森林率約90%にもなる四万十町は、高知県西南に位置し、清流・四万十川の中流にあります。美しい水や自然に囲まれ、様々な農産物が豊富に採れる場所でもあります。今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になったのは、その四万十産のいもを使った焼き菓子の「ひがしやま」とひと味違う「HOSHI IMO」。そのこだわりを製造元の株式会社四万十ドラマ、代表取締役の畦地履正氏に取材陣が伺いました。
四万十川の食材を無添加スイーツに。焼き菓子の「ひがしやま。」と独自製法の干しいも「HOSHI IMO」
2024/04/24
株式会社四万十ドラマ 代表取締役の畦地履正氏
―四万十ドラマに関わった経緯をお聞かせください。
畦地 私は通信関連会社を経て、地元・四万十(しまんと)の農協に入りました。30歳のときに四万十川中流域町村が地域資源を活性化させるために設立した、第三セクターの四万十ドラマに移り、2005年に完全民営化された後、2007年社長に就任しました。
四万十ドラマに入ったとき、社員は私一人。四万十が持つ数々の地域資源を生かした商品開発や販路開拓を行うのが仕事でした。1995年からは有名なデザイナー梅原真さんにプロデュースに入っていただき、いろいろなことを教わりました。
四万十は自分の地元ですので、いいものがあるというのは知ってはいましたが、梅原さんとの出会いで、深く認識させられました。他を羨むのではなく、四万十にある資源の大切さを知ること、その資源をどう磨いていったらいいのかなど、だんだんと本質が分かるようになりました。それが四万十ドラマの商品開発の原点です。
四万十の資源とはつまり、四万十川の清流そのものやイメージ、そして地域の産物の数々、その生み出された背景などです。そんなことをしっかりと梅原さんが教えてくれました。梅原さんとの出会いが私と四万十を変えてくれたと言っても過言ではありません。
四万十川とともに生きる人々や風景そのもの、
田畑やすべての自然、産物……を守るためのビジネスを展開する。
―商品開発の際に大事していることは?
畦地 地域を生かした商品開発をする上で大切なのは、商品の世界観を表現するために、その背景も含めて総合的にデザインし、課題を解決していくこと。トータルデザインという考え方です。
そのためにも、どういうものづくりをするのか、コンセプトを決めました。やはり私たちは四万十川から恩恵を受けていますので、四万十川の清流を守りながら、川に負担をかけないように商品開発をし、販路拡大をしていこうというのが第一。もちろん地域資源である、栗やお茶などを使って商品開発していくわけですが、そのときに、「四万十川に負担をかけないものづくり」というコンセプトに沿って、添加物を使わないとか、オーガニック原料を使っていこうといった構想を盛り込みました。
最初からすべてを叶えることはできませんが、少しずつ実現化しています。たとえば、今回紹介するスイーツには、栽培期間中農薬と化学肥料を使わないさつまいもを採用しています。砂糖も精製されたものではなく、沖縄産さとうきびの原料糖をもとにした本和香糖(ほんわかとう)を使っています。
当社のスイーツには、そういった原材料一つひとつを吟味し、極力オーガニックのものを使い、加工品には添加物を入れない、そんなビジョンを描いています。
四万十ドラマのスイーツには、沖縄産さとうきびの含蜜糖・本和香糖を使用。
コクをもたらしながらもさっぱりとした後口に。
―御社の商品の強みとは?
畦地 やはり、清流・四万十川。その自然のイメージや清らかさは強いと思います。あとは、主な原材料となるいもは農薬や化学肥料を使わないものを使用するという点。そして、生産者のみなさんと強く連携しているという点です。地元の生産者と直接取り引きをしていますので、誰がどんな思いを持って、どういう方法で栽培しているのかをちゃんと理解した上で商品化することができます。
そして、生産者たち自身が自分たちの思いを全国に届けることはなかなか難しいことですが、私たちが代わりに、素晴らしい生産者やその取り組みについて、商品を通じて広く発信することで、生産者の生活を支える一助にも、商品訴求にもつながると考えています。
生産者とともに四万十を盛り上げる取り組みを広げている。
―では、今回ご紹介する商品、「いも焼き菓子ひがしやま。」について教えてください。
畦地 高知県で干しいもというと、さつまいもを茹でたり、炊いたりした後に天日干しした「東山(ひがしやま)」と呼ばれるものを差します。
人参いもという黄金色をした珍しいさつまいもを使うことも多いです。10年ほど前に「shimantoおちゃくりcafé」をオープンしたのですが、そのときにちょうど、いもの生産者から相談を受けたことをきっかけに、この人参いもを使って、東山の形を模した焼き菓子ができないかと商品開発に挑みました。
パティシエの方にもご協力をお願いし、納得のいく商品になるまで1年ほどかかりましたが、人参いものペーストにバターや卵を練り込み、スイートポテトのような味わいの焼き菓子が完成しました。途中、お客様の要望に応えて白あんを入れて食感を変えるなど改良し、順調に販売拡大して契約農家も徐々に増加。商品の鮮やかな色は人参いも本来の色で、もちろん無添加です。
