京都の西山丘陵で300年栽培されてきた京野菜の一種、京たけのこ。えぐみがなく、肉厚で、白くて柔らかい京たけのこは、刺身にできるほどの柔らかさから「白子たけのこ」とも呼ばれます。今回、編集長アッキーが気になったのは、この京たけのこをふんだんに使った「竹の子ごはん」の素。創業から100年間、農家の方々とともにたけのこの生産と加工をおこなってきた、小川食品工業株式会社の代表取締役社長 小川修司氏にお話を伺いました。
伝統の京たけのこを自宅で手軽に味わえる!創業100年の老舗が手がける「竹の子ごはん」
2024/04/12
小川食品工業株式会社 代表取締役社長の小川修司氏
―御社の歴史をお聞かせください。
小川 創業は1927年です。たけのこの缶詰の製造が始まりだったようです。その後もずっとたけのこの缶詰の製造はしていたのですが、それはたけのこの季節だけでした。それ以外は八百屋など、いろいろな商売をしていたと聞いています。
株式会社となったのは1960年。そのときは「株式会社小川製油所」という社名でした。この名前になったのは、米油の会社として株式会社化したからです。といってもたけのこの缶詰は作り続けていましたし、その後たけのこのつくだ煮も作るようになりました。
そのままだと、製造している商品と「製油所」という社名のイメージが合わないので、社名を「小川食品工業株式会社」に変更したといういきさつがあります。
―幼少の頃から家業を継ごうと思っていたのですか?
小川 はい。我が家は子供の頃から家族一丸となってよく働く家庭でした。たけのこの時期には、父や母に会いたいと思っても工場に行かないと会えません。工場に行くと、父や母には必ず「この仕事をして。手伝って」と言われたくさん仕事を任されました。
最初は手伝いだったのですが、それが仕事になっていきました。私自身、何かやりたいなと思う以前に、「この仕事が当たり前」という世界でずっと生きてきましたので。親が自分を頼ってくれることもあり、家業は僕が継ごうと小さいころから思っていました。その当たり前の感覚に違和感がなかったですし、そういう世界は嫌だとも思わなかったのは幸いだったと思います。
創業者の小川吉太郎氏。創業より約100年、
小川食品工業株式会社は農家の方々とともに育ってきた。
―たけのこの栽培は、300年。そのこだわりは?
小川 京たけのこの栽培方法は「京都式軟化栽培方式」といい、自然に出てきたたけのこは掘りません。土の上に出てくる前、土の中にいる状態でたけのこを掘り上げます。土の中にいるたけのこを掘り当てるには、目印の地表のひび割れしかありません。
このひび割れは、土をきれいにしておかないとわからないのです。私たちの栽培方法だと、土が柔らかくてふわふわな状態なので、その表面にシュッと筋が入った場所を見つけて掘ります。
まるで家の中のようにきれいに地面をならした「たけのこ畑」。
歴史ある栽培方式を続け、手をかけているからこそ、
竹「藪」ではなく「畑」と言う。
京たけのこ栽培のもっとも大きな特長は、わらをひいて土入れをすることです。そもそも新しいたけのこを生む竹の地下茎は、地表を走る習性があります。そこで地面に藁を引き、土をかぶせることで、地下茎の位置を深くします。
そこで生まれたたけのこは、白い状態で地表には出ていません。地表近くまで育つとひび割れができるので、それを掘り出します。白くて柔らかく、おいしいたけのこを作るために、こういうやり方が誕生したのだと思います。
掘り起こすのも熟練の経験が必要。
ただ、このたけのこを掘り上げるのは非常に難しいです。地中がどのようになっているのか見えないので、1本掘り上げるのに熟練の技が必要なのです。京都のたけのこはこのように、世話もしている上、掘るのにも手間がかかるので、とても価値があると思っています。
―京たけのこならではの栽培方法ですか?
小川 京都市の中でも西山丘陵という地域では、皆さん同じように栽培しています。昔、この丘陵にたまたま竹を植えたら、土と非常に相性がよく、うまく広がったのだそうです。しかも、おいしいたけのこが採れるとわかったので、よりよいたけのこを目指そうということで、独自の栽培方法が生まれたのではないでしょうか。
―御社ではたけのこの収穫が終わったら、すぐに茹でていると伺いました。
小川 そこにもすごくこだわりがあります。たけのこは、基本的に掘り上げた状態で流通しますが、これだとお客様に食べてもらうまでに時間がかかるのです。しかし、土の中にいたたけのこが外に出ると、酵素が働き出して少しずつ劣化してしまいます。流通している間に悪くなってしまうのです。
私たちは「お湯を沸かしてから掘りに行きなさい」というくらい、鮮度を重視しています。だから収穫したたけのこを保存しておくのではなくて、1秒でも早くどんどん炊き上げる。酵素はタンパク質なので、温度が70度程度になると失活します。早く熱を通して、酵素の働きを止めてしまえば、それ以上たけのこは悪くなりません。
どんなに収穫量が多くても、必ずその日に処理するということを重視しています。それだけは絶対に曲げません。農家さんがせっかくこだわって、一生懸命いいたけのこを作ってくれているのに、ここで悪くしてしまうと本当に申し訳ないですから。
農家の方が手塩にかけて育てたたけのこだからこそ、
収穫後の作業にも徹底的にこだわっている。
―たけのこを炊き上げるときのこだわりはありますか?
