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地元由来のボタニカルを使った麦焼酎メーカーのジャパニーズスピリッツ「Yoshida’s CRAFT GIN荒濾過」

2024/04/11

今回、編集長のアッキ―こと坂口明子が注目したのは、国産のクラフトジン「Yoshida’s CRAFT GIN荒濾過」。麦の一大産地・筑後(福岡県)で地元の特産品をボタニカルに採用し、単式蒸留を用いて世界のスピリッツ界に一石を投じ、昨年に世界一の品評会IWSCでシルバーを受賞。多方面から引き合い急増中のジンです。
製造元で、19世紀から操業する麦焼酎メーカーである西吉田酒造株式会社・代表取締役社長の吉田元彦氏に商品が誕生したエピソードやホワイトスピリッツにかける思いなどをうかがいました。

西吉田酒造株式会社 代表取締役社長 吉田元彦氏
西吉田酒造株式会社 代表取締役社長の吉田元彦氏

―子ども時代から家業を継ぐと思っていましたか?

吉田 いいえ。ただ、家は蔵の中にありましたし、母の実家が営んでいるかまぼこ店を、小学生の頃から手伝っていて商売の面白さのようなものを感じて興味はありました。社会人になるまでは親から具体的な話はありませんでしたが、いつの間にか自然と家業を継ぐ雰囲気になっていました。

―大学進学で上京を?

吉田 はい、父も母も東京の大学を卒業していましたので、自分も成長するほど地方を出たい気持ちがあり、高校から福岡市に出て、大学は東京の明治大学に進学しました。

在学中にアメリカにホームステイで1か月ほど滞在し、すっかりその気になって、F1ビザを取得しサンフランシスコの語学センターに入り、入学準備もしていたのですが、留学費用が想像以上にかさむことが分かったため、留学費ぐらいは自分で稼ぎたいと思い、いったん日本で就職することにしました。

帰国した時期には就職活動期間をとっくに過ぎていたのですが、さすがはバブル経済の全盛期でたくさん内定をいただきました。専攻が金融経済でしたので、金融系の内定も多くいただいたのですが、「良からぬ気配」を感じて金融機関ではないなと思い、海外との仕事をしたかったこともあったのですが、結局、食品系の専門商社に就職しました。
この経験は、日本のものを海外に広めたいという現在のモチベーションにつながっているのかもしれません。

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高級感のある木製キャップにテンションが上がります。

―社会人時代のエピソードを教えてください。

吉田 営業部署を希望していましたが、配属されたのは東京・日本橋にある経理部でした。まだWINDOWSが登場する前で、すべて手計算に頼る時代です。

月次決算の時期になると、深夜まで勤務した後、大船の手前にある会社の寮に帰り着くのが夜中の2時。朝は6時半の京浜東北線に乗って8時半から始業。だいぶ鍛えていただきました(笑)。

―家業に入られた経緯をお聞かせください。

吉田 7年勤めて、当時はシステム部門に配属されていたのですが、世間ではIT革命が始まったばかりのころで、情報システム関連の事業が花盛りでした。

いろいろな経営者とも会ってお話をする中で、自分でも何か自分にしかできない仕事をしてみたいと思っていた時、父から体調が悪いので、そろそろ帰ってこないかと話がありました。また当時携わらせていただいた社内システムの構築の仕事もひと段落したということもあって、いいタイミングかなと思い退社して家業に入ることにしました。

退社の際には、せっかくだからと、新規取引口座を開いて、さらにはPBの製造契約までしていただき、今でも良い関係を続けさせていただいています。当時の同僚や先輩方の寛大さには感謝するばかりです。

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コロナショック期に消毒用のアルコールを生産していたのがきっかけで生まれたホワイトスピリッツのジン。

―事業を継いでどのようなご苦労がありましたか?

吉田 1997年に入社したのですが、残念ながら入社直後後からネガティブなことが多くありました。
工場内で事故があり、OEM製品の不良品が大量に発生してしまったのです。余剰在庫を抱えることになり、元居た会社にも協力していただき何とか販売してしまうことができたのですが、販売プロセスをはじめ営業体制に大きな課題を感じた1件です。
が、後で振り返れば悪いことばかりではなく、そのことで気づかされたこともありました。

―それはどんなことですか?

吉田 下請けだけでなく会社の顔になる看板商品が必要だと痛感しました。時代は焼酎に掛かる酒税の大増税に連なる焼酎ブームの真っただ中、とりわけ芋焼酎に一斉に注目が集まっていた頃です。社内にも芋に切り替えようという意見もありましたが、設備をつくり直すのは容易ではありません。

地元でとれる麦を使った焼酎でここまで操業してきたのだから、そこはブレずにこだわるべきだと考えました。
そうして完成したのが麦焼酎「つくし」の白と黒です。大手酒造の麦焼酎は軽いタイプのものが主流なのに対して、つくしはしっかり濃厚な味わいです。これなら芋焼酎にも対抗できるという感触はありました。

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ミントを入れれば、より爽やかにいただけます。

―麦焼酎メーカーの貴社がジンを発売した経緯は?

