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南信州の風土と醸造技術で磨かれた日本酒「北緯35度のテロワール」シードル「N35 Terroir BrutNature」

2024/08/21

「水よし・米よし・りんごよし」の長野県南部の飯田・下伊那地方の恵みがたくさん詰まった大吟醸とシードルに今回、編集長のアッキ―こと坂口明子が注目しました。ふわっとした香りとともに口当たりよく飲みやすいお酒、炭酸とりんごの香りが見事に調和したシードル。両者とも多くの酒蔵が集まって積み上げた技術の裏付けを感じる逸品です。
今年で設立80周年を迎えた喜久水酒造株式会社・代表取締役社長の後藤髙一氏と営業部長の下澤淳志氏に、商品へのこだわりなどを取材陣がインタビューしました。

喜久水酒造株式会社 代表取締役社長の後藤髙一氏
喜久水酒造株式会社 代表取締役社長の後藤髙一氏

―はじめに貴社の沿革をお聞かせください。

後藤 弊社は1944年に飯田下伊那地域に点在した37軒すべての酒造業者が合同して設立された、下伊那酒造株式会社を前身とする酒蔵です。その後1951年に現在の社名に改称しました。

企業合同したことで各蔵が有していた酒造免許が統合され、日本酒に限らず焼酎や果実酒の製造をすることが可能となりました。それぞれの分野の強みを生かし、現在では原料に合わせたさまざまな酒類の製造を行っています。
その中で例えばりんごなど、長野県産を前面に出した商品開発や製造・販売を手がけています。

―後藤社長のご経歴と酒蔵との関係を教えてください。

後藤 私の父は酒造ではなく飯田市でお酒の販売、いわゆる酒屋をしていました。結びつきは当然ありましたが、職業としては基本的には別です。ただしお酒自体は商品の販売を通じて身近な存在ではありました。

私は名古屋市の大学を出て人材サービスの企業に就職し、主に営業系の職種を担当していました。2000年に退社して実家の酒販店で働き始め、2016年に役員として弊社に入社しています。そして昨年10月に社長に就任しました。

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南信州は水の良さも格別。
仕込み水に環境省・全国名水百選の一泉として認定された「猿庫の泉」と同じ水系の水を使用している。

―貴社の経営理念をお聞かせください。

後藤 弊社は地域唯一の酒蔵でもありますので、地域とともに発展していくというのが大きなテーマであり企業理念です。そのため具体例としてはお酒の原料となる農産物、米やイモ、りんごなどをできるだけ地元のものを使用することで地域に貢献する方針をとっています。

下澤 地元とのご縁という意味では飯田下伊那の方の長年のご愛顧あってこそ今があると実感しています。県外に行ったとき、飯田市出身で飲食店を経営する方が「ぜひ喜久水のお酒を使いたい」とおっしゃったのを聞いて、とてもありがたい気持ちになりました。
これからも地元への感謝の気持ちを大事にして事業に取り組んでいきたいと思います。

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地域貢献の1つとして取り組む飯田市にある棚田「よこね田んぼ」。
景観保全と酒米「たかね錦」の栽培をかねて、田んぼを自社保有する。

―今回ご紹介の「北緯35度のテロワール」(純米大吟醸)の特徴を教えてください。

後藤 当商品は新しい年齢層などターゲットを開拓していくためにデザインやネーミングをこれまでと違うものにしたいと考案した新作です。

北緯35度は私たちが本社を構える南信州飯田市の緯度で、テロワールはフランス語で土地や土壌を意味する言葉です。当地の魅力を伝えたい想いから生まれた商品名でもあり、精米歩合もこれに合わせて35%まで磨いています。

原料に使用する「たかね錦」という酒造米は、地元の契約栽培で作っているお米です。非常にすっきりして飲みやすいお酒ができる特性を生かし、食事中に一緒に飲んでいただけるタイプの大吟醸を目指して造っています。

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大吟醸らしい香りが立ちあがり、味わいはフルーティーさも十分。
後味はスッキリとしてとても飲みやすいため、魚介類をはじめいろんな食材と一緒に食中酒としても楽しめるお酒。

―開発するにあたってどんな試行錯誤がありましたか?

