鎌倉と言えば、権五郎力餅や鳩サブレー、鎌倉カスター、クルミッ子など、全国的にも知られるお菓子の名前を次々と思い浮かべることができるお土産の宝庫。今回、編集長アッキ―こと坂口明子が気になったのは、そんな鎌倉土産の中で今、存在感を光らせている「一口あっぷるぱい かまくまさん」です。その商品開発までのお話、こだわりを、株式会社イコールコンディション 代表取締役の佐藤卓文氏、そして2023年7月より同社をグループに迎えた株式会社Fahne 代表取締役の清家巧貴氏に伺いました。
ベーカリー生まれの絶品土産、鎌倉で人気の一口アップルパイ「かまくまさん」
2024/10/10
株式会社Fahne 代表取締役の清家巧貴氏
―株式会社イコールコンディション様の沿革について教えてください。
佐藤 私はゲーム会社のSEGAで営業担当として働いたのち、独立して新しいビジネスの情報収集をしていました。そんな時、パン職人の方に出会って話を聞く機会があり、業界に大きな将来性を感じたことから、1999年に共同で最高級パンの店「ルセット」をオープンさせたのです。パンはそれまで原材料ありき、価格ありきで作るのが一般的だったのですが、私たちは発想を転換し、お金と手間をかけ、その結果できたものに値段をつけて販売し、パンの価値を高めたいと考えました。
―当時だとかなりの異端児ですね。
佐藤 そうですね。デフレ時代で物の物価がどんどん下がった時代でしたので、その中で高価なパンを出す店は他になかったように思います。ちょうどインターネットが普及し始めた頃でもあり、「たとえ近所で需要が少なかったとしても、ネットで全国の方に販売できるだろう」という思いもありました。
立ち上げて半年後にネット専売の「アットシナモン」という商品を開発すると、「インターネット×高級パン」というキーワードがキャッチーだったのか、毎月のようにメディアに取り上げていただくようになり、結果1年3ヶ月待ちという状態になりました。「売れる」とは思っていましたが、その予想をはるかに超える売れ行きでした。
イコールコンディション「ルセット」の大ヒットパン、アットシナモン。
佐藤 そして10年が経ち、次はおいしいバケットを食卓に届けようと考えました。おいしいフランスパンを作るにはフランスの小麦が欠かせませんが、それが今ほどスムーズに手に入らない時代。そんな中、フランスで作ったパンを現地でまずは半分だけ焼き、それを最終的に日本で焼き仕上げる半焼成パンの存在を知り、輸入業者様と組んで販売を始めました。さらに「セレクトパンヤ」という卸専用の部門を作り、「ディーンアンドデルーカ」さんや、都内有名レストランにも利用していただけるようになりました。
―その後、御社は「パンのプロデュースカンパニー」として、グルテンフリー専門店の「バルテン」や、高級スコーン専門店「小灯」など、様々なブランドを立ち上げられています。今回商品をご紹介いただいたブランド「あっぷるぱい考太郎」もその一つですね。
佐藤 海外ではパン屋はベーカリー、ベーカーと呼ばれ、パンのみならず、クッキーやパイなどの焼き菓子も作っています。パリに「ポワラーヌ」という有名なパン屋さんがあり、私たちも輸入販売をしたことがありますが、その店もクッキーやサブレが人気です。そこで私たちも焼き菓子に力を入れることで、ベーカリー、ベーカーの価値を高め、パン文化をもっと深めることができるのではないかと考えました。
2020年5月に鎌倉にオープンした「あっぷるぱい考太郎」。
―アップルパイが選ばれた理由は?
佐藤 アップルパイ=庶民的なものというイメージがあったのですが、もっと価値が高まってもいいのでは?と思う商品のひとつだったからです。
―好きな方が多い割に、販売しているお店が少ない印象がありますよね。
佐藤 始めてみて分かったのですが、リンゴが通年で手に入りにくいこと、また生地作りにコストがかかることが広まりにくい理由なのかと思いました。
リンゴに関しては市場の方と話をしたり、青森県の産地に直接依頼をするなどして数を確保していきました。リンゴは秋が旬で、夏前には収穫できるリンゴの品種は少ないのですが、秋に取れたものを特殊な冷蔵庫で保管して夏まで利用できるようにもしました。お客様にも「味がいい」とお褒めの言葉をいただくのですが、こうしたこだわりが生きているのだと思います。
―鎌倉にある「あっぷるぱい考太郎」の店舗では、アップルパイだけで約33種類のバリエーションがあると知り、驚きました。そこでいよいよ「かまくまさん」も生まれるのですね。
佐藤 生のアップルパイも今ではだいぶ遠くまでお送りできるようになったのですが、もう少し気軽に楽しめるものがあったらと考えていました。それに、この業界で成長しているベーカリー、パティスリーをチェックしますと、多くが焼き菓子で成功していたのです。そこで私たちも何か焼き菓子をと試行錯誤していた時に、弊社内の練りパイが使えることに気づきました。先ほどもお話しした通り、何層にもなった折りパイはコストがかかり、さらに時間が経つと潰れてしまいますが、練りパイだとそれがクリアできます。しかも弊社の練りパイは、バターと国産小麦で作っており、社内でもおいしいと評判でした。そこで、練りパイを使った一口アップルパイ、「かまくまさん」が生まれたのです。
サクッとした食感の練りパイは、パン屋の技術の結晶!
