プルンとした弾力に、ふんわり広がるコーヒーの香り。北海道羊蹄山の湧き水を最大限に使ったコーヒーゼリーは、お客様一人ひとりに一杯ずつ、心を込めて珈琲を淹れる「ワンドリップ・ワンカフェ」という思いを基盤に誕生しました。今回、編集長アッキーこと坂口明子が注目したのは、京都に本社を置く三喜屋珈琲株式会社の「北海道羊蹄山名水珈琲ゼリー」です。5代目代表取締役の園田高久氏に、取材陣がエピソードを伺いました。
名水仕込みの本格コーヒーで作る「北海道羊蹄山名水珈琲ゼリー」
2024/02/21
三喜屋珈琲株式会社 代表取締役の園田高久氏
―創業は戦後間もない頃とお聞きしました。
園田 1947年に私の祖父がコーヒーを始めました。今でこそコーヒーは当たり前にある飲み物ですが、当時は飲む人はほとんどいなかったのではないかと思います。祖父はハイカラで、先見の明がある人だったのだなと。
当時はダンスホールなどにコーヒーをリアカーで運んでいたと聞いています。祖父の思いを受け継ぎ、三喜屋珈琲のロゴマークにはリアカーを描いています。
創業者の思いを受け継ぐロゴマーク。一部商品に描かれている。
―コーヒ―を扱う上で大切にしていることは?
園田 百貨店の店舗では「ワンドリップ・ワンカフェ」という考え方を大切にしています。一人のお客様が来られたら、そのたびに心を込めて1杯のコーヒーを淹れるという考え方です。近年だとコロナ禍があり、百貨店でのコーヒーの試飲やコーヒー教室ができなくなりました。それからはZoomを使い、コーヒー教室を開催しています。
一人のお客様に心を込めて1杯のコーヒーを淹れる、が基本理念。
コーヒー教室で気を付けているのは、私が一方的に話すような講義をしないようにすることです。できるだけお客様にも「どちらのコーヒーが好きですか?」と感想をお聞きしながら進めています。
百貨店の現場ではお店の前を通る方へ、試飲で「コーヒーをどうぞ」とお声かけし、きちんと話をしてコーヒーを売るようにしていました。現場でもZoomでも、一人ひとりに心を込めて接客をする思いは変わりません。
「コーヒーは奥が深い」とよく言います。なぜコーヒーは奥深いのかというと「人の数だけ答えがあるから」だと私は考えます。「おいしい」と感じるコーヒーの味は人によってまったく異なり、正解はありません。その結果、コーヒーは奥が深いという表現になるのです。
最終的に好きな味を自分で見つけていただければ、と思い、コーヒー教室でもそのような内容をお伝えしています。
―「北海道羊蹄山名水珈琲ゼリー」はどのように誕生したのでしょうか?
ミルクとシロップを別添えにしている。
園田 こちらは名前の通り、北海道の羊蹄山(ようていざん)という山から湧き出る水を使ったコーヒーゼリーです。商品開発の発端は、羊蹄山の天然水を取り扱っている方とご縁があったからでした。
羊蹄山の水は、六甲(兵庫県)や南アルプス(山梨県)の湧き水のように質の良い天然水です。しかしミネラルウォーターとして販売しようとすると、北海道から流通させるのに非常にコストがかかります。北海道から本州に送ると輸送コストがかかり、利益になりません。
そんな悩みを抱えていた方と知り合って、「羊蹄山の水でコーヒーを淹れて販売するのはどうか」という話になったのです。水は1本の価格が100円前後ですが、コーヒーとして1本1,000円で販売できれば、商売として成り立ちますから。そこで最初に、羊蹄山の水を使ったアイスコーヒーを製造販売しました。
羊蹄山の水は、含有しているミネラルが少ない水、硬度の低い水です。ミネラルが多い水はコーヒーの風味と喧嘩してしまうのですが、ミネラルが少ない水はコーヒーそのものの風味を引き立てます。モカやブルーマウンテンでアイスコーヒーを作ったときに、味の違いがわかりやすい水なのです。
羊蹄山の水はミネラルが少ないタイプの水だとわかったので、何種類か試して、コーヒーの味そのものを楽しんでいただけるアイスコーヒーを作りました。これがとても好評だったので「羊蹄山の水でコーヒーゼリーも作ってみよう」という話になったのです。
―ゼリーに使っている寒天を溶かす工程からコーヒーを使っていると伺いました。
園田 ゼリーにはゼラチンや寒天が使われますが、「北海道羊蹄山名水珈琲ゼリー」には寒天を採用しました。試作にあたり議題に上がったのが「寒天を溶かすときにお湯を使うのは、商品のコンセプトに反するのではないか」ということです。私たちは100%コーヒーを使うことにこだわった商品にしたかったので、コーヒーを抽出した液で寒天を溶かすことになりました。
原料のコーヒーを選び、焙煎する工程は、京都の本社でおこなっています。コーヒーゼリーは冷たくしていただくものですから、冷やしたときに風味をしっかり味わえるような豆をセレクトしました。それを北海道へ送り、現地で羊蹄山の水を使ってコーヒーを抽出しています。
コーヒー豆の選定はもちろん寒天を溶かす工程まで、徹底的にコーヒーにこだわった一品。
―販売にあたり、大変だったことは?
