立山あるぺん村 寿し工房大辻では、ますやぶりを使った寿しを作っていますが、そのなかでも一番人気の「幻のます寿し」。ますだけでなくお米から水まで、富山県産の食材にこだわった寿しが人気の理由。特に脂がのっていて身の厚いますのみを厳選しており、一つ一つを職人による手作業にこだわり作られている、”幻”の名に負けないほど贅沢な一品です。日の丸のような見た目のます寿しは、酢飯の下までますの切り身を巻き込んでいます。今回編集長アッキーが気になった、そんなます寿しの作りの親でもある株式会社あるぺん村 寿し工房大辻 代表取締役の大辻進氏へ取材陣が伺いました。
地元ライターが絶賛する、富山の食材でこだわり抜いた「幻のます寿し」
2024/03/05
株式会社あるぺん村 寿し工房大辻 代表取締役 大辻進氏
―早速会社の成り立ちからですが、お父様の大辻商会は違う会社だったのでしょうか。
大辻 大辻商会は1946年の4月に作られて不動産や改装の仕事を主にやっていました。そのため業種としては全く別の会社といえます。
―そこからあるぺん村 寿し工房大辻がうまれたのでしょうか。
大辻 私は立山というところで生またのですが、1982年6月に立山アルペンルートという黒部ダムを通るルートができました。地元の産業であったため興味があったのですが、立山はみんな素通りしていました。そこで立山に興味を持ってもらうためにも、ドライブインを作りたくて立山あるぺん村を作ったのが始まりです。大辻商会が建築関係の仕事から観光業に手を伸ばして作られました。
―ドライブインは地元の企業など、皆さん個々人でやっていたんですね。
大辻 現在の道の駅みたいなものですが、当時はそういったものが無かったので個々人でやっていました。ドライブインとして素通りされると困るので、トイレ休憩でもなんとか立ち寄ってもらおうと色々と工夫していました。
―当時あるぺん村を作った際は多くの人がお見えになったのでしょうか。
大辻 当時は年間140万人ほどアルペンルートに観光客がきていたため、多くの方に立ち寄っていただけていました。徐々に年間の観光客は落ち着き、コロナ前には80万人ほどでした。ただ、ほとんどの観光客が海外の方だったため、コロナ禍には一気に減少してしまいました。コロナが明けてからもインバウンド需要は落ちていましたが、昨年度は50万人、今年は70万人と徐々に需要も回復してきています。
―あるぺん村が作られてから1994年には寿し工房を開業していますが、なぜ寿しを作り始めたのでしょうか。
大辻 道の駅のように富山県内の海鮮を売っていたのですが、品質のばらつきが大きくイマイチでした。日の丸の見た目をしたます寿しも売っていましたが、身が薄くお米が透けて見えていたり、お米の下まで身で包まれていなかったり満足がいく商品とは思えませんでした。ます寿しは高級品でもあるのでちゃんとした商品を売りたいと思い、1日に10個ほどを厨房で作るようになったのが「幻のます寿し」の始まりです。
日の丸のようにきれいにますが詰められているます寿し。
―作ってみようとなっても仕入れやお米やわっぱ、笹などの仕入れは難しかったのではないでしょうか。
大辻 材料は人脈を辿って各所から仕入れることができました。ただ大量に作ることはできなかったため1日10個という限定販売でした。
―最初は評判としてどうでしたか。
大辻 最初からおいしいと言ってくれる方もいて嬉しかったのですが、やはり満足いただけない方もいました。徐々に作り方も分かってきたので他に負けない味を開発していきました。
―ます寿しは独自のレシピで作っていたのでしょうか。
大辻 独自のレシピでした。元々ます寿しを作っていたわけではないので、知り合いに聞くなどして見よう見まねで作っていました。
―現在ではどれくらい作られているのでしょうか。
大辻 ます寿し以外の商品も増えましたが、「幻のます寿し」が一番生産量が多くヒット商品です。ありがたいことに評判が評判を呼んでいって、徐々に卸先が増えていきました。富山ではます寿しを作っている会社は50社ほどありますがその中でも特にご好評いただけています。ありがたいことに富山のます寿しランキングと検索すると各所で取り上げていただいています。
―富山県産の食材を極力使っていると伺っています。やはりお米も吟味されているのでしょうか。
大辻 お米も富山県産の地元のものを使っています。契約している農家からお米を仕入れて倉庫に蓄えています。さらに自家精米を行っており、精米したてのおいしいお米を使うようにしています。また、米を炊く水にもこだわっており、立山の地下水を使っています。
―お米は何の品種を使っているのでしょうか。
大辻 コシヒカリを使っています。お寿しのシャリとしておいしいように、1年前の古米と新米をブレンドしています。
ブレンドされたシャリは適度な硬さで程よい酸味が絶妙にますとマッチしています。
―お酢にもこだわりはありますか。
大辻 お酢も専門のメーカーにます寿し用に独自にブレンドしてもらっています。ます寿しを作るにも3種類ほどのお酢を使っており、お米に合わせるものとますに使うお酢は別のお酢を使っています。他にも砂糖や塩もます寿しに合うようにブレンドしてもらっています。
―メインとなるますのこだわりは何でしょうか。
大辻 特に「幻のます寿し」で使っているますはいいところだけを使っています。特に脂がのっているおいしいものだけを厳選しており、射水市で桜ますを養殖している組合のますも使用しています。
―幻のます寿しの製法の秘密はありますか?
