日本各地には、地元の人に愛され続けている地域に根ざした老舗がいくつもあります。今回、おいしいお菓子を探していた編集長アッキーが気になったのが、鹿児島県霧島市に本店を構える老舗「霧島菓子処 森三」のお菓子です。数ある商品のうち、「モゼショコラ」と「きりしま恋茶」のこだわりや魅力について、有限会社森三の代表取締役を務める有川尚徳氏に取材陣が伺いました。
鹿児島らしさをスイーツで楽しむ!九州産の食材を使った「モゼショコラ」と「きりしま恋茶」
2024/10/23
―御社は和菓子と洋菓子の両方を製造販売していると伺いました。まずは会社のことを教えてください。
有川 創業は1909年です。私の曾祖母が国分敷根(現在の霧島市)でお菓子の販売を始め、祖父が引き継ぎました。社名や屋号になっている「森三」は祖父の名前です。ただ、祖父は早くに亡くなってしまい、その頃の父はまだ高校生、叔父は中学生くらいだったと聞いています。家業はいったん祖母が引き継ぎ、父は高校卒業と同時に和菓子の修業に出て、戻ってきてからは祖母と父とで商売を続けていました。やがて元号が平成になった頃、当時は東京で洋菓子の店を営んでいた叔父と「鹿児島で一緒に和洋菓子店をやろう」という話がまとまり、それまで「有川菓子舗」だった屋号を「森三」に変えてリスタートしました。
地元の人に愛されているモダンなたたずまいの森三 敷根本店。
―代表は和菓子職人として修業をした経歴をお持ちですが、その経緯は?
有川 リスタートから1年ほど経ったとき、結婚式の引き出物として作った「イチゴロール」が大ヒットしたことでお店の規模も拡大しました。売上も洋菓子がメインという状況でしたが、和菓子は文化であり、当店には老舗の和菓子店として今まで受け継いできたものもあります。それに当時、洋菓子を作りたいと希望する人は大勢いましたが、和菓子はそうではありませんでした。そこで私は和菓子の修業をすることになり、千葉県の菓匠京山さんで5年にわたってお世話になりました。菓匠京山さんでは、お菓子づくりはもちろんのこと、挨拶や片づけ、物や時間を大切にする姿勢など、働くうえで大切なことをたくさん教えていただきました。
―今回ご紹介する「モゼショコラ」はどんなお菓子ですか。
有川 ガナッシュで九州産の生クリームを包んだお菓子です。数を作りやすく、なおかつ子どもから年配の方にまで広く楽しんでもらえるもの、手みやげにしやすいものというコンセプトで作りました。商品名の「モゼ」というのは、鹿児島弁で「かわいい」という意味です。小さくコロンとしたかわいらしいフォルムで、食べやすいお菓子に仕上がっています。
口に入れた瞬間にふわっと溶けていく食感と、豊かな風味が魅力の「モゼショコラ」。
―味の特徴を教えてください。
有川 チョコレートと生クリームは相性がよく、全国には似たような商品もありますが、そのなかで一番を目指しました。九州産の生クリームは、ふわっとした口どけとミルクの風味を楽しんでいただけるという特徴があります。チョコレートや生クリームは気温に影響を受けやすく、製造は簡単ではないのですが、消えていくような口どけを実現するために素材のバランスにもこだわりました。お客様からは「2個、3個と食べたくなる」といったお声をいただいています。
―もうひとつの「きりしま恋茶」についてもお伺いします。
有川 霧島産の抹茶を使ったお菓子です。霧島市ではお茶の生産が盛んで、「霧島茶」は全国第二位のお茶の産地である鹿児島県の中でも、人気のブランド茶として広く販売されています。2017年に、霧島茶が全国のお茶の品評会で産地賞を受賞した際、知り合いのお茶業者さんから「抹茶も作れますよ」とご案内をいただきました。当時は明治維新150周年と重なり、鹿児島県にたくさん観光客を呼ぼうとしていた時期で、鹿児島県や霧島市のよさを全国の皆さんに知ってもらえるよう、品評会で賞を取ったお茶を使ってお菓子を作ろうと取り組んだのが始まりです。
お茶の風味とまろやかな甘味のバランスが絶妙な「きりしま恋茶」。
―かわいらしいネーミングの由来は?
有川 霧島市は、坂本龍馬が妻のお龍とともに日本で初めてと言われている新婚旅行に訪れた場所です。「きっと坂本龍馬も霧島茶を飲んで、楽しんでいかれたのだろうな」と想像しながら、龍馬とお龍の「恋」と「濃いお茶」をかけて「きりしま恋茶」としました。
坂本龍馬と妻のお龍をモチーフにしたパッケージ。
―特徴や味についても教えてください。
有川 抹茶と緑茶、それからアクセントにキャラメルを使った3層の乳菓で、2018年の「第11回鹿児島県新作観光土産品コンクール」では、菓子部門で一番上位の賞である優秀賞をいただきました。お茶の風味をしっかりと感じられますが、ただ苦かったり渋かったりするだけでなく甘味もマッチした味わいで、食べやすい味に仕上がっています。若い世代や、抹茶があまり得意でない方にもぜひ食べていただいて、坂本龍馬や明治維新にも思いを馳せていただければと思います。
―鹿児島らしさが詰まったお菓子なのですね。今後の展望をお聞かせください。
有川 当社はこれまで、地域のお客様に育てていただきました。今後は人口が減り、地域社会が変わっていくことも念頭に置いて運営を続けていかなければならないと感じています。2013年には和食が無形文化遺産に登録されましたが、和菓子も日本の文化であり、節句やお盆などの行事の際も口にするものです。こういった日本の文化を後世に伝えていくこともまた、自分たちの使命だと思いますし、昔から続いていることを未来へと継承するお手伝いができれば、お菓子屋冥利に尽きます。
鹿児島弁には「お茶を一杯」という意味の「ちゃいっぺ」という言葉があります。お茶と一緒にお菓子を食べてひと息ついて、またがんばる。そういう文化が続いていくように、お菓子づくりと店づくりを続けていきたいと思います。
―「ちゃいっぺ」、素敵な言葉ですね。本日はありがとうございました。
「モゼショコラ(MOZE CHOCOLAT)」(9粒)
価格:¥2,280(税込)(送料込価格)
店名:霧島菓子処森三オンラインストア
電話:0120-489-122(9:30~17:00 月~土)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://morizo.shop/products/moze-chocolat-set2
オンラインショップ:https://morizo.shop/
「きりしま恋茶」(5個)
価格:¥750(税込)
店名:霧島菓子処森三オンラインストア
電話:0120-489-122(9:30~17:00 月~土)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://morizo.shop/products/5kirishima
オンラインショップ:https://morizo.shop/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
有川尚徳(有限会社森三 代表取締役)
1978年鹿児島県生まれ。千葉県の老舗菓子店「菓匠京山」にて5年間和菓子職人としての修業を経て2005年に「霧島菓子処 森三」に入社。2020年に同社代表取締役に就任。
<文/坂見亜文子 MC/油井直美 画像協力/森三>