いま地元ならではのお菓子が注目されています。今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になったのは、あの長崎で人気のブラックモンブランを珈琲風味のチョコレートにした「長崎珈琲クランチチョコレート」。開発・販売者であり、長崎ならではのお菓子ブランド「九州じげもん街道」を手掛ける、株式会社フルカワ 代表取締役社長の古川洋平氏に、商品開発や商品に対する思いを取材陣が伺いました。
あのブラックモンブランが珈琲風味のチョコレートに「長崎珈琲クランチチョコレート」
2024/05/14
株式会社フルカワ 代表取締役社長の古川洋平氏
―まず株式会社フルカワの成り立ちから教えてください。
古川 わが社は私の母方の祖父と、その兄弟が古川兄弟商会会社としてスタートさせました。その頃は菓子の卸や販売をおこなっていました。そもそも母の実家では、もっと前から飴を作っていたと聞いています。途中で販売は休止し、九州じげもん街道シリーズが出るまでは卸業だけでやっていました。
兄弟で販売区域を別会社として持つこともありましたが、結局株式会社フルカワとして合併し今に至っています。私は2010年に入社し2019年に父の後を継ぐ形で社長に就任しました。
株式会社フルカワは長崎を拠点として菓子を取り扱う創業70周年を超える老舗。
―当時、社長はオリジナル品についてはどう考えていましたか?
古川 僕は賛成でした。でも社内には反対意見もありましたしメーカーさんにも「本当にできるんですか?」と言われたこともあります。特にベテラン社員の方たちはリスクが大きいと考えていたようです。
なので、入社した僕がなんとなくオリジナル商品の窓口をするようになりました。それがフルカワオリジナルブランドの「九州じげもん街道」というシリーズになっていきます。「じげもん」は長崎の言葉で「地元のもの」という意味です。
―この九州じげもん街道ですが、最初はどんな製品を開発されたのでしょうか?
古川 最初は3品を同時に発売しました。まず、今でも一番人気の「チョーコーのかめせん」。そして「長崎温州みかんゼリー」と「五島灘の塩飴」です。
―どうしてこれらの商品が選ばれたのですか?
古川 縁は異なもの味なものといいますが、私の父が九州で開催された会合のとき、たまたま円卓に一緒に座ったメーカーさんたちと協力して作り上げました。
その場で父は3つのメーカ―の方と「四国の醤油を使ったかめせんが、結構売れている」という話になったそうです。
その流れで、自分たちも地元の食材を使ったお菓子を作ろうと盛り上がり、そこからそれぞれの得意を生かして開発されたのが、最初の3品目です。今から12~13年前のことになります。
―こうして始まった九州じげもん街道シリーズですが、最初からうまくいったのですか?
古川 いえ。少し値段が高かったのと認知度が低かったせいか、なかなかうまくはいきませんでした。取引先から「100円で売らないと話にならない」と言われたこともあります。でも発売して13年。売り場は少しずつ増えています。
まだまだ認知度についてはこれからですが「これ、あんたんとこの商品だったんだね」と声をかけられることも増え、地元の人に買っていただけている実感があります。
わが社は、ずっと卸の商売をしていたので、お客様とのやりとりが増えたのはすごく新鮮でした。
―地元で人気なのはどの製品ですか?
古川 話に出てきた最初に発売した「チョーコーのかめせん」と「うちわえびせん」でしょうか。
「チョーコーのかめせん」は、発売以来ずっと人気をいただいています。この商品は地元の醬油メーカーであるチョーコーさんの「むらさき」という醤油を使って、亀の甲羅の形をした厚焼きのかめせんに味付けしたものです。
九州じげもん街道が始まって以来の人気商品「チョーコーのかめせん」。
古川 「うちわえびせん」は長崎・平戸産の特産品うちわえびの粉末を使用したえびせんべいです。うちわえびは長崎の県北の海域でとれる海老で、伊勢海老にも勝る味わいと地元では言われる希少な品です。わが社は、うちわえびの粉末を取り扱っている会社とご縁があって製品化できました。
希少なうちわえびの粉末を使用した「うちわえびせん」。
―うちわえびのメーカーさんとは、どのように縁ができたのですか?
古川 わが社が九州じげもん街道という地元の食材を使ったブランドを持っているということが知られるようになってから「この食材を使ってお菓子ができないだろうか?」という問い合わせが増えました。「うちわえびせん」もその中のひとつです。
わが社には、卸で培ってきた販売網がありますから、うちわえびの煎餅をつくりたかったメーカーさんの作った製品をさばけます。この商品は、第1回全日本海老選手権の最終選考にも残り、好評をいただいています。
―九州じげもん街道シリーズですが、今後の展開はどう考えていますか?
古川 このシリーズは「九州」という名前を冠しています。ゆくゆくは地元長崎だけではなく、九州の地元のものを使いたい気持ちもあります。
ですが、長崎のメーカーであることは大切にしたいとも思います。長崎の方が、地元だからお土産などで地元のものを買ってくれるっていうニーズはありがたいです。それに販売力はないけれど、地元ならではのおいしさを提供している方々とも繋がれれば、わが社の販売網を利用してもらえる。そんな役割も果たしていきたいです。
―今回紹介いただける「長崎珈琲クランチチョコレート」について紹介いただけますか?
古川 九州の人には超有名なアイスで「ブラックモンブラン」というチョコレートクランチバーがあります。今はインターネットで全国にも名前が広がっているようです。
この商品は、その「ブラックモンブラン」を製造している佐賀の竹下製菓さんと大村市にある長崎スコーコーヒーパークのコラボ商品になります。
―どのようにご縁がつながったのですか?
