今回、編集長アッキ―こと坂口明子が気になったのは、無添加にこだわったモッツァレラチーズや、甘すぎず素材の味を活かしたアイスクリーム。小さな子どもやおじいちゃんおばあちゃんにも安心して美味しく食べてもらいたいという思いで開発・製造しているのは、山形県酒田市にある田村牛乳。「子どもが食べて笑顔になるかどうか、その目線でもの作りをしています」と語る代表取締役の田村耕永（こうえい）氏に、また食べたくなる商品開発への想いを聞かせていただきました。

―曾祖父の方が創業された会社ですね。

田村　そうです。いわゆる牛乳屋さんで育ちましたが、小さい頃はそこまで牛乳を飲まなかったんですよね。今は製造していないのですが、当時はコーヒー牛乳やフルーツ牛乳も販売していまして、そっちばっかり飲んでいました。それが高校生くらいになると、牛乳屋をやりたくなくなってきて（笑）。でも高校卒業後は宮城県仙台市で、ぜんぜん関係ないインテリアの専門学校に入りましたが、卒業後は、先代から森永乳業さんの下請けの工場が山形市にあるから、そこで仕事をしてみないかと言われて入社。そこで牛乳の製造や管理、今でいうHACCP（ハサップ）といった食品の安全性など、いろいろなことを学んだ経験が今につながっています。

―そこから家業の田村牛乳に入社されたのですね。

田村　そうです。そして先代が亡くなったのをきっかけに社長に就任しました。病床の先代といろいろと話をした中で、「新しい事業をしなさい。お前のやりたいことをやれ」と言われたのです。自分が代表になり世代交代するというタイミングで、会社を存続させるためになにができるかと、新しい事業といっても何をやろうかと、いろんな人に会いに行ったりしました。さまざまな出会いがあった中で、地元でワインの事業をしている企業の社長さんにチーズをやってみないかと声をかけてもらい、モッツァレラチーズ作りに取り組みました。チーズ工場を見学させてもらいに行ったときに、直感的に「できる」って思っちゃったんです。

むっちり柔らかい食感がたまらない！無添加にこだわったモッツァレラチーズ。

―ではそこから販売開始まで順調に進みましたか？

田村　いえ、これがめちゃくちゃ大変でした。モッツァレラチーズの作り方を誰かに教えてもらって作ったわけではなく、ほぼ独学。誰かに教えを乞うことはできたんですが、自分である程度までやってみたほうがいいと思ったんです。

自分の物作りの考え方として、実際に作ってみたときの気付きや「もっとこうしたい」というアイデアを大事にしています。誰かに全部教えてもらったら、作る工程やなぜそうなったのかということがわからないまま作ってしまうことになるんです。だからまずは自分で作ってみて、工程や改善したほうがいい点を把握しようと。ある程度まで作ったとき宮城県のチーズ屋さんに来ていただいて、一緒に現場を見ながら「こうしたいんだ」っていう思いをぶつけて相談に乗ってもらいながら、自分たちで答えを出していくようにしました。

―モッツァレラチーズ作りのこだわりは？

田村　モッツァレラチーズは柔らかさを追求し、無添加にこだわっています。無添加だとどうしても賞味期限が短くなってしまうんですが、やっぱりおいしいと思いますし、子どもに食べさせても安心です。

基本的に、ものを作るときには子ども目線で考えているんです。自分が作った商品を子どもが食べたときに、笑顔だったり楽しんでいたりする光景が思い浮かぶかどうかを大事にしています。子どもが笑えば家族も賑やかになる。コロナで自宅待機をしている中、うちの商品を食べたら家族の笑顔が見れたとか、そういった光景を思い浮かべながら商品作りをしています。

―アイスクリームはどのようなきっかけで作られたのですか？

田村　モッツァレラチーズを作るとき、牛乳を100kg使ってもその10分の1の10kgしかチーズができないんです。あとの90kgは「ホエイ」という副産物になります。ホエイもチーズと同じで発酵食品なので賞味期限がとても短く、2～3日でだめになってしまう。商品化は難しいんじゃないかなと思っていました。その頃にジェラートを製造している会社の方と出会ったんです。冷凍であれば賞味期限も伸びるし流通もさせやすいということで、アイスクリームを作り始めました。

最初は地元である山形県の酒田市で、ホエイを使ったシャーベットと庄内地域産の生乳を100%使用したミルクアイスクリームから販売を始めました。近くのスーパーに卸したところ、10分で各100個ずつが完売。その15分後には追加の発注が来て…と、とても好評で、地元だけでもこの2種類のアイスで年間1万4,000個を販売しました。地元でこれだけ売れるというのは、やっぱり嬉しかったです。

牛乳屋さんならではの「ホエイシャーベット」や「生乳100%アイスクリーム」。

―すごいですね！大ヒットの要因は？

田村　他社とは違う点でいうと、甘みが少ないのが特徴です。一般的に流通しているアイスクリームは甘すぎるものが多いので、お年寄りが食べにくいことがある。だから、甘みをもうちょっと減らせないかと工夫しました。

