今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になったのは、富山県の名産「ゆずみそ」と「しろえびだし」。どちらも富山県産を中心とした国産の原料を使用し、素材にこだわって作られています。これらはどのような経緯で開発されたのでしょうか。トナミ醤油株式会社 代表取締役の宅間崇宏氏に、取材陣が伺いました。
パリのミシュランシェフも絶賛!富山県の名産「ゆずみそ」と「しろえびだし」
2024/09/11
トナミ醤油株式会社 代表取締役の宅間崇宏氏
―創業から現在に至るまでの話をお聞かせください。
宅間 弊社は1935年に東山見醸造工場という農協の醸造工場として始まりました。そこからいろいろと再編されながら、1960年に砺波農産加工食品会社を設立し、その4年後にトナミ醤油株式会社となりました。会社名は変わりましたが、当初からずっと地元の皆様に愛されている味噌と醤油を作っています。2007年に製造ラインを増設し、自社の味噌や醤油をベースに加工品を作り始めました。
私の父は17歳の頃からアルバイトとして勤めていたことがきっかけで、3代目の社長となりました。その後、私の兄が跡を継ぎましたが、8年前に体調をくずし、今は私が社長を務めています。
トナミ醤油株式会社の本社外観。
―家業に入られる前はどうしてらしたのですか?
宅間 私はスタミナ食品(現エスフーズ株式会社)に7年ほど勤め、営業職で量販店などを担当していました。「いずれは帰ってきて手伝ってほしい」と言われていましたが、仕事がおもしろかったので名残惜しかったですね。
―貴社に入社してからはどんなお仕事を?
宅間 まずは営業を担当しました。味噌や醤油は日常的に使うものなので、スーパーなどでは特売品として売られていて、実際にスーパーのバイヤーに話を聞いたところ、仕入れ単価が安すぎたので、安売り合戦では将来的に生き残れないと思いました。そこで、思い切って特売を徐々にやめ、上質な商品を作ってそれに見合った価格で売るという方針に変えたんです。
―商品にはどんなこだわりを込めていますか?
宅間 お客様に安心安全の商品をお届けするために、原料は全て富山産を中心とした日本産のものを使用しているところです。それまでは輸入品を使っていましたが、2008年に中国産の食品から農薬が検出された問題が起きたのをきっかけに、全て原料は国産・国内製造のものに変更しました。それに伴い、商品の売値も上げています。
当初は従業員からは批判的な意見もありましたが、最終的には納得してもらい、この方針は今も続いています。
―醤油や味噌を使ったいろいろな加工品が開発されていますが、「ゆずみそ」はいつ頃からある商品ですか?
宅間 これは僕が小学生の頃からあったもので、商品化されたのは40年ほど前だと思います。地元庄川ではゆず味噌を食べる文化があり、伝統食の一つでもあります。
今ではどこにいても普通に食べられますが、昔はゆずは貴重で、同じ富山県でもゆずがとれない地域の方からは「こんな高級珍味、そうそう食べられない」と言われていました。この地域では当たり前のように食べていたので、そういう意味では恵まれていたのかもしれません。
蓋を開けた途端、ゆずの香りがふわっと漂う。
―「ゆずみそ」に使われるゆずと味噌はそれぞれどんな特徴がありますか?
宅間 「ゆずみそ」のゆずは、昔から地元の人に親しまれてきた、庄川ゆずを使っています。弊社の事務所の裏がゆず畑になっているのですが、ここは日本海側最北のゆず栽培好適地と言われており、この地で育ったゆずは表皮が凹凸で、歯費が厚くゆずの香気と酸味の強いのが特徴です。
「ゆずみそ」で使われている庄川ゆず。
宅間 味噌は、8割麹がベースとなった、中辛タイプのものです。ゆずの香りを生かすために、漉したものを使用しています。
「ゆずみそ」は粒がなく、濾されているところが特徴。
―「ゆずみそ」はどうやって作られていますか?
