今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になったのは、固定概念にとらわれることなく、個々の愛犬に合わせてあげたいという想いのもとに販売されているペットフード。株式会社Biペットランド 代表取締役社長の岩﨑弘之氏に、取材陣が伺いました。
愛犬が多様な食を楽しめる安心安全なドッグフード「アボ・ダーム」「Smiley(スマイリー)」
2024/09/18
株式会社Biペットランド 代表取締役社長の岩﨑弘之氏。
相棒のゆずまるとすみれは、副社長と専務の肩書を持って活躍中。
―御社の成り立ちをお聞かせください。
岩﨑 父が創業した、岩﨑トレーディングという工業系ブラシ材の輸入会社のペット事業部が独立した会社です。ブラシ材を主に取り扱っていたことから、コームやスリッカーなどのお手入れグッズでペットたちを美しくしてあげたいとの思いから「Bi(美)ブラシ」を開発し、ペット業界に参入しました。バブル期に紆余曲折ありまして、本業をたたんでペット事業1本でやっていかざるを得ない状況になり、有限会社Bi(美)ペットランドを設立したのが1989年でした。
ペット事業部が立ち上がった時から一貫して行っているのが、ペットフード「アボ・ダーム」の輸入販売です。アメリカのブリーダーズチョイスという会社が1982年に製品化したもので、父が日本の正規代理店となり、輸入販売を1984年から始め、2024年で40年になります。
―どのような商品ですか?
岩﨑 ブリーダーズチョイス社は動物園などに卸す飼料を作っている会社でした。社長の自宅裏には、アボカドの木があったそうです。動物好きな社長は多くの犬を飼っていて、中の1頭だけがツヤツヤしているのに気が付いたのです。行動を観察していたら、庭に落ちているアボカドの実を、その子だけが舐めていたとか。そこで研究してみたところ、アボカドに豊富に含まれる不飽和脂肪酸、カリウムや葉酸といった成分が、犬の皮膚や被毛にとても良いことがわかったのです。不飽和脂肪酸は、血流を良くしてくれることでも知られていますよね。
そんなアボカドの成分を壊さないよう、低温調理でじっくり加工。ハーブや乳酸菌やビタミン、ミネラル類を加えて、愛犬の健康維持を第一に考えて作られています。着色料など不要なものは無添加。安心安全にもこだわっています。
500gずつ3つの小パックになっていて、開封したてのフレッシュなものをあげられる。
―40年のロングセラー商品ですね。
岩﨑 2000年ごろまでは、どのペットショップにも置いていただいてある商品でしたね。この10年~15年は新規参入が増えた事もあり、以前に比べると店頭での露出は減りましたが、ペットを取り巻く環境が変わった今でもペットフードとしてのスペックは十分にあると思っています。「アボ・ダーム」を食べているワンちゃん、ネコちゃんは毛艶がよく健康な子が多く、お役に立てていることを実感しています。
類似品もなく、大きく中身を変えることなく40年続いています。先代犬によかったから二代目にもとか、愛犬が気に入っているからなど、根強いファンに支えられています。この値上げの時流において、ブリーダーズチョイス社にも協力をしてもらって、2024年3月に、なんと、一部商品ですが値下げを敢行しました。お客様への感謝と、新たに知っていただく、思い出していいただく機会になればと願っています。
愛犬のフケ・かゆみ・涙やけなどスキントラブルの予防が期待できる。
―岩﨑社長のご経歴は?
