今回、編集長のアッキ―こと坂口明子が注目したのは、群馬県浅間山麓の広大な自然を表現した純米大吟醸酒と、大胆にも酒粕を生地に練り込んだ窯焼き本格ピザ。地の利と酒蔵のメリットを生かした商品開発の意欲は、野菜に合うお酒造りのためにビーガン認証をとったことにもよく表れています。
酒造とともに観光センターを営業しながら浅間山の魅力を伝える浅間酒造株式会社・代表取締役の櫻井武氏に、商品のこだわりなどを取材陣がインタビューしました。
自社栽培米を醸した「純米大吟醸 あさまやま」、酒粕入りの窯焼き「新鮮バジルのマルゲリータ」
2024/08/29
浅間酒造株式会社 代表取締役の櫻井武氏
―はじめに御社の沿革を教えてください。
櫻井 当蔵は1872年(明治5年)に群馬県から酒造の許可が出た記録が残っているこの年を創業としています。しかし厳密にはそれ以前の寛政の時代から酒造りをしていたようです。
私の祖父である3代目は酒造以外にも多角経営に乗り出しています。造ったお酒の売り場を設けて広く皆さんに楽しんでもらおうと、昭和中期に草津温泉で観光旅館を始めました。当初は酒運搬用のタンクローリーで水を運ぶなど、大変な苦労もあったと聞いています。
その後も1988年に浅間酒造観光センターをオープンするなど、事業開拓の意欲は衰えることなく引き継がれています。
運営する「浅間酒造観光センター」。
製造直売所のここでしか販売していないオリジナル酒も多数品ぞろえ。
今後はイベント会場としても活用する。
―子どもの頃から後を継ぐご意思が?
櫻井 はい、物心ついたときから祖母に後を継ぐようにずっと言われ、まだ小さいのに「農大二校に進んで農大に行きなさい」などとささやかれていた記憶すらあります(笑)。
ほかの進路をほとんど考えたことはなく、大人になってもその道に進むものを思っていました。
―その後のご経歴を教えてください。
櫻井 祖母の助言どおり大学は東京農大に進学し、卒業後は山形県の出羽桜酒造さんに2年間修業をさせていただきました。実家の商売では関係なかったのですが、同社は大学の実習でお世話になったご縁があり、当時の社長に進路を相談したことから実現しました。
―どんな学びがありましたか?
櫻井 現場に入れてもらえたことでお酒造りに関するありとあらゆることを勉強させていただきました。それだけでなく、とてもしっかりとした指導機関のもとで酒造以外の経営面も学べたのは素晴らしい経験でした。
2011年に酒米の自社栽培をスタート。
厳選した品種「改良信交」は長野原の土地によく馴染み、
有名品種にも引けをとらない酒米に育つ。
―HP内に「日本一野菜に合うお酒」のコピーを拝見しました。
櫻井 群馬県は海なし県である反面、高原野菜など良質な山の恵みが採れる土地柄です。その特徴を前面に出し、野菜のえぐみを除いてうま味を引き出すお酒造りを心がけ、そのためにビーガン認証も取得しました。
当蔵のお酒は単体での強いインパクトより、野菜を中心とした食事と合わせることで初めて力を発揮するタイプに仕上げています。
―今回ご紹介する「純米大吟醸 あさまやま」の特徴は?
櫻井 当商品は自社所有の田んぼで収穫した酒造米「改良信交」を100%使用することで、ご当地ならではの日本酒に醸しているのが大きな特徴です。
浅間山の風景を連想させる「緑」を感じられる風味を目指しているため、原料米と酵母から出てくる爽やかな香りと少しの酸味をお分かりいただけるのではないでしょうか。まずは料理の序盤に香りを堪能していただいて、あとは食事とゆっくり楽しんでいただければと思います。
精米歩合40%。
酒米「改良信交」からくるふわっと上品な香りと爽やかな風味が心地よい。
のど越しはスムーズで、いくらでも飲みたくなる純米大吟醸。
―「新鮮バジルのマルゲリータ」の特徴はいかがでしょうか?
櫻井 観光センターを立ち上げたときにあったピザ販売の構想がなかなか形にできず、設置したピザ釜のメーカーさんにも気にかけてもらっていた状態でした。今度こそ販売にこぎつけようと2019年に始めたのが今回ご紹介のピザです。
生地を作る段階で酒粕を練り込むことで、より一層生地がモチモチするのが特徴です。その点は酒粕なしでも作り比べをして実証済みです。また地元の吾妻地方で育ったバジルの爽やかな香りがいいアクセントになり、全体のおいしさを引き立てているのがポイントです。解凍してからフライパンで温めるか、特に魚焼きのグリルで焼くと香ばしさがよみがえるのでお勧めです。
生地は酒粕の効果でバツグンのもちもち感。
地元吾妻郡産のバジルが新鮮な香りをしっかり主張し、
本場イタリアンの風味をたっぷり演出している。
―今後の展望をお聞かせください。
櫻井 観光センターはどちらかといえば団体の方が多く動いていた時代のビジネスモデルです。現在は個人旅行者のほうが多いですから、そこからの脱却を図って試行錯誤しています。
今まで団体のお客様に食事していただいたスペースを有効活用するために、音楽イベントを開催する計画があります。そのほか夏休みにお子様が楽しんでいただけるイベントも構想中です。
今後ともお酒で浅間山麓の魅力を伝え、観光センターを保有しているメリットを生かして事業活動を進めていきたいと思います。
―本日はありがとうございました。
「純米大吟醸 あさまやま」(720ml)
価格:¥3,300(税込)
店名:浅間酒造
電話:0279-82-2045(9:00~17:30 土日祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.asama-shuzo.jp/view/item/000000000424?category_page_id=ct2
オンラインショップ:https://www.asama-shuzo.jp/
「新鮮バジルのマルゲリータ」
内容量:約300~350g
直径:約23~25cm
価格:¥1,200(税込)
店名:浅間酒造
電話:0279-82-2045(9:00~17:30 土日祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.asama-shuzo.jp/view/item/000000000148?category_page_id=ct32
オンラインショップ:https://www.asama-shuzo.jp/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
櫻井武(浅間酒造株式会社 代表取締役)
1979年4月2日群馬県生まれ。幼少期から酒造業を継ぐことを決めていて農大二高から東京農大へ進学、醸造学を学ぶ。大学卒業後に浅間酒造株式会社に入社後、出羽桜酒造株式会社で2年間の研修を経て、2004年から浅間酒造で勤務。2013年4月 同社社長に就任し、現在に至る。
<文・撮影/田中省二 MC/三好彩子 画像協力/浅間酒造>