「おいしい魚を手軽に調理して食べたい!」という願望を叶えてくれるのが、自宅へ下処理された魚と調理キットが届く「サカナDIY」。年間を通して、50種類ほどの旬の魚料理を楽しめます。実は、コロナの蔓延が商品開発のきっかけになったのだともお聞きしました。今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になった海清水産株式会社 代表取締役社長の松井大輔氏に、商品の開発秘話や魅力について伺いました。
全国各地の旬の魚をおうちで調理し出来立てを味わえる「サカナDIY」
2024/02/26
海清水産株式会社 代表取締役社長の松井大輔氏
―子ども時代の食の記憶などあればお聞かせください。
松井 うちは日々の食卓を家族で囲む家庭でした。特に、年末年始に親戚が集まる際には、父がよくとらふぐをさばいて、ふぐ刺しや鍋などを振る舞っていたのを覚えています。みんなでおいしい料理を囲み、一緒に過ごした時間は、幸せな記憶として今でも残っています。本当に楽しかったです。
―素敵な思い出ですね。食の仕事に関わったのは、始めからですか?
松井 大学卒業後にまず就職したのは、調理場から経験させるという会社でした。そこで料理の腕を身につけたら、将来的には海清水産を継ぐときに役立つだろうと思って。5年ほどそこで働いたあと、下関市に戻ってきて海清水産に入社しました。
初めの5年ほどは営業を担当。当時の海清水産は「プロの魚屋の集まり」みたいな会社で、それぞれの営業マンがそれぞれに得意な商材を持ち、仕入れ・加工・販売までを請け負っていました。
海外も飛び回り、中国や韓国、ベトナム、タイなどで現地の方と交渉し、魚の加工指導や仕入れた魚を日本の市場へ販売するなども行っていたのです。
入社後すぐに今の会長から「海清水産の中で、自分の松井商店を作りなさい」と言われたことを覚えています。
「産地と旬」にこだわり、熟練のスタッフが直接現地に出向いて魚の品質を確認後に買付け。
―そして、加工会社であるふく衞門とM&A(合併)されました。
どのように対応されたのですか?
松井 海清水産が仕入れた魚をふく衞門で加工して販売すれば絶対に商売になると信じていたので、レストランや外食産業、スーパーなどに直接営業に行きました。あわせて、ふく衞門から引き継いでいた前体制もどんどん変えていきました。
すると翌年からは黒字になり、数年後には1億6000万円の負債をすべて解消することができました。それからは右肩上がりで、さらに数年後には売上が4億5億ぐらいにまで増えていきました。
もっとも大切にしているのが「食を通じたおいしさと感動をより多くの人にお届けしたい」という想い。
―しかし、そのタイミングでコロナ禍に。
松井 そうなんです。当時の売上は飲食店への卸売りが全体の約80%を占めていたので、コロナで飲食店が閉店し始め、売上が70%ダウンしました。不良在庫が山積みになり、資金繰りも難しくなって。
そんなときにSNSで、コロナ支援で訳あり商品を販売するサイトがあることを知って。通常よりも安く販売することで、1ヶ月で20tの不良在庫を完売することができました。
―それがサカナDIYにつながることになったのですね?
松井 はい。実際にサイトでとらふぐなどを販売しても家庭ではさばけないという方が多いと思って、家庭にある包丁でもこのやり方ならさばけますよという紹介動画も一緒にサイトにアップしました。すると、動画を見て調理した方が出来上がりの写真をそのサイトにさらにアップしてくれて。
「とらふぐをさばいたのは初めてでした」「息子の好きなお刺身No.1が入れ替わりました」などのメッセージも何百件と集まってきて、そこに交流が生まれたんです。
すごいと思いました。ただ商品を食べるだけでなく、調理自体も楽しめる体験ができればいいなと思ったのがサカナDIYへとつながるきっかけとなりました。
―「サカナDIY」について詳しく教えてください。
松井 段ボールに4~5種類くらいの魚料理のキットを詰めてお届けするサブスクリプション商品です。全国各地の地魚は内臓やウロコなどの処理済みで、瞬間凍結することで鮮度を保っています。付属のレシピや動画を見ながら、家庭でもプロが作るような料理を作ることができます。
家庭の冷凍庫に旬の地魚が眠っているといったイメージでしょうか。食べたいときに冷凍庫から取り出し、5~10分ほど流水解凍するだけで手軽に調理できるのが魅力です。調味料も無添加のものにこだわっていて、材料を鍋に入れて火にかけてもらったらできあがります。
高級魚ノドグロの煮付けは、魚と付属の調味料、水を鍋に入れて調理するだけ。
解凍時間20分、調理時間15分で本格的な煮付けが完成!
