今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になったのは、青森県の多くの家庭に常備されているという調味料。発売から60年が経とうとしている今も、年間約400万本売れているというそれは、地元の材料にこだわって丁寧に作られており、焼肉のたれながら様々な料理に使える代物です。上北農産加工株式会社 代表取締役社長の小山田春夫氏に、取材陣が伺いました。
青森県民のマストアイテム!?肉も野菜もこれ1本!「スタミナ源たれ」
2024/11/28
上北農産加工株式会社 代表取締役社長の小山田春夫氏
―青森県では多くの家庭の冷蔵庫に「源たれ」が入っているとか?
小山田 おかげ様で、青森県の70%の家庭で冷蔵庫に常備されているとも言われています。焼肉のたれで全国的に圧倒的シェアのある大手メーカーさんが、青森県ではシェアを伸ばせないと聞いたことがあります。
源たれで育ったお子さんが、進学等で青森県を出て、どうしてもこの味がいいから親御さんに送ってもらっているという話もよく聞きます。発売から60年がたとうとしていますが、県民の味として定着したことはとてもありがたいですね。
青森県で焼肉のたれといえば「スタミナ源たれ」。
―「源たれ」誕生のきっかけを含め、創業からの歩みをお聞かせください。
小山田 2015年前までは農業協同組合で、法改正によって株式会社化した最初の組合となりました。そもそもの創業は1951年、藤坂めん羊農業協同組合としての発足です。農家の防寒衣料自給自足を目的としていましたが、ほどなく羊毛加工が事業として成り立たなくなり、1953年に「上北農産加工農業協同組合」と改称し、醤油の製造を始めました。
一般売りではなく、青森県経済連の指定工場として、青森県全域の農家さんを対象に売り出したというのが当時の流れです。羊毛加工は1962年で終了しており、入れ替わるようにして始めたのがスタミナ源たれの前身となるたれの製造です。当時はジンギスカンタレという名前で、マトンをおいしく食べるために開発し、1965年に販売を開始しました。
―完成までの道のりをお聞かせください。
小山田 羊肉でもラムは比較的食べやすいですが、マトンは匂いが強いですよね。その匂いと脂に負けないタレをということで、中国で羊肉を食べるのに合わせていたジャン(醤/タレやソースなどの調味料)を参考にしました。中国に出征していた職員が持ち帰って分析し、玉ねぎやショウガやニンニクなどの香味野菜のバランスを決めたようです。
リンゴや香味野菜が、ボトルの2/3ほどのところまでたっぷり入っている。
小山田 発売から約60年たっていますが、そのバランスはほとんど変わっていないと思います。実は、原料の問題や価格の高騰などを理由に、玉ねぎやショウガを5%くらい減らしてみようなどと試みたことがありますが、そのたった5%が大事だということがよくわかりました。今のブレンドをゴールデンバランスと呼んでいますが、これからもきっと変わることはないでしょうね。
―特徴やこだわりも教えてください。
小山田 一番大きなこだわりは、材料の農産物を、青森県など国産に限っている点です。リンゴとニンニクは全量青森県産、玉ねぎとショウガは北海道などの国産。使用する醤油はもちろん自社製造で、青森県産の大豆と小麦を使っています。
青森県産材料100%でつくるというのは、非常に手間暇かかりますし、輸入物に比べると原料費も高いし、乾燥野菜を使う方が簡単ではありますが、そのこだわりこそが源たれの原点だと思っています。
ニンニクは、一つひとつ手作業で根落としをしていますし、玉ねぎの皮むきも手作業。私が入社したころは、小さい釜で作って、柄杓ですくって瓶に入れて殺菌するすべての工程が、ほぼ手作業でした。
フレッシュな国産材料を手作業で丁寧に処理してつくられている。
―社長のご就任は?
小山田 1971年に入社して、工場長として生産現場に長く携わってきました。常勤理事、常務、専務を経て、実は2018年に一度役職定年をして非常勤の役員として役員会に参加する程度となっていました。しかし、2022年に、先代社長、専務、そして常務が相次いで亡くなり、役員歴や社歴が一番長かった私に白羽の矢が立ち、社長職を引き受けることになりました。
亡くなった先代社長や常務との付き合いはとても長くて、3人で多くのことを経験し会社の危機も手を携えて乗り越えてきましたから、立て続けに亡くなって喪失感や寂しい気持ちはとても大きかったですよ。会社の歴史を閉じるわけにはいかないという思いが半分、右腕左腕のような存在もおらず孤立無援、何ができるかわからないと不安半分でした。
―ご就任後、取り組まれたことは?