吉田 コロナショックで売り上げも前年比25%とひどい有り様でしたが、かといって、ろくすっぽ営業に出向くこともできず、起死回生を図って出した策がスピリッツ新商品の開発です。

そのコロナ禍の功罪と言いましょうか、消毒用のアルコールが足りない時期があり、医療用に本格焼酎をさらに精製したものを生産していました。実はそのベースアルコールが「味もおいしかった」というのが、新商品開発の大きなきっかけとなったのです。

酒の種類は世界中どこに行っても通用するアルコールのジンに決めました。ジャパニーズ焼酎といっても海外の方は頭に浮かべるのが難しく、むしろ韓国のソジュなどに知名度で負けてしまいますから。
日本の焼酎に、わかりやすい入り口を作れないかという思いで。そういうわけで「日本人がつくるとこうなりました」というジンにこだわりました。

―特徴を教えてください。

吉田 本格焼酎で培った単式蒸留の技術を用いて、香りだけでなく味わい深いジンに仕上げました。荒濾過の製造技法により、あえて濁りのある仕様です。

ジンとしての個性を発揮し、なおかつ地元周辺で入手できる5種類のボタニカルを採用しました。それには日本有数のお茶産地の加工技術でつくった八女産のフレッシュハーブ、日田杉の中でも特に薫り高い小国杉、名物山川みかんの皮と、名だたる地域の特産品を起用しています。

他の2種はブラックペパーミントとジュニパーベリー。30種類以上のボタニカルをテストして、ブレンドも試しながらチョイスした選りすぐりの5種でもあります。

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少し濁りがあるのが特徴

―それだけでも強いこだわりがありますね。

吉田 そうです。もっと深い背景には、日本の単式蒸留酒が付加価値を得られていない現状があります。世界的に見ると単式蒸留器を使った蒸留酒はプレミアム性が高いため、大抵ウイスキーになったりします。ところがホワイトスピリッツの白いままでプレミアムな単式蒸留酒というのは、実は「日本の焼酎」しかないのです。

もっと日本の焼酎を世界に広めるためにも、メーカーである私たちがその技術を用いたジンを広める意義があると考えています。

―すでに世界の品評会で高い評価を受けていますね。

吉田 はい、おかげさまで世界的な品評会のIWSC2023でシルバーを受賞することができました。欧州最大で最も権威のあるコンペティションの1つとされていますから、努力が報われたと素直に喜んでいます。

現在はインバウンドが活性化して海外の方が多く訪れるさなか、私たちのジンは日本人より海外需要向けに高い評価をいただいているのを感じています。

一例としては、昨年福岡市にオープンした外資系のリッツカールトンホテルですが、そちらの支配人様が当商品を気に入られて「ホテルを代表するジン」としていただいているのはとても光栄なことです。これからも海外に向けていろんな角度から発信していければと思います。

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ご家庭でも簡単につくれるジントニック。ハーブのフレーバーが生きます。

―どんな飲み方がおすすめですか?

吉田 もともと気軽に飲んでいただくために、ジントニックに合わせるフレーバーを意識してつくり始めています。ジンソニックもオススメで、この飲み方であれば家庭でもつくりやすく、なおかつ「このボタニカルでこの味になった」ニュアンスを感じていただけると思います。

レモンやライムを加えれば香りの融合も楽しめます。おつまみにはナッツ類やグリーンオリーブなどが合うでしょう。

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飲みやすくなるジンジャーエール割りも魅力十分。

―商品ラベルに「吉田」の文字が大きく書かれていますね。

吉田 自分たちをさらけ出す「吉田」という名前で勝負したい、そういう挑戦する意味を込め吉田の文字を入れることにしました。もう1つは先代である父の名前が「仁(じん)」と申しまして、ご近所の方がとても気に入っていただいて、それもいいかなと(笑)。親父の顔はつぶせませんし、頑張るしかないですね。

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勝負の証し「吉田」の赤文字。その下にはボタニカルの名称。

―今後の展望をお聞かせください。

吉田 今後の夢は「ジャパンクラフトスピリッツ」というカテゴリーもしくは概念を完成させることです。先にも触れましたが、単式蒸留でホワイトスピリッツをつくる焼酎の技術は世界的に珍しいものです。
その特異性や素晴らしさを伝えるために、日本の皆さんだけでなく世界の人々と共有するシーンをもっと増やしていきたいと思います。

―本日は素敵なお話をありがとうございました。

「Yoshida’s CRAFT GIN荒濾過」(700ml、アルコール40度)

「Yoshida’s CRAFT GIN荒濾過」(700ml、アルコール40度)
価格:¥2,600(税込)
店名:西吉田酒造蔵元直販サイト
電話:0942-53-8180(9:00~17:00土日祝を除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://nishiyoshida.jp/product/product08/
オンラインショップ:https://store.shopping.yahoo.co.jp/nishiyoshidashop/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
吉田元彦(西吉田酒造株式会社 代表取締役社長)

1966年福岡県生まれ。明治大学卒業後、1990年に国分株式会社に入社。1998年、西吉田酒造株式会社に入社。2014年、代表取締役社長に就任。
現在は伝統的な焼酎にとどまらず、日本の蒸留技術・麹文化を広げるため、スピリッツ・ウィスキーなどにも挑戦中。

<文・撮影/田中省二 MC/伊藤マヤ 画像協力/西吉田酒造>

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