―季節ごとの魚が食べられるのは嬉しいですね!
松井 季節ごとに旬の魚は変わるので、定期便の形にすれば毎月お客様に喜んでもらえるだろうと考えました。年間で50種類ほどの魚料理を楽しんでもらえます。サービス開始当初の会員は50名ほどでしたが、現在では1,500名ほどにまで増えています。
―特におすすめの魚はありますか?
松井 ノドグロの煮付けや真ふぐのたたきもおいしいです。ノドグロは脂がのっていて、「白身のトロ」って呼ばれていて。ただ、煮付け方がわからないといった声を聞くので、キットのレシピ通りに煮付けてもらえば家庭でもおいしく食べられます。
ふぐの調理には特殊な免許が必要ですが、キットでは下関市のふぐ職人がさばいたものが届きます。家庭ではスライスするところから楽しんでもらえるようになっています。
真ふぐのたたき。自分でスライスして職人気分を味わえるのも楽しい。
―先日「日本サブスクリプションビジネス大賞2023」を受賞、おめでとうございます!
松井 ありがとうございます。スポンサー賞(テモナ賞)を受賞しました。昨今、日本人の魚離れが増えるなか、日本の食文化の活性化に貢献していることが受賞理由だとお聞きしました。
―また、出来立ての料理を食べられる点も大きいですね。
松井 やっぱり出来合いの商品を温めて食べるのとは違い、サカナDIYでは自分で調理できる点が魅力だと思っています。
家族で一緒に料理し、食卓を囲みながら料理の話をする体験はきっと記憶に残ると思います。また、キットの中には旬の魚の説明も入っているので、魚についての知識も増えます。魚の名前の由来やこんな食べ方がおいしいという紹介もしているので、食卓での話題の一つになれば嬉しいです。
公式サイトではアレンジレシピも多数紹介。こちらはノドグロの炊き込みご飯。
―最後に、今後の展望をお聞かせください。
松井 現在はおまかせの定期便のみですが、ゆくゆくは単品販売もできたらと思っています。例えば、定期便のお客様からメッセージをいただけたら、その中に単品も一緒にプラスして発送すれば送料もかかりませんので。希望する魚を食べたいときに食べられれば、もっと喜んでもらえるんじゃないかと。また、魚を加工する際に出る規格外品も、通常よりもお手頃価格で単品販売できれば、SDGsの観点から売れ残りが減らせる点も魅力です。さらに将来的には、日本酒とのペアリングも視野に入れた海外進出も目標です。
―貴重なお話をありがとうございました。
「サカナDIY」(2人前)
価格:1回あたり¥5,400(税込、送料込)
店名:サカナDIY 株式会社ふく衞門ネットショップ
電話:083-261-2929
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.fuku-emon.com/c/gr36/sakanadiy2
オンラインショップ:https://www.fuku-emon.com
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
松井大輔(海清水産株式会社 代表取締役社長)
1978年生まれ。2005年に父が創業した海清水産株式会社に入社。2011年にグループ会社株式会社ふく衛門を立て直すため出向し、3年間赤字続きだったふく衛門を一年で黒字にする。2016年には下関のふぐ屋と老舗酒蔵がつくったこだわりの粕漬けが農林水産大臣賞を受賞。2019年に海清水産とふく衛門の代表取締役社長に就任し、コロナ禍からヒントを得た”サカナDIY”事業をスタートする。
<文・撮影/時田涼子 MC/白水斗馬 画像協力/海清水産>