今回ご紹介するのは、光食品株式会社の有機野菜を原料にした製品。今でこそ、食材の安全・安心は常識ですが、この会社では1960年代からすでに無添加調味料や有機野菜を使用した製品づくりに取り組んでいました。そのことを知ったアッキーこと坂口明子編集長は、驚きとともに感嘆!製品開発の理念と秘話を、光食品株式会社 代表取締役の島田光雅さんに取材スタッフが伺いました。
有名グルメ漫画でも絶賛された有機野菜や果実で作る安全・安心のソースとスプレッド
2024/05/28
光食品株式会社 代表取締役 島田光雅氏
―光食品の社名の由来をお聞かせくださいますか。
島田 当社は1946年に私の父、島田利雄が創業しました。1964年に東海道新幹線「ひかり」が運行を開始し、一番速い新幹線の名前と当社の社名が一緒だということで、「超特級ヒカリソース」という合成添加物を一切使わないソースを発売しました。父は良い食品を作って社会に貢献することを目指していましたので、添加物を加えて製造することが当たり前の時代に、無添加のソースを作ったのです。当時としては画期的な商品だったと思います。
その後、1974年に有吉佐和子さんが書いた『複合汚染』という本がベストセラーになりました。添加物については関心がありましたが、農薬のことまでは気にしていなかった父は、この本を読み、ソースの原材料である農産物の安全を考えるようになりました。そして、「農薬を使っていない野菜・果実を探してこい」と私に命じました。私は大学を卒業して入社したばかりでした。
―ちなみに社長は早くから会社を継ごうと思っていらしたのですか。
島田 私は小さいころは体が弱くてよく病院に行っていましたが、中学に入学して卓球部に入りまして、その学校はかなり厳しいトレーニングをするので、自然に健康になりました。中学生のときは四国で団体で優勝したり、高校生のときはシングルで四国で3位になったりしたので、強豪の大学から誘われたりもしました。でも、自分の実力と将来のことも考えて卓球の道はあきらめ、食品を学ぶ大学を目指しました。そのときに父の跡を継ごうと気持ちが切り替わりました。
光食品の自社有機農園でも原材料を栽培している。
環境に負荷をかけない農業を目指す。
―さて、無農薬栽培の野菜農家は見つかったのでしょうか。
島田 なかなか見つかりませんでした。農薬を使わない農法だと作物に病気が発生したり虫が来たりしてそれらが周囲の農地にも広がりますので、農家の方も周囲の目を気にして、お願いしても誰も聞いてくださいませんでした。たまたま紹介してくださる方がいて、有機の農法で作っていらっしゃる方と出会いましたが、それまでに2年かかりました。挫折感ばかり味わっていた2年間でしたね。周囲の人にいろいろ批判されたりして、嫌な思いもしましたよ(笑)。
まだ有機JAS制度(環境に負荷を与えずにつくる農法を認定する制度。2000年制定)もない時代でした。
―商品開発はどのように進められたのですか。
島田 私は大学で食品の勉強をしていたこともあり、消費者の方たちと一緒に頻繁に畑を見に行っていました。するといろんなことが見えてきました。作業を見ていると、見映えの悪い作物を除けているんですね。「これはどうするのですか」と聞くと「規格外なので安く売る」という返事でした。せっかく無農薬でつくっているのに、もったいないと思い、畑の作物に合わせて商品を作ることにしました。
それまではソースとケチャップだけの商品構成でしたが、そこから作物の量に合わせて商品を開発し、品目が増えていきました。実際に畑に足を運んで畑を見たからできたことなので、苦労した2年間は無駄ではなかったと思いました。
―それにしても1960年代に無添加や有機農法での商品開発を手掛けていられたのには驚きます。
島田 ひとえに父の思いがあったからです。父は戦争に行っていて、戦友のほとんどを亡くしています。戦地から帰った後、これからは社会貢献をしたいと、だれもが振り向かないなか、「いつかは無添加の製品が受け入れられる日が来る」という思いで商品を開発していました。その後、食品の安全に関心が寄せられるようになり、いわば、父の思ったことに世間が後で追いついてくる状況になったということでしょうね。
―安全・安心な食品メーカーのパイオニアとして事業を振り返っていかがですか。
島田 農家さんの余剰作物に合わせて商品を作るという形態で事業を行なってきて、売上も年々増えています。
どうしたら安全でおいしい商品になるか考えて作るのは楽しいですし、生産者と消費者の両方に喜んでいただいているというのが私の一番の生きがいです。
いわゆる営業という部署がなく、営業的なことは社長である私が1人でやっています。そういう点ではユニークな会社だと言えるでしょうね。
消費者の方とお話する機会が多く、こちらの思いを理解していただき、意見も伺える顔の見える関係がおもしろいと思っています。消費者の方から「おかげで安全な食品が手に入りました」などお礼のお手紙やメールをいただくことも多く、それは社内に掲示しています。食品の安全に関心があって入社した社員も多いので、モチベーションアップにもつながっています。
