全国有数の干し芋の産地、茨城県。そのなかでも、ひたちなか市・東海村・那珂市は、県内トップの生産量を誇ります。今回アッキーこと坂口明子編集長が気になったのは、その産地の一つ東海村から生まれた干し芋。原料となるサツマイモは、有機JAS認証を取得した紅はるかです。これまでの歩みや、オーガニック栽培について、株式会社照沼 取締役社長の佐々木貴史氏に取材陣が伺いました。
農薬・化学肥料不使用!もっちりとした食感と自然な甘みの「有機平干し芋」
2024/08/28
株式会社照沼 取締役社長の佐々木貴史氏
―創業からの歩みをお聞かせください。
佐々木 もともとは、茨城県の東海村で20代ほど続く農家の家系であり、1962年に初代・照沼勝一氏が創業し、干し芋などの卸問屋を始めました。その後、1977年に「株式会社照沼勝一商店」を設立。サツマイモの栽培を中心に事業を拡大していき、干し芋を自社で生産するようになったのは20年程前からです。2005年に自社工場を設立し、本格的に干し芋の生産するようになりました。
―長年勤めていた会社を退職し、農業の世界へ足を踏み入れたとか。
佐々木 新卒から19年間ゼネコンに勤めておりました。あるとき、農業に関するセミナーの説明会に参加したことで人生が一変。後学のために日本の農業や海外の状況を知りたいという軽い気持ちでしたが、自分にも何かできることがあるのではと思い立ち、長年勤めていた会社を退職して農業の世界に飛び込みました。脱サラして農業の道に進んだのは、日本の農業や食糧問題をなんとかしたい、安全安心な食べ物を多くの人に届けたいという想いからです。
―ゼネコンを退職後、すぐに農業を?
佐々木 農業セミナーの関係者から紹介されて、タイでオーガニック野菜事業を立ち上げるプロジェクトに参加しました。ミニトマトを栽培している会社で半年間ほどプロジェクトに関わり、日本に帰国。その後、セミナーやタイで一緒だった仲間と埼玉県で新規就農し、トラクターに乗ったり、作物を育てたりと実際に農作業をしながら約2年経験を積みました。
―入社のきっかけは?
佐々木 タイのプロジェクトでお世話になった、ミニトマトの会社のオーナーに再会したことです。久しぶりにお会いして、一緒に食事をしながら近況報告をしていた際、茨城県でサツマイモ事業を始めるとお聞きし興味を持ちました。農薬も化学肥料も使わず、広大な土地でサツマイモを栽培している会社があると聞いて、一度見学に行くことに。実はその会社が照沼で、自分がやりたい事はこれだ!と思い入社を決めました。
創業60年の節目にロゴを一新。
「猪のように猪突猛進、力強く新たなことに挑戦する」という想いが込められている。
―自社農園で栽培されている「紅はるか」には、さまざまな受賞歴があります。
佐々木 2004年に、2代目が慣行栽培から農薬や化学肥料を使用しない栽培方法に切り替え、試行錯誤しながら挑戦してきました。長年の努力が認められて、「日本さつまいもサミット ファーマーズ・オブ・ザ・イヤー 2020-2021」を受賞。これは、農家のユニークな取り組みに対して与えられる賞なのですが、難しいといわれる農薬・化学肥料不使用のサツマイモ栽培に対する挑戦を評価していただきました。
翌年には、自社農園で栽培した紅はるかが、シーズンの中で一番おいしいとされる「さつまいも・オブ・ザ・イヤー」を受賞いたしました。名誉実行委員長を務めた、「紅はるか」開発者の山川理先生(農学博士)からは、「私が作った紅はるかそのものの味だった」と総評コメントをいただきました。それまで頑張ってきたことが報われたようで、大変うれしかったことを覚えています。
夏のさつまいも博2023(これぞ上品な甘み「干し芋」部門)でも、
照沼の干し芋が第1位に。
―「有機JAS認証」も取得されています。
佐々木 「有機JAS認証」を取得するには、農薬や化学肥料を使用しないのはもちろん、育てる環境など、他にもいくつか条件があります。たとえば、農薬を使用している畑が隣にある場合は、そこから一定の距離を置いた場所で栽培しなくてはなりません。また、何を・いつ・どの畑で・どう管理しているかの栽培記録も必須です。これらの条件を満たしたうえで、さらに干し芋に加工する工場も有機認証を取得する必要があるのです。
干し芋の原料となるサツマイモは、自社農園で栽培したもの。
佐々木 最初の2年間はサツマイモの栽培と干し芋加工の管理体制構築に注力し、3年目にようやく有機認証を取得することができました。その後1年かけて、パッケージを製造したり、工場のオペレーションを確認したりと体制を整え、4年目にようやく有機JAS認証の干し芋として販売をスタートさせました。
―干し芋の原料「紅はるか」の特徴を教えてください。
佐々木 紅はるかは、ねっとり系で甘みが非常に強い品種で、他の品種よりも病気や乾燥にも強く栽培しやすいのが特徴です。もともと料理や焼き芋に適しており、干し芋には向かない品種といわれていました。試しに加工してみたところ、ねっとりして甘く色もきれいな干し芋に。味もとてもおいしかったので、女性を中心に人気を集め、今では一番人気の品種です。
干し芋の白い粉は、糖分が結晶となって浮いてきたもの。
甘くておいしい証だ。
―製造時にこだわっていることは?
