山間の小さな町から日本中にブームを引き起こした卵かけご飯専用醤油「おたまはん」

2024/03/14

あつあつのご飯に生卵を乗せていただく卵かけご飯。シンプルなメニューですが、好きだという人も多いはず。近年はTKGなどとも呼ばれ、アレンジレシピもさまざまに紹介されています。編集長のアッキーが気になったのは、その火付け役の一つとなったと言われている、卵かけご飯専用醤油「おたまはん」です。醤油に出汁などがブレンドされ、奥深い味わいで卵かけご飯を引き立てます。その味のこだわりを製造元の株式会社吉田ふるさと村の代表取締役社長の高岡裕司氏に取材陣がお話を伺いました。

株式会社吉田ふるさと村 代表取締役社長 高岡裕司氏
株式会社吉田ふるさと村 代表取締役社長の高岡裕司氏

―はじめに、社名に由来する吉田町について教えてください。

高岡 吉田町は島根県雲南市で中国山地にあり、9割は山林という自然豊かな場所にあります。林業で生計を立ててきましたが、外材に押され林業が衰退したがために昭和の最初ぐらいからどんどん過疎化が進みました。

また、この一帯を語る上で忘れてはいけないのが、江戸時代に最盛期を迎えた、たたら製鉄です。とくに日本刀の素材として、この一帯で作られる鉄は重宝されました。

しかしそれも、大正末期に衰退。最盛期にはそれこそ何万人とそのたたら製鉄のために、人の行き来があったようですが、今はそれもありません。ちなみに、吉田町の人口は現在、1,500人です。

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株式会社吉田ふるさと村は中国山脈に抱かれた島根県雲南市吉田町にある。

―吉田ふるさと村が誕生した経緯を教えてください。

高岡 雇用を生み出すことで過疎化をストップさせ、地域を盛り上げたいということで1985年に誕生しました。

第3セクター方式で、行政と民間が協力して立ち上げ、交通インフラ、水道管理、そして加工食品の製造販売を事業の3本柱にしています。

私は学生時代から吉田町の外に出ていたのですが、父と先代の社長から吉田ふるさと村のことを聞かされ、ぜひやりたいということで戻り、準備段階から参加しました。

―創業当時の加工食品は、どういうものを作っていたのですか?

高岡 食品の加工を事業内容に掲げたものの、最初は工場も事務所もない状態ですから、地元においしいお米がありましたので、松江市や出雲市などのスーパーの店頭で餅つきの実演販売を行いました。

そこから少しずつ加工食品を増やしていきました。最初は干ししいたけです。原木しいたけを買ってきて、干して袋に詰めて卸していました。その後、商品が増えていきますが、基本的には地元で食べているものと同じものです。例えば漬物、味噌などです。

一貫してこだわっていることとして、天然由来のものだけを使っています。化学合成された保存料や添加物は使いません。それは設立当時からずっと守り続けてきています。

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「おたまはん」も一本一本丁寧に手作業で作っている。

―そしてヒット商品となる卵かけご飯専用醤油「おたまはん」が生まれます。開発の経緯を教えてください。

高岡 発売は2002年です。弊社の取引先に、鶏卵業者さんがいらっしゃいまして、たまたまそこの経営者さんと、弊社の営業担当がお話をしている中で、卵とセットで販売できるような商品を作ってくれないかという依頼を受けたのがきっかけです。

ただ、卵に合うものといっても、なかなか難しい。いろんな卵があり、卵料理もあります。卵とセットで一緒に売れそうなものということで、スタッフみんなで考えて、そして生まれたのが「おたまはん」です。

―「おたまはん」の名前の由来を教えてください。

高岡 弊社の社員が考えました。「たまごごはん」の「ご」をとって、頭に「お」をつけました。すぐに覚えていただける、いい名前がついたと思っています。

―「おたまはん」は卵かけご飯専用醤油の先駆け的な商品になりますでしょうか?

高岡 そうですね、草分けだと認識しています。企画段階では「そんなものあってもしょうがないし売れんよ」というような意見もありましたが、「ほかにないから面白いかもね」と、本当に軽いノリからスタートしました。

素材については大変こだわっています。もちろん、無添加のものばかりですが、まずお出汁には鹿児島県で水揚げされたカツオを使っています。みりんは三州三河の本みりん。醤油は隣の奥出雲町の醤油屋さんに作っていただいた、国内産丸大豆の醤油。木桶でじっくりと熟成させたものです。

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「おたまはん」は厳選素材のみを使って作られている。

―「おたまはん」には関西風、関東風とありますが、最初にできたのはどちらですか?

