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金曜日が楽しみになる魚介製品!?新しい“常磐もの”を食卓に

2024/09/11

プランクトンが豊富な福島の海で採れる海産物は、古くから「常磐もの(じょうばんもの)」と呼ばれ親しまれてきました。今回、編集長アッキ―こと坂口明子が気になったのは、その「常磐もの」の煮凝り(にこごり)とかまぼこ。製造しているのは100年に渡り海産物を食卓に届け、近年は、それらをよりおいしく楽しめるよう、さまざまなオリジナル商品を開発している株式会社おのざきです。商品開発についての思いやこだわりを代表取締役社長の小野崎幸雄氏に取材陣が伺いました。

株式会社おのざき 代表取締役社長の小野崎幸雄氏
株式会社おのざき 代表取締役社長の小野崎幸雄氏

―御社がある地域について聞かせてください。

小野崎 弊社は現在、4つの小売店と2つの飲食店を運営していますが、「おのざき」の総本店がある平は福島県いわき市の中心部です。常磐線いわき駅からは車で5分ほど。有名な漁港である小名浜からは車で25分くらいでしょうか。いわき市には他にも多くの漁港があり、水揚げも多いので、地元の人にとって魚は身近な食材として親しまれてきました。

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水揚げされたばかりの常磐ものが集まるいわき市中央卸売市場。

―御社の沿革について教えてください。

小野崎 創業者は私の祖母です。祖父が早くに他界し、女手一つで小さな魚屋を始めました。かつてはいわき駅の周りに小さい市場がたくさんあり、そこで魚を仕入れて販売していたそうです。その後、娘たちも手伝うようになり、さらに息子である父も高校を中退して後を継ぎ、2代目となりました。そして私が3代目、現在は私の息子も4代目として家業を支えてくれています。

―会社のロゴマークがくじらですが、くじら商品も扱っていらっしゃる?

小野崎 いえいえ。こちらは小柄だった父が、「店をくじらのように大きくしたい」と、今から40年ほど前に作ったもので、当時のものをベースに、4代目が最近、リニューアルしてくれました。弊社は2023年に創業100年を迎えましたので、これからの100年も大きく目指そうという意味が込められています。

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次の100年を目指してリニューアルした「おのざき」のロゴマーク。

―社長は幼い頃から家業を継ぐ意思をお持ちだったのですか?

小野崎 それが、あまり…(笑)。ただ、いずれは家業に戻るだろうと、学校を卒業した後は三重県のスーパーにお世話になり学ばせていただきました。そして2年後に帰郷して「おのざき」に入社し、小名浜に出す新店を任されました。社長に就任にしたのは2009年です。このまま手堅く事業を続けていけたらと思っていたのですが、2011年を迎えます。ちょうど、飲食事業を展開し始めた頃だったのですが、小名浜に作った回転寿司店が全て流されるなど、大変な状況となりました。

原発事故に関しては、いわき市にはあまり影響がないということで避難指示などは出されなかったのですが、不安に思った周りの人たちがどんどん避難を始め、「お前は逃げないのか?」と言われたりもしました。ですが私たちはここに留まる方々のために店を開けるべきだと思い、中央市場の壊れた冷蔵庫内の品物も仕入れさせていただきながら、翌日には営業を再開しました。地元の方からの「店を開けてくれてありがとう」の言葉は、今でも忘れられないですね。

そして少しずつ復旧し、ひと月後くらいでしょうか。東京に用事があったので上京すると桜が咲いていて、「もう春なのか」、と。自分が住んでいる所とあまりに違う風景を目にして不思議な気持ちになったのを覚えています。
ただそこから、様々な催事やイベントに声をかけていただくようになり、「いわき、福島は元気だよ」という思いで、地元商品の県外での販売に力を入れていきました。まだ自由に動けなかった仲間の分も、動ける人たちが売っていこうと。またそれ以降、「うまい常磐もの」についてもっと知っていただくために、オリジナルの商品開発にも力を入れるようになりました。

―その1つが、今回ご紹介いただいた「金曜日の煮凝り(にこごり)」ですね。

小野崎 そうですね。もともと煮魚を作って販売していたのですが、もう少し変わった料理をご提案できないか、と考えた中で候補に上がったのが煮凝りでした。私は煮凝りを、ご飯に乗せて食べることを提案してはどうかと思っていたのですが、4代目が「冷製パスタに乗せてオリーブオイルをかけるとおいしい」ということをフランス料理のシェフに教えていただいたとかで、なるほど、これなら若い人たちにもおすすめできると思いました。「金曜日の煮凝り」という商品名は、4代目夫妻が中心となって決まりました。「がんばった金曜日、自分へのご褒美にワインでも飲みながらどうですか?」ということで、2023年の「ふくしまベストデザインコンペティション」、「キャッチコピー・ネーミング部門」ではGOLDを受賞することができました。

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おしゃれなパッケージも好評。
金曜日の楽しみにしたい新しい“煮凝り”。

―開発時にこだわられた点は?

小野崎 具材と出汁を容器に入れ、熱処理をして煮凝りの状態にするのですが、ベストな食感に持っていくのには苦労しました。口の中でとろけるように、何度も試作を重ねました。
また、当初はヒラメ、アナゴ、アンコウが基本だったのですが、最近は穴子の入荷が少なくなっており、タイ、アカエイも加え、5種類になりました。

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和の食卓にも、洋の食卓にもマッチする一品。

―アカエイはいわき市ではメジャーな魚なのですか?