今では弊社の商品の中でもトップ3を誇る人気ものです。通常サイズは約9cm×約4cmで、多くのお客様の「ひと口サイズも欲しい」というリクエストに応えて、2023年にミニサイズ(約6cm×約4cm)が新たにできました。
毎回、人参いもの水分調整を丁寧に行いながら、
こだわりのもっちり食感を出している(写真は「ひがしやま。ミニ」)。
人参いもの皮は紫色で、中はきれいなオレンジ色の希少な品種。
―では次に、「HOSHI IMO」について教えてください。
畦地 こちらは2024年2月から本格販売を開始した、さつまいもだけを使った新作のスイーツです。「赤」は人参いもを使ったもので、濃厚な味わい。「白」はシルクスイートを使い、さつまいもらしさをお楽しみいただけます。どちらも、「いも焼き菓子ひがしやま。」と同様に、四万十川流域界隈の農家と契約を結び、栽培期間中農薬・化学肥料不使用で栽培しています。
いわゆる一般的な干しいもは、皮を剥いて蒸したさつまいもをスライスして、数時間乾燥させるといった製造方法を採用していることが多いと思いますが、当社の「HOSHI IMO」は、さつまいもをまず焼きいもにし、それをペースト状にして冷凍後にカットして1週間ほどかけて冷風乾燥させます。
じっくりと冷風で乾燥させていくので、砂糖などは一切使っていないのに糖度が60度、70度くらいある、とても甘い当社オリジナルの干しいもができました。切り込みが入っているので、そのまま食べても硬すぎず、小さなお子さんから年配の方まで、安心してお召し上がりいただけると思います。トースターなどで軽く炙っても、一層やわらかくなっておいしいですよ。地元産の「しまんと紅茶」との相性もバツグンです。
「HOSHI IMO」はスティック状で1本ずつの個包装になっているので、
カバンに忍ばせて小腹を満たしたり、
仕事や勉強の合間に片手で食べたりもしやすい。
―最後に、今後の展望をお聞かせください。
畦地 今年からは営業力をもっと強化して、海外でも我々の商品を知っていただく機会をつくっていこうと思っています。当社の商品は、どれも原材料にこだわり、無添加でつくっていますので、世代や性別問わず、どんな方にもお召し上がりいただきやすいものだと自負しています。母の日や父の日のほか、敬老の日などのイベントごとに、ご家族そろってお楽しみいただきたいですし、働きざかりの方には仕事中の癒しに、学生さんには糖分補給にしていただけたら、と思っています。より多くの方に愛されるスイーツになったら嬉しいです。
さらに、2024年春以降に農業部門をつくります。高知県は全国でもトップクラスの高齢化率になっていて、農業を継ぐ若い人がおらず、耕作放棄地も増えています。そういった畑を我々の農業部門が耕し、農薬や化学肥料を使わずに栗やさつまいも、各種野菜などを栽培しようという試みです。また、実技と座学で農業も学べる、滞在型研修施設「しまんと分校」の開校も予定していますので、全国から多くの方に是非来ていただきたい。様々な取り組みを通して、まだまだたくさんある四万十の魅力をより一層発信していきます。
―すばらしいお話をありがとうございました!
「HOSHI IMO あか 袋入り(5本)/しろ 袋入り(5本)」
価格:各¥1,080(税込)
店名:SHIMANTO ZIGURIストア
電話:0120-405-532(9:00~17:00 土日祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:
https://ziguri.jp/c/g_pt/pas_hoshiimo_r
https://ziguri.jp/c/g_pt/pas_hoshiimo_w
オンラインショップ:https://ziguri.jp/
「いも焼き菓子 ひがしやま。(4枚)(写真上)/ミニ(6枚)(写真下)」
価格:各¥880(税込)
店名:SHIMANTO ZIGURIストア
電話:0120-405-532(9:00~17:00 土日祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:
https://ziguri.jp/c/g_pt/p_pas_higashiyama_4set
https://ziguri.jp/c/g_pt/pas_hgsym_mini6
オンラインショップ:https://ziguri.jp/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
畦地履正(株式会社四万十ドラマ 代表取締役)
1964年高知県十和村(現四万十町)生まれ。1987年十川農業協同組合に入社。1994年第三セクターの四万十ドラマに入社し、民営化後の2007年同社代表取締役に就任。「四万十川に負担をかけないものづくり」をコンセプトに活動中。高知県地場産業大賞や総務省「地域づくり総務大臣表彰」優秀賞、令和5年度には「全国イノベーション推進機関ネットワークアワード 堀場雅夫賞受賞」など多数受賞。さらに、総務省の地域力創造アドバイザーやふるさと財団地域再生マネージャー、国土交通省稼げる国土専門委員などを務める。京都府南山城村や石川県羽咋市、新潟県阿賀町、直近では山形県庄内町など他府県の地域事業にも携わり、幅広く活動している。
<文・撮影/よしおかまさこ MC/澤水拳太 画像協力/四万十ドラマ>