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伝統製法の生酛造りを守り続け、国内外から高く評価される大七酒造の高級純米酒「純米生酛CLASSIC」

2024/07/10

今回、編集長アッキーの目に留まったのは、福島の純米酒「純米生酛CLASSIC」。伝統的な日本酒の製法である「生酛造り(きもとづくり)」を続けている数少ない酒蔵が「高級純米酒」という新しいジャンルを切り開く逸品。大七酒造株式会社の代表取締役社長 太田英晴氏に取材陣が伺いました。

大七酒造株式会社 代表取締役社長 太田英晴氏
大七酒造株式会社 代表取締役社長の太田英晴氏

―江戸時代に創業し、当時の製法を続けていると伺いました。

太田 弊社は1752年に創業しました。270年以上の歴史があり、私は10代目です。日本酒は元来、生酛造りで造られていました。生酛造りとは、1700年頃に確立した伝統的かつ正統な醸造法です。

しかし8代目の祖父の頃、明治政府が簡便にお酒を造れる醸造法の山廃酛(やまはいもと)、速醸酛(そくじょうもと)などを開発しました。そして、これらの近代製法を普及させる事業を行ったのです。祖父も簡便な近代製法を試しました。

祖父は近代製法の軽いお酒では納得できず、理想の味を追求するには生酛造りが不可欠と判断しました。飲みごたえがあり、味わい深く洗練されているお酒を造るには生酛造りが必要だったのです。

高度経済成長期には、さらに簡便な製法が普及しました。全国の酒蔵から生酛造りが消えて行く中、弊社は生酛造りを守り続けています。現在、生酛造りは、一時は日本で数件にまで減少していましたが、近年また復活しつつあります。生酛造りでないと、できない味わいがあります。

―伝統的な生酛造りと、近代製法の違いを教えてください。

太田 生酛造りは微生物の生存競争の中から、いい酵母を育てていくのが重要なポイントです。生存競争を勝ち抜いた酵母だけが残るので、とても強い酵母になります。低温にも強く、栄養が少ない状況でも元気に発酵します。

一方で近代製法は、お酒の酵母が育ちやすい環境で素早く培養するのが特徴です。

生酛造りのお酒は高級ワインのように、熟成させればさせるほどおいしくなります。そのため弊社では、完成してから1年~数年、熟成させたものを販売しています。味わいがまろやかになり、深みが出るのです。

近代製法は鮮度が重要です。そのため完成してすぐに商品化しますが、時間が経つにつれて劣化します。

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生酛造りを行う酒蔵は、手間が多く時間がかかることもあり減少してきた。
270年以上続けてきた大七酒造は文化的にも希少な存在。

―生酛造りの第一人者として高い評価を得ています。

太田 弊社は近代製法が普及する中でも生酛造りを続けてきました。1928年には昭和天皇陛下御即位式典の御用酒に選ばれました。そして、1938年の第16回全国清酒品評会では最高首席優等賞(全国第1位)を獲得したのです。

また、全国新酒鑑評会史上はじめて、伝統技法の生酛造り純米醸造で金賞を受賞しました。

生酛造りの伝統を大切にしながら、独自に開発した超扁平精米技術、日本初の無酸素充填システムなど革新的な取組みも行っています。さらに、新たな和釜の鋳造や木桶仕込み専用蔵の建設、酒蔵⽂化の復活継承など、伝統の深化にも努めています。

2008年には弊社の精米部長だった尾形義雄が、2016年には現杜氏の佐藤孝信が「現代の名工」の表彰を受けました。精米と醸造の両部門で「現代の名工」を生んだ酒蔵は、弊社のみです。

―世界でも高い評価を得ているとか。

太田 私が10代目に就任してからは、海外市場の開拓に力を入れました。簡便な製法で造られた日本酒は酒質が軽いため、重厚な高級ワインには太刀打ちできません。しかし、生酛造りなら匹敵できます。生酛造りにさらに価値を感じて、力を入れてきました。

現在は欧米やアジアの20以上の国々に輸出しています。G8の洞爺湖サミットの乾杯酒、欧州の王室晩餐会、各国の高級レストランなどに採用されています。

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「高級純米酒」という新しいジャンル確立を狙う「純米生酛CLASSIC」。
うま味が強く、重厚で深みがある味わい。
あっさり・すっきりとした純米大吟醸とは大きく異なる。

―紹介していただく「純米生酛CLASSIC」は、純米大吟醸ではないのですか?

