今回、編集長アッキーこと坂口明子が気になったのは、名作漫画「あしたのジョー」がパッケージになった本格黒毛和牛カレー。赤ワインソースでじっくりと煮込んだカレーは、和牛からしみ出るコクの中にスパイスがピリッと感じられる商品です。そんな「あしたのジョー カレー」を手掛ける東都株式会社 代表取締役社長の東 聡氏に、商品開発のエピソードやこだわりなどを伺いました。
自社製造のこだわり黒毛和牛を赤ワインでじっくりと煮込んだ【あしたのジョー】のビーフカレー
2024/05/13
東都株式会社 代表取締役社長の東 聡氏
―今の会社を元々はお祖父様が開業されたと伺いましたが。
東 はい、祖父が食料品の小売業を開業し、直後に父が代表に就任しました。最初は行商から始まり、その後鶏肉の卸業に。今はなき公設市場の一角で商売を始め、その後、牛肉なども扱うようになりました。現在は百貨店やスーパー向けの肉の総合商社みたいな感じです。1993年に東都株式会社に切り替わりました。
―いつ頃会社を継ごうと思われましたか?
東 正直、継ぐ気はまったくありませんでした。実は、東日本大震災がターニングポイントになったといえます。
それまでにも心の片隅にはあったのですが、大切な人たちが災害にあった際に、なにか援助ができる存在になりたいと思いスイッチが入りました。
―ちなみに、前職はどのようなお仕事をされていましたか?
東 前職は大阪市の公務員でした。当時、家族を養って暮らすためには公務員が一番だという風潮がありまして。
赤ワインや玉ねぎ、はちみつ、
スパイスなどを煮込んだ本格派カレー。
1人前は大満足の200g。
―実際に家業を継がれて苦労されたことはありますか?
東 今もそうですが、弊社は完全に実力主義の会社なんです。なので当然厳しい面も多く、認めてもらうまでに時間がかかりました。
―入社後はどのような思いで仕事をされていましたか?
東 元々が小さい商店から大きな会社になったので、組織力がないし、個人プレーヤーががんばっているような会社でした。それをいかにチームとして動かしていくかということに注力しました。従業員一人ひとりの実力があることはよくわかっていたので、あとは効率化や利益を出すためのチーム力を強化することが必要だと思っています。ただ、最近は売上よりも中身を追求しようということで、極端な話、売上を落としてもいいと話もしているんです。企業努力で中身を整え、いかに効率を上げるかが必要だと思っています。
―従業員の方との印象深いエピソードはなにかございますか?
東 元の会社の体制が体育会系の極致みたいな感じでしたので、会議なんかに時間を使うよりも、作業をさせてくれという現場の声が多かったです。仕組みづくりやチームづくりの大切さがまだ全体に行き渡っていないと感じます。
クミン、ナツメグ、ガラムマサラ、
唐辛子などのスパイスがピリッと効いている。
子どもから大人まで食べられる中辛ビーフカレー。
―ホームページを拝見しましたが、実に幅広く商品を展開されていますね。
東 2004年には関連会社もつくって、馬刺しやローストポークのパック販売なども始めました。おそらくですが、ローストビーフ、馬刺しをカットしてパック詰めしてスーパーへ卸し始めたのは東都が最初じゃないかなと思います。あとは、皆さんご存じのアルミパックのちゃんこ鍋やキムチ鍋なんかは関西一のシェアを誇っていました。加工品やスーパーのバックヤードに必要なお肉系、惣菜などと、どんどん広がっていきました。ほかには居酒屋の串料理などもやっていました。
―やはり一番大きい部門はスーパーへの卸業でしょうか?
