鶏肉の中でも日本の在来種の血を50%以上継ぐものとして、鶏本来の旨みや歯ごたえをもつ地鶏。今回アッキーこと坂口明子編集長が気になったのは、とくに運動量が多くて旨みたっぷり、噛んだ時の弾力もすばらしい、福島県川俣町の「川俣シャモ」。その確かな品質とおいしさについて、株式会社川俣町農業振興公社 代表取締役の渡辺良一氏に取材陣がお話をうかがいました。
噛みしめるごとにあふれるジューシーな旨み。ぷりっとした弾力も魅力の地鶏「川俣シャモ」
2024/03/22
株式会社川俣町農業振興公社 代表取締役の渡辺良一氏
―渡辺社長は川俣町ご出身だそうですね。最初から地元の川俣シャモに携わりたいと?
渡辺 じつは家業が養豚業でしたので、最初は養豚のほうの研修をしたいと日本ハイポーという会社に入り、静岡県や宮城県で繁殖等の管理を習得し、地元で農家の指導員をしていました。当時は川俣シャモのことは知りませんでした。しばらくしてご近所の酪農家の方から、川俣シャモの仕事をしてみないかと声をかけてもらい、会社を辞めて地元に就職しようと今の会社に入りました。2年ほどは家業の養豚も並行して続けたのですが、親も年をとって1頭100~120kgもの豚を扱うのは大変。実家でも豚からシャモに切り替えることになりました。初期投資が少なく、生産農家としてスムーズに転向できたと思います。
福島県川俣町の名産、シャモ。運動量が多く弾力のある肉質。
―川俣町農業振興公社では、当初は製造を?
渡辺 製造部員として、お肉を切ったり桜のチップでシャモをスモークしたりしていました。ただ売るのが難しく、上司からは「営業をやれ」と言われて…。一人でコツコツ作るのが好きでしたが、人と話をすることも嫌いではなかったですし、販売する楽しさや直接感想を聞けるという部分もあって、営業の仕事にも頑張って取り組んできました。
―一度川俣町を離れ、戻ってきて地元で働かれた時はどんな思いでしたか?
渡辺 外から川俣町を見ると何もないように見えるのですが、でも帰ってくるとほっとします。他の土地を回ったからこそ、福島県の良さに気づくこともあります。子ども時代から川俣町に育ててもらいましたから、川俣町の事業が良い方向に向かえばいいなと思っていましたし、今もその気持ちは強いです。
―2021年に代表取締役ご就任。コロナ禍でご苦労も多かったのでは?
渡辺 福島県は震災を経験しています。あの時は何とかなるという気持ちで頑張っていましたし、他地域からの応援もたくさんいただきました。ですが、コロナ禍はどこも大変で、自分たちで考えていかなければいけないという思いが強くなりました。
コロナ禍の時期に需要が増えたお取り寄せ。お家に届くシャモ鍋セット。
―お取り寄せが増えるなど社会のニーズも変化しました。
渡辺 お取り寄せの需要が増えたので、それまでシャモ肉は料理店やホテル・旅館に販売することが多かったのですが、家庭用として使いやすい商品を開発し、小売にも力を入れるようになりました。ご家族で食べていただく鍋商品などコロナ禍に出てきた商品も多くあります。これまでチャレンジしていなかった小売店への販売も進めるようにしました。
―コロナ禍が落ち着いてシャモのイベントが再開されたそうですね。
渡辺 川俣を代表するお祭りのひとつ、川俣シャモまつりです。「今年はやらないの?」というお声があり、「今年こそ」という思いで開催され大盛況でした。シャモの焼き鳥をたくさんの方に食べていただいて、ダイレクトに評価がいただけるのもありがたいことでした。
再開されたシャモ祭り。丸焼きも行われ大盛況。
―貴社では創業時からシャモの加工販売を?
渡辺 1987年の設立後、川俣シャモをメインに、ロースハム等の豚肉製品も取り扱っていましたが、川俣シャモ1本でいこうと決め15年ほどになります。以前のシャモは焼くと弾力がありすぎて、焼きものに適さず飲食店では使われにくかったんです。そこで、それまで赤鶏とシャモの二元交配だったものを、もう1種赤鶏を掛け合わせるという品種改良を行なうことで、脂ののりも弾力もよい、よりおいしいシャモになりました。
―もともとシャモは硬いのですか?