大辻 やはり使うますの選別は重要です。また、専門的な技術が必要なため仕込みはすべて手で行っております。現在は20人~30人ほどでその作業を行っています。
―消費期限が3日と長くないます寿しですが、作られてからの食べ頃はいつでしょうか。
大辻 だいたい作ってから10時間後が食べ頃です。多くの方は握り寿しに慣れてしまっているので、少し待ってから食べるということに違和感があるかも知れませんが、押し寿しは少し時間が経ってからがおいしく食べられます。ただ、時間が経ってしっかり押されることで米とますが一体になった状態が好きな人もいれば、作り立ててでふわっとしたものが好きな人もいるため、好みの時間で食べるのが一番良いと思います。
炙りのます寿しも、炙りが好きな人からとても人気の食べ方です。半日ほど置いてから炙ると、また違った楽しみ方ができます。
―消費期限が3日というのは色々試行錯誤した結果なのでしょうか。
大辻 何回か調整して3日にしています。当初1日でしたが、それだと廃品ばかり出てしまいます。購入いただいてから発送するとなると、作ってから3日がいいのではと考え、お酢の配合などを調整して3日にしました。
―一般的なます寿しも同じくらいでしょうか。
大辻 他のます寿しも3日が消費期限のものが多いです。やはり2日目くらいが押し具合としてもおいしいです。3日目であれば炙ったほうがおいしく食べられると思います。
―ます寿しは富山で有名ですが、小さい頃から家庭で食べていたのでしょうか。
大辻 小さいときはあまり食べていなかったですね。県内でも富山市内が中心で、江戸時代の頃から献上品として親しまれていたのだと思います。
―ます寿しにはどんなお酒が合いますか。
大辻 私はお酒飲むときはあまりお寿しを食べないですね。ただ、日本酒が合うとよく言われているようです。
―今後は幻のます寿しに続く展開はあるのでしょうか。
大辻 「幻のます寿し」、「幻のぶり寿し」、「幻の桜ます寿し」の3種類の展開を考えています。また、昨今では冷凍で熟成させるというのが流行ってきているので、冷凍寿しを積極的に作っていこうと思います。冷凍にすることで発送範囲も広げることができるため、海外に向けて冷凍の寿しを出そうと思っています。
わっぱの中にしっかりと押されているます寿しは冷蔵で消費期限3日と短いですが、それほど鮮度がよいものという証です。
富山のおいしいお米などの食文化をもっと世界へ発信していきたいと考えています。すでにサンプルは出しており準備は着々と進めています。冷凍のます寿しは解凍すると作りたてを味わえるのが魅力です。
―いつから本格展開を始める予定でしょうか。
大辻 冷凍寿し自体は10年ほど前から作っています。技術やノウハウはあるので、今度はそれを海外に出していきたいです。最初は香港やシンガポールなど東南アジアからだしていきたいと考えています。
―今後の展望をもう少しお聞かせください。
大辻 世界となると様々なハードルがありますが、もっと発信していきたいという思いは強いです。富山の魅力的な農産物や海産物を使った食文化を広げていきたいです。冷凍寿しは世界はもちろん、国内でも発送の時間を考えなくて良いので拡大範囲は広くなります。また、冷凍のほうが美味しく食べることが出来る種類もあり食品ロスの防止にもつながります。世界中の方においしいます寿しをいつか届けたいです。
―貴重なお話をありがとうございました。
「幻のます寿し」
価格:¥2,700(税込)
店名:立山あるぺん村 online shop
電話:076-463-0365(寿し工房大辻立山本店)(8:30~17:00 年中無休)
076-420-4659(寿し工房大辻一番町店)(9:00~17:00 年中無休)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://alpenmura.com/items/5ed2d9be55fa0353d7c068e1
オンラインショップ:https://alpenmura.com/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
大辻進(株式会社あるぺん村 寿し工房大辻 代表取締役)
1947年富山県生まれ。実父経営の大辻商会に入社、1982年株式会社あるぺん村を設立し代表取締役に就任。ドライブイン、売店他、寿し工房大辻のます寿しの製造販売など多方面に注力している。
<文・撮影/masa1018 MC/三好彩子 画像協力/あるぺん村>