商品ごとの特徴を探るなかで、今回、編集長アッキーが注目したのは、各地にさまざまな商品があり、お取り寄せで食べ比べをする人もいる、「ちりめん山椒」と「釜揚げしらす」。素材を選ぶ目利きの力が違うと評判なのが、高栄水産株式会社です。プロの眼に加え、安心安全を大切にした衛生的な生産設備にもこだわった商品づくりについて、同社代表取締役社長の高田竜成氏に取材陣がお話をうかがいました。
目利きの力と衛生管理が整った工場。贈っても安心の「ちりめん山椒」「釜揚げしらす」
2024/06/21
高栄水産株式会社の代表取締役社長 高田竜成氏
―創業はいつですか?
高田 1926年(昭和元年)で、今で100年ほどですね。創業以来ずっとちりめん、いかなご製品に携わっています。初代は漁にも出て加工業もしていたそうですが、2代目からは加工専業です。
―代表取締役社長に就任されたばかりですね。子どもの頃から継ぐおつもりで?
高田 高校を卒業して家業に入りましたが、幼い頃からこの仕事をするんだと祖父にも言われていましたから、他の道はないというつもりで過ごしてきました。中学時代から仕事を手伝い、忙しい時は有無を言わさずという状況でしたから、家業は朝が早くて夜が遅いとか、どういう仕事かわかりましたし、これでうちは稼いでいるんだということも理解できました。
―入社されて30年ほどですか。後を継ぐプレッシャーはなかったのですか?
高田 30年前は魚も獲れていましたが、徐々に減ってきていて、将来豊かな海なのか不安もありました。ですが、子どもの頃から人手が足りないのはわかっていて、自分がやらないと、という気持ちがありましたし、良いものを作るために何億という設備投資をしていましたから、誰かがやらなければという強い気持ちがありました。
―入社後すぐに買い付けの修業を?
高田 いかなご、しらすの買い付けに、当初は見習いとして祖父について入札場に行って勉強しました。こういう色の魚は仕上げるとどうなるかとか、いくらで売れるとかを見て学び、30年経った今は自信を持っています。
社長をはじめベテランの目利きが浜で買い付け。目利きの力でより良い商品に。
―社長業のほうはいかがですか?
高田 まだ何もできていませんが、3代目である父が会長、私の弟が専務、3人で役割分担をしながら力を合わせて頑張っていきたいと思っています。
―他社との違いやこだわりについて教えてください。
高田 ここ6~7年はしらすが安定して獲れて、安定供給ができているということで、私どもの目利きや衛生面、炊き上がり具合といったところを、市場関係者から高評価をいただいて大手量販店との取引が進むなど、うちは堅調に進んでいます。一度つながったお客様を離さないように、素材の品質を安定させ、良い商品を作り続けていくことにはこだわっています。
―約100年の中で変わらないポリシーは?
高田 良い品を作りたいというのは常に根底にあります。ただし、良い品物を作るには良い原料を買ってこないといけないわけです。それについては、私どもでは地元淡路島の育波漁港や北部の岩屋、神戸の垂水、姫路の妻鹿などおもに4つの漁港に行っているのですが、買い付けのメンバーが各浜に行って情報を交換しながらとにかく良いものを揃えるようにしています。原料が大事ですから、浜に行くメンバーの目利きの力を上げるように頑張っています。不純物の多い原料は、機械である程度なんとか処理できても、やはりきれいな原料にはかないません。
―目利きに力を入れて?
高田 私と会長、専務、社員の4名でそれぞれ浜に出向き、仕入れている状態です。お取り寄せの小売りで販売している商品は、買い付けた中でもピカイチのものを選んでいます。
―良いことをうかがいました!目利きの力というのはどのように磨くのですか?
高田 最初は手探りの状態ですが、自分で買ったものが市場でいくらで売れるかとか、利益が出るかなとか、買って失敗したとか、そういう経験を積み重ねて自信が持てるようになってきます。また、たとえば1万円の入札をしようとして、他社が1万2千円だとそれを上回ろうとすると利益がなくなるかもしれない。他社の価格を上回りながら、絶対落とすつもりで入札したり、入札しなかったり、流れによって考える。損をすることもありますが、それも含めて目利きの経験です。
きれい!みずみずしさが伝わってくる。
目利きが情報交換しながら不純物が少なく色が白い
“べっぴん”の素材を仕入れる。
―商品の「釜揚げしらす」について教えてください。
高田 かつてはスーパーの店頭に並ぶのは、ちりめんじゃこが多かったのですが、近年は「やわらかい=おいしい」という風潮で、水分量が多くてやわらかいしらす製品が好まれています。そういう時代に合わせて、私どもも「釜揚げしらす」の製造に力を入れ、いまはちりめんじゃこの生産量を超えています。商品の強みとしては、うちは製造設備の中に塩分を3%に抑える自動機械が入っていて、健康志向に対応しています。
おすすめ商品の「釜揚げしらす」。塩分や菌の調整が最新設備で行われ安心。
―最新の製造ラインを?