小山田 常勤として復帰して驚いたのは、会社の人たちが、考える力をなくしたように感じたことです。言われたことだけをしていればいいというような空気でした。営業職だけでなく工場内も決して良い雰囲気ではなく、実際のところ、私が現役時代に続けていた勉強会がなくなっており、商品に関するクレームも多かったのです。
そこで、まずは考える力をつけよう、考えることを癖にしようと言い続けました。工場に対しては、売り上げをつくるのは営業だけじゃない、クレーム商品を作らないことが売り上げだということを話しながら、コミュニケーション力の強化にも努めました。
1年ほどたったころからでしょうか、目に見えて変化が表れました。自ら考え行動する社員が増えたのです。クレームの多かった商品に関しても、原因を追究したり、殺菌方法を変えたりすることで、大幅に減らすことができています。社員一人ひとりの考え方や仕事への姿勢が変わったことを実感しています。
60年の歴史がありながら、製造工程などを常に見直し続けている。
―源たれシリーズを使ったレシピブックも社員の方がつくられているんですね。
小山田 源たれは、焼肉のたれですが、炒め物の味付けやかけ醤油代わり、馬刺しのたれや揚げものの下味など、幅広くお使いいただけるところが特長です。というのも、焼肉のたれはドロッとしているイメージがありませんか?果物や果糖を入れてねっとりとした甘みのものが多いのですが、うちのはサラッとしていて後味さっぱり、切れが良いのです。味としてはショウガの風味が強いでしょうか。だから、下味や隠し味にも使える汎用性の高さにつながっているのだと思います。
お客様からも多くのアイデアをいただきます。カレーの隠し味とか納豆のたれ代わりとか、たれを薄めてスープになど。
源たれシリーズは、香味野菜の量や味のバランスなどを違えて、焼肉だけでも甘口、辛口、プレミアム、減塩などが11種類、鍋つゆが5種類ほどあります。中でも塩焼のたれは、塩味の液だれとしては画期的な商品だったと自負しています。
オーソドックスな「スタミナ源たれ」はショウガの効いた甘辛味の万能だれで、
肉、魚介、野菜のどれにもよく合い、ごはんの進む味。
唐揚げの下味のほか、炊き込みご飯や酢と合わせて冷やし中華のたれ、
卵かけごはんや冷奴のかけだれなど料理の幅が広がる。
―小山田社長のお好きな使い方は?
小山田 チャーハンでしょうか。ごはんに溶き卵を混ぜて卵かけごはんのようなものを作ってから炒めて、最後に源たれで味付けをします。たくさん入れるとべチャっとしますし、しっかり味のたれなので、入れすぎにはご注意を。
卵とごはんを混ぜてからさっと炒めたところに源たれを。
味付けはこれ1本でOK。
―今後の展望をお聞かせください。
小山田 2024年で設立73年。まずは100年を目指したいところではありますね。私自身はガンを患ったり、透析をしていたりなど体調的には厳しいところがありますから、私の知る限りを後進に伝え、歴史を繋いでもらいたいと思っています。そのためには、働く社員を大事にしなくては……。社員が50人いれば、その家族も含め200人の生活を守る役目があると思っています。必要な原資はやはり売り上げあってこそですから、無駄は省きながら売り上げを伸ばす策を練っています。
2023年の春、問屋さんと量販店さんに対して値締め(特売条件を出さないこと)をさせていただき、一定の利益が出ました。しかしそれが何年も続くとは考えにくいので、出荷量を増やす必要があると考えています。今後は関東や関西への販路開拓も課題になってくるでしょうね。後継者問題もありますが、100年企業になるための次世代への橋渡しは確実にしようと思っています。
青森県産の大豆と小麦を使って醸造した醤油をベースに、同じく青森県産のリンゴとニンニクを使って丁寧に仕込むというところにこだわって、これからも継続していくつもりです。
―素晴らしいお話をありがとうございました!
「スタミナ源たれ」(390g)
価格:¥486(税込)
店名:上北農産楽天市場店
電話:0172-31-1380(09:00~17:00 土日祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://item.rakuten.co.jp/auc-knsyouji/001cp/?l-id=shoptop_widget_featured_items
オンラインショップ:https://www.rakuten.co.jp/auc-knsyouji/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
小山田春夫(上北農産加工株式会社 代表取締役社長)
1953年青森県生まれ。上北農産加工農業協同組合に入社し、2000年に常勤理事を兼務しながら44年間勤務。2017年に株式会社に組織変更後、常務取締役、専務取締役を経て、2022年に代表取締役社長に就任。現在に至る。
<文・撮影/植松由紀子 MC/伊藤マヤ 画像協力/上北農産加工>