―グルメ漫画「美味しんぼ」にも登場しているそうですね。
島田 作者の雁屋哲さんは商品を使っていただいていたようです。その後、取材の申し込みがあり、実現しました。今でも雁屋さんは当社の商品をお使いだとご本人から伺いましたよ。
光食品の工場は環境保全型工場で、
ここからの排水は工場のそばを流れる吉野川の水質よりもきれいと言われている。
―今回ご紹介くださる「ヒカリ有機ウスターソース」はどんな商品ですか。
島田 有機JAS制度ができて、この規格に合うソースとして最初に作った商品です。有機野菜・果実を原材料の50%ほど贅沢に使ったウスターソースで、もちろん野菜・果実は100%有機農法で作られています。調味料(アミノ酸等)と保存料は入っていません。醸造酢はアルコール不使用で、国産有機米100%の有機純米酢と有機りんご100%の有機純りんご酢です。ほかに食塩は天日乾燥の原塩、しょうゆも有機本醸造、カラメル色素や酵母エキスも使用しないなど、すべての原材料にこだわっています。
カラメルを使わずソース自体にしっかりした味がついている
「ヒカリ有機ウスターソース」。
―野菜や果実の甘味、うま味を主体にしたウスターソースですね。
島田 果実にみかんを使っているのも特徴です。当初、有機栽培のりんごはなかなかなくて、りんごを入れずに作りました。すると父から「おいしくない」と言われ、困っていたときに有機栽培でみかんを作っている方を知りました。見ると、そのみかんはヤノネカイガラムシのせいで外皮の表面が真っ黒になっているのですが、外皮を剥くと中身は綺麗で糖度も酸味もあっておいしく、ちょうどりんごと似た働きをしてくれます。そのみかんでソースを作ると父も納得してくれました。ソースの材料にみかんを使っているメーカーは、当社のほかに1~2社なので、珍しいですね。
有機ウスターソースは料理に風味をつけて味を引き立てる。
同社の「有機ゆずフルーツスプレッド」をトッピングした
ヨーグルトとともにいただいても。
ゆずの皮がたっぷり入った「有機ゆずフルーツスプレッド」は海外でも人気。
―「有機ゆずフルーツスプレッド」はどんな商品ですか。
島田 この商品は国内とともに海外でも人気があります。砂糖を使わず、国産有機ゆずと海外産有機ブドウ果汁で甘味を出しています。砂糖類を使っていないのでジャムの定義から外れるためスプレッドとしています。ペクチンなどの増粘量を使えば安定的に製造できますし、原材料が少量で製品化できるのですが、この商品はゆずの皮から抽出される天然のペクチンを使って粘度を出しています。低糖度でやさしい味わいのスプレッドです。
―おすすめの使い方を教えてください。
島田 パンに塗ったりお菓子づくりに使ったり、また、プレーンヨーグルトにのせてもいいですね。
ゼリーやゆず茶にしてもおいしいです。味噌を混ぜればゆず味噌になるなど、幅広く使えます。
ジャムのようにトーストに塗るほか、お湯を注げばゆず茶に。
味噌と混ぜれば簡単にゆず味噌ができる。
―御社が今後目指していることをご紹介ください。
島田 消費者の方を裏切らないような良い商品を、今後も作り続けることです。安全な食品製造を次の世代に渡したいと思っています。そのためには、アメリカやEU諸国でのオーガニック食品への需要は高いので、輸出に力を入れマーケットを維持したいと考えています。また、当社の商品は特に成長期のお子さんにお召し上がりいただきたいのですが、どうしても有機食品は高額になりがちです。若い子育て世代の方にもご購入いただける価格を目指して、商品開発をしていくのも目標です。
―本日は有意義なお話をありがとうございました。
「有機ウスターソース(250ml)」
価格:¥453(税込)
店名:厳選有限会社
電話:088-636-2332(祝日を除く月~金曜日 13:00~17:00)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.gensen.co.jp/?md=96&fc=MTAxMDAwMDAwMDE=
オンラインショップ:https://www.gensen.co.jp/?md=2
「有機ゆずフルーツスプレッド(260g)」
価格:¥669(税込)
店名:厳選有限会社
電話:088-636-2332(祝日を除く月~金曜日 13:00~17:00)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.gensen.co.jp/?md=96&fc=MTEwMDAwMDAwMzk
オンラインショップ:https://www.gensen.co.jp/?md=2
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
島田光雅(光食品株式会社 代表取締役)
1952年徳島県生まれ。広島大学を卒業後、光食品株式会社へ入社。1999年に代表取締役に就任。
<文・撮影/今津朋子 MC/白水斗馬 画像協力/光食品>