今回、編集長アッキーが注目したのは、女性蔵元ならではの感性が光る日本酒、等級の高い山田錦100%で作られた「スギヒメ 純米酒」です。一般的には男性に人気の大辛口ですが、女性にも人気。同商品を製造・販売しているのは、山城屋酒造株式会社。女性向けの日本酒「純米大吟醸 Princess」も手がけています。代表取締役、宮﨑朋香氏に取材陣が伺いました。
「私は甘くない」辛口なのに女性に人気の日本酒「スギヒメ 純米酒」と、女性蔵元の挑戦
2024/06/26
山城屋酒造株式会社 代表取締役の宮﨑朋香氏
―創業400年以上と伺いました。
宮﨑 弊社は、毛利氏の家臣だった安部氏が1611年に創業しました。その後、1894年に宮﨑家が引き継ぎました。引き継いだ私の先祖は神主をしていたそうですが、お酒が大好きで神主を辞めたそうです(笑)。
しかし、1975年に仕込み水の質が悪化して、自社醸造を中断してしまいました。このときから、他の酒蔵に酒造りを委託するようになります。
そして、2011年に私の弟が社長になりました。昭和初期に作られていた「鴻城乃誉(こうじょうのほまれ)」を復活させました。
今も山口の水とお米で、酒蔵の方たちと一緒に作っています。
―そして、社長に就任されました。
宮﨑 社長を務めていた弟が、2018年に病気で急逝したためです。周りには言っていませんが、弟が病気になった時点で、心づもりはしていました。
社長就任以前の私は、ギフト専門店で接客業をしていました。そのため、酒造りも経営もわからなかったのです。
しかし、400年続いた山城屋酒造の歴史を途絶えさせたくない、山城屋酒造を守りたい。そして、従業員を路頭に迷わせるわけにもいかない、そんな気持ちで引き継ぎました。
商品のことを知るため、自ら田植えや酒造りに参加した。
―未経験から社長就任は、大変なことが多かったのでは?
宮﨑 最初はかなり苦労しました。会社の内部事情もお金の流れもわかりません。そして、最初の年に社員が3人辞めてしまい、1人しか残りませんでした。
なにより、お客様に商品や会社のことを聞かれても、何も答えられなかったのが悔しかったです。そこで、商品のことや現場のことを知ろうと、農家さんと田植えから一緒に行いました。すごく腰が痛くて、大変さが身に染みました。酒米を作ってくれる農家さんには頭が上がらない思いです。
―そんな状況の中、次々と新商品を開発されましたね。
宮﨑 社長就任の翌年である2019年に「純米大吟醸 Princess」(以後、プリンセス)を発売しました。開発のきっかけは、経営のことで相談していた県職員の方に「経営革新をやってみないか」と言われたことです。
まだ経営のこともわかっていない状況なので迷いましたが「いずれ女性向けの日本酒を作りたい」と思っていたため、開発することにしました。
私、実は日本酒が苦手であまり飲めません。(笑)そのため、苦手な人でも飲めるように開発しました。甘口にして、女性がもらって嬉しいパッケージにしたのです。
おかげさまで、発売後1年はとても順調でした。続いて2020年に「スギヒメ 純米酒」も発売しました。そのタイミングで、新型コロナウイルス感染症のまん延による、自粛がはじまります。
自粛ムードが落ち着くまで、お酒がまるで悪いもののような扱いになり、売れませんでした。しかし、就任したてのどん底よりは全然ましだと感じていたため、頑張れました。
美しいパッケージが目を引く、女性向けの日本酒「純米大吟醸 Princess」。
使えるギフトBOXも嬉しいポイント。(720m限定)
―「スギヒメ 純米酒」は、どのような経緯で開発したのですか。
宮﨑 プリンセスは女性がターゲットの商品で甘口ですが、お店に来たお客様に「辛口はないのか」と言われていました。そこで辛口を作ろうと開発したのがスギヒメです。ターゲットはお酒に慣れた男性で、大辛口にしました。
しかし、発売したら女性に人気です。パッケージ・見た目がいいと、感想をいただきます。味も辛口の割に後口が柔らかいため、辛口初心者向けになっています。飲み口すっきりで、ぴりっと辛口、後味は柔らか、そんなお酒です。
飲み方は冷やでも常温でも、熱燗でもいけます。また、和菓子に合います。山口県の銘菓「外郎(ういろう)」ともよく合うと、お客様が教えてくれました。
―漢字で「杉姫」という商品もありますが、違いは?
宮﨑 「杉姫」は、字面に男性らしさがあったため、次はひらがなにしようと思っていました。しかし、辛口の商品にひらがなは合わないと感じました。カタカナで「スギヒメ」にしたところ、尖った字なので辛口に合うと感じたのです。
また、赤いパッケージも辛さを表しています。キャッチコピーは「私は甘くない」です。
同じ辛口でもスギヒメが軽やかで、杉姫はコクのある味わいとなっています。
「スギヒメ」はさまざまな食事にも合い、特に和菓子と合う。
―お酒造りのこだわりを教えてください。
宮﨑 スギヒメ・プリンセス・鴻城乃誉は、山口市のお水とお米で作っています。杉姫は山口県産のお米です。代々地元の原材料でお酒を造っており、これからも続けていきます。
酒米は山田錦を使っていて、化学肥料不使用です。特に、プリンセス・スギヒメ・鴻城乃誉の3種類は、等級の高い山田錦を100%使っています。
また、プリンセスの720mlには、お酒を飲んだ後でも使えるギフトBOX入りもあります。自分へのご褒美や大切な方へのプレゼントにご利用ください。
地元の山口が大好きな宮﨑氏は、山口を盛り上げるプロジェクトにも参画している。
―山口の地元商店街を盛り上げるためのプロジェクトを行っていますね。
宮﨑 山口が好きで、自分の庭のように感じています。どこに行ってもいい場所で、落ち着きます。商店街の人とふれあうことも楽しいのです。
しかし、商店街に来る人が減っています。私は子どもの頃に商店街に来ていたので懐かしく感じますが、今の子供たちは来る機会がありません。商店街に来る機会を作りたいと考えています。
そこで、弊社の隣の空き店舗を活用するプロジェクトを立ち上げ、レンタルスペースにしました。地域の方々に利用していただいたり、弊社のイベントを行ったりしています。
―今後のビジョンを教えてください。
宮﨑 酒蔵をもう一度再興したいと考えています。2024年度で大学4年生になる息子がいますが、2年前から、冬休みに酒蔵で修業しています。酒造りが楽しいそうです。
もしかすると数年後、息子が職人となり、酒蔵を復活させられるかもしれません。
―息子さんとの酒蔵復活、夢がありますね!貴重なお話をありがとうございました!
「スギヒメ」(720ml)
価格:¥2,145(税込)
店名:山城屋酒造
電話:083-922-5757(10:00〜18:00 水曜定休)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://sugihime.jp/products/sugihime_junmai
オンラインショップ:https://sugihime.jp/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
宮﨑朋香(山城屋酒造株式会社 代表取締役)
1973年山口県生まれ。山口銀行に入社し結婚を機に退職、主に主婦をしていたが、2018年社長を務めていた弟が病気のため急逝。400年続いた山城屋酒造の歴史を途絶えさせたくない、山城屋酒造を守りたい気持ちから、一念発起して主婦から同社代表取締役に就任。
<文・撮影/林本直 MC/伊藤マヤ 画像協力/山城屋酒造>