岩﨑 実は私、これまでに2度ほどBiペットランドへの入社と退社を経験しています。一度目は大学を卒業する頃、英語を学びたいと父に申し出たところ、国内でペットフードの仕事をして、ある程度結果を出したら、アメリカの工場に研修に出してやると言われて入社。ペット業界に順風が吹く時代で、入社後2年間で業績が非常によくなり、2000年から3年ほど、アメリカの製造元で過ごしました。現地では主に品質管理業務に従事しつつ、ドッグフードの栄養や配合も学びました。帰国後は東日本の営業担当として赴任しましたが、上司とそりが合わず、1年足らずで退職してしまったのです。
英語が多少話せるようになった事で、海外の言葉に興味を持ち、次は中国語を勉強したいと考えて、中国と取引のある貿易会社に就職。漢方原料などを扱う会社で、OEM製造に関する様々なことを学びました。中国語は全く覚えられませんでしたが……(笑)。
父が70歳になろうという頃、後継問題が持ち上がり、再び戻ることになりました。しかし、創業社長である父と、外で学びを深めた私とでは経営方針などでぶつかることが多かったのです。父はまだ元気で現役を続けたい様子だったので、私はまた会社を飛び出して自分の会社を作りました。
社名はハッピースマイルカンパニー。Biペットランド時代に経験した契約書だけのライセンスビジネスのリスクから、契約に左右されないビジネスモデルは何だろう?と考え、農業や漁業など一次産業に意識が向き始めました。発展途上国の留学生を受け入れて、日本の近代農業を覚えて帰ってもらうような仕組みを作りたいな、と。社名は貧困国の子どもらがごはんを食べたときの笑顔を想像した社名です。いつかそんな夢を叶えたいと思いつつ、まずBiペットランドでの経験を生かしたペットフードの輸入販売からスタートしました。
「スプリングナチュラル」というペットフードの日本総代理店となり、約5年、種を撒きましたが、ようやくここからという時に米国製造元が急遽、ペットフード事業からの撤退を表明。それもタイミング悪く大量に買い付けた後の発表でした。返金・返品に応じる事もなく、到着した最後の商品は見るも無残な姿で届くなど、様々なことが重なり、お金、生活、その他、色々なものを失いました。精神的に窮地に追い込まれ、自死しようと本気で考えました。しかし、その一歩手前で仕事や人生がうまくいかなかったくらいで死ぬ必要はない、生きて働いていればなんとかなる、と、気持ちが吹っ切れたのです。
死に目にも会わないと決めていたぐらいの父に、白旗をあげました。「まいりました、あなたのようにはできませんでした。私はペット業界から引退し、この数年で培ったものをすべて差し出しますから、何とかお客さんを守ってくれませんか」と。すると意外にも父は「これまで続けてきたことは無駄じゃないしきっと芽が出るからもう少し続けてみろ」と生まれて初めて優しい言葉をかけてくれましたね。父は3年前に他界しましたが、本当に感謝しています。
それからですね。私が本当にBiペットランドに腰を据えてやっていこうと決心したのは。父が体調を崩して引退するまでの数年間が、一番父と会話をし、一緒に仕事をした時間となりました。
―「Smiley」の開発はここからですか?
岩﨑 前記の「スプリングナチュラル」騒動以後、輸入品を再度チャレンジするのか、それとも国産の自社製品でチャレンジするのがいいか?と父に相談したところ、輸入品は「アボ・ダーム」がありましたので、折角なら輸出を見据えた国産ドッグフードの製造をしてみたらどうかと背中を押してくれました。Smileyは親父と作った最後のブランドなので、とても大事に思っています。
―商品へのこだわりをお聞かせください。
岩﨑 アメリカ時代から疑問視していたことがありました。ペットフードは基本的に、水とフードだけで栄養摂取、健康を維持できる「総合栄養食」と、疾病の治療に使う「療法食」の2つと、「間食」と「その他の目的食」に分類されます。疾病のないペットは「総合栄養食」を食べるのが一般的になっていますが、時折、ビタミンやミネラル過多で様々なトラブルが起きてしまうワンちゃんがいます。その子たちは総合栄養食を食べることができなくなり、それまでは療法食か手作り食、選択肢は2つのみでした。であれば、その子たちも食べられる総合栄養食基準値外の選べるフードがあったらいいのでは?と、新しい選択肢を作ろうと考えるようになりました。
10数年間、断られ続けたこの想いを叶えてくれたのが今の製造元になります。
人間の食事同様、食品だけでのフード作りにこだわった結果、手作りごはんに近い、ナチュラルで安全なものに仕上がりました。国産材料100%、化学的なものは一切無添加。獣医療の現場でも実績のある乳酸菌を加えて消化吸収促進、腸内環境に配慮。肥満対策として低GI食材を使用など、いろいろと欲張った仕上がりです。
チキン、ポーク、まぐろ、そしてさくら(馬肉)の4種類があり、どれも国産のこだわり抜いた生肉のみを使用しています。大麦、玄米、小松菜、ブロッコリー、わかめ、ひじきなどよく知られた食材のみを加えて作っています。コラボ商品で「鹿肉」と「関節ケア」もあります。
作ってくれている製造元の方針で、一般的なドライフードのように発泡(膨らませる作り方)をしていません。発泡させることで生産効率は上がりますが、余計な空気(ガス)が体内で発生するため、腸捻転などのトラブルが起こることがあります。また、スマイリーのように生肉や生魚の使用量が多い場合、発泡させると結着力が下がり、成型すら困難になります。
また、ノンオイルコーティング製法をしています。オイルコーティングには、嗜好性向上以外にも、特に輸入製品の場合、海上輸送中の湿気によるカビ対策、振動や加重による粒の損傷など防ぐ目的があります。しかし、その結果、オイル自体が酸化や汚れてしまい、その油分を摂取することで様々なデメリットが発生する可能性があります。日本で作って日本で消費される分には必須ではありませんし、必要であれば食品のオイルを足せばよいですからね。といったように個々のワンちゃんの健康状態に合わせてアレンジしやすいように仕上がっています。
左からチキン、まぐろ、ポーク。
一般的なドッグフードにありがちな嫌な臭いはなく、素材の香りが立ち、いかにもおいしそう。
「カリカリ」が苦手な犬や選り好みが激しいタイプも喜んで食べるという声が多数。
―どんなワンちゃんに、どんなふうに食べてほしいですか?