高田 衛生面では菌検査もできる設備もあり、菌数が少なく長持ちする商品が作れます。菌ではないですが、不純物が混ざっていると商品のランクとしては下がりますから、機械と目視で取り除くようにもしています。水洗いにマイクロバブルを使ったり、コンピュータカメラ搭載の選別機で不純物を取るなど、費用をかけて製造ラインを最新のものにかえて、ニーズに合う商品を作っています。
設備競争に負けると、大手の仕事が他社に行ってしまうのです。不純物だけでなく、劣化を防ぐために、朝買い付けたものをできるだけ時間を置かずに煮沸できるよう、うちでは他社の倍の2ライン体制で加工しています。煮沸の順番待ちをさせない、劣化させないんです。数千万もする機械ですが、今年も導入して製品力アップをはかります。商品の見た目は他社製品とあまり変わりませんが、そういう努力を続けることで、ほどよい塩分、不純物の少なさなどお客様から評価をいただくことができます。衛生面でのこだわりも強く、機械を毎日1~2時間かけて掃除し清潔にしています。
―味の工夫は?
高田 時代のニーズに合わせて低塩にすることでおいしさが増しています。辛すぎるともうひと口となりませんからね。甘めで作っています。
ぴちぴち、ぷりぷり、「釜揚げしらす」と醤油があれば、
ご飯が何杯でも食べられそう。
―「ちりめん山椒」の味付けは?
高田 私の母が味付けを始めまして、京都のちりめん山椒とはひと味違います。京都などのちりめん山椒は、乾いたちりめんじゃこを水に戻してやわらかくして、調味液にからめているだけ。ハードな食感で甘みが少ないものが多いですね。私どもは浜から生で仕入れてきて、甘めの調味液に入れて炊いているので、口あたりがソフトですね。また、一般の商品とは異なり、安定剤やPH調整剤や防腐剤も使っていませんので、安心して食べていただけます。
一度買われたお客様が贈答で使われて、その先でまた贈答にということも多く、贈られる時も安心なんです。炊く時は、何分で仕上がるというのがなく、大きさや鮮度を見て、色つやを見極めて仕上げる。熟練の人間が一商品、一商品、見極めながらやっています。小さなお子さんが食べても安心できる品質です。
浜で買い付けた生の素材を甘めに炊いた「ちりめん山椒」。
ソフトな食感で食べやすい。
「釜揚げしらす」も「ちりめん山椒」も、
シンプルにご飯に合わせるのが一番。おいしさがしみじみ伝わる。
―おすすめの食べ方は?
高田 私は温かいごはんにしらすをのせて、そこに牡蠣醤油をかけて食べるのが好きですね。「ちりめん山椒」はおにぎりの具材にしたり……。シンプルな食べ方が一番おいしいと思います。
―今後の展望や目標は?
高田 今年はいかなごについては漁が1日で終わるなど、スタートでは予想外のこともありましたが、3代目が広げて整えてくれた事業を引き継いで頑張っていけたらと思います。新しいことを始めるのは、それからですね。
―貴重なお話をありがとうございました。
「ちりめん山椒」(300g 化粧箱)
価格:¥1,300(税込)
店名:高栄水産株式会社
電話:0799-84-0396(9:00~17:00 日・祝日・年末年始除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.takaesuisan.com/shop/products/detail.php?product_id=4
オンラインショップURL:https://www.takaesuisan.com/shop/products/list.php?category_id=0
「釜揚げしらす」(300g 化粧箱)
価格:¥750(税込)
店名:高栄水産株式会社
電話:0799-84-0396(9:00~17:00 日・祝日・年末年始除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.takaesuisan.com/shop/products/detail.php?product_id=1
オンラインショップURL:https://www.takaesuisan.com/shop/products/list.php?category_id=0
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
高田竜成(高栄水産株式会社 代表取締役社長)
1976年兵庫県生まれ。高校卒業後18歳の時に家業である高栄水産株式会社に入社。いかなご、しらすの買い付けに携わり、30年の経験を重ねる。2024年2月に同社代表取締役社長に就任。
<文・撮影/大喜多明子 MC/澤水拳太 画像協力/高栄水産>