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和菓子の本場・京都で温故知新の菓子作り。京都仁王門の「ぬれ八ッ橋 あうん餅」と「黒柿」

2024/03/11

あんこやお餅など、日本ならではの食材を使った和菓子は、近年海外からも注目を集めています。今回、編集長のアッキーが注目したのは、独特の食感の「ぬれ八ッ橋あうん餅」とこしあん入り干し柿の「黒柿」。これらを作る和菓子専門店・京都仁王門を運営する「KYOEIDOカンパニー」代表取締役の樋口展生氏にスタッフがお話を伺いました。

KYOEIDOカンパニー株式会社 代表取締役 樋口展生氏
KYOEIDOカンパニー株式会社 代表取締役の樋口展生氏

―元々はバンド活動をされていたとお伺いしました。

樋口 学生の頃からバンド活動をずっとしておりました。当時はバンドブームといわれるバンドが盛んな時代で、私もそのブームに倣って活動していたのですが、24歳のときにバンドを解散して音楽活動を終えました。(ブームとはかけ離れたライブハウスを中心とした音楽でした)

バンド活動時代、音楽だけでは生活が難しかったので、日雇いアルバイトのような形で大型ミキサー車の運転手をしていました。それもあって音楽を辞めたあとは正式に運転手として建築業界に入り、その間に結婚もしました。ですが、後に離婚を経験し、当時2歳だった娘を引き取り、当時は珍しい父子家庭になったんです。

―運転手から保育士、そして菓子の道へ。

樋口 朝が早く夜も遅い建築業界で仕事をしながらでは、なかなか子育てをする環境にないのでご縁があり保育士にならないかと声を掛けてもらい、ゆくゆくの資格取得を条件に保育士へ転身しました。その後に通信教育で保育士の免許を取得し、8年ほど働いたのですが、金銭的な事情で結果辞めることに。

その後、外資系の日用品メーカーに転職し、そこで流通を学びました。そしてそのタイミングで今の妻と再婚。妻の家業が滋賀県の信楽というところで菓子を作っていたんです。

―義理のお父様の会社に入社され、その後独立されたそうですね。

樋口 義理の父から、「違う仕事をしているのは重々承知だけれど、営業を手伝ってくれないか」と声を掛けられたことがきっかけで、菓子の世界に入りました。

当時は滋賀県の菓子ブランドの営業を担当していたのですが、滋賀県はお土産屋さんの数がなかなか増えないという状態でして。だんだんと、自分の地元の京都で勝負してみたい、会社を立ち上げて自分の手で菓子を作って売りたい、という思いが強くなり、義父の会社から独立する形になりました。元々は菓子に縁もゆかりもない人生でしたけれど、妻との再婚をきっかけに菓子業界に入り、会社を立ち上げるまでに至りました。

―義理のお父様は快く送り出してくださったんですか。

樋口 はい、そうですね。元々義父が所有していた工場をはじめ、義父の会社をある程度引き受ける形になりました。義父は現在82歳ですが、まだまだ現役です。弊社の工場にも技術指導という形で時々手伝いにきてくれています。

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京都市左京区に店を構える、京都仁王門本店。

―会社として大切にしていることは?

樋口 弊社が経営している京都仁王門の店舗では「今日が開店の心」という店舗理念を掲げています。長く続けているとお客様の目線を忘れてしまいがちだけれど、店員1人1人が今日が開店日だという心を持ってお客さんと接していこうという精神です。初心忘るべからずという言葉と類似しているのですが、これは私達の菓子作りにも通ずるものがあります。

独立元の京栄堂も八ッ橋の製造で有名です。私自身はグループ会社として京栄堂の屋号を使いながら、「温故知新」というテーマで菓子作りに挑んでいます。ここでいう私にとっての古きものは八ッ橋になるのですが、より新しい菓子を革新的に作っていきたいという思いから、もうとにかくチャレンジしまくっています。ですから、ほかにはない菓子が弊社にはたくさんあります。

―ぬれ八ッ橋の誕生のきっかけについて教えてください。

樋口 こちらの商品は、八ッ橋と生八ッ橋に次ぐ新たなカテゴリーの八ッ橋を作ることで、いろいろなところに相乗効果をもたらせるのではないかということで開発したものです。

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かたくもやわらかくもない焼き上がりに、餡を挟んで。

初めはサクサクとした食感の八ッ橋のおせんべいが作れないかと考えていて、その流れで独自の配合でしっとりさせることにも成功しました。実は米粉で製造しているのでグルテンフリーなんです。ニッキの香りをふんだんに効かせて、中につぶあんを挟み込み、八ッ橋でも生八ッ橋でもない新たなお菓子として売り出しました。秋は芋餡、冬はりんご餡、春はさくら餡と季節限定のフレーバーも出しており、京都のお土産の新定番を目指しています。

