今回、編集長アッキ―こと坂口明子が気になったのは、これまでに30万本以上を売り上げたという、オリジナルの「白ぽん酢」。販売元は、福岡市と北九州市の間に位置し、海や山の自然に恵まれた遠賀郡岡垣町に本社を置く「株式会社グラノ24K」です。地元の素材を活かした料理や調味料を開発し、ビュッフェレストランも展開する元気な企業。今回はそのこだわりや楽しみ方について、代表取締役の小役丸秀一氏に取材陣が伺いました。
爽やかな香りがふわり 食材の色も楽しめる「白ぽん酢」
2024/10/10
株式会社グラノ24K 代表取締役の小役丸秀一氏
―御社の沿革について聞かせてください。
小役丸 私が現在のような会社を興したのは、小学生の頃の記憶に遡ります。友人の家へ遊びに行くと、そのお母さんたちが「農業は儲からんから農業するなよ」と言うわけです。畑には農作物が山積みにされて、小バエがたかっている。僕は商売人の子ですから、常に「物は大事にしろよ」と育てられたので、その光景を不思議に思っていました。おばちゃんに理由を尋ねると、「市場に出しても儲からないから」と。それらは今で言う規格外品だったんですね。それがずっと記憶にあって、もしこれらをお金にすることにできたら農家さんは楽になるのではないかなぁと、子供心に思っていました。
岡垣町は福岡市内から1時間ちょっとの場所なのですが、お店にわざわざ来て、どこにでもあるようなものを出されるのは残念だと、お客様からアドバイスをいただきました。それで当時としては珍しかった地産地消、身土不二をコンセプトに、ここにしかない地域の規格外の野菜などを使うようになりました。
また、ニューヨークを訪れる機会がありまして、非常に感動したのがプラザホテルで開催されていたビュッフェでした。僕らが知るビュッフェと言えば、山積みの料理を効率よく、腹いっぱい食べられる、というものだったのですが、プラザホテルのビュッフェは四重奏の演奏が流れる中、沢山のコックさん達が並んで、目の前で調理をしてくれる調理風景が見える非常に食の豊かさを感じる優雅なものでした。
そこで、「弊社もそのようなビュッフェスタイルをやってみたい」と考えました。また料理をするときは一般的に、献立を作って材料を調達するものだと思いますが、僕らは地元の旬の素材ありきで献立を組むようにしました。すると、それが面白いということで、福岡市の都心に「野の葡萄」というビュッフェのお店を出店することができ、これが非常にヒットしまして、全国各地に同様のお店を立ち上げ、さらにホテルの朝食事業などのお手伝いをさせていただくことになりました。
「ららぽーと福岡」でも、青空の下でBBQが楽しめる
「バーベキューヴィレッジぶどうの樹 fukuoka」を展開中。
小役丸 コロナ禍で一度全て撤退しましたが、現在は再び福岡や大阪、京都のホテル様からビュッフェ事業を依頼され、ご好評をいただいています。また弊社にはブライダル事業もありまして、ぶどう畑や海辺で結婚式ができるのですが、一番多忙な時期には年間約250組ものご結婚式をさせて頂き、業界内からも注目していただきました。
「グラノ24K」の、ぶどう畑の中の結婚式場。
夜もライトアップされて素敵。
―小役丸社長は幼少期の頃、どのようなお子さまだったのですか?
小役丸 うちは父が採石業や材木業、母が小さな旅館を経営しておりまして、私はそんな商売人の両親の背中を見て育ちました。幼い頃は虚弱体質で、学校を休むことも多かったのですよ。
私が小学生の頃に父がぶどう園を始めました。岡垣町という場所は、観光地でもなければ知名度もありませんでした。また、父はぶどう作りがあまり上手ではなかった為、カタチの悪いぶどうしかできず、観光ぶどう園もなかなか上手く経営できていませんでした。
高校に入るとウェイトリフティングを始めました。あまり強くはなかったのですが、練習はまるで労働のようなハードさでした。当然、女の子も誰も見に来ません(笑)。大学卒業後は、大阪の辻調理師学校に進学しまして、在学中に料理店でも少し勉強させていただき、岡垣町に戻りました。
ある時、父が友達のニュージーランド人を旅館に招待したことがあり、ぶどう畑でバーベキューをしたところ、彼らは楽しみ上手なので、音楽に合わせてダンスを踊って、「ワインだ!ビールだ!」と非常に楽しんでもらえました。それを近隣の方々にも味わっていただけたらと、バーベキュー場を始めました。40年前だったので非常に画期的でした。
―後を継ぐために、でしょうか?
小役丸 そうですね。でもテレビの取材などで「何代目ですか?」と聞かれた際は、「創業者です」と答えていました。なぜなら会社は、どの代も創業者の思いで事業に臨まなければ成功しません。時代の変化に対応することも大事にしながら今日まで歩んできました。
―仕事をする上で大切にしていることは?