古川 竹下製菓さんは佐賀のメーカーさんで、昔から「鶴の里」っていう商品でやり取りがありました。鶴の里はマシュマロの中に黄身餡が入っているお菓子です。竹下製菓さんの営業は、わが社に縁のある方でした。
―縁があるとは?
古川 元々は「チョーコーかめせん」を販売し始めたときに協力いただいたメーカーさんの跡取りの方です。そこが、火事で廃業になったので、竹下製菓に再就職されました。菓子を取り扱う営業に配属されたので、わが社にも来るようになっていたのです。
―奇遇ですね。
古川 その営業の方から「竹下製菓がブラックモンブランのチョコレートをつくるけれど、OEMの先を探しているがどうか?」という話があった。
OEMというのは、メーカーが他企業の依頼を受けて製品を代わりに製造することです。竹下製菓はブラックモンブランのチョコクランチそのものは自社で販売する製品だったので、別のフレーバーでOEMの商品を考えました。
―それが珈琲なんですね。
古川 スコーコーヒーパークは、日本で最初の観光コーヒー園でわが社の隣にあります。竹下製菓さんと話をしていてコーヒー味がいいんじゃないかと。「近くにあるから、こことかいいんじゃないですか?」と軽い感じでアイデアが浮かびました。
その話をスコーコーヒーパークさんにつなげて、製品化したのが「長崎珈琲クランチチョコレート」です。構想から発売までは2年ぐらいかかっています。
―製品に使われている珈琲はお店で提供されているオリジナルブレンドですか?
古川 豆は一緒だと聞いていますが、粉砕はチョコレート用に変えているそうです。
味については試行錯誤がありましたが、珈琲好きにも満足していただけてお子さんにも楽しんでもらえる絶妙な製品ができたと思っています。売りは食感とコーヒーの風味のバランスです。ブラックモンブランのガリガリ食感と長崎の珈琲の香りがコラボして、珈琲だけでなく紅茶や緑茶などのお茶請けにしてもよく合います。
珈琲だけでなくお茶にもよく合う。
―箱もとても可愛いですね。
古川 箱のイメージはステンドグラスです。これにテーブルを3人が囲んでるイラストがついています。これは長崎の「わからん文化」を表現しています。日本の「和」と中華の「華」そしてオランダの「蘭」が渾然一体となった長崎の独自の文化のことです。
―3人にはモチーフがあるのですか?
古川 はい。真ん中にわが社のキャラクターである「フ~くん」がいて、テンガロンハットおじちゃんがスコーコーヒーパークの社長のイメージ、着物を着ている女性は、竹下製菓さんの社長をイメージしています。
箱はステンドグラスをイメージし、長崎の「和華蘭文化」を表現。
―御社のキャラクターの「フ~くん」ですがモデルがいますか?
古川 もとは私の息子の写真です。DEAN&DELUCAのような、お店のグッズではあるけれどおしゃれな感じで持ってもらえるような方向性でと、妻に依頼し書いてもらいました。
名前は社内で公募し、シンプルにフルカワの「フ~くん」になりました。
―「フ~くん」、今後はどのように展開する予定ですか?
古川 わが社のやりたいことや想い、取り組みなどを、このキャラクターと考え発信していきたいです。可愛くておしゃれな雑貨も販売したいと考えていて、すでにいくつかできています。ゆくゆくは絵本も作りたいです。
フルカワのマスコットキャラクター「フ~くん」は雑貨としても展開している。
―絵本ですか?
古川 はい。例えばスヌーピーには生き方や考え方を語るような場面があり、本も出ています。そのように「フ~くん」もわが社の理念や大事なことを、わかりやすく伝えてくれる存在であればいいなと考えています。
私たちも、社の理念などは日々社員に頑張って共有をしようとはしています。でも絵本として見れたり読めたりするようになればよりわかりやすくなりますし、子どもから大人まで接することができる。私は、お菓子を届ける仕事も思いを大切にする姿勢から良いものが生まれると思っています。だから、そこはやっていきたいです。
―では最後に今後の展望を教えてください。
古川 お菓子業界は変化の時代を迎えています。大手が規模の小さい取引先を切り捨てるということもありますが、逆にその流れを受けて中堅の会社同士が再発見しあって新しいものが生まれる空気がある。わが社にも「提案をしてくれませんか」という問い合わせが結構あるんです。
お菓子を軸に、わが社だけではできないものを生み出せる関係を繋いで広げていきたい。そのなかで、私自身もやりがいを持って楽しんでいこうと思っています。
―今日は貴重なお話をありがとうございました。
「長崎珈琲クランチチョコレート(6本入り)」
価格:¥756(税込)
店名:オカシノフルカワオンラインショップ
電話:0957-55-7005(9:00~17:00 土日祝除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://okashi-no-furukawa.stores.jp/items/5e8c140ae20b041d209d338a
オンラインショップ:https://okashi-no-furukawa.stores.jp/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
古川洋平(株式会社フルカワ 代表取締役社長)
1979年 長崎県生まれ。
2010年 株式会社フルカワ入社
2019年 同社 代表取締役社長に就任
お菓子問屋の強みを生かし、お菓子を軸にした商品企画、サービスに力を入れている。
<文・撮影/桜会ふみ子 MC/三好彩子 画像協力/フルカワ>