今回、編集長アッキーが気になったのは、芸能人のファンも多くて話題の長野のおやきのお店「いろは堂」。有限会社いろは堂 代表取締役の伊藤拓宗氏に商品の人気の秘密を取材陣がうかがいました。
長野の伝統食のおいしさを再発見 芸能人からも愛される 「定番おやき14個セット」
2024/02/21
有限会社いろは堂 代表取締役 伊藤拓宗氏
―昨年、社長に就任されましたが、おやきへの思いをお聞かせください。
伊藤 おやきは長野の伝統食という背景があり、長野にいらっしゃった方が食べたり、お土産で買っていただく需要が多いものでした。でも、おやきは野菜が入っててヘルシーですし、手軽に食べることができてお酒やコーヒーにも合います。利用シーンの可能性がまだまだ広がるものなので、それを発信していきたいと考えています。
おやきは一昔前よりは認知されてきており、特に関東にはかなり浸透していますが、関西はまだ弱いと思います。しかし、逆に伸びしろがあると考えています。商品としてのポテンシャルをしっかりと発信できるよう、マーケティングにも力を入れていきます。
おやきは、味付けした野菜や山菜を、小麦粉・蕎麦粉の皮で包んで焼いた、長野県の郷土料理。
―おやきを広めていくにあたってご苦労されていることはございますか。
伊藤 伝統食としての基盤があり、全く目新しいものを作っているわけではないので、それをどんなふうに押し上げるかが求められるところで、試行錯誤しています。
中の具材はどんなものでも入れられますが、それが強みである一方で、アイデンティティが失われやすい点でもあるので、何を守って何を変えないといけないのかは、常に葛藤の連続です。
具材は野菜が基本ですが、ジビエを入れているお店もあります。自社が伸びていくことは大事ですが、おやきを浸透させるためには、業界やおやきの野菜を作っている農家さんが一緒になって頑張っていかなくてはいけないと思います。
―1925年の創業から御社の中で変わらない信念はございますか。
伊藤 当社は和菓子屋として創業し、その後、学校給食のパンやお菓子を作り、60年ぐらい前におやきを商品として販売し始めました。おやきはもともと家庭料理だったので、当時は売るという概念がなかったのですが、パンを作っていた製法を活かし、独自の製法でおやきが誕生しました。家庭で作れる一般的なおやきの作り方とは違うのが強みになっています。
経営理念の「おやきを通じて人と地域の幸せを実現しつづける」は大切にしています。ここでの人というのは、お客様であり、働いてる社員であり、原料となる野菜を作っている生産者を指します。おやきを届けることによって、そこに関わる人や地域を幸せにしていくことを目指しています。
社是は「心はんぶん、味はんぶん」で、心と味の2つを合わせてこそおいしいおやきができるという意味です。品質へのこだわりをちゃんと心で見ましょうということで、生産工程は手間がかかっていて効率が悪いのですが、それでよしと思ってやっています。これは現在98歳の2代目の女将の言葉です。
―2022年に「OYAKI FARM」が作られましたが、どういった施設でしょうか。
伊藤 おやきがもっと皆さんの日常に浸透していく姿を将来的な理想像としたとき、おやき=長野というイメージから変える必要があると思い、幅広い世代、幅広い地域の人におやきの可能性を感じてもらえる施設を作りました。工場見学やおやき作り体験ができ、発信拠点としての位置づけです。
既存のいろは堂やおやきを知らない人も、OYAKI FARMを体験することで、いろは堂の本店に行ってみようと思ってくださるといった、相乗効果も期待しています。
既存のブランドはイメージができてしまっていますが、殻を破ったことをOYAKI FARMでチャレンジしていきます。
たとえば、おやきの生地を使ったドーナツや、おやきの中にアイスを挟んだ商品があります。Tシャツなどオリジナルグッズの販売もしています。
おやきの新たな発信拠点「OYAKI FARM」。
カフェではアレンジされたおやきもいただけます。
―直近3年間の通販の売り上げは2.4倍にまで伸びていらっしゃいますが、成長の理由を教えてください。
伊藤 芸能人の方がテレビでご紹介してくださり、それがSNSで拡散されて、1カ月半待ちといった状態になったことがありました。
