長野県佐久市・旧中山道沿いの昔ながらの街並みの中にある、武重本家酒造株式会社。国の登録有形文化財に指定された建物で、伝統的な製法で日本酒を作っています。お酒好きの編集長のアッキーは興味津々。武重本家酒造株式会社の代表取締役社長の武重有正氏に、スタッフがお話を伺いました。
毎日気軽に飲めて、おいしい日本酒「御園竹」。伝統的な製法・生酛造りが生きる味わい
2024/02/08
武重本家酒造株式会社 代表取締役社長の武重有正氏
―創業は明治元年(1868年)ですね。変わらずに、大切にされていることはなんですか?
武重 明治元年に創業し、昭和24年(1949年)に株式会社になりました。先代の社長である父から、聞かされていたことがあります。父が会社に入った昭和20年代は、この辺りは農業に従事している人が多く、1日の日当では日本酒をたくさん買えませんでした。当時、日本酒の値段は、今よりもずっと高かったからです。だから、重労働を終えて家に帰ってきて飲むお酒は、たった1杯。弊社の日本酒は、地元の方々のそんな貴重な1杯でした。「ああ、おいしい」と心から思え、明日もまた頑張れるような日本酒を作ろうと思ったそうです。体を使った仕事の後なので、甘口のお酒です。地元の方々にずっと飲んでもらい、愛してもらえるようなお酒を作り続けてきました。そんな父の思いを、私も受け継いでいます。この思いを基本にし、お客様がおいしいと思ってくれる日本酒を、真摯に作ることを大切にしてきました。
武重家住宅及び武重本家酒造の建造物は、国の登録有形文化財に指定されています。
―今回、ご紹介する「御園竹」はどのような商品ですか?
武重 色々な日本酒を販売していますが、「御園竹」はずっと長く作り続けている原点のお酒です。1杯飲んで、「ああ、おいしい」と思ってもらえるように、味にこだわっています。
おいしさの理由は、昔ながらの製法、生酛造り(きもとづくり)にあります。「御園竹」は、生酛造りのお酒を40%くらいブレンドしています。
その理由は、毎日飲む日本酒として、生酛造りのものだけでは味が濃すぎるからです。また、手間がかかる製法なので値段が上がってしまいます。毎日気軽に飲んでほしいので、正味と値段のバランスを考えて作っています。
酒作りには、おいしい米と水、そして、人の力が必要。手作りの部分は、できるだけ残していきたいと考えています。
―生酛造りとはどのようなものですか?
武重 現在の通常の仕込み方法では、日本酒は4週間ほどで出来上がります。生酛造りでは、8週間程度かけてじっくりと仕込みます。昔ながらの製法で、手間がかかります。
生酛造りによって作られた酒は、いくら飲んでも飽きがきません。「御園竹」は、ふくらみのある味で、飲みやすいと思います。
昔は、日本酒は全て生酛造りでした。もっと短期間で完成する方法が生み出され、徐々にそちらに移行していきました。弊社も、現代的な製法で作っている商品もあります。でも、「御園竹」の味を守りたいと考え、昔からの製法は今後も捨てないつもりです。さらに、生酛造りという伝統技術を、継承していきたいとも考えています。
また、生酛造りのお酒は、熟成するとよりおいしくなる特徴もあります。「御園竹」は1年通して販売するものなので、その特徴も活かせるのです。
―おすすめの飲み方は?
武重 毎日飲むお酒なので、自由に飲んで欲しいですね。地元では、「御園竹」を夏でもお燗して飲む人がいます。お燗しても、冷やしても、どちらでもおいしいお酒になっています。
同じ発酵食品のチーズと合わせても。何が合うのか考えるのも楽しいです。
日本酒は発酵食品なので、おつまみも発酵食品だと相性がいいと思います。味噌、醤油で味付けしたものなら、なんでも合います。地元では、野沢菜漬けを合わせます。野沢菜漬けは乳酸発酵したものなので、相性がいいんです。野沢菜があれば、いくらでもお酒が飲めるというお客様がたくさんいます。でも、あまり難しく考えずに、普段食べているおかずでいいと思います。気楽に飲んで欲しいですね。
定番の醤油味の煮物など、なんにでも合います。晩酌にぴったりのお酒です。
―今後の展望は?
武重 コロナ禍で、外にお酒を飲みに行けなくなり、人と集まれなくなりました。お酒を飲む機会が減り、厳しい状況が続きました。やっと、コロナ禍が明け、今後、どのように挽回していくか、色々考えているところです。
地元に愛されることを大切にしてきましたが、これから、日本全国の方にももっと知ってもらおうとも思っています。さらに、海外への輸出も検討しています。
試飲会のために新設した新コーナー。試飲会の情報はホームページで確認を。
コロナ禍でお休みしていた酒蔵開放というイベントを、2023年から復活させました。普段はなかなか入れない酒蔵で、お酒をゆっくり味わっていただけます。2024年からは毎年春分の日に開催する予定です。
一番古い酒蔵の中に、試飲スペースを新設しました。試飲会を増やして、これから盛り上げていきたいですね。弊社の日本酒のファンになってくださる方を、増やしたいと思っています。おいしいお酒と、お酒にまつわるストーリーを積極的に発信していきます。
―本日は、貴重なお話をありがとうございました。
「御園竹」
価格:¥950~1,900(720ml~1,800ml)(税込)
店名:武重本家酒造
電話:0267-53-3025(9:00~16:00 土日祝祭日、年始、旧暦の盆除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://takeshige-honke.com/products/misonotake
オンラインショップ:https://takeshige-honke.com
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
武重有正(武重本家酒造株式会社 代表取締役社長)
1955年生まれ、1991年に武重本家酒造に入社、2005年社長就任。
<文・撮影/大橋史子(ペンギン企画室) MC/高橋美羽 画像協力/武重本家酒造>