編集長のアッキ―こと坂口明子が注目したのは、岩手県の銘菓「南部せんべい」。今回取り上げる商品は昔ながらの配合を変えずに小麦粉と牛乳と卵のやさしい甘さが引き立つ、どこか懐かしいせんべいです。
品質はそのままに連日大量のせんべいを生産する有限会社宇部煎餅店 代表取締役社長の宇部清志郎氏に、商品へのこだわりや製造についてのお話を取材陣がうかがいました。

有限会社宇部煎餅店 代表取締役社長の宇部清志郎氏

―創業からの歩みを教えてください。

宇部　食料品店を営んでいた祖父母が1947年に店の一角でせんべいを焼き始めたのが会社の起源です。その後1972年に叔父である次男が家業の食料品店を引き継ぎ、三男の父が小さいせんべい焼き機を譲り受けてお店を始めたのが弊社の発祥となっています。
商売が順調に運んでいき、やがては数年ごとに工場を増設しながらせんべいの製造を拡張していきました。

―家業にどのように関わるようになったのですか？

宇部　小学生から野球に熱中していたため、地元で強豪の商業高校に進学しました。卒業してすぐに家業についたのですが、当時は家族と従業員数名の小さなせんべい店で、会社組織ではありませんでした。
物心ついた頃からせんべい工場が自宅の隣にあり、作業を見るのが日常です。私は長男だったので子ども時代の早い段階で後を継ぐものを考えていたのです。

学生時代から手伝っていた中で袋詰めは経験済みでしたが、焼きの工程は高校を出て初めて経験。当時は温度計を使わずに職人感覚に頼っていて、水を数滴垂らした状態から温度を見る、そしてせんべいの焼き上がり具合を見ながら火加減を調整していく古典的なやり方です。

自分では焼いているつもりでも実際にはしっかり火が通ってなくて、割れてしまったりも…。しっかり火が通れば冷めてもちゃんとした形になりますので、焼きの工程を習得するのは大変でした。

1日の生産量は最大60万枚を誇る南部せんべいのメガ企業。

―社長に就任された経緯は？

宇部　2018年当時、年齢的にも父が70歳、私も40歳を過ぎたタイミングでしたので「そろそろ引き継いだほうが」という流れになり、私が社長に就任しました。

工場内は全自動の焼成機やロボットを多数導入して省力化を徹底している。

―貴社の強みや注力されていることは？

宇部　生産効率アップのため製造ラインの自動化を進めてきました。南部せんべい業界では焼成機器は自動のメーカーも何社かありますが、弊社ほど広範囲にしている工場はありません。
焼き工程の下流の袋詰めやダンボール詰め、倉庫の入庫作業まで徹底してオートメーションで行っています。

また工場のキャパが大きいため大量に生産できるのも強みです。主原料の小麦粉を大量に仕入れることで輸送コストを抑えて安価で購入することができ、製品をより安くお客様に提供できます。

“厚焼き”という名にふさわしい分厚さ。これで1枚25円はおトク。

―今回ご紹介の「厚焼きピーナッツ煎餅」はどのようにして誕生を？

宇部　弊社のピーナッツせんべいは40年くらい前に誕生したお菓子で、お盆やお正月にギフト用として販売していました。ところが2012年に現在の工場に移転して広くなったため、「毎日作って売っていく定番商品にしたい」と思い、最初は3枚入り100円で売り始めました。

売れ行きがもう1つだったので原価割れ覚悟で4枚入りにして、パッケージの色をカラフルにしてみたところ、どんどん売り上げが拡大していきました。
最初は半自動の焼成機を使っていたのですが、機械メーカーに開発してもらって全自動を導入して今に至っています。

せんべいといってもクッキーに近い生地。ミルクをはじめ乳飲料との相性バッチリ。

―当商品のこだわりはどんなところでしょうか？

宇部　同業他社でも似たような商品を出しているところは結構あり、軽めにサクサクとした食感を狙って小麦粉だけではなく片栗粉を混ぜているケースがあります。その点、弊社のせんべいは100%小麦粉で製造しています。

また脱脂粉乳ではなく牛乳を100％使うこと、クッキー生地なので卵は殻付きの生鶏卵を仕入れて使っているのもポイントです。生地を仕込むときに牛乳は全体の約10％、卵も10％程度の高い配合率です。

―味わいや食感の特徴は？

宇部　砂糖は従来よりも少なくして甘味を抑えることで小麦や卵、牛乳の自然な風味が前に出るように工夫しています。食感はパリパリと粉っぽく軽く食べられる中にもわずかに湿度があって、口の中で自然な甘みとなって溶け込んでいくニュアンスです。
お茶だけでなく牛乳やコーヒー系の飲料と合わせても、とてもおいしくいただけます。

パリパリサクサクの食感にほどよい硬さがアクセント。
ピーナッツの香ばしい風味も生地と絶妙に絡んでくる。

―今後の展望をお聞かせください。

宇部　現在も北海道から九州まで全国に幅広く出荷はしていますが、中にはまだ行き届いていない地域もあります。インターネットや媒体を通じて認知度を上げるなどして、もっと全国津々浦々に販売していく方針です。
ゆくゆくは海外進出も視野に入れ、高い目標を持って販売強化に取り組んでいきたいと思います。

―本日はありがとうございました。

「厚焼きピーナッツ煎餅」（4枚入り30袋）
価格：¥3,000（税込）
店名：宇部煎餅店オンライン
電話：0194-75-3100（9:00～15:00、土日祝日、お盆・正月除く）
定休日：インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL：https://ubesenbeiten.com/item-detail/736551
オンラインショップ：https://ubesenbeiten.com/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

＜Guest’s profile＞
宇部清志郎（有限会社宇部煎餅店 代表取締役社長）

1976年岩手県生まれ。1995年に岩手県立久慈商業高等学校卒業後、宇部煎餅店に入店。
2004年の会社設立時に専務取締役に就任。2018年、代表取締役社長に就任。

＜文・撮影／田中省二　MC／澤水拳太　画像協力／宇部煎餅店＞