園田 克服しなければならなかったのは賞味期限の問題です。「北海道羊蹄山名水珈琲ゼリー」は百貨店で販売しており、ご進物としてご購入いただく機会がとても多い商品です。ご進物の場合、贈られた方全員が、もらってからすぐに食べるわけではありません。そのため、ある程度長い賞味期限が求められます。
しかしゼリーに使っている寒天は、菌の培養などにも使われているほど栄養価が高い食材です。そのため課題は、活発になってしまう菌の活動を抑えること。一方で、防腐剤を入れるのは商品のコンセプトに反します。そこでゼリー液の充填の温度などに配慮し、可能な限り賞味期限を長く保てるように工夫しました。
何度もテストを繰り返し、最終的に3ヶ月維持できるようにしたのが「北海道羊蹄山名水珈琲ゼリー」です。
実は、当社には賞味期限が半年間のコーヒーゼリーもあります。賞味期限の違いは「カップの上部に空間があるかないか」です。今回ご紹介しているコーヒーゼリーは、ミルクとシロップを上から入れてもこぼれず、食べやすいように空間を設けています。密閉せずに空間を設けている分、賞味期限は満充填のものよりもやや短いのです。
―おすすめの食べ方を教えて下さい。
園田 「北海道羊蹄山名水珈琲ゼリー」は、非常にしっかりとした弾力のゼリーに仕上げています。そして、ミルクとシロップを別添えにしているのもポイントです。先ほど触れましたが、コーヒーの好みは人それぞれ。ですから、ミルクとシロップもお好みでかけて召し上がっていただけるとうれしいです。
私は最初にブラックのまま食べて、あとからシロップをかけて食べるようにしています。ひつまぶしみたいに(笑)最初に香りや苦味を楽しみ、後から甘くして味わうという味変を楽しめるのも、このゼリーの魅力です。
まずはそのままで一口。お好みでミルクやシロップをかけて味の変化を楽しめる。
―最後に今後の展望をお聞かせください。
園田 コーヒーは本当にいろいろな楽しみ方がありますので、「自分の好きなコーヒー」というものをぜひとも見つけていただきたいなと思っています。コーヒーゼリーも当社のものだけではなく、他のものも食べてみて、本当に好みに合うものを見つけていただきたいです。「北海道羊蹄山名水珈琲ゼリー」がそのようなきっかけになればうれしく思います。
コーヒーと羊蹄山の水、寒天を組み合わせてできた今回のゼリーのように、コラボして商品の幅を広げていきたいとも思います。興味を持たれている企業との出会いがあれば、積極的にチャレンジしていきたいです。
―貴重なお話をありがとうございました。
「北海道羊蹄山名水珈琲ゼリー」(110g 9個入り)
価格:¥2,430(税込)
店名:コーヒー豆 通販 三喜屋珈琲オンラインショップ
電話:0120-005-785(平日9:00~17:00 土日祝祭日及び休業日は除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.mikiyacoffee.com/shopdetail/000000000093/
オンラインショップ:https://www.mikiyacoffee.com/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
園田高久(三喜屋珈琲株式会社 代表取締役)
1965年生まれ、1987年にUCC上島珈琲株式会社に入社後、1991年に三喜屋珈琲に入社し、髙島屋大阪店で接客販売を行う。その後、工場での焙煎を担当する。2013年同社代表取締役に就任。社業のかたわら、J.C.Q.A.コーヒーインストラクター講師とし、コーヒーの正しい知識の普及と技術の向上為、全国で講義を行う。
<文・撮影/西村初音 MC/木村彩織 画像協力/三喜屋珈琲>