今回、編集長アッキ―こと坂口明子が注目したのは5種類の味がセットになった「もみじまんじゅう」とマカロンのようなかわいらしいお菓子の「淡雪花」。製造・販売しているのは「もみじまんじゅう」を作り続けて100年の老舗「藤い屋」です。伝統製法を守りながらも、時代に沿う新しい商品を生み続けている裏側を株式会社藤い屋 代表取締役社長の藤井嘉人氏に取材陣が伺いました。
100年の伝統製法で作る「もみじまんじゅう」とシャリッ、ふわ、プルン食感の「淡雪花」
2024/10/16
株式会社藤い屋 代表取締役社長の藤井嘉人氏
宮島で誕生し2025年で創業100周年を迎える藤い屋。
現在も「もみじまんじゅう」のおいしさを全世界に届けている。
―沿革を教えてください。
藤井 藤い屋は、2025年に100周年を迎えます。広島県宮島の地で、創業当時から「もみじまんじゅう」を作り続けて100年。私が4代目になりました。
近年では、誠実においしいもの作りを続けるために、「もみじまんじゅう」の原料となる小豆や小麦を育てる「畑LABO」計画をスタート。五日市に原料作りのほか、ベーカリーやショップ、カフェなども併設した「IROHA village」をオープンしました。さまざまな形で藤い屋が作るお菓子のおいしさを皆様にお届けしています。
小豆の皮をむいてから炊く伝統製法で「藤色のこしあん」が誕生する。
自社の畑では原料となる小豆や小麦を栽培する試みもスタートした。
―藤い屋の「もみじまんじゅう」。特徴は?
藤井 ひとつは、あんこです。小豆の皮をむいて炊く「藤色のこしあん」は、当社の原点であり伝統のもの。通常、あんこ作りの際には、先に皮をむく方法は採用しません。
でも藤い屋では、創業したひいおばあさんの時代から続けている伝統の製法。当時の職人さんたちがカステラ生地にあうように作り出した形だったと伝え聞きました。それを今も守って、継続しています。そのため、あんこの色合いも藤色のように薄いのですが、これは実の色。初めに皮を向いてしまうので、小豆の実が本来持ってる色のままです。
それから、生地。藤い屋では、カステラ生地を用いています。卵、砂糖、小麦粉が原料。本当にカステラと同じようなもので、そのまま食べても十分おいしいです。このしっかり味がしてるカステラ生地は、「藤色のこしあん」との相性を考えて作られたもの。販売当初は新鮮味のあるハイカラな「もみじまんじゅう」だったのかなと思います。
カステラ生地にこだわった不動の人気「もみじまんじゅう」。
―その「もみじまんじゅう」は味のバリエーションも豊富です。
藤井 定番のこしあん、つぶあん、抹茶あん、カスタードクリーム、チョコレートの5種類があります。それをセットにした「もみじまんじゅう」5種(10個入り)」なども販売しており、お土産などでも好評です。
5種類ある「もみじまんじゅう」は、中身によってカステラ生地も味が違います。それはこだわりの部分。材料は同じですが、配合が違います。
またカスタードクリームやチョコレートは、中身に関しても何度か改良してきました。手を加えて、手を加えて磨き上げてきた「もみじまんじゅう」です。ぜひ、皆様に楽しんでいただけたらと思います。
左上から時計回りにこしあん、つぶあん、カスタードあん、チョコレートあん、抹茶あん。
定番のこしあん以外に抹茶あんやチョコレートあんなどバリエーションも豊富。
―一番人気は?
藤井 やはり、こしあんが一番です。それもおすすめなのですが、抹茶あんも特徴的なもの。抹茶あんは通常、色を出すために白あんをベースに使うことが多いです。でも、藤い屋では、小豆のこしあん自体の色が薄いので、そのまま抹茶を加えて、抹茶あんを炊いています。こちらもぜひ味わっていただけたら。
「もみじまんじゅう」は、いろいろなお菓子の中でも面白いものだなと思っています。特に紅葉に関する何かが入ってるわけではありませんが、日本でよく知られている名産品のひとつ。「もみじまんじゅう」と聞くと、きっと皆様の頭の中に浮かぶのは、紅葉の形をした、このお菓子です。そうしたお菓子は全国的に見ても、多くありません。
その中で、藤い屋は「もみじまんじゅう」を作り初めて100年が経ちます。伝統製法を守りながら、時代に求められる商品開発もしながらですが、「もみじまんじゅう」には、まだまだいろいろな可能性がある。今後も、それを広げていきたいですし、藤い屋としても同様に、「もみじまんじゅう」以外の新たな製品作りにチャレンジしていきたいなと思っています。
「何か新しいことをやりなさい」と先代である父から言われていたこともあり、徐々に洋菓子を取り入れた製品作りにも着手。伝統のあん作りを生かし、和と洋の垣根を越えた「古今果 COCONCA」というブランドを立ち上げました。
このブランドが誕生する原点となったのが洋菓子を和菓子の製法で作った「淡雪花(あわせつか)」や「花虎白(はなこはく)」です。もともと私自身は和菓子店、洋菓子店で修行させていただいてきました。両方の良さを取り入れた製品作りを心がけており、今までになかった古今和洋のお菓子で皆様に悦びを届けしたいという思いでいます。
古今和洋のお菓子を作る「古今果」の代表作とも言える逸品でお土産などにもぴったりだ。
持った瞬間にわかる柔らかさとレモンの爽やかな香りに心が踊る「淡雪花」。
―「淡雪花」誕生のきっかけは?