太田 日本酒の消費者や生産者の多くは、純米大吟醸が日本酒の頂点だと考えています。次に純米吟醸があり、ピラミッドのように上に行くほどいいもの、というイメージの方が多いでしょう。それでは、日本酒が純米大吟醸だらけになってしまいます。

(大吟醸は精米歩合50%以下・吟醸は精米歩合60%以下。精米歩合とは、お米を削って残った割合を指す。精米歩合40%なら、お米を60%削って残った40%を使ってできたお酒。精米するほど雑味が消える。また、米と麹だけを使って造ったお酒を純米酒という。)

ワインの世界では、フルーティーな高級白ワインもあれば、フルボディの重厚な高級赤ワインもあります。日本酒のように画一的な評価ではなく、さまざまな評価基準があるのです。そのため、さまざまな料理に対応できます。

純米大吟醸ばかり追い求めては、味わいの幅を狭めてしまうでしょう。メインディッシュのお肉など、力強いお酒に合わせられる高級日本酒も必要です。そこで「高級純米酒」というジャンルを確立したいと考えています。

その取り組みの1つが「純米生酛CLASSIC」です。

―「純米生酛CLASSIC」はどのような日本酒ですか?

太田 「純米生酛CLASSIC」は、お米の旨味を前面に出しています。兵庫県特A地区産の山田錦を使いました。(兵庫県特A地区では、最高品質の山田錦が取れる)また、通常の生酛造りのお酒以上に長く熟成させることで、味わい深くしています。

常温で大ぶりのグラスで飲んでいただくのがおすすめです。また、お燗でもおいしく飲めます。

乳酸発酵しているため、バターやクリーム、ヨーグルトなどを使ったクリーミーな料理にとても合います。旨味が深いため、出汁を使った煮込み、鍋、ブイヤベースに合わせるのもおすすめです。力強いので肉料理全般にも合います。

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自作することが多いおとそを、プロが4年9ヵ月かけて開発した。
薬草酒でありながら、うま味と深みを強く感じられる逸品。

―「大七の七福おとそ」はどのようなお酒ですか?

太田 おとそとは、屠蘇散(とそさん)と呼ばれる数種類の生薬を日本酒やみりんに漬けた薬草酒です。元旦に飲むことで「1年間の邪気を払い健康に過ごす」という意味合いがあります。

正月に飲む習慣がある家庭の多くは、屠蘇散だけ買ってきて自作します。そこでプロのメーカーが作るおいしいおとそを提供しようと考えました。

おとそを作るためにはみりんが必要です。そしてみりんを作るには焼酎が必要です。そのため2015年に、焼酎から作りはじめました。できた焼酎を3年熟成させたあと、もち米と麹を投入して、みりん風味のリキュールを作ります。これも1年熟成させました。

また、さまざまな生薬を取り寄せて試し、高野山で作られた生薬を選びました。とても爽やかでえぐみがなかったのです。大七にちなんで7種類の生薬を選び、色々なブレンド比率を試しました。

そこに弊社の最高級酒である「生酛純米大吟醸雫原酒」を添加して完成したのが「大七の七福おとそ」です。開発に4年9ヶ月かかりました。

「大七の七福おとそ」を飲んで、最高のお酒で1年をはじめていただきたいと考えています。

―今後の展望を教えてください。

太田 高級純米酒という新ジャンルの確立は、いまだ途上にあります。大七が提唱する高級純米酒が当たり前に理解されるように、これからも頑張ってまいります。共感者を増やしたいです。

世界市場も1つの転換点を迎えていると感じています。日本酒のメーカーが海外の人に日本酒を勧めるのではなく、海外の人が日本酒を求めてくれるようになってきました。

また、海外に行くたびに、世界が「うま味」に注目していると感じます。あらゆるアルコール飲料の中で「うま味」をもっとも表現できるのは生酛造りの日本酒です。生酛造りの日本酒は世界の大舞台で、ワインの脇役ではなく中央に立つ存在になると思っています。

その日のために大七は、人を育てて匠の技を継承し、生酛造りを続けていきます。そして、現代のお客様が喜ぶ形で提示できるよう、おいしさに磨きをかけ続けます。

―貴重なお話をありがとうございました。

「純米生酛CLASSIC」(720ml)

「純米生酛CLASSIC」(720ml)
価格:¥1,850(税込)
店名:大七酒造株式会社
電話:0120-099-077(月~金曜日の9:00~16:30)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://secure.daishichi.com/item/223.html
オンラインショップ:https://secure.daishichi.com/

「大七の七福おとそ」(300ml)

「大七の七福おとそ」(300ml)
価格:¥3,300(税込)
店名:大七酒造株式会社
電話:0120-099-077(月~金曜日の9:00~16:30)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
オンラインショップ:https://secure.daishichi.com/
※当商品は11月から発売予定です

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
太田英晴(大七酒造株式会社 代表取締役社長)

1960年福島県二本松市生まれ。福島高等学校、東京大学法学部卒業後、大七酒造株式会社へ入社。1997年より10代目として代表取締役社長に就任。福島県酒造組合二本松支部・支部長、二本松商工会議所副会頭、福島日仏協会理事長、など様々な役職を兼務。海外市場の開拓と、純米らしいうま味、力強さをとことん追求した「高級純米酒」という新たな新ジャンルの確立に注力している。

<文・撮影/林本直 MC/津田菜波 画像協力/大七酒造>

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