後藤 実は昨年に1回目を造ったときは精米歩合45度で仕込んでいます。ところが杜氏をはじめ自分たち自身が十分に満足できるデキではなかったこともあり、いったんソールドアウトにして締め切りました。
そして2回目の今年の出荷分からは精米歩合を35%で仕込み直し、さらに自信を持って出せる商品として再スタートを切ったというプロセスがあります。

―「N35 Terroir BrutNature」(テロワール ブリュット ナチュール)はいかがでしょう?

後藤 ワインと比べてまだ知名度の低いシードルの中で、最高のものを目指したいと思って造った作品です。原料は地元農家の方が丹精込めて育てたりんごを仕入れさせてもらい、「紅玉」「シナノゴールド」「ふじ」の3品種に限定して使用しています。
発酵用のりんごといっても見た目だけが少し落ちるだけで、食用としてまったくそん色ないものを採用しています。

合わせるお料理としては「ガレット」が本場フランスの定番マリアージュで、ほかにも鶏や豚など白肉食材にもよく合います。エスニック系の香辛料の効いたお料理にも相性がいいでしょう。

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地元9軒の農家と契約し、一般流通に回さないりんごをシードルの原料として有効活用している。

―製造でのこだわりポイントは?

後藤 製造工程ではタンク内で1次発酵させ、次に瓶の中で2次発酵させるのですが、酵母を入れる関係で沈殿物の澱(おり)が溜まります。
これを取り除くため、毎日手作業でルミアージュ(動瓶)を行い、瓶を徐々に逆さに動かしながら1ヵ月間置きます。
澱が口元に十分に溜まったところで、デゴルジュマン(澱引き)のためネックの部分だけ凍らせ、栓を開け炭酸の圧力だけで澱を飛ばして減った分をドサージュ(補液)し、味わいを整えています。

澱自体はなんの問題もないですが、より快適に楽しんでいただくためにこうした見えない工夫を凝らしています。

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上質な白ワインのような風味にりんごの上品な香りが漂い、鼻孔にとても心地よいシードル。
炭酸の刺激もちょうどよく甘さはほんのり感じる程度。料理と一緒に飽きることなく楽しめる逸品。

―今後の目標をお聞かせください。

後藤 会社設立80周年を迎えたこともあり、もう一度会社全体を再構築していきたいと考えています。ブランディングや商品構成、すでに注力している輸出を伸ばしていくことも含め、日本酒をはじめアルコールの市場減速に対応する計画を立てて実践していきます。

社内では人事制度や福利厚生を見直して働きやすい環境を整え、チャレンジングな姿勢で次の時代に向けての経営に臨みたいと思います。

―本日はありがとうございました。

北緯35度のテロワール(純米大吟醸)(720ml)

「北緯35度のテロワール」(純米大吟醸)(720ml)
価格:¥4,400(税込)
店名:喜久水オンラインショップ
電話:0265-22-2300
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://kikusuisake.co.jp/post_prd/n35/
オンラインショップ:https://kikusuisake.co.jp/

N35 Terroir BrutNature(テロワール ブリュット ナチュール)(750ml)

「N35 Terroir BrutNature」(テロワール ブリュット ナチュール)(750ml)
価格:¥2,970(税込)
店名:喜久水オンラインショップ
電話:0265-22-2300
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://kikusuisake.co.jp/post_prd/cidre-n35-terroir-2019-brut-nature/
オンラインショップ:https://kikusuisake.co.jp/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
後藤髙一(喜久水酒造株式会社 代表取締役社長)

1956年、長野県飯田市生まれ。1980~2000年、株式会社リクルートに勤務。飯田へ戻り家業の酒販店に勤務。2016年、喜久水酒造株式会社に役員として入社。2023年10月、代表取締役社長に就任。

<文・撮影/田中省二 MC/伊藤マヤ 画像協力/喜久水酒造>

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