片手で手軽にアップルパイが味わえる新スイーツ「かまくまさん」。
―早速いただきましたが、パイがサクッとしていて、中にはフレッシュなリンゴのフィリングが入っていて「まさにアップルパイ!」と驚きました。冷やしても温めてもおいしくいただけますし、アイスクリームなどに砕いてトッピングするのも良いですよね。
佐藤 ありがとうございます。うちは元々パン屋です。小麦粉とバターをミキシングすることだけでも様々な技術を持っており、だからこそおいしいパイ生地を作ることができたと自負しています。
パン屋生まれの練りパイに、青森産リンゴのフィリングをたっぷりと。
―開発する中でのご苦労は?
佐藤 添加物などを加えていませんので、劣化を防ぐためのシーリングを考えたところでしょうか。管理もしっかりと行なっています。
―可愛いキャラクターはどのようにして生まれたのですか?
佐藤 弊社は2023年にFahneグループに参画させていただいたのですが、それまでは手工業的な感じで、行き当たりばったりな会社でした。グループに入ったことで体制的に様々なアドバイスをいただくことができたのですが、その中でいろいろと考えた結果キャラクターを作ろう、という事になりました。以前はパッケージに「あっぷるぱい考太郎」という文字を添えていただけだったのですが、キャラクターが加わったことでお客様の目にも留まって認知されやすくなり、各所への営業もしやすくなりました。
パッと目につく「かまくまさん」のキャラクター。
―「かまくまさん」は現在、プレーン味と、紅茶味の2種類。「メイドイン東京」という商品はどんなアイテムなのでしょうか?
佐藤 「あっぷるぱい考太郎」は鎌倉本店のほか、数店舗を展開しており、こちらは東京ソラマチ店限定で販売している商品です。プレーン味にナツメグが加わったちょっとスパイシーなかまくまさんです。今後も、店舗限定やリンゴの品種違いのかまくまさんなど、様々なスタイルに挑戦できればと思っています。
左下から、「かまくまさん プレーン」、「かまくまさん 紅茶」、
東京ソラマチ店のみで販売している「Made(in)Tokyo」。
かまくまさんは、6個入りと10個入りを用意。
(「Made(in)Tokyo」は10個入りのみ)
―清家様がイコールコンディション様と出会った時の印象についても聞かせてください。
清家 私はもともと税理士で、様々な会社様の売上構造、収支構造、財務状態、人材などを見せていただいてきました。その経験から税理士はMA&Aに向いている職業だと思うようになり、現在はいくつかの会社をM&Aによりグループ化しています。アップルパイに関してはノーマークだったのですが、佐藤社長と出会い、商品に対する強い思いや、研究熱心なところを知るにつれ、ぜひ応援したいと思うようになりました。商品の売れ行きも好調で、社員さんも非常に頑張っておられますが、手作りなのでとにかく多忙で、いつか疲弊しまうのでは?という懸念点があり、グループの一員となっていただくことで、より良い環境を作れたらと思いました。
―今後の展望についても聞かせてください。
佐藤 市場的にはパイ菓子はまだまだ手つかずの分野です。私たちはその中で進化を続けながら、パイといえば考太郎さん、かまくまさんと思っていただけるように成長できればと思います。
またFahneグループ全体で「大きな夢企業群」を目指していますので、そのグループの一員として、まずは売り上げ10億円を目標に掲げています。そのためにも会社としての体をしっかりと成し、かまくまさんを、鎌倉を代表するお土産に育てていきたいですね。本当に、Fahneグループになったおかげで、こうした展望がはっきり描けるようになり、嬉しく思っています。
清家 イコールコンディションという会社にしっかりとしたパンの技術があったからこそ、アップルパイ製造の技術が上がり、それは将来、アップルパイ市場全体の広がりにも繋がっていくと思います。またその結果が売り上げにも現れ、従業員さんにも還元できる、そんな循環が生み出せたら理想的ですね。Fahneグループが大切にしていることは、皆が楽しく、幸せに仕事に向き合える環境を作り、そこから新しい価値観を生み出していくこと。今後のFahneグループ、イコールコンディションに、ぜひご期待ください!
―清家会長と佐藤社長がお互いをリスペクトされている関係性や、食のシーンをもっと盛り上げたい、という思いが伝わりました。お話をありがとうございました!
「あっぷるぱい考太郎 一口あっぷるぱいかまくまさん」(6個入り)
価格:¥1,620(税込)
店名:イコールコンディション
電話:HPのお問い合わせフォームにて対応
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://shop.recette.co.jp/shopdetail/000000000331/ct179/page1/order/
オンラインショップ:https://shop.recette.co.jp
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
佐藤卓文(株式会社イコールコンディション 代表取締役)
1999年10月に、株式会社イコールコンディションの前身である有限会社天然酵母工房を創業。代表取締役に就任。2023年7月より株式会社Fahneグループの傘下に加わる。
清家巧貴(株式会社Fahne 代表取締役)
1980年大分県生まれ。税理士事務所、大手コンサルティングファームの経験を経て2011年に地元大分県佐伯市にて税理士コンサルタントとして開業。中小企業の成長支援のために会計・税務・コンサルティングを提供。また、5社をM&Aにてグループ傘下に加えて、地方の課題である人・もの・金・情報の循環の仕組みを構築している。今後の100億円グループを構築していくために積極的にM&Aを実施予定。本社建物及びフブランディングは中小企業長官賞を受賞。
<文・撮影/鹿田吏子 MC/伊藤マヤ 画像協力/イコールコンディション>