今回編集長アッキーが注目したのは、まろやかな味わいの味噌ソース。パウチから絞って簡単に使えるのに、味は本格的。たっぷりの麹と熟成期間によって、味噌らしい香りと深みのある味わいが楽しめます。作っているのは、熊本県で創業270年を超える老舗味噌・醤油蔵。移り変わる時代の中で、変わるもの変わらないものを見据えて、さらに飛躍しようと奮闘する株式会社山内本店 代表取締役の山内卓氏に取材陣がお話を聞きました。
風味高くまろやかな味わいの「つけて美味しいまぼろしの味噌」
2024/10/23
株式会社山内本店 代表取締役の山内卓氏
―御社は、肥後の城下町で270年以上続く老舗でいらっしゃいますね。
山内 肥後藩主となった加藤清正は熊本城下に城下町を整備したのですが、そこにはたくさんの職人も集められました。当社もその一つで、1751年に「梅屋」という屋号で創業。味噌・醤油づくり一筋に歴史を重ねてきました。1931年には昭和天皇に醤油を献上したこともあります。また曽祖父は業界への貢献で勲章をいただきました。
城下町で長い歴史を重ね、現社長は10代目。
―長い歴史の中で、変わったことと変わらないことはなんですか。
山内 戦中戦後には食糧が配給になり、味噌・醤油もその対象でした。物資不足の中粗悪品を作る蔵もありましたが、私たちは品質を維持することに努めました。いつでもお客様に安心してもらえる良い商品を心がけたんです。そのおかげで、配給終了後に潰れる会社も多い中、お客様のご愛顧で生き残ることができました。
今も品質へのこだわりは変わらず、たとえば当社の永田富蔵は現代の名工に選ばれました。彼は強いこだわりとセンスを持っており、味噌や醤油の醸造分野では10人程度しかいない現代の名工に選ばれたんです。味噌・醤油醸造においては菌がうまく働くことが大切だと、あえて木桶ではなく、樹脂の清潔なタンクを使ったり、熟成時の温度管理や天地返しで菌を活性化させたりすることにも努めました。残念ながら亡くなってしまいましたが、彼の残した精神やノウハウは今も当社に息づいています。
一方で時代はどんどん変わって、味噌・醤油が食卓の必需品ではなくなったと感じます。食の多様化によって、ご飯と味噌汁が当たり前の時代ではなくなりました。
永田氏の写真は、「つけて美味しいまぼろしの味噌」のパッケージにも。
―「まぼろしの味噌」を開発した背景を教えてください。
山内 味噌需要の低下だけでなく、スーパーなどでは大手メーカーの商品によって寡占されるようになりました。私たちのような小さな味噌蔵は、今までのやり方では生き残っていけないと思ったんです。
そこで自分達にしかできない付加価値を追求しました。長い歴史と高い品質の商品を持っていること、現代の名工によるこだわりの味噌を作り上げられることにフォーカスして、商品開発を行ったんです。味噌は、麹歩合と熟成期間によって風味が変わります。現在日本には、白味噌、信州味噌、八丁味噌などいろいろな種類がありますが、麹歩合が多く比較的熟成期間が長いものは少ないんですよ。この分野の商品を作ろうと思いました。
工夫を凝らした商品で付加価値を高めた。
―「まぼろしの味噌」には、どんな特徴がありますか。
山内 国産原料にこだわり、塩分を低くして、たっぷりの麹と長い熟成期間をかけて仕込んでいます。そうすることで、味噌らしい香りと甘み、口当たりの良い味わいになりました。たくさんの方に知っていただきたいと、さまざまな展示会に出展したり、スーパーで実演販売したりして、約2,000店舗で取り扱っていただいています。
焼きおにぎりに塗ってもおいしい。
―「つけて美味しいまぼろしの味噌」はどんな商品ですか。
山内 まぼろしの味噌のおいしさをもっと知ってほしい、もっと幅広く使ってほしいと思い開発したのが「つけて美味しいまぼろしの味噌」です。味噌って、味噌汁以外に使い方が思いつかないという声もよく聞くんですよ。これをなんとかして解消し、さまざまな食材・調理法で活用してほしいと思いました。
そこで、使いやすい形状のパッケージに入れて、さらに柚子胡椒や酢味噌といった風味をつけたものも開発しました。最初のうちはパッケージに詰める機械がなかったので、手作業で詰めていましたね。なかなか大変でした。
お醤油の代わりに豆腐につけたり、こんにゃくの田楽に使ったり、焼きおにぎりや焼き魚に添えていただいてもおいしいです。まぼろしの味噌のおかげで子どもが味噌汁好きになったという話も聞きましたね。気に入って何度も買っているリピーターの方も多いようで、嬉しい限りです。
炒め物の味つけにも最適。
―今後の展開を教えてください。
山内 日々麹舎というブランド・店舗を立ち上げて、消費者の皆様に直接こだわりの商品を届け始めました。今までは卸売で小売店への販売が多かったので、さらに間口を広げていく試みです。今後は工場見学や物販、味噌を使ったおにぎりや味噌汁などの軽食提供も行っていく予定です。熊本県は観光客も増えていますし、半導体メーカーTMSCの進出で海外からいらっしゃる人も急増しているんですよ。味噌や醤油といった日本ならではの文化に興味を持ってもらえるように、さまざまな取り組みを行っていきます。
日々麹舎ブランドでは、お菓子も作り始めました。味噌饅頭のような、味噌を生かしたお菓子を発売しています。味噌のおいしさを広めるために、ぜひラインナップを充実させたいですね。
素朴で香り高いお菓子も展開。
―貴重なお話をありがとうございました。
「つけて美味しいまぼろしの味噌」
価格:¥453(税込)
店名:やまうち本店オンラインショップ
電話:0120-306-014(9:00〜17:00 土日祝除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://shop.yamauchihonten.com/Form/Product/ProductDetail.aspx?shop=0&pid=7918&cat=100101
オンラインショップ:https://shop.yamauchihonten.com
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<文・撮影/鈴木満優子 MC/木村彩織 画像協力/山内本店>