佐々木 弊社が目指しているのは、毎日食べても飽きない味わいの干し芋です。砂糖も添加物も加えず、サツマイモ本来のおいしさを味わっていただけるよう製造しております。
原料は有機栽培のサツマイモで、収穫時期により保管方法や熟成期間も工夫。サツマイモの状態、その日の気温や湿度によって、蒸す時間・スライスする厚さ・乾燥時間を調節し、熟練の職人が手作業で一つひとつ丁寧に仕上げています。
昔から変わらない手法で、手間暇かけて丁寧にサツマイモを加工している。
―お客様の反応はいかがですか?
佐々木 やはり「おいしかった」と言っていただけるのが大変うれしく、従業員にとっても一番の励みになります。普段、干し芋を召し上がらないお子さんが弊社の商品を好んで食べたとか、食が進まない入院中でも食べられたというお声を頂戴したことも。有機栽培で自然のおいしさにこだわって作ってきたおかげで、喜んでいただけたのではと感じております。
土づくりからこだわり、厳選された原料を干し芋に。
―保存方法も教えてください。
佐々木 長期保管する場合は、冷蔵または冷凍で保存するのがおすすめです。開封して空気に触れるとカビが発生したり、乾燥して固くなったりする可能性がありますので、数日で食べきる場合はジッパー付きの袋に入れて冷蔵保管してください。すぐに食べない場合は、ラップで包んで冷凍保存しておき、食べる前日に冷蔵庫に移せば自然解凍されおいしく召し上がっていただけます。
―最後に、今後の展望をお聞かせください。
佐々木 弊社のこだわりの詰まったサツマイモを原料に使った有機干し芋のおいしさを広めていきたいと考えております。我々の取り組みや有機栽培の魅力を伝えることで、日本の有機農業の先駆者として業界を盛り上げる一助になれればうれしく思います。また、従業員が働きやすく誇りをもって勤められる会社であることはもちろん、お客様に喜んでいただける商品をつくり、地域や社会にも貢献できる企業でありたいと思います。
―貴重なお話をありがとうございました!
「有機JAS認証 平干し芋100g」
価格:¥650(税込)
店名:照沼(てるぬま)公式オンラインショップ
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://hoshiimo-online.shop-pro.jp/?pid=178679520
オンラインショップ:https://hoshiimo-online.shop-pro.jp/
メディアサイト:https://hoshiimo-online.shop-pro.jp/apps/note/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
佐々木貴史(株式会社照沼 取締役社長)
1976年大阪府生まれ。19年間のゼネコン勤務後、日本の食料や農業の問題を目の当たりにし、何とかこの問題を解決したいと一念発起し農業の世界へ転身。
2年間の修業期間を経て、2020年に株式会社照沼へ入社。2021年 同社取締役社長に就任。お客様の安全安心にこだわり、日本有数の面積を誇る自社農園において、有機栽培でさつまいもづくりをしている。
<文・撮影/香川けいこ MC/伊藤マヤ 画像協力/照沼>