今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になったのは、京豆腐をはじめ、汲み上げ湯葉や京揚げ、豆乳などが入った「藤野食べきりセット」。京都にはお豆腐屋がたくさんある中、どんなこだわりが込められて商品を作っているのでしょうか。京とうふ藤野株式会社の代表取締役の藤野久子氏に、取材陣が伺いました。
100%国産大豆と大江山の伏流水で作られたいろいろな京豆腐を楽しめる「藤野食べきりセット」
2024/09/18
京とうふ藤野株式会社 代表取締役の藤野久子氏
―創業から現在に至るまでの経緯を教えてください。
藤野 弊社は私の夫の父が起業したのがきっかけで、1964年に有限会社としてスタートしました。私は45年前に嫁いでから、夫とその両親と4人でやってきましたが、京都でも少しずつスーパーなどができ始め、そういったところに卸売をするために、会社という形をとることになりました。株式会社になったのは1985年5月です。
今年で創業60年を迎えますが、京都には江戸や明治時代からやっているお豆腐屋さんがたくさんあるので、弊社は新参者です。今は夫と2人で代表を務めています。
―お豆腐作りにはどんなこだわりが?
藤野 毎日食べて飽きないことを一番のモットーにしています。味が濃かったり甘かったりするお豆腐もたくさんありますが、弊社のお豆腐はどちらかというと「さっぱり、あっさりしているね」というお声をいただくことが多いです。お醤油をかけただけでそのまま食べられるというのがお豆腐の真髄だと思っています。
特にこだわっているのは原料で、弊社のお豆腐はすべて国産大豆で作っています。国産の大豆は輸入のものに比べて脂肪が少ないので、お豆腐にするとさっぱり仕上がるんです。ただ、油揚げは国産の大豆だけで作るとしっとり感が出ない時もあるので、一部カナダ産の大豆を使用しています。
野菜のように、大豆も価格変動があるので、国産の上質な大豆を確保するのは大変ですが、大豆を変えただけで味も変わってしまい、お客様から「お豆腐の味が違いますけど大丈夫ですか?」とお問合せをいただいたこともあるので、シビアにやっています。
国産大豆を100%使用し、おいしくて安心・安全な商品作りを心がけている。
藤野 お水にもこだわっていて、大江山の伏流水を使っています。工場は京都・丹後与謝野町にあるのですが、近くには2軒ほど酒蔵もあり、皆さんここの水を本当に大切にされています。弊社の工場は京都市内から移転してきたのですが、ここの水が市内の水とよく似ていたんです。
京とうふ藤野株式会社の工場「京都丹後 加悦豆房」の外観。
―そんなこだわりを込めて作られたお豆腐をいろいろな味で楽しめるのが「藤野食べきりセット」です。
藤野 「藤野食べきりセット」には、6種類のお豆腐が入っています。一人暮らしや二人暮らしの方から、普通のサイズのお豆腐だと食べきれないというお声をいただいたのを機に、小さいサイズのお豆腐をいくつか開発し、その中からセレクトしました。いろいろな味を少しずつ楽しめるセットとなっています。
(左上から時計回りに)葛とうふ、柚子とうふ、絹ごしとうふ、
おぼろ豆腐、すだちとうふ、胡麻とうふ。
藤野 定番人気商品の「葛とうふ」と「胡麻とうふ」も入っています。お豆腐は大豆と水とにがりで作られていますが、「葛とうふ」はにがりではなく、葛で固めていて、珍しい食感を楽しめます。「胡麻とうふ」は胡麻がしっかり入っているので、普通の冷奴に飽きた方にはこの2つがおすすめです。
(上から)葛とうふ、胡麻とうふ。
どちらもわさび醤油で食べるのがおすすめ。
藤野 また、「柚子とうふ」をお吸い物に入れると、すごく上等なものに早変わりするとお客様から教えていただき、なるほどなと思いました。
「奴のつゆ」はどのお豆腐にも合うように作られていますが、お野菜と合わせてアレンジしながら食べるのもおすすめです。少し甘みがあるので、そのままかけるだけでおいしいですよ。
「藤野食べきりセット」のセット内容。
中央右にある「奴のつゆ」はどのお豆腐にもマッチする。
―「京揚げ」はリピートされる方が多いそうですね。
藤野 このセットに対して「京揚げ」は大きすぎるかなと思っていたので外していた時期もありましたが、お客様からの要望が多いので、今はセットに入れています。そのまま焼いてお醤油をかけるだけでもおいしいですし、余ったら刻んで冷凍しておけば、味噌汁の具などで使いやすいですよ。
「京揚げ」は長さ30㎝でたっぷり食べられるところが魅力。
そのまま焼くだけでおいしい。
―「けんこう仕込豆乳」にはどんな特徴が?