高岡 最初に作ったのは関西風です。当初は関西風と関東風の2種類を作るつもりはなく、商品名にも関西風とは書いていませんでした。

ところが、弊社にとって大きな市場である関東の方にモニターをしていただいたところ、半分ぐらいの方が「これでは買わない」という回答で「それはまずい」となりました。関東と関西では醤油に対する味の好みが違うということに気付いていなかったのです。関東の方は塩気がやや強めで甘み控えめのものを好みます。

そこで、素材は一緒ですが、配合を変えました。関東風はみりんをちょっと控えめにして、醤油を多めにしたところ、関東の方にもご好評いただけるようになりました。

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赤いキャップが関西風、黒いキャップが関東風。
味比べをしても面白い。

―2005年には「日本たまごかけごはんシンポジウム」もスタートさせていらっしゃいます。

高岡 「おたまはん」への反響を見ていて気がついたのは、日本人の根底に、卵かけご飯好きというのが、根強くあるのだということでした。

「おたまはん」を食べながら、卵かけご飯にまつわるいろんな思い出が蘇ってきましたというお声もたくさんちょうだいし、これは面白いと思いました。

日本人は卵かけご飯のことになると、年齢、立場など関係なく、一緒に盛り上がれます。吉田町を盛り上げたいという思いもあり、卵かけご飯をテーマにみんなで楽しめるシンポジウムを思いつきました。

―シンポジウムの内容について教えてください。

高岡 毎年10月に行い、昨年(2023年)は19回目を終えました。

町内のさまざまなところでイベントを行い、毎年、全国からお客様がおみえになっています。イベントでは、卵かけご飯のレシピや作文、キャラクターデザイン、格調高く論文も募集し、その発表もあります。

第一回目のときには大学の先生も論文を応募してくださり、その内容から卵かけご飯がとても優れた栄養のある食品であることをあらためて知りました。

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「日本たまごかけごはんシンポジウム」のレシピを再現。
しば漬けが味の良いポイントに。

―おすすめの卵かけご飯のアレンジレシピはありますでしょうか?

高岡 卵かけご飯の食べ方に流儀はないというのが私たちの考え方で、それぞれ自分で一番おいしいと感じる食べ方が最良だと思っています。

ただ、おすすめするならば、シンポジウムのレシピはどれも秀逸なので、参考にしていただきたいです。たとえば、第一回目の最優秀作品賞のレシピも良かったです。しば漬けと青じそと卵。それにすだちを絞って「おたまはん」をかけます。すだちの酸味でさっぱりといただけます。

また、私のおすすめは、卵をかける前の熱いご飯に直接「おたまはん」をかけるというものです。そうすると、すごくいい香りが立ちます。その上に卵を割って乗せて、かき混ぜていただくというものですが、ぜひ、お試しください。

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炊きたてのご飯に「おたまはん」を直接かけると、ふわっといい香り。

―ちなみに「おたまはん」は卵かけご飯以外でも使えるのでしょうか。

高岡 要はだし醤油ですから、煮物、あえ物などさまざまな料理にお使いいただけます。だし巻き卵の味付けに使ってもおいしいです。

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「おたまはん」で卵焼きを作ってもおいしい。

―すてきなお話ありがとうございました。

「おたまはん 関東風」(150ml)

「おたまはん 関東風」(150ml)
価格:¥378(税込)
店名:吉田ふるさと村 だんだん市場
電話:0854‐74‐0500(8:00~17:00 土・日・祝日はお休みです)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.2630mura.jp/SHOP/3004.html
オンラインショップ:https://www.2630mura.jp/

「おたまはん 関西風」(150ml)

「おたまはん 関西風」(150ml)
価格:¥378(税込)
店名:吉田ふるさと村 だんだん市場
電話:0854‐74‐0500(8:00~17:00 土・日・祝日はお休みです)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.2630mura.jp/SHOP/3003.html
オンラインショップ:https://www.2630mura.jp/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
高岡裕司(株式会社吉田ふるさと村 代表取締役社長)

1957年、島根県吉田村(現雲南市吉田町)生まれ。1984年から株式会社吉田ふるさと村設立準備に携わり、1985年入社。2002年に、卵かけごはん専用醤油「おたまはん」を発売、2005年10月には卵かけごはんをテーマとした地域イベント「第1回日本たまごかけごはんシンポジウム」を実施。全国に卵かけごはんブームのきっかけをつくった。2007年には日本たまごかけごはんシンポジウム実行委員会が「平成18年度地域づくり総務大臣表彰」を受ける。

<文・撮影/平野智美 MC/三好彩子 画像協力/吉田ふるさと村>

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