「熱狂的なファンに支えられ、60年間のロングセラーとなっている『チャンポンめん』という即席麺がある」との噂を聞きつけた、編集長アッキー。日本で2番目に即席めんを作ったイトメンという会社が製造している即席麺なのだそうです。「知らなかった、食べたい!」というアッキーに代わって、「チャンポンめん」の製造元であるイトメン株式会社 代表取締役社長の伊藤充弘氏に商品の魅力、おいしさの秘密を伺いました。
1度食べたら、忘れられない…… 兵庫播州のソウルフード「チャンポンめん」を ぜひ、お試しあれ!
2024/02/08
イトメン株式会社 代表取締役社長 伊藤充弘氏
―御社の沿革についてお聞かせください。
伊藤 創業は1945年、終戦直後に製粉業「伊藤製粉所」としてスタートしました。麺の製造を始めたのはその5年後。1950年に伊藤製粉製麺株式会社を設立し、乾麺の製造を開始しました。当時は、今のように冷蔵設備が整っていなかったので、生の麺は流通させられなかったのです。
最初は、そうめんを製造していましたが、ある時、「世の中ではラーメンが人気らしい」という話が耳に入り「じゃあ、うちでも」と中華麺を作り始めました。乾麺(そうめん)づくりからヒントを得て、1957年に製麺機から切り出した生の状態の麺を蒸し器で蒸し、それをほぐして木の枠に入れ、天日で乾燥させるというノンフライ麺で、業務用として売り出したのです。
この中華麺においしいスープをつけたら、ラーメンとして売れるのでは?と研究を進めていると「チキンラーメン」が発売されたんです。「えらいこっちゃ、うちも早く完成させなあかん」と頑張って、1958年にスープのついた1食分の即席中華麺「トンボラーメン」、翌年には、乾燥メンマや麩などの”かやく”をつけた2食入りの「ヤンマーラーメン」を発売しました。
―日本で袋入の即席中華麺を製造・発売した会社としては、2番目なのですね!
伊藤 そうなんです。世の中にはあまり知られていないのですが……。
1958年、日本で2番目に登場した袋麺「トンボラーメン」。本社所在地である兵庫県たつの市が、童謡「赤とんぼ」の作詞者・三木露風の生誕の地であることから、その名がつけられたそう。
袋麺第2弾として1959年に登場した「ヤンマーラーメン」。
―そこから「チャンポンめん」の製造に至るまでの経緯を教えてください。
伊藤 即席中華麺を製造販売する会社が増えてくると、ノンフライ麺は主流ではなくなりました。ノンフライ麺だと、あっさりしてどうしても和風の味わいになってしまうのです。それが、どうも物足りない。その点、麺を油で揚げると、その油がスープに溶け込んで味に深みが出て、よりラーメンらしい味になります。そこで、弊社でもノンフライ麺から油揚げ麺に切り替え、1963年に「チャンポンめん」が誕生しました。「チャンポンめん」という名前は、「野菜など、いろいろな具をチャンポンにして一緒に食べてほしい」ということからきています。
1963年、「チャンポンめん」発売当初のパッケージ。キャラクター「ヤンマー」の名前は「トンボラーメン」の後に発売した「オニヤンマラーメン」にちなんでつけられたとか。
現在の「チャンポンめん」のパッケージ。キャラクターの名前は「とびっこ」というそう。
―発売以来60年、人気が衰えない超ロングセラー商品となった秘密はどこにあるのでしょう?
伊藤 お客さまからは「あっさりして、飽きのこない味」「昔なつかしい味」というお声を頂戴しています。そのイメージからでしょうか、よく「おばあちゃんが作ってくれたラーメンの味がする」とおっしゃっていただくことも多いんです。
「チャンポンめん」は、干しエビと干しシイタケ、2つの具材を”かやく”にしているのが特徴です。弊社の地元播州(兵庫県南部)は昔からそうめんの産地ですが、昔、つゆは各家庭で作っていたんです。つゆのだしは、カツオや昆布ではなくて、昔から干しエビと干しシイタケでした。そこで「チャンポンめん」も干しエビと干シイタケを味のベースにすることに。これは、現在も変わっていません。とくに地元の方たちに「昔なつかしい味」とおっしゃっていただけるのは、そのためかもしれません。
無塩製麺の麺91gとスープ、かやく(干しエビ、干しシイタケ)が入っています。
―麺は「無塩」とのことですが、それは発売当初からですか?