藤井 2013年に広島で開催された「ひろしま菓子博2013」のテーマが「レモン」でした。レモンの生産量は地元である広島県が日本一。ただレモンは、そのまま食べるようなことも少なく、何かに加える使い方が多いものです。それでは広島レモンの魅力を伝えることにはならないなと思っていました。そこでレモンを主役にするお菓子を考え、考案したのが「淡雪花」です。
広島県産レモンの果汁を使ったレモン羹を、果汁と果皮を使用したギモーヴ(フルーツピューレにゼラチンを加え、泡立てて固めたもの)ではさみました。「淡雪花」は、マカロンのような形にキラキラと輝く氷餅。「しゃり、ふわ、ぷるん」という今までにない食感を楽しめる和菓子と洋菓子が融合したお菓子です。
―ポイントにした点は?
藤井 「シャリッ、ふわ、プルン」という食感です。まず柔らかなギモーヴの食感。そこには、和菓子でよく用いられる氷餅なども使って見た目にも和を感じさせるようにしています。
間に挟んでいるレモン羹が「シャリッ、ぷるん」としていて、口の中でレモンの香りも楽しめるおいしさです。全体的にすっきりとしたさわやかなものになりました。お客様からも好評の声をいただいています。
「シャリッ、ふわ、プルン」にこだわった「淡雪花」。
―おすすめの食べ方は?
藤井 「淡雪花」は、レモンの酸味があるので紅茶などと好相性です。それから、お抹茶。先日、茶道のお茶会でご利用いただいたというお話も聞きました。おいしいと思いますし、お茶菓子として使っていただけたのもうれしいです。
「もみじまんじゅう」に関しては、日本茶がよく合います。それからカスタードクリーム味やチョコレート味もあるので、コーヒーや紅茶もおすすめです。最近は、こしあんにコーヒーを合わせる方も多く、どれを取っても合うのかなと思います。
―今後の展望をお願いします。
藤井 「古今果」というブランドも成熟しつつあるので、これからはもう少し豊かさをテーマにしたお菓子作りができないかなと思っています。
昔は、季節の歳時記や成長の通過儀礼のお祝いなどで、和菓子は使われてきました。文化的な豊かさを食に持ちつつ、楽しまれてきたと思います。でも昨今は、そういう日本の文化や風潮も減ってしまっている。
豊かさのとらえ方はたくさんありますが、日本ではどうしても物理的な面。例えば、賞味期限が長い、量がたくさんあるというような部分でとらえてしまいがちです。でも、本当の意味での食の豊かさとは、キレイに包装して日持ちの長いものだけではないのかなと感じます。
例えば、ヨーロッパでは、包装されてないお菓子がたくさんお店に並んでいて、その日に食べたいものだけを買って帰る。そんな食文化です。日本でも、そういうことを求めていくのも必要なのかなと。
今日食べたいお菓子を買いに来てもらうような、豊かな食文化。日本で昔から大事にされてきた風習を守る食文化。それを作っていけるような食の豊かさを目指すことも、トライしていきたいと思います。
―貴重なお話をありがとうございました。
「みじまんじゅう5種10個入り」(こしあん、つぶあん、抹茶あん、カスタードクリーム、チョコレート)
価格:¥1,300(税込)
価格:¥1,300(税込)
店名:藤い屋・COCONCAオンラインショップ
電話:082-943-6601
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.fujiiya-coconca.shop/shopdetail/000000000004/sample3/page1/price/
オンラインショップ:https://www.fujiiya-coconca.shop/index.html
「淡雪花4個入り」
価格:¥1,040(税込)
店名:藤い屋・COCONCAオンラインショップ
電話:082-943-6601
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.fujiiya-coconca.shop/shopdetail/000000000010/all_items/page1/price/
オンラインショップ:https://www.fujiiya-coconca.shop/index.html
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
藤井嘉人(株式会社藤い屋 代表取締役社長)
1978年広島県生まれ。立教大学卒業後、東京の和菓子店・洋菓子店での修行を経て2003年に藤い屋入社。2012年同社代表取締役社長に就任。
<文/青柳舞子 MC/三好彩子 画像協力/藤い屋>