岩﨑 最近強く思うのは、ペットの食事も多様性が大切だということです。特にワンちゃんは雑食なので、同じものをずっと食べ続けるより、総合栄養食、一般食、手作り食、発酵食品、水分の多い食事、その他、いろいろなものを食べて腸を鍛えるといいと思っています。人間同様、好き嫌いなく、色々な食事をとる事で、必然的に腸活になります。犬も、腸が強くなることで、免疫力が上がって病気になりづらくなるのです。
「Smiley」には「回転食」と記してありますが、いろいろなフードを取り交ぜてあげてほしいと思っています。ですから、うちのECサイトには定期便というのを作っていますが、同じ商品やうちの商品だけを買ってほしいというのではなく、毎回注文するのが面倒だという声に応えたもので、商品の種類や発送タイミングを替えられる定期便の準備も少しずつ進めています。
チキン、まぐろ、ポークがそれぞれ500gずつ入った3種セットが試しやすい。
―今後の展望をお聞かせください。
岩﨑 ペットフードの市場、犬猫比率でいえば圧倒的に犬が高いのですが、肉食動物で美食家である猫ちゃんのための究極のごはんを作りたいという野望があります。
他には、想いを同じくする企業さんとのコラボレーションです。「Smiley」シリーズに「鹿肉ごはん。」がありますが、これは、ジビエ専門ペットフードの「京丹波自然工房」とのコラボ商品です。銃は使わず罠で捕獲した鹿を新鮮なうちに捌いて熟成させ、最高の生肉を使用しドッグフードに仕立てています。他にも神奈川県で動物病院を運営しつつ、ペット用サプリメントを製造販売する「株式会社QIX」とコラボして、椎間板や関節の健康維持をサポートする「Smiley アクティブケア」も商品化しています。今後も、ペットのトラブルをケアできる商品領域を広げつつ、海外展開も考えています。先ほど話したように、オイルコーティングしていませんから運べる距離には限りがありますが、日本と飼育環境が似ている東南アジアがターゲット。まずは2024年秋にタイで行われる国際ショーに出展しお披露目してきます。
私自身、幼少期から30頭近くのペットと過ごしてきました。看取るたびに心に誓うのは、次に迎える子は、あなたより1日でも長く、元気で過ごせる商品を開発するぞ!ということ。人間に比べると短いペットの命ですから、少しでも美味しいものを食べさせて、楽しい経験をさせてあげて、ペットも飼い主も後悔のない大切な時間を一緒に過ごす。これからもそんな想いを支える商品開発してまいります。
―素晴らしいお話をありがとうございました!
「アボ・ダームオリジナルビーフ」(小粒 1.5kg)
価格:¥3,256(税込)
店名:いぬのための
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.inunotameno.com/c/brand/avodermdogbrand/AVOD000108
オンラインショップ:https://www.inunotameno.com/
「Smiley(スマイリー)3種セット」
価格:¥6,204(税込)
店名:いぬのための
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.inunotameno.com/c/brand/smileybrand/SMID300002
オンラインショップ:https://www.inunotameno.com/
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岩﨑弘之(株式会社Biペットランド 代表取締役社長)
1975年兵庫県西宮市生まれ。愛犬2頭と愛鳥2羽を飼育。趣味は犬連れ旅行&キャンプ、グルメ、スポーツ観戦、バイク、車。好奇心旺盛でペット愛が熱い性格。「凡事徹底」「経験は死ぬまで取られない」「世の中の“不”にこそ閃きあり」が座右の銘。ラジオ番組『朝みみPrecious』(InterFM)に月一回出演中。
<文・撮影/植松由紀子 MC/三好彩子 画像協力/Biペットランド>