でホロホロと溶けて、小麦感や砂糖とミルクの味わいが広がっていったら幸せだろうと思い、商品を考案しました。「milky green」は、鹿児島県産の「かなやみどり」と「はるみどり」という2品種を使ったオリジナルブレンドの煎茶です。
「かなやみどり」はミルクのように柔らかく甘い香りがする品種ですが、少し渋みがあります。その渋みを極力なくすために、甘い品種の「はるみどり」を掛け合わせました。親子関係にある2品種ですので、明確な味の違いがありながらも系統的には合わせやすいものとして採用しました。
シンプルかつ上品なパッケージ。渋みのない日本茶で、洋菓子とのペアリングも楽しめる。
―味が甘いわけではなく、ミルクや花の蜜のようなやさしい香りがふわっと広がるお茶ですね。
多田 洋菓子に合わせる飲み物の選択肢が、コーヒーや紅茶しかなかった方から「日本茶でも楽しめるとわかりうれしかった」という声もいただきました。冷やして飲んでもおいしいので、1年を通して特別な時間を楽しんでいただけると思います。
―日本茶と焼き菓子のセット「ICHIGOICHIE」。おすすめポイントを教えてください。
多田 三重県伊勢市産被せ茶のティーバッグと、3種のパウンドケーキがセットになった商品です。デザインにもこだわっていて、手土産をお探しの方や、普段は急須でお茶をいれることがない方に好評をいただいています。被せ茶は熱いお湯を注いでも渋くなりにくく、甘さが出やすいお茶ということで選定しました。ぜひ気軽にお茶を楽しんでください。
しっとり焼き上げられたパウンドケーキ、「お茶屋さんなのにお菓子もおいしい」と評判。
―おいしくお茶をいれるコツはありますか?
多田 お茶の味は、渋み(カテキン)、うまみ・甘み(アミノ酸)、苦味(カフェイン)の大きく3つがあり、各成分はお湯の温度と茶葉を浸す時間によって特性が変わります。3つの成分を考慮した上で最もバランスがいい温度として、一般的に「70度でお茶をいれるとおいしくなる」と言われているのです。
渋さをマイルドにしたい時は、お湯の温度を少し下げるためマグカップなどにお湯を注ぎ、そのお湯を使って急須でお茶をいれましょう。さらに甘さを出したい方は、より温度を下げてじっくり抽出してあげると旨味だけが引き出せます。
―ペットボトルのお茶との違いは?
多田 味や香りの違いはあって当然ですが、ペットボトルや缶の商品があるからこそ、「日本茶をお金で買う」という習慣が出来上がったのだと思います。昔はパーキングエリアなどで無料のお茶を飲む人が多く、出先でお茶を買う習慣がありませんでした。水分補給のためにペットボトルのお茶を購入するといった新しい行動パターンが現代に生まれたことは、すごく大きいことだと思います。
それを踏まえて、いまは急須でいれるお茶について「面倒くさい」と思う人は少なくありません。たしかに、お湯を沸かすだけでなく後片付けも必要ですが、わざわざしないといけない作業はある種の非日常です。たとえば、ちょっと疲れた時や気分を変えたい時に時間を作り、自分や誰かのためにゆっくりと日本茶をいれる。その時間を大事にするという特別感は、急須でいれるお茶ならではだと思います。
―創業160年を迎えられます。今後のビジョンをお聞かせください。
多田 お客様の生活を彩る一つに「日本茶」があったらいいなという思いから、日本茶の可能性と未来を広げるための活動をしています。弊社の高い専門性や独自性をもって、国内外を問わず世の中に日本茶の「楽しさ」や「わくわく」を発信していくことが大切です。また、日本茶業界を裏側からもサポートできるような会社でありたいです。
―すばらしいお話をありがとうございました!
「限定商品 milky green -original blended-」
(産地:鹿児島、品種:はるみどり・かなやみどり、
合組:あり、内容量:50g)
価格:¥864(税込)
店名:茶通仙 多田製茶
電話:072-857-6056(3~10月 10:00~18:00、
11~2月 10:00~17:30)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.tsusen.net/item/milkygreen-originalbelended-50/
オンラインショップ:https://www.tsusen.net/
「ICHIGOICHIE 日本茶と焼き菓子のセット」
(伊勢被せ茶ティーバッグ3g×10個入り、贅沢抹茶パウンドケーキ×1個、ほうじ茶パウンドケーキ×1個、黒豆パウンドケーキ×1個)
価格:¥2,160(税込)
店名:茶通仙 多田製茶
電話:072-857-6056(3~10月 10:00~18:00、
11~2月 10:00~17:30)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.tsusen.net/item/ichigoichie/
オンラインショップ:https://www.tsusen.net/
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<Guest’s profile>
多田雅典(多田製茶株式会社 専務取締役)
1981年 大阪府枚方市生まれ。マーケティング会社に入社後、農研機構 金谷茶業研究拠点の研修を経て2017年に多田製茶へ入社。日本茶アドバイザースクール専任講師や辻調理師専門学校で日本茶講師を務め、日本茶をテーマに広く講演・セミナーを開催。また、日本茶の言語化をキーワードに多くの新商品企画・開発を手掛け、飲食店・ホテル・アーティストなど他業種との協業や、オリジナル商品の開発、ブランドプロデュースを行う。
<文・撮影/マスダアヤノ MC/伊藤マヤ 画像協力/多田製茶>