コロナ禍で通販を利用される方が増えたのが大きいです。親御さんが長野に帰省できないお子さんに送ったり、旅行に来られない県外の方が取り寄せるといった需要がすごくありました。おやきが元々持っている力だったり、地域に愛される大切さを実感しました。
―愛される商品となったおいしさの秘密を教えてください。
伊藤 生地は小麦粉、蕎麦粉、調味料とイーストと水を入れて混ぜるのですが、2分ぐらいしか混ぜないんです。しっかりこねないで、1時間ぐらい発酵させ、その間にグルテンが出てくるのを待ちます。始めた当時からの製法は変わりませんが、日によって水の温度や湿度は違うので、状態を見ながら作っていくのが難しいポイントです。
具材も野菜の仕入れ後、1次加工から自社でやっており、スタッフが見て判断する工程がたくさんあり、手間暇をかけて作っているのがおいしさの秘訣だと思います。
焼き方も蒸すのではなく、揚げてから焼くので、外はカリッ、中はモチッとしたおやきが完成します。揚げることによって、焼いた後、時間がたって冷めてしまっても食感が変わらず、硬くならないんです。
昔は電子レンジもなかったので、時間が経っても同じ状態で食べられる工夫をした中で生み出された製法だと思います。
私達も当時からの品質を守っていくことを大切にしています。
さまざまな具材が入ったおやき。揚げ焼き製法による香ばしい生地と、素材の味を生かした具が調和。
―具材の味付けのポイントはございますか。
伊藤 具材自体に手をかけて、何か作り込んだものを具材にしてるというより、元々ある野菜の素材の味を大切にし、味噌などシンプルな味付けにして、おやきの本来の姿である素朴な味を出しています。
野菜は決まった品種のものしか使いません。野沢菜も指定の有機肥料を使って契約栽培をしてもらっている農家さんのもので、素材へのこだわりには力を入れています。
かぼちゃのおやき。野菜がたっぷりでヘルシー。
―今回ご紹介する「定番おやき14個セット」の中でも人気の味はございますか。
伊藤 好みもあると思いますが、やはり野沢菜が一番人気です。野沢菜は収穫の条件も厳しくて、一番おいしく食べられるサイズも決まっており、浅漬けの状態で入れています。野沢菜は普通に茹でると黒くなって鮮やかさがなくなり、食感も悪くなるので、浅漬けにすることがポイントです。
野沢菜がぎっしり入った人気のおやき。
―どんなシーンで食べてもらいたいですか。
伊藤 おやつ的に食べていただく方が多いですが、パンに代わる朝ごはんとして、コーヒーと一緒にいただくのもおすすめです。チーズを乗せてオーブンで焼き、ワインと合わせるのもおいしいです。おやきは焼くだけでいいので、「キャンプめし」としても使えます。食べるシーンを変えて、面白さを見つけていただけるとうれしいです。
また、最近はタイパ(タイムパフォーマンス)が流行していますが、レンジでチンしたらすぐ食べられるのでタイパもいい食べ物です。ヘルシーな健康食でもあるため、ダイエット食にもおすすめです。
―最後に今後の展望をお聞かせください。
伊藤 おやきを日常に取り入れてもらえるような試みとして、サブスクも考えています。
日本食の流行もあり、海外展開も計画中です。ベジタリアンやビーガンの方にも受け入れられますし、外で手軽に食べ歩きができるため、可能性があるのではないかと思っています。
ポテンシャルの高い、おやきという素晴らしい商品を世の中にどうやって知ってもらえるか、これからも発信を続けていきます。
―貴重なお話をありがとうございました。
「定番おやき14個セット」
価格:¥3,780(税込)
店名:いろは堂
電話:0120-168-041(8:30~17:00 火曜除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.irohado.com/c/regular-assortment/regular_14
オンラインショップ:https://www.irohado.com/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
伊藤拓宗(有限会社いろは堂 代表取締役)
1985年長野県生まれ。2008年11月有限会社いろは堂入社。2023年に同社代表取締役に就任。
<文/垣内栄 MC/高橋美羽 画像協力/いろは堂>