今回、編集長アッキーが気になったのは、電子レンジでチンするだけで、焼きたての味が再現できる「冷凍ベビーカステラ」。手掛けるのは、新鮮な牛乳や卵など素材のよさにこだわるベビーカステラ専門店「京都すずなり屋」です。試行錯誤の末に完成したという商品の誕生秘話を、運営元である株式会社オー・エヌ・イー 代表取締役の内藤克敏氏に伺いました。
白味噌が隠し味!ふんわりもっちり、素朴で懐かしい味わいのベビーカステラ
2024/09/30
株式会社オー・エヌ・イー 代表取締役の内藤克敏氏
―御社はもともと、まったく異なる分野で活躍されていたとか。これまでの社長の歩みをお聞かせください。
内藤 そうなんです。私たちは電気設備工事事業からスタートした会社で、2021年より飲食業界に参入しました。でも実は、小学生のころから料理で人を笑顔にしたい、喜んでもらいたいと思っていたんです。専門学校卒業後、一度は京都・嵐山の料亭で働いていたこともありました。でも色々とあって、志半ばで夢を断念。電気工事会社で9年勤めたのち、1999年に独立開業し、翌年、法人化して株式会社オー・エヌ・イーを設立するに至りました。
弊社は電気設備工事のなかでも、イベントや展示会などの仮設工事を得意としています。今の季節なら夏フェスや、大きな展示会場に出展される企業さんのブース、冬場はイルミネーションの施工などを主に請け負っていますので、2020年以降はコロナ禍で仕事が一切なくなってしまいました。それが予想以上に長引いたので、いっそのこと何か別の面白い仕事をしようということで始めたのが飲食事業、ベビーカステラ専門店「京都すずなり屋」でした。はじめは実店舗での販売だけでしたが、現在は「冷凍ベビーカステラ」も販売しています。
地元である京都本店(移転準備中)のほか、岡山県、栃木県などにも直営店を展開。
―数ある飲食業のなかで、ベビーカステラを選ばれたのには理由があったのでしょうか?
内藤 ひとつは、ベビーカステラ屋をやっている知り合いがいたということです。そのベビーカステラが、本当においしかったんですよ。それに当時はお祭りも中止ばかりで皆さんなかなかベビーカステラを食べる機会がなかったですし、店舗型のお店はほかにありませんでしたので。はじめは知人のベビーカステラ屋の系列店として運営していましたが、今では彼にも弊社へ来てもらって一緒に事業の拡大を目指しています。
もうひとつは食品ロス削減という観点です。卵と牛乳の管理さえできていれば、あとは保存のきく原料ばかりですし、何より焼きあがったベビーカステラは、冷めてもおいしい。自宅に持ち帰ってからもおいしく召し上がっていただけるので、食品廃棄にもつながりにくいと思うんです。
生地づくりから焼き上げまで、すべての工程が職人による手作業。
「安心して口にしていただけるよう、“安心安全な材料”にもこだわりました」と内藤社長。
―会社として大切にしていることは?
内藤 人と人とのつながりのなかで、何かを生み出していくことを大切にしています。ですので、各地にある店舗がそれぞれの地域に根ざし、無くてはならない存在になっていければいいなと思っています。ベビーカステラの販売だけでなく、店に来ればスタッフの笑顔があって、おしゃべりが楽しめる。そんなコミュニティを形成したり、雇用を創出したり、さまざまな形で地域に貢献していきたいと考えています。
―「人に喜んでもらいたい」という社長の原点にもつながるお話ですね。ベビーカステラづくりで大切にしていることは?
内藤 専門店として、魂を込めてベビーカステラを作っていますから、素材にはこだわっています。添加物は一切使わず、主な原料となる小麦粉は、滋賀県産のびわほなみ100%。卵や牛乳は店舗ごとに地元農家と契約し、新鮮なものを仕入れています。コクを出すために、隠し味として白味噌を加えているのですが、この白味噌も遺伝子組み替えでない北海道産大豆100%です。いいものを使っているのでその分原価も高くなるのですが、それを価格に反映させると気軽に召し上がってもらえなくなりますので、少しでも安くご提供できるようにしています。
素朴ながらも後を引くおいしさに、食べる手が止まらない!
バターを使わず仕上げた、あっさりとした味わいも魅力。
―「冷凍ベビーカステラ」を開発されたきっかけは?
内藤 お店で販売している焼きたての味を、なんとか全国に届けられないかと考えはじめたことです。当初はフランチャイズを募って大阪や東京に出店したりもしたのですが、なかなか拡大できなくて。何かいい方法はないかと考えていたときに、コロナ禍で急速に進化した冷凍技術に注目したんです。
開発中は、焼きたての“ふんわりもっちり食感”をいかに再現できるか、ということに注力しました。とくに難しかったのは、冷凍するタイミングと時間です。焼きたてをすぐに冷凍するのか、粗熱を取ってからなのか、それとも袋詰めしてからなのか。それをどれくらい凍らせれば、焼きたての食感を再現できるのか。その調整にすごく苦労しましたね。10月から着手して、最終的にこれでいこうと決めたときには年も明け、2月になってしまっていました。
自然解凍や電子レンジで温めるだけでOK!
解凍後、予熱したオーブントースターで1分ほど焼くと表面がカリッとして、より焼きたてに近い味わいが楽しめる。
―おすすめのアレンジ方法を教えてください。
内藤 解凍せずに、そのまま食べてもおいしいですよ。お店では夏のあいだ、凍ったままのベビーカステラをアイスクリームに添えたメニュー「冷やベビ」を販売することもあります。甘いお菓子としてだけじゃなく、塩気をプラスして召し上がっていただくのもおすすめです。たとえば、並べたベビーカステラの上にチーズを乗せ、オーブントースターで数分焼くとか。
実は、一部の店舗では「シャカベビ」という味変用のシーズニングパウダーも販売しているんです。今はブラックペッパー味だけですが、今後は抹茶やシナモンなどのフレーバーも売り出していこうと考えているところで。ゆくゆくはオンラインショップでも販売できたらいいなと思っています。
ほんのり甘いベビーカステラ×ピリッとスパイシーなブラックペッパー!
意外な組み合わせがクセになる「シャカベビ」。
―今後の展望をお聞かせください。
内藤 お店のキャッチコピーでもある「一口サイズのハッピー」をいかに伝えていくか、どこまで届けられるか。それを追求するためには、何をすべきかを考えながら事業に取り組んでいきたと考えています。冷凍食品であることをいかして、非常食として発信していきたいという想いもあって。ご家庭の冷凍庫に常備していただいたり、弊社の冷凍工場からお届けしたりして、災害などが起きた際にも一口の幸せを感じてもらえるといいなと思います。
―貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!
「冷凍ベビーカステラ」(12個入/袋)
価格:¥550(税込)
店名:京都すずなり屋
電話:075-585-3755(9:00~17:00 土日祝除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://suzunariya.official.ec/items/77373899
オンラインショップ:https://suzunariya.official.ec/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
内藤克敏(株式会社オー・エヌ・イー 代表取締役)
1970年京都市生まれ。幼いころの夢だった料理人を志す。専門学校を卒業し京都嵐山の料亭に入社するも志半ばで夢を断念。その後地元の電気工事会社に就職し独立開業を目指す。2000年5月株式会社オー・エヌ・イーを設立し代表取締役に就任。2021年4月より新規事業でベビーカステラの販売をスタート。2023年からはベビーカステラを世界中に届けるため、セントラルキッチンにて冷凍ベビーカステラの製造販売も開始。
<文・撮影/野村枝里奈 MC/木村彩織 画像協力/オー・エヌ・イー>