美食処、京都で洋食店を軸に数々の飲食店を展開する「スター食堂株式会社」。今回編集長のアッキーが気になったのは、京都府・美山町で生産される希少な美山牛乳を使用した同社の「美山牛乳とマスカルポーネのコーンポタージュ」と「カマンベールとけこむ美山牛乳の濃厚クリームシチュー」です。スター食堂株式会社 代表取締役社長の西村裕行氏に誕生秘話などを伺いました。
京都の自然が育む希少な牛乳を使用。「美山牛乳とマスカルポーネのコーンポタージュ」「カマンベールとけこむ美山牛乳の濃厚クリームシチュー」
2024/05/01
スター食堂株式会社 代表取締役社長の西村裕行氏
―現在のお仕事に繋がるような幼少期のエピソードをお聞かせ下さい。
西村 私の父親は料理人で、家でも料理をしてくれる人でした。忙しくてあまり家にいませんでしたし、外食も少ない家庭でした。でもできる範囲で料理してくれたものを私は食べて育ちました。
また、フランスに行った経験のある父と一緒に、家の畑でフランスのハーブや野菜を小学生のころから育てていました。それと合わせて児童文学の「ドリトル先生」(動物と話ができる獣医の物語)にも感銘を受けており、そういった博物学への興味が、大学の農学部への進学に繋がり、現在の仕事に活かされているといえます。
―スター食堂さんは2025年で100周年とのことですが、創業からの歩みを伺えますか?
西村 なにぶん100年前からのことなので推測も入りますが「スター食堂」の名前は、アメリカでレストラン営業の勉強をした曽祖父が創業の際に付けたものです。弊社の社章はチェーンで繋がった星の形で「STAR Chain Store」を意味する「S・C・S」という文字が入っており、夜空の星ほど店をだそうとして「スター」と社名をつけました。
店が一番盛況なときにはお札がレジに入りきらない事もあったそうです。しかし戦後になりますと、レトルトカレーなどが家庭で活用されて戦前ほどの盛況はなくなり、先々代の頃から業態を変更していきました。
現在では洋食屋を中心に時代とお客様の要望に合わせ、焼き肉屋や居酒屋など業態にこだわらない企業展開をしております。
1925年、京極通り錦天神前に1号店を開店。
―今回紹介する商品のひとつ「美山牛乳とマスカルポーネのコーンポタージュ」誕生の経緯をお聞かせ下さい。
西村 こちらは当初「無印良品」さんとのコラボレーションで生まれた商品です。弊社のケーキ業態「京都 クグロフ家」が無印良品内に出店することになった際「何か京都らしい商品を」とご要望がありました。そこで考えたのが、美山牛乳を使った商品です。
美山(みやま)というのは茅葺の民家を残す京都市から少し離れた美しい町で、おいしさに定評のある美山牛乳の産地としても有名です。そこにご協力をいただいて加工食品作りのプロジェクトを始め、最初はソフトクリームを作りました。そこから「もっと美山牛乳を使える商品は?」とプロジェクトが進み、いろいろ考えた結果生まれたのがこのコーンポタージュです。
京都・美山町の特産品「美山牛乳」を使用した2商品。
―「マスカルポーネ」が商品名に入っているのもそそられます。
西村 他社のコーンポタージュとの差別化を図るため、美山牛乳をベースにマスカルポーネを加えて濃厚にし、スペシャルな味に仕上げました。無印良品さんでも好評で、人気商品「素材を生かしたカレー バターチキン」と同じくらいの数を陳列して下さっている店舗も多いです。
弊社としても味に自信を付け、美山からも「ぜひ商品としてここにも置きたい」と引き合いが多くあったので、今回我々独自のパッケージでリリースできるようになったことを嬉しく思っています。
お客様から「もうこれしか食べられなくなった」「マスカルポーネが濃厚でおいしい」「美山牛乳はやっぱりおいしい」などのお声をいただけているのも嬉しいところです。
マスカルポーネがとけこんだ、ひと味違う濃厚なコクを楽しめる。
―もうひとつの商品「カマンベールとけこむ美山牛乳の濃厚クリームシチュー」誕生の経緯は?
西村 こちらは「美山牛乳をダイレクトに使った商品」のコンセプトで作ったシチューです。よく「シチューに合わせるのはパンかご飯か」という論争がありますが、どちらも選べる味わいのものを作ろう、と。白いカレーなどもイメージしつつ、辛い味である必要性も議論した結果「クリームシチューがいいのでは」という結論に至りました。
―生産にあたってはご苦労があったとか?