小川 たけのこは水だけで湯がきます。これをすぐに冷やすということが大事。ぬるいままにしておくと、だんだん変質して劣化してしまいます。そこで、茹でてすぐにぐっと冷やすことにより、たけのこのおいしさは保たれます。この作業もすべて手作業でおこなっています。
―「竹の子ごはん2合炊き用2本セット」商品開発のきっかけを教えてください。
小川 生のたけのこは下ゆでが必要です。糠などを使って下ゆでしてから、数時間~一晩放置し、それから味付けをするのは手間がかかります。面倒でなかなかできません。そこで「これでたけのこご飯ができますよ」といえるように、「竹の子ごはん2合炊き用2本セット」を開発しました。
実は以前から、手軽にたけのこを食べていただけるよう、いろいろなたけのこのつくだ煮を作っています。しかしやはり、たけのこご飯を食べたいというニーズがすごく多いとわかってきて、たけのこご飯の素の開発に至りました。
最初は実際にたけのこご飯を作って冷凍したり、ご飯を別で添えたりなど、いろいろな施策をしました。しかし最終的には、お米はご家庭で用意していただき、たけのことお出汁だけを入れて炊飯すればいいという形に収まりました。
お米2合とお水と合わせて炊くだけで、簡単に京風のたけのこご飯を味わえる。
こちらのたけのこは、京都産のものしか使っておりません。グレードは低いものではなく、中程度のたけのこを使っています。私たちはたけのこ屋として、たけのこのおいしさを感じてもらいたいと思っているので、しっかりした食感と上質な柔らかさにこだわりました。
だから値段は決して安いとはいえません。少し高価でも、1度食べたら忘れられない商品、「また買いたい」と思っていただける商品を作りたいという思いで生まれたのが、このたけのこご飯の素なのです。
ありがたいことに、徐々に「おいしかった」とまた買ってくださるリピーターさんが増えています。少しずつですが広がっていってるので、作ってよかったなあと思っています。
京都には「京ブランド食品」というブランドがありまして、弊社の「竹の子ごはん2合炊き用」も認定していただいています。京都にこだわって作った商品だからこそ、京ブランドとして出していいと認定された商品なので、私たちの自信作です。ぜひ一度手に取っていただきたいなと思います。
京ブランド食品のブランドネーム「京都吟味百撰京」に認定された証である京マーク。
―たけのこご飯の出汁のこだわりもお聞かせいただけますか?
小川 食べていただいた方に「京都の料亭さんで食べたときの味だ」と、いう風に思っていただけたら、喜ばれるのではないかと思い、出汁もとてもこだわりました。開発当初は自分たちで昆布やかつお節を買ってきて、出汁を取っていましたが、今は外部から仕入れています。高価なものを仕入れているので、食べていただければ上等な出汁を使っていると感じてもらえると思います。
出汁は昆布とかつおだけ。それ以外は入れていません。中身にも少し昆布を入れています。ベースは昆布でかつおを少し利かせているというような味付けです。化学調味料も使っていないので、出汁の香りをしっかりと感じていただけます。
炊いている最中から出汁のいい香りが部屋中に立ち込める。
ゴロっと大きなたけのこも入っていて、食べ応え抜群。
―今後の展望をお聞かせください。
小川 お話しましたように、京たけのこの生産はとても手間のかかる仕事ですが、後継者問題が非常に厳しいと思っています。後継者が減っていくと、京都の上質なたけのこが希少になってしまい、いつかは誰も食べたことのない野菜になってしまうかもしれません。
そうならないような手立てを考えなければならないと思っています。取り組み自体はおこなっているのですが、効果的なやり方は見つかっていません。
弊社では、冷凍たけのこも製造しています。これを始めたのは、農家の方の売上を上げる目的でもあります。市場に出すしかなかったたけのこを、このような形で売ることで、農家の方々の収入が増えればと願っています。弊社は本当に言葉の通り、農家の方々とともに事業をしているので、これからも一緒に続けていけたらと思っています。
小川食品工業株式会社では日本唯一のたけのこの特殊冷凍も手がけている。
それと、私にとっては京都のたけのここそ、京野菜を代表する野菜だと思っていました。
しかし、10年程前に東京ドームのイベントで出品した際、ほとんどの方が京都のたけのこを知らなかったのです。
こんなに知られていないということは、今後、上手に発信できれば、もっと京たけのこを購入していただけるのではないか、と思いました。そこで、これからも弊社では、広報にも力を入れていきたいと考えています。
―貴重なお話をありがとうございました。
「竹の子ごはん2合炊き用2本セット」(竹の子ごはん2合炊き用2本セット)
価格:¥2,160(税込)
店名:京たけのこ(竹の子)・こめ油(米油)の小川食品 公式オンラインショップ
電話:0120-438-166(9:00~17:00 土日・祝祭日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://takenoko-online.com/?pid=174575042
オンラインショップ:https://takenoko-online.com/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
小川修司(小川食品工業株式会社 代表取締役社長)
1956年京都府長岡京市生まれ。幼少のころから家業である会社の仕事を手伝い、大学を卒業と同時に正式入社。2002年に代表取締役社長に就任。300年続く伝統栽培で育てられる地元銘産の「京たけのこ」と国産こめ糠から抽出した「こめ油」を全国へ広めるため日々研鑽を続けている。
<文・撮影/西村初音 MC/石井みなみ 画像協力/小川食品工業>