「からし」は、料理にアクセントをつけられる日本伝統の薬味です。今回、編集長アッキ―こと坂口明子が気になったのは創業100年を超える老舗からしメーカーの「千代田からし」。和からしの魅力や使い方について、チヨダ株式会社 代表取締役の抱井麻理氏に取材陣がお話をうかがいました。
室町時代から愛される薬味を追求。老舗メーカーが作る粉末タイプの和からし「千代田からし」
2024/07/11
チヨダ株式会社 代表取締役の抱井麻理氏
―会社の沿革を教えてください。
抱井 1917年にからし粉の商店として創業し、1959年に「千代田からし本舗」という名で法人化しました。からしを主軸に唐辛子・胡椒・わさび・ラー油といった辛いもの全般を取り扱う方針となり、1985年にチヨダ株式会社へ改名した次第です。創業者である祖父いわく、製粉つながりで当初はきなこや上新粉も扱っていたそうです。物資不足となった戦時中に「千代田はからし」と原料を割り当てられ、事業を一本化したと聞いています。現在は手軽に使えるペースト状や小袋入りのからしも好評です。
―原料の仕入れ先は?
抱井 からしの原料はアブラナ科の植物である「からし菜」の種です。花が咲いたあとにできるサヤから種を取り出してからし粉に加工します。日本国内での収穫が難しくなったことから、1959年以降はからし菜の栽培に最適なカナダからの輸入が9割となり、契約栽培という形でお取引が続いています。種の色味や粒の出来については日本基準のグレードに沿って生産されます。からし粉に関しては濃すぎる黄色ではなく、からし菜の花ならではの「和からし色」にすることが弊社のこだわりです。
搾油して油臭さをなくした種をからし粉に使うのですが、搾った油は工業用の油として販売しています。からしには抗菌作用があり、ぬか床に入れるとカビが発生しにくくなることから、種の皮を活用した「ぬかみそからし」も開発しました。
―からしの種類について。
抱井 からしの種は「オリエンタルシード」「イエローシード」「ブラウンシード」の3種類です。辛みが強いオリエンタルシードは練りからし、辛みが弱いイエローシードはフレンチマスタードに適しています。イエローシードを配合したブラウンシードはオリエンタルシードに似た辛みがあり、あらびきマスタードに使用されます。
弊社では昔ながらの粗めの「和からし」に対して、メッシュを細かくした練りからしを「洋からし」と分類しています。他社様は鼻にツンとくるものを「和からし」、あまり辛くないものを「洋からし」と分けることが多いようです。
―和からし「千代田からし」の特徴は?
抱井 2023年に「ジャパン・フード・セレクション」のグランプリを受賞した和からしです。水で溶いても粒感があり、風味が素早く立つことが特徴で、「室町時代から使われてきた伝統的な薬味」というイメージを崩さないことを心がけています。
チューブタイプはとても便利ですが、雑味がなくからし本来のフレッシュ感を楽しめる和からしも魅力的です。和からしのスペシャリストは「納豆用にゆるく溶く」「固めに溶いてとんかつに載せる」といった使い分けをします。主役にはなれないけれども粋で味のある名脇役として、弊社ではからしによる「味な未来創り」をテーマとしています。
―和からしの使い方について。
抱井 和からしは水やお湯で溶いて5分ほど置くことで、酵素が活性化して辛み成分が出てきます。「粉が1、水またはぬるま湯が2」のイメージで溶いてからご使用ください。お湯の温度は決まっていませんが、高温の方が辛みを早く引き出せます。残ったからしは密封した上で冷蔵庫に入れていただくと2~3日ほど保管可能です。ビタミンCを含むレモンなどをしぼってから練り直すと風味も復活します。
初めての練りからしに挑戦。ぬるま湯を加えてすぐに香り立った。
―おすすめの食べ方は?
抱井 納豆に加える場合はネギやたれと納豆を混ぜたあとに和からしを足すと、辛みがしっかりと出ておいしくなります。おでんには少しゆるく溶いた和からしがおすすめです。おでんのだしとからしが混ざりコクが出て、最後に飲むつゆが絶品となります。
京都では白味噌仕立ての味噌汁に少量のからしが乗っています。和からしを添えて味変したり、お味噌汁の隠し味にしたり、そば・鳥だしスープ・ラーメンに合わせる方もいます。揚げ物やハンバーグ、ステーキ、焼肉、野菜のソテー、きゅうりやキャベツのぬか漬けにもよく合います。私のおすすめは「餃子+からし醤油」「大トロ+からし」です。ちょい足し調味料としても万能で、冬場は酒粕ベースのからし鍋も楽しめます。また、社内で「甘くないからし入りケーキ」を考案したところ意外にも大好評でした。
ゆるめに溶いたからしはおでんに馴染む。揚げ物との相性も抜群。
―今後の展望について。
抱井 原料の確保が不安定な中でも、サプライヤーとの関係性を築きながら商品の安定供給に努めていきます。和からしの魅力を幅広い世代の方に伝えたいので、Webを活用したPR方法も考えています。フレンチマスタードのバジルソースや山椒が入ったラー油など、ブラッシュアップしていきたい商品も多くあります。「ぬかみそからし」をお使いいただくために、ぬか床の分野も広げていく予定です。
―本日は貴重なお話をありがとうございました。
「和からし100g×1個」(サイズ:100g、縦:190mm×横130mm)
価格:¥610(税込)
店名:からしの花畑
電話:048-441-6571(8:30~17:30 土日祝除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.chiyoda-karashi.net/?pid=177111836
オンラインショップ:https://www.chiyoda-karashi.net/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
抱井麻理(チヨダ株式会社 代表取締役)
1957年生まれ。1992年チヨダ株式会社へ入社。経理部、購買部を経て、2003年に代表取締役へ就任。購買部所属時に女性のみの企画開発営業部が立ち上がり、飛び込み新規開拓に携わる。戸田・真壁工場のTPM活動の開始、ISO9001、FSSC22000を取得すると共に、新たなマスタードソースを発売。今後はからし商品を元に香辛料からソースという調味料での使用を以って、マスタードの使用拡大を図り事業の成長を目指す。
<文・撮影/マスダアヤノ MC/髙橋美羽 画像協力/チヨダ>