小役丸 スタッフを大切にすること、お客様の期待を裏切らないことですね。お客様にどうしたら楽しく過ごしていただけるかを、みんなで考えられたらいいなと思っています。また、食を通じて社会にどう貢献できるかについても常に考えています。
―それでは「白ポン酢 ほんのりとろみ柚子」についてお伺いします。まずはポン酢なのに白くてやさしい色!ユニークな商品ですね。
小役丸 こちらは弊社のオンラインショップで人気ナンバーワンの商品です。私はもともとポン酢が好きなのですが、例えばふぐとか、せっかく真っ白な身を綺麗に薄造りでお出ししているものに、黒い醤油ポン酢を添えるのは勿体無いと思っていたんです。そこで、「白いポン酢ってできないのかな?」という独り言を社内でずっと呟いておりました(笑)。すると、うちのものづくりの担当者が「社長、作ってみましょう」と。それでこのような面白い商品ができたのです。
透明感のあるふぐの刺身にも合わせたいポン酢。
―開発時にこだわられたことは?
小役丸 僕は独り言を言い続けるだけでしたが(笑)、現場は苦労したと思います。まず白ポン酢のベースは昆布出汁です。通常考えられない位の量の昆布を使ってとった出汁を一晩寝かせて風味豊かに仕上げています。白色にこだわるために醤油を使わず、塩をほんのちょっと。そしてこちらの「柚子」には、国産の柚子果汁を15%使用しています。「ほんのりとろみ」としたのは、最初はサラサラとしたテクスチャーのポン酢だったのですが、余韻を残した方が良さそうととろみをつけてみました。またできるだけ化学調味料に頼らず作ろうということで、価格の設定にも苦労があったかと思います。
―いろんなお料理に合いそうですよね。
小役丸 そうなんです。うちには魚の塩釜焼きという名物料理があるのですが、まずはそれにも合いますし、カルパッチョやサラダ、パスタなど何にでも合うので万能調味料的に使っていることが多いですね。公式HPにもおすすめの楽しみ方をたくさん掲載しています。また六本木に「ジャン-ジョルジュ」という、ニューヨーク発のモダンフレンチがあるのですが、実はこの白ポン酢を大変気に入って頂き、本場ニューヨークの彼のプロデュースの食料品店で一時お取り扱いもして頂きました。
パスタの仕上げにかけて、柚子の爽やかな香りをプラス。
―購入された方の声で印象深いものは?
小役丸 弊社は博多駅の新幹線口の構内にもショップを展開しているのですが、一度そこでポン酢を購入された方が、次はこれを購入するためだけに、わざわざ新幹線の入場券を買って構内に入ったと聞きました。これは非常に嬉しかったですね。
―今後開発してみたい商品はございますか?
小役丸 近年は「健康」が大きなキーワードだと思っておりまして、例えば歳を重ねて、入院するまでもないけれどカラダやココロが弱ってくる『フレイル』を予防できる商品開発を行いたいと思い、実は現在進行中です。
―例えばどのような商品ですか?
小役丸 タンパク質が取れるスープやアイスクリームなどですね。もちろん地産地消のものを使って開発していて、現在テストを行なっています。「栄養不足」と言うと、皆さんサプリメントを頼りにされると思うのですが、食べものからでも栄養がきちっと取れれば一番いいなと。食業界には長らく、「命を保つ」や「美食」といったキーワードが掲げられてきたと思いますが、さらにカラダとココロの「健康維持」といったキーワードを叶える商品が生まれるといいなと思っています。
販売に向けて研究開発を進めている『フレイル』予防食。
―最後に小役丸社長の夢をお聞かせください。
小役丸 「夢を語り続ける会社を作ること」ですね。会社を大きくしたいとか、もっとお金持ちになりたいという想いはあまりないんです。夢を語り続けられる会社を続けていくことが夢。そして、社会に必要とされる企業であり続けたい、という想いもあります。これからも「お前んとこがあったおかげ」と言われ続ける会社を運営していけたら幸せです。
岡垣町を代表する企業となった「株式会社グラノ24K」。
写真は「ぶどうの樹岡垣店」などがある「森エリア」。
―貴重なお話をありがとうございました。
「白ぽん酢 ほんのりとろみ柚子」(300ml)
価格:¥670(税込)
店名:ぶどうの樹 公式オンラインストア
電話:0120-210-014(10:00~17:00 土日祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://oishitsushin-budounoki.com/shopdetail/000000000086/
オンラインショップ:https://oishitsushin-budounoki.com
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
小役丸秀一(株式会社グラノ24K 代表取締役)
1955年、福岡県遠賀郡岡垣町生まれ。辻調理師専門学校卒業後、父が営む葡萄畑、バーベキュー施設を運営する会社に入社。1995年に株式会社グラノ24Kを設立。「グラノ」はスペイン語で「種・実」で、事業やスタッフを実と例え、純金のような本物を実らせるように、という思いを込めた。以降、「おいしい たのしい うれしい」を合言葉に、レストランやウエディング、体験農業が楽しめる「岡垣 ぶどうの樹」をはじめ、パン屋や鮨屋など多角的に食の場をプロデュースする。
<文・撮影/鹿田吏子 MC/菊池美咲 画像協力/グラノ24K>