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「リアルにうまい!」横浜で創業130年、出川哲朗さんの実家・蔦金商店の「元気のりのり」

2024/10/17

芸人・出川哲朗さんのラベルで人気の「元気のりのり」。蔦金商店は出川さんのご実家としても有名ですが、130年の歴史ある海苔問屋です。その味の定評を聞き、編集長アッキーが注目。伝統の味を守ってきた出川雄一郎氏に、お店のこだわりや「元気のりのり」誕生秘話を伺いました。

株式会社蔦金商店 代表取締役 出川雄一郎氏
株式会社蔦金商店 代表取締役 出川雄一郎氏

―明治27年(1894年)創業の老舗でいらっしゃいます。これまでのあゆみをお聞かせください。

出川 弊社は今年で130周年、私で5代目になります。創業者の出川金蔵は川崎の出身で、乾物屋の「蔦屋」さんというところで修業をしていました。その後、独立して「蔦金」という屋号で横浜に海苔店として創業しました。海苔は古くは朝廷に納めるような貴重な食材でしたが、明治に入ってから養殖の技術などが発展して庶民も食べられるようになったということで、海苔に目をつけたようです。

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芸人・出川哲朗さんは実弟。

―現在は、横浜市場内に本社がありますね?

出川 創業時は、横浜中区長者町という伊勢崎町付近にあったのですが、1931年(昭和6年)に横浜市場が開業し、「蔦金」もそちらに店を開きました。実は、横浜市場は全国で三番目に古くて、築地よりも歴史がある市場です。
大きな戦争があり、一度商売は中断しましたが、終戦3年後には海苔屋として再開しました。そのころには全国で海苔の養殖が盛んになりましたから、順調に売り上げが伸び、1967年(昭和42年)には現在の5階建ての本社ビルが立ちました。

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出川哲朗さんのファンがこの本店を訪れることも多く、
オリジナルグッズも販売している。

―そこから一度倒産の危機があったとか?

出川 3代目の父の代のことです。会社自体の売上は良かったものの、父が色々なサイドビジネスに手を広げ、それが全てうまくいかず、多額の借金を背負いました。1981年(昭和56年)当時、新聞にも「蔦金倒産」とまで出ました。父に「もうダメだ!」と言われたときは、号泣して泣き崩れたのを覚えています。
当時私は22か23歳で、幼い頃から店を継ぐように言われていましたから、東京の大森の海苔問屋に修業に出て2年目だったのですが、急遽実家へ呼びもどされました。父と一緒に2人で、債権者の方の家に頭を下げて回りました。
なかでも、東京でお世話になっている海苔問屋さんには廊下に座らされて大変な説教をされたのを今でも忘れることはできません。ですが、その方がその後、海苔を分けてくださったりと支援をしてくださったんです。その方を始め、多くの債権者の方々、多くのお客様のお陰で、今日まで一度もシャッターを閉めることなく営業させていただいています。
それからは、お客さんとの「信頼関係第一」です。蔦金に任せておけば大丈夫だという信頼関係。これは毎日の積み重ねだと考えています。

―海苔店の現状はいかがでしょうか?

出川 海苔はやはり温暖化によって生産量が減ってきています。ここ7〜8年前から海苔の生産は減り続けています。以前は100億枚以上取れていましたが、昨年、今年は50億枚も採れませんでした。年々厳しくなっています。新海苔の時期も11月から12月へと時期がずれてきています。産地によっては入札中止になるなど、いいものも少なくなってきて味も色もなかなか良いものが採れない。価格は上がりますが、高いながらも仕入れなければならず、私たちも2度3度と値上げをせざるえなかったというのが現状です。今年も平均単価が例年の倍になってしまっているので、とても懸念しています。

―海産物はなかなか厳しい状況なのですね?

出川 加えて、市場での商売というのもなかなか難しくなっています。私たちもホテルや飲食店といった業務用を中心に販売してきたのですが、なかなか業界も厳しいところがあって、一般の消費者に販売先が移りつつあります。
飲食店の方など、市場に来るお客様が少なくなっているなか、横浜市場も毎週土曜日の朝は一般開放を行なっています。これは10年以上続いていて、かなり一般の方もいらしてくださっています。年末などは大盛況でした。今後は観光ツアーの誘致なども予定しています。

―今回ご紹介いただいた「元気のりのり」も、一般消費者向けに開発されたものですね?