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「ぬれ八ッ橋あうん餅」

―黒柿は歴史のあるお菓子だそうですね。

樋口 黒柿という商品は義父が20年ほど前に開発したものを私が引き継いで販売しています。この菓子にはたくさんのファンがいます。長野県の契約農家さんから年に1回市田柿を取り寄せて、弊社の滋賀工場で全て急速冷凍をかけて保管しています。解凍した干し柿を職人が一つずつ種を取り、中にこし餡の玉を詰めて、羊羹につけて蓋をします。最後に米粉をふりかけるとまた干し柿に見えるんです。

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20年の歴史を持つ黒柿は、干し柿とあんこの上品な甘さがたまりません。

手間がかかっているので価格は少し高いのですが、一度買っていただいた方からのリピーターがとにかく多い商品です。外国の方に購入していただくことも多く、やはりドライフルーツが大好きみたいです。

―日本国内や海外にも積極的に進出されているとお伺いしました。

樋口 香港で2店舗、茶寮という形でお店をやっています。東京の汐留にも贈答品をメインとしたはなれを、京都の嵐山にはわらび餅のテイクアウトをメインとしたお店を展開しています。東京では黒柿シリーズとして、有機のこし餡と和三盆を使った紅柿・白餡を使った白柿を限定販売しています。

私は和菓子は海外に出るべきだと思っています。もちろんお餅・あんこというのは欧米の方にはなかなか受け入れていただきにくい食材ですが…。何年か前に香港で催事があり、弊社のお菓子を全品持って行き何がウケるのかを試したことがありました。そこで唯一行列ができたのが、「ジャパニーズモチ」として販売したわらび餅でした。そうか、あんこはダメでも餅ならいけるのかと思い、嵐山にわらび餅専門店を作ったんです。そこでは生八つ橋の技術を利用した「生わらび餅」を販売しています。

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海外からの観光客に人気の生わらび餅。

―和菓子は海外に出るべきというお考えはどこから湧いてくるのでしょう。

樋口 日本食というものにポテンシャルを感じています。ラーメンや日本独自のカレーも海外からの観光客に人気です。

今後もまた海外向けのフードの展示会に参加する予定です。ただ、今ある商品の押し付けはしたくないんです。もちろん商品を営業として持っていきますが、この時点で要るか要らないかという話をすると0か100かになってしまうので、「何ならいりますか」ということを聞くようにしています。そこで「こういった菓子ならうちで売りたい、食べてみたい」というお声をいただいたら、弊社で頑張って作りたいと思っています。弊社は製造メーカーなので、新たなお菓子を作れます。ヒアリング目的でもありますし、その場でいただいたお声をもとに0から1を作って、新たなお菓子を日本から海外に出していきたいという思いが強いです。

―最後に、今後の展望についてお聞かせください。

樋口 弊社はまもなく新たな事業部を立ち上げる予定です。今考えているのは、おこわやおはぎです。お土産の菓子に特化しているとどうしても賞味期限という壁がありますが、作りたてのおいしいお菓子を提供したいという思いがあり、京都での対面販売を考えています。おはぎは和菓子の原点ですので、それをわたしたちで作っていきたいです。また、今後は黒柿も輸出したいと考えています。東南アジア圏や中国圏の方から人気で、たくさん購入していただいておりますので。

何よりも「古いものを大切にしながら、新しいものを追求する」ことをテーマとしています。決して過去や歴史を忘れているわけではありません。そのなかで、新たな世代や和菓子をまだ味わっていただいたことのない人種の方に向けて、和菓子を発信していきたいという思いがとても強いです。アイデアはまだまだあります。弊社には歴史はありませんが未来はあると信じ前へ前へ突き進んでいくのみです。

―ユニークなご経歴を持つ樋口社長は、アイデアが泉のように湧いてくるお姿が印象的でした。今回は貴重なお話をありがとうございました!

「ぬれ八ッ橋 あうん餅」(10個入り)

「ぬれ八ッ橋 あうん餅」(10個入り)
価格:¥2,052(税込)
店名:和菓子 京都仁王門
電話:075-771–0678(9:00~18:00 火曜日定休)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL: http://kyoto-niomon.com/?mode=cate&csid=0&cbid=2297832
オンラインショップ:http://kyoto-niomon.com/

「黒柿」(6個入り)

「黒柿」(6個入り)
価格:¥3,240(税込)
店名:和菓子 京都仁王門
電話:075-771–0678(9:00~18:00 火曜日定休)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL: http://kyoto-niomon.com/?mode=cate&csid=0&cbid=2297866
オンラインショップ:http://kyoto-niomon.com/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
樋口展生(KYOEIDOカンパニー株式会社 代表取締役)

1970年京都府京都市生まれ。高校卒業後24歳までバンド活動をした後、ミキサー車の運転手・保育士・外資系企業などを経て義父の経営する菓子製造業に従事。2016年に独立し、KYOEIDOカンパニー株式会社を創業。現在に至る。

<文/Kasumi MC/三好彩子 画像協力/KYOEIDOカンパニー>

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