渡辺 そもそもシャモは、タイ原産で闘鶏の鶏です。そんな鶏ですから、気性が激しくアスリートのような筋肉質。でも、昔から鍋を好まれる方は多くて、坂本龍馬も暗殺される直前にシャモ鍋を食べようとしていたと言われています。また、池波正太郎さんの『鬼平犯科帳』にもシャモ鍋が頻繁に登場します。
おいしくて体が温まり栄養も豊かなシャモ鍋は、古くから食通に好まれた。
―餌や環境によって柔らかさも変わりますか?
渡辺 そうですね。餌は内容や配合をいろいろ試しました。今はとうもろこしが主体です。また地鶏は飼育面積1平米に10羽以下と決まっていますが、うちでは6羽ほど。品種に合った育て方をしないと旨みがのってきません。川俣シャモは運動量が多くてアミノ酸が増え、旨み豊富です。噛めば噛むほどジューシーな味が出てたまらないです。身は若鶏の柔らかさではなく、ほどよい弾力がありながら、噛みしめた時の肉の切れ具合はシャリっとして食べやすいです。
旨みがのりジューシーなシャモ肉。品種改良により、おいしさアップ。
―販売されているシャモ鍋セットの内容は?
渡辺 シャモの肉と肉だんご、スープ、〆のうどんです。スープはかつお、こんぶ出汁は一切使用せず、シャモのガラで作ったベースで、旨みがありながら脂がなくさっぱりとしています。
冷凍で届く鍋セットには、シャモの肉、肉だんご、
スープ、うどんが入っている。解凍後調理していただく。
―どんな野菜を合わせるのがおすすめですか?
渡辺 ごぼうのささがきを加えていただくと風味が出ますし、仕上げにせりをさっと入れていただくと肉とからまっておいしいですよ。
―すぐに試したいです!ところで肉用鶏として国内で初めてJGAPの団体認証を受けられたとか?
渡辺 これは安心安全で動物に優しい飼育を行なっていることの認証制度です。個人や企業ではなく、うちのように14軒の農家の団体が認証してもらうためには、すべての農家にしっかり取り組んでもらわないといけないので難しかったですね。でも、認証によって生産性や生産意欲が向上し、よりよい川俣シャモが生産されるようになったと思います。
―また地域ブランドとして農林水産省にも認められたそうですね。
渡辺 GI(地理的表示保護制度)といって、土地の名が付いた農産物の登録商標のようなもので、国の保護制度です。ただし地元に根付いて25年以上、品質や生産法も確立しているものに限られていて、登録はより難しいんです。
―川俣シャモをどのような方、どのような時に食べていただきたいですか?
渡辺 一家だんらんや家族のハレの日などに食べていただきたいですね。一度召し上がっておいしいと思ってくださった方が、贈答用として購入しみなさんに広めてくださっています。ふるさと納税の返礼品にもなっているんですよ。
季節を問わずさまざまな具材と組み合わせて楽しめるシャモ鍋。
おもてなしや一家だんらんの日に。
―今後の目標やビジョンをお教えください。
渡辺 当社の理念は「笑顔」。おいしいものを食べると笑顔になり、笑顔は人をねぎらったり安心を伝えたり、いろいろなパワーを秘めています。そんな笑顔の効果を、生産者、従業員、取引先で共有できる取り組みを行なっていきたいと思います。そしてもちろんお客様にもおいしかったと笑顔になってもらえたら。川俣町は今、高齢化や人口減少、過疎化の問題に直面していますが、川俣シャモという地元のおいしいものを通して、お世話になった川俣町の活性化につなげられればと思っています。川俣町のことを知ったり来たりしていただけるように、全国にアピールしおいしさを届けられればと願っています。
―貴重なお話をありがとうございました。
「地鶏屋本舗 川俣シャモ シャモ鍋セット<冷凍>」
価格:¥4,860(税込)
店名:川俣シャモ専門店 地鶏屋本舗
電話:024-566-5860(9:00~17:00 土日・祝日・年末年始除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.kawamata-shamo.com/item/syamonabeset1/
オンラインショップ:https://www.kawamata-shamo.com
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
渡辺良一(株式会社川俣町農業振興公社 代表取締役)
1968年福島県川俣町生まれ。川俣高校卒業後、家業の養豚業を継ぐべく日本ハイポー株式会社入社。繁殖部門等一連の管理などを習得し、地元に戻り肥育豚の生産農家指導員として1992年まで勤務。地鶏(川俣シャモ)の加工販売の仕事の誘いを受け、同年株式会社川俣町農業振興公社入社。ハム、スモーク等の製造加工、営業を経て2021年代表取締役就任。以後全国に向け川俣シャモのおいしさを広めたいと奮闘中。
<文・撮影/大喜多明子 MC/伊藤マヤ 画像協力/川俣町農業振興公社>