藤野 豆腐と同様、国産大豆で作られていて、飲みやすいところが一番の特徴です。輸入の大豆は船で運ばれてくる間に蒸れてしまうのですが、国産ならあまり時間がかからずに届くので、えぐみや渋みなどがありません。だから、「豆乳は苦手だったけど、これなら飲める」というお客様もいらっしゃいます。
普通に飲むだけでなく、ホットケーキを作る時に牛乳の代わりに使ったり、生クリームを泡立てる時に少し足したりと、スイーツ作りにもおすすめです。少しさっぱりとした仕上がりになります。
「けんこう仕込豆乳」の大豆も100%国産。味は濃いが飲みやすい。
―店頭では「豆乳ソフトクリーム」や「マイ豆乳パフェ」などのスイーツもありますね。
藤野 うちのソフトクリームは男性のファンが多いところが特徴です。今はスイーツ男子という言葉もあり、男性も当たり前のようにスイーツを食べますが、約30年前は男性が一人でソフトクリームを食べる光景はおもしろいと言われたことがあります。それくらい抵抗なく食べやすいというお声をいただいています。
カフェカウンター「TOFU CAFE FUJINO」で食べられる人気商品「マイ豆乳パフェ」。
―藤野さんはお豆腐のメニュー開発に力を入れられているそうですが、そのきっかけは?
藤野 ちょうど飲食業を始めた約35年前は、メディアで豆腐料理の特集はほぼなかったですし、居酒屋さんのメニューも冷奴や揚げ出し豆腐があるくらいで、お豆腐が料理のメインにはありませんでした。
京都には湯豆腐屋さんがあり、そこでは湯豆腐がメインではあるものの、お刺身や天ぷらなど、お豆腐に関係ない料理もたくさん出てきていました。お豆腐はもっとアレンジできるのにもったいない、せっかく湯豆腐を食べにきてもらっているのだから、お豆腐で勝負すればいいじゃないかと思ったのが最初のきっかけです。
お豆腐をコロッケにしたり、揚げ出し豆腐も少し違う味付けにしたりと少しずつ試していった結果、レシピが増えていきました。実家の食堂を手伝っていたこともあり、子どもの頃からお料理だけは得意だったんです。
京とうふ藤野の創作料理店「京豆富不二乃」の「豆富膳」。
豆乳クリームコロッケ、季節毎のお揚げの炊き込みごはんなど
お豆腐を使った料理をたっぷり味わえる。
―お豆腐屋さんならではの、おすすめの食べ方は?
藤野 お好み焼きにお豆腐を混ぜ入れて、かさ増しするだけでお腹も満たされるし、ヘルシーになっておすすめです。他にも、普通のドレッシングにお豆腐をつぶして混ぜて、ボリュームのあるドレッシングにするのも簡単なので、ぜひ試していただきたいと思います。
―最後に、今後の展望を聞かせてください。
藤野 まずは、どうしたら皆さんにもっとお豆腐を食べていただけるのか、これからも考え続けていきたいと思っています。あまり難しく考えず、インスタントの味噌汁にお豆腐をスプーンですくって入れるとか、毎日少しずつでいいので食べていただけたら嬉しいですね。
また、SDGsにも積極的に取り組みたいと思っています。出来上がった商品はもちろん、商品を作る過程でもできるだけ廃棄を出さないことをモットーにしていますが、弊社の湯葉を作る際、残った豆乳は商品としては出せないので、これまでは廃棄していました。しかし、この豆乳と、同じく廃棄されてしまうおからを使い、他社さんがクッキーを作ってくれて、現在全国的に販売されています。このような取り組みは今後も続けていきたいです。
全国販売中の株式会社MDホールディングス
「豆乳おからクッキー プレーン」と「豆乳おからクッキー ピーナッツ」。
―貴重なお話をありがとうございました!
「藤野食べきりセット」
価格:¥3,300(税込)
店名:京とうふ藤野オンラインショップ
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.kyotofu.co.jp/ec/products/detail/200
オンラインショップ:https://www.kyotofu.co.jp/ec/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
藤野久子(京とうふ藤野株式会社 代表取締役)
1958年京都府生まれ。藤野清治と結婚し取締役専務を経て、現在は藤野清治と共に代表取締役を務める。豆腐や豆乳を使ったスイーツや、飲食店舗のメニュー開発も手掛ける。
<文・撮影/サカモトアヤ MC/木村彩織 画像協力/京とうふ藤野>