伊藤 無塩製麺を始めたのは1980年から。人々が食品に含まれる塩分量を気にし始めた頃です。以来ずっと、弊社では「チャンポンめん」に限らず、袋入りラーメンの麺には一切食塩を加えていません。
塩を使わないのは、健康に配慮しているだけでなく「小麦の味」を味わっていただきたいからです。弊社はもともと製粉業ということもあり、小麦の味を大切にしています。最近は、麺に味付けをした商品が多いのですが、そうすると食べたときに小麦の味を感じにくい。弊社は製麺所として、あくまでも「小麦の味を感じる麺」にこだわりたいという気持ちが強いので、無塩を貫いています。
―「チャンポンめん」のおすすめのいただき方を教えてください。
伊藤 個人的には、そのまま食べるのが一番おいしいと思っているんです。麺とスープを十分味わえますから。具を入れるとしたらネギだけ、そこに胡椒をぱぱっと振って食べるのが好きです。
淡白な味わいなので、アレンジがききます。スープに豆乳を加えたり、トマトを加えてミネストローネ風にしたり。焼きそばにしても、おいしいですよ。
チャーシューとゆで卵、野菜を乗せて、スタンダードに。スープは、あっさりしていながら、干しエビと干しシイタケの旨みたっぷりで、1滴残さず飲み干してしまいました!
伊藤社長おすすめの、ネギと胡椒にラー油を少々たらしただけのシンプルな食べ方。スープと麺そのものをしみじみと味わえます。
野菜タンメン風に。キャベツよりも白菜のほうがスープの味にマッチします。
―失礼ながら、60年も愛され続けている大ヒット商品なのに「チャンポンめん」の姿をあまり見かけないのですが……。
伊藤 問題は、そこなんです。販売エリアが限られていて、現在は名古屋を中心とした中京エリアと北陸エリア、兵庫県以西の中国エリア、九州は鹿児島で販売しています。
「なかなか手に入らない」ということで、より愛してくださるファンの方も多いようです。私どもは、そうしたファンの方、そしてそのお子さん、お孫さん……が「おいしい」とよろこんで、満足してくださるなら、それで十分だと考えていました。
でも、地元を離れた方たちが「なつかしいあの味を食べたい」と思ったとき、手に入らないというのは申し訳ない、もっと営業努力をして販路を広げなければと、現在、がんばっています。
―「残念なイトメン応援キャンペーン!」はその一環でしょうか。社長の「同情するなら食べてくれ!」、専務の「もう残念はイヤだ…オレは頑張るキャンペーン」など、まさに体を張ってアピールされていますね。
伊藤 あれは若手社員の発案です。「残念な~」のときは「自虐」というコンセプトで徹底的にやろうと。関西にはお笑い文化が根付いていますから、若手社員だけでなく私もこうしたユニークな、というか奇抜な取り組みもいいじゃないかと(笑)。キャンペーンの様子は弊社のホームページで公開しています。ぜひ一度、のぞいてみてください。
「残念キャンペーンは自虐的すぎる」というファンからの声で、現在は「オレは頑張るキャンペーン」中。
「チャンポンめん」発売55周年を記念した限定「ブラックチャンポンめん」。
社長(左端)をはじめ全員黒づくめ&サングラス姿。映画「メン・イン・ブラック」を意識している?
―最後に、今後のビジョンをお聞かせいただけますか?
伊藤 それはもう、「チャンポンめん」を全国の方たちに召し上がっていただき、かわいがっていただけるよう営業、販売を頑張っていくことです。そのためなら私もまだまだ、何でもします(笑)。
全国展開できない理由の一つに、一気に製造量を増やせないという現状があります。これは、言い訳に聞こえるかもしれませんが、働き手が足りないのです。地方都市に多く見られるように、弊社の地元でも若い人たちの多くが外に出ていってしまうんですね。
「チャンポンめん」をはじめ弊社の商品を全国のみなさんに召し上がっていただくためには、製造、営業……とさまざまな分野で人材が必要です。ですから、若い人たちに「イトメンで働きたい」と思ってもらえるよう商品をブラッシュアップし続け、新たに魅力的な商品を開発していきたいと考えています。
―全国のお店で「チャンポンめん」に出会えること、そして新たなキャンペーンも楽しみにしております!本日は、ありがとうございました。
「袋チャンポンめん」5食
価格:¥567(税込)
店名:播州麺本舗
電話:0120-366-351(9:00~17:00 土日祝日を除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.menhonpo.com/SHOP/th-01.html
オンラインショップ:https://www.menhonpo.com
「袋チャンポンめん」1食
価格:¥114(税込)
店名:播州麺本舗
電話:0120-366-351(9:00~17:00 土日祝日を除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.menhonpo.com/SHOP/ts-14.html
オンラインショップ:https://www.menhonpo.com
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
伊藤充弘(イトメン株式会社 代表取締役社長)
1956年兵庫県生まれ。関西学院大学を1978年に卒業後、イトメン株式会社入社。業務部長、常務を経て2003年、同社代表取締役社長に就任。
<文・撮影/鈴木裕子 MC/木村沙織 画像協力/イトメン>