宅間 弊社の商品「本作り味噌一番」という8割麹の味噌をベースに、ペースト状にしたゆずの皮とゆず果汁、てんさい糖、みりんなどの米発酵調味料を足して、作られています。みりんも海外産の米から作られたみりんが多いですが、弊社は国産の米で作られたみりんにこだわっています。
―おすすめの食べ方は?
宅間 ふろふき大根や田楽に付けるのもいいですし、おにぎりに塗って焼きおにぎりを作るのもおすすめです。
「ゆずみそ」を使えば、いつもの焼きおにぎりがちょっと豪華に。
宅間 あとは、ご家庭でオイルと混ぜてドレッシングとしてもお使いいただけます。ちなみに弊社ではゆずみそドレッシングも売っているのですが、それはフランスのミシュランの店などに卸しています。
―お客様からの反響は?
宅間 北海道でゆずみその試食をしてみたところ、そこの方に渡したら「クオリティが全然違う」とびっくりされました。パリにも卸していますが、絶賛してくださっていると聞いています。
―「しろえびだし」が開発されたのはどんな経緯ですか?
宅間 白えびは漁師町の人たちが「めんつゆにするだしの素だ」と言っていたくらい、価値がないものでしたが、白えび屋という会社さんが白えびを売るようになってからどんどん認知が広がっていったので、弊社も白えびを使った商品開発をしたいという話を兄として、「しろえびだし」の開発に至りました。販売開始から約20年経っていて、地元の方よりも東京の方からご好評いただいているようです。
富山県の名産品・白エビの香ばしい香りが特徴。
―どんな風に作られていますか?
宅間 白えびの身からだしをとると、生臭すぎてしまうので、殻からだしをとっているところが特徴です。そのだしに帆立のだしを加え、一昼夜置いてから、最後に隠し味としてイカの魚醤を入れています。このイカの魚醤はイカの黒作りを作っている水産加工業者さんのもので、2~3年かけて発酵して作られたものです。全く生臭くなく、イカの匂いしかしません。これを加えることで味が激変します。
エビやイカの生臭さは一切なく、食欲をそそる匂いが魅力的。
―おすすめの使い方は?
宅間 めんつゆに加えて使うのが一番簡単です。他にもおひたしや水炊き、すまし汁などでそのまま使っていただいたり、お茶漬けのだしにしたりと、幅広くお使いいただけます。ストレートだと少し濃いかもしれませんが、そのときは1.5倍、味見しながらさじ加減して使ってください。
ゆでた野菜にかけるだけでおいしくなる。
―豊富な商品展開が魅力です。会社として今後の展望はどのようにお考えですか?
宅間 弊社の商品は手間をかけて作っていて、安売りや大量生産には向いていないため、今後は海外に向けてどんどん広げていこうと思っています。もちろん、海外市場にも厳しいところはありますが、日本よりも商品のクオリティを優先してくれるから売りやすく、実際に輸出額は売り上げの約3割を占めているんです。また、東京などの飲食店に業務用の商品を卸しているので、こちらも今後はもっと広めていきたいと思っています。
―貴重なお話をありがとうございました。
「ゆずみそ」(150g)
価格:¥700(税込)
店名:庄川温泉郷商店
電話:0763-82-7779
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://shop.shogawakyou.com/?pid=160964739
オンラインショップ:https://shop.shogawakyou.com/
「しろえびだし」(360ml×3本)
価格:¥2,592(税込)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:しろえびだし(360ml×3本)
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
宅間崇宏(トナミ醤油株式会社 代表取締役)
昭和43年8月18日生まれ
平成2年3月 東京農業大学農学部 醸造学科卒
平成2年4月 スタミナ食品(株) 入社
平成9年3月 スタミナ食品(株) 退社
平成9年4月 トナミ醤油(株) 入社
平成17年2月 トナミ醤油(株) 専務取締役に就任
平成28年3月 トナミ醤油(株) 代表取締役に就任
現在に至る
<文・撮影/サカモトアヤ MC/三好彩 画像協力/トナミ醤油>