西村 弊社の要望は「具材を大きくしたい」ということだったのですが、大きな具材をレトルトパックに均一に入れるのはとても難しいそうで、その点で生産技術者の方にはかなりご苦労をかけました。しかし、具材の大きさがこのシチューの売りで皆様に楽しんでもらえる点ですので工夫を重ねてリリースできた次第です。ぜひ、皆様にも具材の大きさを見ていただきたいと思います。
また、京都でずっとお世話になっている、おいしい牛乳を作ろうと努力している美山の方と弊社がコラボし、京都の皆様にこれをリリースできること、大変嬉しく思っています。さらに、お寺や神社だけではない、京都の洋食の歴史も知っていただく機会として、こういったものを全国にリリースできるのも嬉しいことです。
カマンベールの風味がしっかり効いたごちそう感のある味わい。
具の大きさもポイント。
―こちらのクリームシチューを発展させた商品もお考えだとか?
西村 弊社では2022年に「至福のハイシ」というミールキットのクラウドファンディングを行いました。これはデミグラスソースや赤ワインで煮た玉ねぎなどと、おいしくするコツの説明文をセットにしたキットで、皆様には「こうしたらもっとおいしくなった」などの反応も頂戴しつつ楽しんでいただきました。そういう経緯がありますので、シチューに関しても次はミールキットのような、完成品ではない、少し余白のある商品を考えています。
―コーンポタージュとクリームシチューを活用してほしいシーンや、おすすめの食べ方を教えて下さい。
西村 どちらもレトルト商品ですから、お忙しいときに手軽に召し上がれます。コーンポタージュはパンとの相性も良く、食事の内容が少し物足りないときに添えるのもおすすめです。また、サラダやオードブルを食べ、こちらのポタージュを召し上がってそのあとメイン料理を食べるなど、コースのように活用するのも良いと思います。どんなシーンでも使える、TPOを選ばないスープです。
シチューに関してはそのままはもちろん、アレンジしてもおいしく食べられます。たとえばグラタン皿にご飯とシチューを入れてチーズを乗せ、ドリアのように召し上がっても良いですし、手間はかかりますが耐熱カップに小分けに入れ、パイ生地を上に被せてオーブンで焼くのもおすすめです。晩御飯作りを時短しつつ、手軽にごちそう感を出せるアイテムとして活用してほしいと思います。
ご飯にクリームシチューをかけ、
チーズを乗せて焼けば手軽に濃厚ドリアを楽しめる。
―今後の展望についてお聞かせ下さい。
西村 弊社のオリジンは洋食屋ですから「オリジンを洋食屋としたレストラングループ」であることをより明確にしていきたいと思います。現在御幸町の路面店では、デミソースにくぐらせた「どぼづけ丸メンチカツ」、京都高島屋では、実山椒入りのメンチカツ「京丸」を販売しています。こういった商品やレトルトなど、よそ行きではない、気軽に食べられる洋食をたくさん知ってほしいです。
100周年に向けては、スター食堂ブランドをきっちりと立脚しつつ、大人の方でもご満足いただける洋食店の開発を考えています。商品と店舗の両方をさらに磨いていくのがこれからの展望です。
―会社として今後、特に意識していくことは?
西村 ことあるごとに社員に話すのは「変わらないために、変わっていこう」ということです。たとえばハンバーグの配合も、昔と今ではおいしい配合を変えています。同じものを守っていくことも大事ですが、我が社の『同じもの』とは「おいしいと思っていただけること」ですから必要があれば変えていきます。
「変わらない」べきなのは、お客様の享受する「おいしい時間」です。それを変えないために、我々自身はどんどん変わっていこう、進化していこうと、私も社員に話すことで意識を強めています。
―100年という歴史があるからこその意識ですね。
西村 京都で皆様に愛されて100周年を迎えるという自負が料理に反映され、それが評価されれば働いている者の自信になります。「親子4代で来ています」「あの頃から変わらずおいしい」などと言ってもらえると、明日への仕事の活力になるのです。
世の中はどんどん変わっていくのですが、だからこそ変わってはいけないところをしっかりと守り続け、これからも長く続けていければいいなと思っています。
―貴重なお話をありがとうございました。
「美山牛乳とマスカルポーネのコーンポタージュ」(180g)
価格:¥388(税込)
店名:スター食堂オンラインショップ
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.star-kyoto.shop/c/cuisine/rpo001
オンラインショップ:https://www.star-kyoto.shop/
「カマンベールとけこむ美山牛乳の濃厚クリームシチュー」(220g)
価格:¥540(税込)
店名:スター食堂オンラインショップ
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.star-kyoto.shop/c/curry/stew/rst001
オンラインショップ:https://www.star-kyoto.shop/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
西村裕行(スター食堂株式会社 代表取締役社長)
1968年生まれ。学生時代は農学部に在籍し、作物の育成や収穫について広く学ぶ。またフランスをはじめ欧州各地に留学し、香草や西洋野菜など洋食に使われる食材に数多く触れて見る目を養う。この海外での生活を通じて日本の良さを再発見、京都で飲食業を営むうえでの大きな経験と財産を得る。2007年、代表取締役社長に就任。
趣味は武術で師範代の腕前。茶道や書道などの日本文化と揚げ物をこよなく愛する一児の父である。
<文・撮影/ふるとりあやめ MC/高橋知 画像協力/スター食堂>