今ではアイスの種類がさらに増えて、食用バラを使ったバラジェラートや、地元のお酒屋さんに作ってもらった甘酒を使った甘酒アイスもあります。コーヒー味のアイスは、苦味があるフレーバーと苦味のないフレーバーの2種類があるんです。小さい子どもでも食べられる味があると家族一緒に食べることもできますし、それが家族の笑顔につながっていくといいなと。

コーヒー牛乳アイスは「大人味」も用意。お好きなフレーバーを家族で楽しめます。

―さらにラングドシャやフィナンシェなどのお菓子作りまで。

田村　牛乳屋さんでチーズを作っている会社は、全国で探してもほとんどないんです。山形県では自分が第一人者だと思います。ただ、令和2年2月にモッツァレラチーズの製造・販売を開始したんですが、その1カ月後にコロナが蔓延して…。それまで決まっていたプランが全部振り出しに戻るような形になってしまいました。そして学校給食も止まり、大量の牛乳の在庫を抱えることになってしまった。冷蔵庫に1万4,000本くらいの牛乳が余っていたんですが、消費期限が1週間くらいしかないので、早く売らないと製造したものがだめになってしまう。

そういったときに、コロナの影響を受けた企業としてNHKさんから取材のお話があったんです。本来であればマイナスの部分をあまりメディアには言いたくないんですけど、今回は言おうと思ったんです。助けてくださいって。そうしたら、地元の会社さんや一般の方たちが助けてくれて、2日で完売しました。

正直、地元の方にこんなに助けていただけるとは本当に思っていなくて、とても嬉しかったんです。だからこそ、将来なにか恩返しがしたいと思うようになってきたんです。地方ということもあり、観光業や飲食業などは同じようにコロナの影響を受けて大変な状況になっている。そういったところに追い風になるようなものをいろいろ作りたくて、お菓子など商品をどんどん作っているんです。

ラングドシャにはハートマークやひげマークなどのレアプリントも！

―今後のビジョンや展望もお聞かせいただけますか？

田村　弊社に興味を持ってもらいつつ、たくさんの人に地元地域の観光に来てもらうことが、一番の目標です。

モッツァレラチーズに関しては、あまり直販売をしていません。卸売りがメインです。これは地方創生に利用してほしいという思いがあるからなのです。

田村牛乳がチーズやアイスなどいろいろな商品で有名になっていけば、田村牛乳のチーズを食べられるのは山形県酒田市しかない、じゃあ行ってみようかなと。そんなふうに社名がブランドとして認知されれば、地元の取引企業の方々にも恩返しができるんじゃないかと思っています。

自分もコロナ禍で影響を受けていろんな方に助けられてきたので、今度は観光業の方々の助けになれれば、自分がチーズやアイスを作った意味があるんだろうなと。

地方はやっぱり人口がどんどん減っていて、人口を増やすことはすごく難しいのですが、観光客数を増やすことは可能だと思っています。酒田市にはおいしい食材やいい商品がたくさんあるので、たくさんの方に観光に来ていただき、「酒田市って良かったよね」「また来たい」と言ってもらうことが一番なのかなと思います。

―最後にメッセージをお願いいたします。

田村　おかげさまで弊社のお土産事業はラングドシャやフィナンシェも人気で、マグカップやTシャツ、ガチャガチャで買えるエコバッグなど、いろいろなグッズも展開しています。そういうグッズや、賞味期限の長い商品が県外にもたくさん出ていっている状況なので、田村牛乳に興味を持っていただける機会も増えてくるのではないかと思っています。今後もチーズやアイスだけではなく、もっと楽しめる商品を作り続けていくと思うので、ぜひ注目してください！

―素晴らしいお話をありがとうございました！

「庄内平野のおいしいアイスクリームセット」（アイスクリーム100ml×5個、ホエーシャーベット100ml×5個のセット）
価格：¥3,500（税込）
店名：田村牛乳オンラインストア
電話：0234-22-1414（平日9:00～16:00）
定休日：インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL：https://tamura-milk.raku-uru.jp/item-detail/836787
オンラインショップ：https://tamura-milk.raku-uru.jp/

「モッツァレラチーズおいしい5個セット」（水入れ100g×3個、真空パック100g×2個のセット）
価格：¥3,000（税込）
店名：田村牛乳オンラインストア
電話：0234-22-1414（平日9:00～16:00）
定休日：インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL：https://tamura-milk.raku-uru.jp/item-detail/739374
オンラインショップ：https://tamura-milk.raku-uru.jp/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

＜Guest’s profile＞
田村耕永（株式会社田村牛乳 代表取締役）

1979年生まれ 高校、インテリア専門学校を卒業後、森永乳業グループ日本製乳に入社。1年間の修行期間期間を終えて2002年に家業の田村牛乳に入社。2019年法人化し代表取締役に就任。乳業の他にお土産事業を開始。

＜文／藤原志帆　MC／矢口優衣　画像協力／田村牛乳＞