今回、編集長のアッキ―こと坂口明子が注目したのは、埼玉県の醸造元が製造する昔ながらの手づくり大吟醸酒。深い旨味を醸すこの銘柄は蔵直営の居酒屋限定で卸し、お店では買えない希少なお酒でもあります。
蔵元見学と宴会を兼ねるというユニークな取り組みが特徴的な清龍酒造株式会社 代表取締役の岩﨑清氏に、商品やお酒の普及活動などを取材陣がインタビューしました。
自社経営の居酒屋でしか味わえない代表銘柄「59 純米大吟醸【伝】生もと造り」「22 大吟醸」
2024/07/29
清龍酒造株式会社 代表取締役の岩﨑清氏
―はじめに貴社の歩みをお聞かせください。
岩﨑 創業は幕末にあたる1865年(慶応元年)です。当初は清酒専門に製造していまいしたが、時代の変化に応じて現在までに酒類を増やしてリキュールやスピリッツ、焼酎まで幅広く手がけています。
大きく流れが変わったのは1955年です。それまで他の酒蔵と同様に卸会社や小売店に販売していたのをやめ、「造ったお酒を直接飲んでいただこう」と、直営の居酒屋を経営するようになり現在も続いています。
―居酒屋を開業した理由とは?
岩﨑 50年代は大産地の灘や伏見のメーカーが関東に販売攻勢をかけてきた時代です。それに押されてやがて小さなメーカーは消えてしまうだろうという危機感から、流通を通すことなくお客様に直接提供するスタイルに方向転換しました。それが弊社で居酒屋を出店することです。
現在では「蔵元居酒屋 清龍」をはじめとした直営店を東京の山手線沿線、池袋や高田馬場、有楽町、神田、上野などに11店舗営業するまで成長しています。
「蔵元居酒屋 清龍」の店内。蔵直送の多彩なお酒を存分に楽しめる空間。
―消費者に直接提供するメリットはどんな点ですか?
岩﨑 1日に何千人というお客様にご来店いただき、「こういうお酒が飲みたい」とか、味や香りについてさまざまなご要望をいただきます。いろんなお客様の声を直接工場に届け、仕込みに反映させられるのは大きな利点です。
つくり手都合ではなく、消費者のニーズに合わせたお酒造りで70年近く営み、今日に至っています。
―今回ご紹介する「59 純米大吟醸【伝】生酛造り」の特徴は?
岩﨑 このお酒は吟醸酒専用の蔵で造っています。仕込み期間中は蔵で寝起きしてひたすら大吟醸造りに励み、1日中付きっきりで仕込みの管理するほど手間をかけますので、全体の1割弱の量しかできません。
100%山田錦を原料に精米歩合は外側の60%を取り除いた40%です。純米大吟醸は繊細でフルーティーな香りを醸し、アミノ酸の旨みが非常に強く出ているのが特徴です。
旨味を感じるためにも冷(ひや)かぬる燗でいただければ繊細さがより伝わると思います。
左が純米大吟醸。右が大吟醸。
どちらも植物や果実をイメージさせる香りを立たせ、大吟醸のほうがより強く出る仕上がり。
―「22 大吟醸」のほうはいかがでしょうか?
岩﨑 こちらは蔵付きの酵母(自社酵母)と1401号などの選び抜いた華やかな酵母だけを使用し、大寒の時期をねらって仕込んだ大吟醸です。香りを楽しむためにまずは食前にいただくことをオススメします。
純米と両者とも圧力をかけないで搾っています。自然に垂れてくる雫酒といわれる原酒だけをとったもので、加水がないためアルコール分が17度と高いのも特徴です。
―両者ともオススメの飲み方はいかがでしょうか?
岩﨑 冷にして柑橘系のフルーツで味の変化を楽しむのもいいですね。イチ押しは工場見学のときにもお出しするシャーベット状の「凍結酒」。より味のきめ細かな部分がお分かりいただけると思います。
ご家庭でも冷凍庫の製氷容器にお酒を入れて臭いが周りに付かないようにラップをすれば、丸1日程度で完成します。コツは上まで一杯にしないで3分の2までにすることです。そのほうがより早く凍結しますよ。
凍結酒にすると、
口の中で氷酒を溶かす間に大吟醸の深い味わいをじっくり楽しむことができます。
―どんな商品開発を目指していますか?
岩﨑 時代によってお酒の趣向は変化していきます。たとえば戦争や景気の悪いときは味が甘くなるし、景気がいいと辛口になる傾向です。現在は昔よりかなり辛口ですが、この先も時代のニーズに合わせて酒造りを変化させ、進化させていくことを心がけていきます。
もちろん造る側としては自分の好みを反映するのでなく、お客様の要望に応えることに留意しながら取り組んでいくのは言うまでもありません。
―今後の展望をお聞かせください。
岩﨑 最近はお客様の飲むスタイルが変わり、人が集まってお酒を楽しむ機会がだんだん少なくなってきています。そのため宴会の楽しさそのものが、ずいぶん忘れられてしまっていると感じます。
ですから「宴会というものは楽しい」ということを、私たちのお酒を通して広めていく活動をしています。
酒蔵の敷地内にあるステージ付きのイベント会場。大宴会の楽しさがよみがえる。
―具体的にはどんな取り組みを?
岩﨑 普通は蔵元見学というと工場を1周して少し試飲するだけですが、弊社の場合はお酒を5~6合飲むことができます。
どうしてかと言いますと、私たちの「蔵元見学ツアー」はだだの見学ではなく、プロの歌手が公演するなどエンターテインメントと一体化した宴会イベントになっているからです。
ただお酒を造るだけでなく、それを通して食事と音楽をお客様に楽しんでもらう機会を増やしていく。これが私たちにできる1つの使命と考え、これからも続けていきたいと思います。
―本日はインタビューありがとうございました。
「59 純米大吟醸【伝】生もと造り」(720ml)
価格:¥1,700(税込)
店名:清龍酒造オンラインショップ
電話:048-768-2025(9:00~18:00)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.seiryu-syuzou.co.jp/syuzou/shop_detail.php?id=31
オンラインショップ:https://www.seiryu-syuzou.co.jp/syuzou/shop.html
「22 大吟醸」(720ml)
価格:¥1,600(税込)
店名:清龍酒造オンラインショップ
電話:048-768-2025(9:00~18:00)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.seiryu-syuzou.co.jp/syuzou/shop_detail.php?id=33
オンラインショップ:https://www.seiryu-syuzou.co.jp/syuzou/shop.html
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
岩﨑清(清龍酒造株式会社 代表取締役)
1952年埼玉県生まれ。立教大学卒業と同時に同社代表取締役に就任。弟は都内で蔵元直営の居酒屋を展開しており、ともに日本酒の普及に力を注いでいる。
<文・撮影/田中省二 MC/髙橋美羽 画像協力/清龍酒造>