広島県福山市の虎屋本舗は、江戸時代より銘菓「虎焼」を販売する伝統ある老舗。でありながら、たこ焼きやカキフライにしか見えない「そっくりスイーツ」も展開するユニークなお店でもあります。今回編集長のアッキーが気になったのは「カキフライそっくりな柿ケーキ」と、小豆あん・コーヒーあんのどら焼きをセットにした「虎焼&大人の虎焼」。取材スタッフが株式会社虎屋本舗 代表取締役社長の高田海道氏に開発エピソードなどを伺いました。

株式会社虎屋本舗 代表取締役社長の高田海道氏

―虎屋本舗の17代目当主である高田社長。創業からの歩みをお聞かせ下さい。

高田　弊社は江戸時代初期から「髙田屋」として京都や兵庫で染物屋や廻船問屋を営んでおり、1620年に福山の地に移ったとき菓子匠として創業しました。その後1750年に、今回ご紹介する虎模様のどら焼き「虎焼」を8代目当主が考案し、それを機に屋号を「虎屋」と改めました。

現在の虎屋本舗は、天皇陛下にも献上した「虎焼」などの伝統菓子に加え、「はっさく大福」や「そっくりスイーツ」など幅広いお菓子を販売しています。

―ユニークな「そっくりスイーツ」は先代が開発したものだとか。

高田　「そっくりスイーツ」は先代である私の父が「たこ焼きにしか見えないシュークリーム」を開発したところから始まりました。毎年の創業祭の新商品としてたこ焼きそっくりのシュークリームを販売したところ、子どものお客様が大変喜んだので、以降も「うな重そっくりなミルフィーユ」や「チョコっと餃子」など種類を増やしていったのです。

お客様を喜ばせるために様々な試みをするのは、弊社の代々受け継がれる理念です。私自身も、瀬戸内の離島などで子ども達と一緒にお菓子を作る出張教室を自分の代から始めています。郷土文化の継承に貢献した成果が認められ、2019年には外務省「JAPAN SDGs AWARD」を虎屋本舗として受賞いたしました。

「そっくりスイーツ」シリーズの先駆け。
チョコソースや抹茶をかけた「たこ焼きにしか見えないシュークリーム」。

―今回紹介する「カキフライそっくりな柿ケーキ」について教えて下さい。

高田　「カキフライそっくりな柿ケーキ」は広島県のテレビ番組「ミヤゲキングダム」との共同開発で2024年3月に発売したお菓子です。ミルクと広島県産レモンのムースにカットした干し柿を入れて食感に変化を出し、細かくしたカステラ生地をパン粉のように周りに付けています。カキフライ用の惣菜容器に入っており、見た目はカキフライにしか見えないと驚かれる商品です。

見た目はカキフライなのに、食べると爽やかなムースケーキの
「カキフライそっくりな柿ケーキ」。

ムースケーキの弾力もカキフライの食感そっくり！
カットした干し柿は「牡蠣」と洒落がかかっており、食感のアクセントにもなっている。

―タルタルソース風クリームも付いていますね！

高田　最もこだわったのはこのタルタルソース風クリームです。カスタードクリームと生クリームに白桃やあんず、ピスタチオを入れ、タルタルソースそっくりの色味と質感が出るよう仕上げました。「カキフライそっくりな柿ケーキ」は冷凍でお送りしますので、解凍前なら日持ちするのも使い勝手の良い点です。

白桃やあんずの粒々感とピスタチオの緑色で
タルタルソースの質感をリアルに表現。

―今回紹介するもう一つの商品「虎焼&大人の虎焼」セットの「虎焼」について教えて下さい。

高田　「虎焼」はアカシア蜂蜜や瀬戸内産の卵を使用したカステラ生地に、北海道産小豆で作る自家製の粒あんを挟んだどら焼きです。カステラ生地を焼くときに紙を敷き、剝がすことで表面に虎模様ができます。カステラ生地の甘さと粒あんの甘さに一体感が出るよう、バランスを考えて仕上げました。

1750年に考案されたものですが、昔とは砂糖や小麦粉の質も変わっていますので、当時のレシピにこだわらず改良を重ねています。ただ「重めで満足感のあるどら焼き」というコンセプトは変えていません。

しっとり食感のカステラ生地と、粒感のしっかりした奥深いあんこが
互いを引き立て合う「虎焼」。

―コーヒーあんの「大人の虎焼」の開発エピソードや味わいについてお聞かせ下さい。

高田　「大人の虎焼」は先代当主が「虎焼」の販路を広げるために考案したものです。思い切って苦い味にしてみようと、コーヒーやブランデーをあんこと炊き上げ、ジョークで「R20指定」のコンセプトを付けました。実際はブランデーのアルコール分は飛んでいるので、お酒を飲めない方でも大丈夫です。

あんこと合わせるコーヒーにはエスプレッソを抽出したパウダーを使用し、生地にはカラメルを入れて少しダークな色にしました。控えめな甘みに苦みがしっかり効いた、甘いものが苦手な人にもおすすめのどら焼きで、リピーターも多い商品です。

ブランデー香るほろ苦いコーヒーあんが味わい豊かで、
ケーキを食べているような深い満足感。

―今後、実現したい企画などはありますか？

高田　一つは、もっと瀬戸内らしい地場に根付いたお菓子を考案し、販売したいと思っています。もう一つは、現在行っているお菓子教室の発展として、瀬戸内でしかできない体験のパッケージツアーを考えているところです。船に乗り、牡蠣を食べ、宿に着いたらお茶席を設けてお菓子作りをするような、お菓子だけではない多様な文化を体験できる空間を作っていけたらと願っています。

―瀬戸内の文化を継承したい思いを一貫してお持ちなのですね。

高田　「お取り寄せ」はその土地の味を知る重要なツールですが、知ったことで「この土地に行って、このお店に寄ってみよう」と思っていただくのがやはりベストです。そのためには、お菓子の先にある瀬戸内の空気や風景までをいかに連想できるかが大切になります。お取り寄せできるものと、お取り寄せできない文化体験などの両方を提供することに、菓子屋らしい「なにか」があるのではと感じています。

―本日は素晴らしいお話をありがとうございました。

「カキフライそっくりな柿ケーキ」（5個入）
価格：¥1,000（税込）
店名：創業400年の和菓子屋 虎屋本舗
電話：084-954-7447（9:00～17:00 土日祝 年末年始除く）
定休日：インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL：https://www.tora-ya.co.jp/i/20010-11
オンラインショップ：https://www.tora-ya.co.jp/

「虎焼&大人の虎焼」（10個入）
価格：¥1,880（税込）
店名：創業400年の和菓子屋 虎屋本舗
電話：084-954-7447（9:00～17:00 土日祝 年末年始除く）
定休日：インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL：https://www.tora-ya.co.jp/i/30002-10
オンラインショップ：https://www.tora-ya.co.jp/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

＜Guest’s profile＞
高田海道（たかた かいどう）（株式会社虎屋本舗 代表取締役社長）

1987年広島県に生まれる。2009年に早稲田大学政治経済学部を卒業後、不動産会社や議員秘書などの職業を経て2013年に家業の株式会社虎屋本舗に就職する。2018年にはグロービス経営大学院にてMBAを取得。離島などでの出張菓子教室を精力的に実施して伝統文化の継承に貢献し、2019年に外務省「JAPAN SDGs AWARD」を受賞する。2021年、東京オリンピック聖火ランナーのタイミングで当主を交代し、第17代当主となる。

＜文／ふるとりあやめ　MC／三好彩子　画像協力／虎屋本舗＞