ういろうを名古屋土産として世に広めた青柳総本家。現在はういろう以外にも、会社のロゴマークにちなんだ「カエルまんじゅう」が名古屋土産の定番商品として人気です。創業140年を超える老舗でありながら、洋菓子の要素を取り入れた商品開発をするなど、挑戦を続けています。
今回編集長アッキーこと坂口明子が気になった株式会社青柳総本家 代表取締役副社長の後藤稔貴氏に、取材陣が伺いました。
「カエルまんじゅう」で世界中を笑顔に!創業140年を超える老舗6代目の挑戦
2024/02/28
株式会社青柳総本家 代表取締役副社長の後藤稔貴氏
―青柳総本家さんの沿革を教えてください。
後藤 明治12年(1879年)に羊羹屋として創業しましたが、2代目が東京に出たときにういろうの製法を学んだようで、ういろうの製造を始めました。代々後藤家が経営していますが、17代将軍の徳川慶勝から「青柳」という屋号をいただき、「青柳総本家」という社名になりました。そこから紆余曲折ありながら今に至ります。
現在では名古屋土産としてういろうが有名ですが、それは弊社が昭和6年(1931年)に当時の国鉄名古屋駅でういろうを立ち売りし始めたことがきっかけです。まだういろうが珍しかったようで、多くのお客様が購入してくださいました。昭和39年(1964年)東海道新幹線の開通とともに弊社にも車内販売が許可されました。その後、本来は日持ちがしないういろうを弊社が日本で初めて密封製法に成功させたり、小型のういろうを作ったりと、お土産用に適した形にしていき、これによって、爆発的にういろうが売れるようになったと聞いています。
明治中期の青柳総本家 銅版画 野村 博。
―会社のロゴがカエルのマークなのはなぜでしょうか?
後藤 このロゴマークは、愛知県春日井市出身の能書家・小野道風の故事より「目標に向かって何度でも努力を繰り返す青柳のチャレンジ精神」を表現しています。私の祖父であり、弊社4代目の後藤敬一郎が、芸術家仲間の1人である杉本健吉さんにデザインを依頼したそうです。4代目は芸術家としての一面もあり、シュルレアリスムの第一人者でした。ロゴマークがカエルなので、社内で「カエルのお菓子を作りたい」という声が挙がり、「カエルまんじゅう」が誕生しました。
「柳に飛びつくカエル」をイメージした会社ロゴ。
―「カエルまんじゅう」の特徴を教えてください。
後藤 柔らかい生地と、たっぷり入ったこし餡が特徴です。目や口は職人の手によって焼き入れしており、人の手によって生じるわずかな表情の違いがおもしろいかなと思っています。中の餡は季節によって限定フレーバーを用意していて、春はさくらあん、夏は抹茶あん、秋はおいもあん、冬はチョコあんです。
発売当時の「カエルまんじゅう」。
―「ケロトッツォ」という商品も人気だと聞きました。こちらの商品が開発された経緯は?
後藤 2021年に流行したマリトッツォを「カエルまんじゅう」で作ってSNSに投稿したのがきっかけです。お客様から「商品化してほしい」「食べてみたい」といった反響がかなりありました。だから何としても商品化したかったのですが、商品を世に送り出すまで時間がかかる会社だったので、最初は「これを開発するには半年から1年かかる」と言われました。当時は冷蔵商品の扱いもなかったので、冷蔵庫の調達から始め、レシピ作りや生産工程までをほぼ1ヶ月で決めました。新しい商品を開発することで、会社の空気を変えたいという気持ちもありました。苦労しましたが、結果的に1ヶ月1万個以上売れる人気商品となりました。
「ケロトッツォ」はクリームチーズと生クリーム、餡子の味を楽しめる。
―SNSの運用はコロナ禍に始めたそうですね。その経緯を教えてください。
後藤 弊社の商品は直営店以外にお土産売り場などにも卸させていただいていて、どちらかというとお土産として購入されることが多いのですが、コロナ禍で一番酷い時に売上が95%減になったことがあるのです。こんなに酷いのは、創業以来一度もありませんでした。コロナ禍になる3ヶ月ほど前に私が経営のバトンを受け継ぐことになったのですが、このままコロナが続いたら冗談抜きで本当に会社が潰れるんじゃないかと思ったくらいです。
しかし、コロナ後の世界をイメージする中で、会社の課題を一つ一つクリアしていかなければならないと思うようになりました。そこで最初に始めたのがSNSです。正直、弊社は時代から取り残されている部分も多く、コロナ以前はSNSをやっていませんでしたが、老舗とはいえ時勢に合わせた経営をしなければならないと思いました。どれだけ美味しいお菓子を作っても、お客様が知らなかったら世の中に存在しないのと一緒だと思うので、お客様とコミュニケーションをとることに加え、自社PR力を上げることを目的に運用しています。
―現在はKITTE名古屋店にて喫茶店の営業もされているようですが、そのきっかけは?
後藤 ういろうを含め、弊社のお菓子はお土産としてのイメージが強いため、地元の人にはなかなか食べてもらえないという悩みがありました。そのため、地元の方に食べていただくきっかけ作りとして喫茶業態を始めたと聞いています。
ちなみに、4代目は当時としては珍しかったメキシカンレストランをオープンさせたそうです。老舗でありながら、新しいことにどんどんチャレンジしていくというベンチャー精神は、自分も見習っていきたいと思います。
青柳総本家KITTE名古屋店開店の様子。
―今後の展望を教えてください。
後藤 僕はビジネスの世界において現状維持は衰退だと考えているので、新しい市場にチャレンジしたり、今の作業工程を見直して新しい何かができないか考えたり、今後もどんどん成長していきたいです。数値目標としては、目安として2035年に売上100億円を目指したいと思います。
それと、弊社はお菓子屋ですが、カエルまんじゅうやケロトッツォはあくまでもお客様を笑顔にする手段であって、根本にあるのは「笑顔製造業」だと思っています。海外のマーケットも視野に入れているので、これからもより多くのお客様を笑顔にしていきたいです。
―貴重なお話をありがとうございました!
「カエルまんじゅう こしあん」(3個入)
価格:¥443(税込)
店名:青柳ういろう 青柳総本店 公式サイト
電話:0120-016-758(平日9:00~17:00 土日、祝日は除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://shop.aoyagiuirou.co.jp/collections/kaeru-manju/products/kaeru-manju-3
オンラインショップ:https://shop.aoyagiuirou.co.jp/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
後藤稔貴(株式会社青柳総本家 代表取締役副社長)
1989年愛知県生まれ。大学卒業後、一般企業で営業として働いた後、2017年に株式会社青柳総本家に入社。2022年に代表取締役副社長に就任。
<文・撮影/坂本彩 MC/橋本小波 画像協力/青柳総本家>