東 そうです。鶏肉、豚肉、牛肉のパックや、惣菜売り場に並んでいる豚カツ、唐揚げなどの惣菜類がやはり大きいビジネスです。あとは、学校給食や病院食のお肉のカットなども。ただ、正直、事業を幅広くしすぎた部分もあるので、事業的にダメな部門は断捨離しようかと考えています。
レトルトパウチは湯煎で5~7分温めたら完成。
電子レンジでの温めも可能。
熱々のカレーをたっぷりとご飯にかけて。
―創業当時から変わらないこだわりや思いはありますでしょうか。
東 経営理念の「安心・安全・愛食」です。やっぱりお客様に安心して食べていただけるものを提供するところはずっと変わりません。昨今、食品偽造の問題もありますが、東都は一切そういうことなく、まともにやっています。今は過渡期なので厳しい指導もしていますが、従業員に東都で働いてよかったと言ってもらえる会社になりたいです。
あとはもちろん、おいしいものを提供すること。正直、お客様から味が良いと言っていただけています。それこそ、いろんなスーパーでずっとプライベートブランドとして取り扱っていただけたり、表には出ていませんが、東都が製作に携わっているお客様が唐揚げグランプリを受賞されていたりなどもしています。
―これまで卸を中心にされてきましたが、今回ご紹介いただく「あしたのジョー カレー」は一般消費者向けの商品です。販売の経緯などを教えてください。
東 正直いって、私はこの商品に関して当初、乗り気ではなかったんです(笑)弊社の営業がある展示会で、関連会社の方から「パッケージはあるので中身をつくりませんか?」というお話をいただいて。はじめは原料を納めてほしいというお話だったのですが、その後東都が作ったらどうか、という流れになりました。
せっかくだから日本全国から仕入れがある東都の和牛を使って、お子さまから大人の方まで万人が食べられる中辛のカレーをつくろうということになりました。
―開発にはどれくらいの時間がかかったのでしょうか?
東 とても早かったです。まずは肉の選別から始まり、何十パターンか用意した中から細かく選別して3つまで絞り、最終的に1つ選んだのですが、トータルで半年くらいだったと思います。
―それは早いですね!
東 弊社は肉の知識があるので、話が早かったんだと思います。肉のチームも「この和牛のこの部位を使ったらいいんじゃないか」と意見を出してくれて、気づいたらできあがっていた感じでした。
―「あしたのジョー カレー」でこだわった部分を教えていただけますか?
東 和牛や赤ワインを加えておいしさを追求することはもちろんですが、実は万人が食べられる尖っていないカレーをつくることを意識しました。よほどのブランディングがないかぎり尖ったものを出すのは難しいので、皆さんに平均しておいしいと言っていただける商品をと考えました。やさしく、おいしく食べていただけるカレーです。実際に試食をしていただいた方にも好評でした。
自社で加工した高品質な国産黒毛牛肉を使用。
赤ワインソースでじっくりと煮込んだカレーには肉の旨味が溶け込んでいる。
―元々は数量限定とされていたんですね?
東 正直、このカレーは東都にとってチャレンジです。東都という肉の卸の会社があって、今後一般消費者向けの商品も展開していきたいというなか、こんなこともできますという名刺代わりの商品かなと思っています。味には自信があるので、もっともっと知ってもらいたいです。
―今後の展望をお聞かせください。
東 今後はより冷凍食品に力を入れていこうと考えています。自社の肉を使った冷凍ローストビーフなどもネット販売できたらと。これまでは卸中心でしたが、自社ブランドとしても販売していきたいです。自社で仕入れた和牛を、自社で味付けしてすべてつくっています。これまでの卸と並行しながら、表に出ていこうと。テナントやキッチンカーなどの業態も視野に入れていますし、会社の敷地内で肉のコンビニみたいなこともやれたらと思っています。
―素晴らしいお話をありがとうございました。
【あしたのジョー】ビーフカレー
価格:1箱¥1,000(税込)
店名:東都株式会社 オンラインショップ
電話:0744-42-2469(9:00~18:00 日曜・年末年始除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://tohto117.official.ec/items/73921901
オンラインショップ:https://tohto117.official.ec
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
東聡(東都株式会社 代表取締役社長)
1975年奈良県生まれ。2012年に東都株式会社に入社。2022年代表取締役社長に就任。
<文・撮影/時田涼子 MC/山口優花 画像協力/東都>