小野崎 骨が多いので、漁師さんが網に入っても捨ててくるような魚でした。味は良いのにもったいないということで、去年あたりからこちらをどうにかして食べられないかと、煮凝りや唐揚げにする取り組みを始めました。

―オリジナル商品は今後も増やしていく予定ですか?

小野崎 そうですね。いわきの海には商品化したい素材がまだまだたくさんありますし、常磐ものの良さをもっと若い人たちに知っていただきたいので。ちなみに弊社のオリジナル商品には、カナガシラという魚を使った南インド風のココナツカレーもありまして、このカナガシラも天ぷらにするとすごくおいしいのですが、小さくて開くのに手間かかるので敬遠されがちなのです。それを、カレー好きの4代目が工夫して商品化しました。これからも、一般流通では売りにくいもの、規格外のものをおいしく食べられる商品に生まれ変わらせ、獲る人、作る人、食べる人、皆が幸せになれる仕組みを構築できたらと思っています。

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未利用魚・カナガシラを活用した
「南インド風カナガシラのココナツカレー」の缶詰。

―「厚揚げソフトかまぼこ」についてもご紹介ください。

小野崎 製造しているのは、同じいわき市にある「丸又蒲鉾」という会社で、こちらも震災で大きな被害を受けたのですが、奇跡的にこの「厚揚げソフトかまぼこ」の製造ラインだけが残り、製造を行うことができました。そこで私どもは小売店の仲間と「福島海援隊」というチームを立ち上げ、「厚揚げソフトかまぼこ」を仕入れて関東でのイベントやアンテナショップに販売していったのです。そのうち好評をいただいて、「日本ギフト大賞2016」年で「都道府県賞」を受賞しました。そういったご縁もあり、現在では「おのざき」の商品としても販売させていただいています。

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地元の人に長年愛されている「厚揚げソフトかまぼこ」。

―人気の秘密は?

小野崎 食べるとスケトウダラの旨みと、玉ねぎの甘さが口の中に広がります。そしてとても柔らかい。「雲の上を歩くような食感」というキャッチコピーがついたくらいです(笑)。例えると、かまぼことはんぺんの間くらいでしょうか。そのまま食べてもおいしいですし、わさび醤油やマヨネーズを添えたり、おでんや煮物に入れたりしてもおいしい。弊社のホームページにもさまざまなアレンジ方法を掲載しているのでぜひ覗いてみてください。

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クリームチーズとイクラのトッピングでお酒のおつまみに。

―社長のお気に入りの食べ方は?

小野崎 夏場であれば酢醤油をかけてさっぱり食べるのがお気に入りです。

―今後の展望についても聞かせてください。

小野崎 店舗をどんどん増やすのではなく、今ある店舗の内容を充実させていきたいと考えています。総本店は2024年4月に改装したばかりなのですが、新しい店舗ではお客様の前でカツオの「火山(ひやま)」のデモンストレーションも始めました。昔からこの辺りでは、藁焼きのことを「火山(ひやま)」と呼ぶのですが、時代ともにその呼び方をする人も減ってきており、いわきの食文化を守らなければと考えたのです。いずれはそのカツオの火山を真空にして、オンラインストアでも販売したいと考えています。
また弊社は食堂も運営しており、かつてよくおばあちゃんの家などで味わえたものの、今はなかなか食べる機会が持てなくなった料理を提供しています。以前はみなさん、魚を丸ごと買って料理したものですが、その機会も減りつつありますよね。なので、弊社がその文化に触れられる場所を作ることで、若い方々にも興味を持っていただけたらと思っています。

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リニューアルした総本店。
様々なスタイルで「常磐もの」の魚の魅力を届けている。

―御社の、「魚の離乳食」も面白いなと思いました。

小野崎 子育て中の4代目夫婦が、「お魚デビューはぜひ、福島のヒラメで」と、作った商品です。好評ですよ。また離乳食が作れるのだから、次はもしかすると介護食なども手がけていくかもしれません。骨がなくて柔らかいお魚であれば、お年を召してもずっと「常磐もの」を楽しんでいただけそうですよね。

―冬場は味噌味とキムチ味の2種類があるオリジナルの「アンコウ鍋セット」も大人気だそう。お話を伺いながら、「思い切り魚が食べたい!」という気持ちが掻き立てられました。お話をありがとうございました!

金曜日の煮凝り

「金曜日の煮凝り」(3個セット)
価格:¥2,300(税込)
店名:おのざきオンラインストア
電話:0246-23-4174(8:30~19:00 水曜除く)
定休日:月1回(水曜日)、インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.onozaki100years.com/view/item/000000000006?category_page_id=ct1
オンラインショップ:https://www.onozaki100years.com

厚揚げソフトかまぼこ

「厚揚げソフトかまぼこ」(500g 12本)
価格:¥734(税込)
店名:おのざきオンラインストア
電話:0246-23-4174(8:30~19:00 水曜除く)
定休日:月1回(水曜日)、インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.onozaki100years.com/view/item/000000000009?category_page_id=ct11
オンラインショップ:https://www.onozaki100years.com

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
小野崎幸雄(株式会社おのざき 代表取締役社長)

1958年、福島県生まれ。25歳の時に家業である株式会社おのざきに入社。2009年に3代目として社長に就任。2011年に起きた東日本大震災の苦境を乗り越えるため、「厚揚げソフトかまぼこ」を引っ提げ、積極的に首都圏の物産展やイベントに足を運ぶ。

<文・撮影/鹿田吏子 MC/三好彩子 画像協力/おのざき>

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