出川 そういう流れのなかで、弟が芸人の出川哲朗ということで、実家ならではのコラボ商品を作ろうということになりました。そもそもはこの海苔のプラスチック容器の会社さんから「せっかく哲朗さんがいるのだから何かコラボしたら」とご提案があり、ネーミングもいいねということで始まりました。
それが15年ほど前なのですが、当時の弟の好感度がどうなのかと正直なところ懸念もありました。とりあえず「味付けのり」「焼きのり」で、本人にも事務所にも何も言わず無断で作ってしまい、哲朗には怒られました(笑)。まあ、実家ということで大目に見てもらったのですが、やはり、最初はあまり売れませんでした。

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パッケージでは、「波乗り」「スーパーマン」
「フラダンス」「DJ」の4種類のイラストで「のりのり」を表現。

―そこからヒット商品になったきっかけは?

出川 毎年9月に横浜髙島屋で行われる大きな催事に出店するのですが、そこにいつも哲朗が自分で車を運転してエスカレーター上がってきて、プライベートで来てくれましてね、自ら売り子をやってくれたりしていたんです。
また、その後子ども向けの番組で司会をしたりといったことがあって、お子さんのファンが増えて、その親御さんたちの哲朗への見方も変わってきて、徐々に人気が出てきました。それにともなって、海苔の方も売り上げが上がるようになっていきました。

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横浜髙島屋での「かながわ名産展」には、
毎年のように出川哲朗さんも手伝いに来て参加。

―「わさび味」はテレビの企画でできたものだとか?

出川 テレビの通販番組で7人のゲストが何かしらおすすめの商品を持ち寄ってどれが売れるか、といった企画がありました。哲朗は「元気のりのり」を持っていったのですが、番組から「何かリアクションが面白くなる味を」ということで、「めっちゃ辛いもの」を開発しました。
ただ、番組用だからといって、せっかく買ってくれた人が「なんだこれ」と思うようなものにはしたくなかった。なので、海苔は、草が柔らかく口溶けの良い、早い時期にとれた有明の海苔を使い、本当においしいわさび味の海苔にしました。ちなみに、このパッケージだけは事務所公認です。

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人気No.1は「味付けのり」(右)、年配の方には「焼きのり」(中)が人気。
「わさび」(左)はおつまみにもなると、
中身だけ分けてほしいという居酒屋さんもあるのだとか。
個包装になっているのも嬉しいポイント。

―企画ものとは思えないおいしさです。この味はやはり老舗ならではですね。

出川 ただ、近年は海苔が採れなくなってきてしまっているので、産地にこだわることが難しくなっています。
海苔というのは、九州・有明が全国の生産量の4割シェア、ついで瀬戸内、兵庫が多いんです。各県の漁協で入札するのですが、検査員が等級で分けたものが、生産量の多い産地では1回の入札に800種類以上の海苔が並べられます。出向いていっては、微妙な違いを見て入札を行い、宮城、千葉、瀬戸内、九州有明と全国の海苔を取り揃えています。

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「わさび」味を晩酌のお供に。
磯の香りがフワッと口の中に広がり、柔らかく溶けていくような海苔。
そこへわさびの爽やかな辛味がツンとくる粋なおつまみ。

―老舗のこだわりとして、乾海苔が店頭に並べられていると聞きました。

出川 そうですね。今は焼きのりが当たり前ですけど、昔は乾海苔を各家庭で焼いていました。若い人は知らないので、挑戦してみるといって乾海苔を購入されていったりします。乾海苔を自分で焼くと、焼きムラはどうしてもできますが、風味は格別です。

―今後の展開を教えてください。

出川 蔦金商店は今年で130周年を迎えます。市場で商売しているからには、やっぱりプロの方達にも愛され続ける店でありたいし、一般の消費者の方にもご来店いただけるように間口を広げたい。これを区切りとして、これからまだまだ140年、150年企業を目指して、地域No.1になれるように歩んでいきたいと考えています。

―お話を伺って、出川哲朗さんの人気の秘密までわかったような気がします。お店に聖地巡礼したいと思います。本日はありがとうございました。

元気のりのり詰め合わせ

「元気のりのり詰め合わせ」
価格:¥3,813(税込)
店名:蔦金商店 オンラインショップ
電話:045-461-0361(7:00〜17:00 水曜日・日曜日・祝日・年末年始を除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://tsutakin.com/shop/?p=97
オンラインショップ:https://tsutakin.com/shop/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
出川雄一郎(株式会社蔦金商店 代表取締役)

1959年 横浜海苔問屋「蔦金商店」の長男として生まれる。東京大森の海苔問屋さんで2年間の修行を経て株式会社蔦金商店入社。2013年に同社代表取締役に就任。現在に至る。

<撮影・文/尾崎真佐子 MC/髙橋知 画像協力/蔦金商店>

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