長崎らしい旨み「あごだし」風味でごはんが進む、一番摘み海苔と明太子
2024/11/26
ごはんのお供は?という質問に対し、上位に挙げられることの多い海苔と明太子。「様々なものを試したよ」という方へ、次の一品としてご提案したいのが、編集長アッキーこと坂口明子が気になった「あごだし」風味の2品です。長崎ではメジャーな素材「あご」の風味を取り入れたこちらの商品、誕生までのお話を、製造元である「株式会社大洋食品」代表取締役社長の上妻(こうづま)洋幸氏に、取材陣が伺いました。
―社長は東京都ご出身とのこと。長崎にはいつからいらっしゃるのですか?
上妻 長崎は2019年からで6年目です。私は幼い頃から魚や海に興味があり、大学で漁業と船の運航を専攻しまして、1985年に大洋漁業(当時)に航海士として入社しました。ベーリング海やニュージーランドの海域などに5年ほど参り、その後日本が情勢を鑑みて減船するということで、マルハニチロの本社に職変して水産商事および海外事業を担当しました。そこからはアフリカ、ニュージーランド、中国、アラスカと、のべ26年に渡り海外に駐在しており、2019年にアラスカから帰国すると同時に、マルハニチログループの1社である大洋食品へ入社しました。
―26年の海外駐在時にはどんな業務をなさっていたのですか?
上妻 マルハニチロが海外にグループの関係会社を持っており、現地の経営を任されていました。例えばアフリカではモザンビーク政府との合弁会社でエビの漁業、アラスカはマルハニチロの100%子会社ですり身、鮭、カニ、魚卵を生産して日本や米国・ヨーロッパに販売していました。
―大洋食品の社長に就任なさったきっかけは?
上妻 実はアラスカ駐在経験者が大洋食品の社長に就任することが3代続いていました。弊社は現在、たらこと海苔を主に扱っていますが、たらこはアラスカにあるグループ会社が生産する原料を使っていますので、原料事情に精通していたという事もあると思います。
―御社の創業からの歩みについても聞かせてください。
上妻 株式会社金丸という水産系の企業が長崎にあり、そのご子息が大洋漁業のグループ会社にお勤めでした。1963年にご実家が事業を大洋漁業に売却され、1966年に大洋食品と社名を変更して今に至ります。最初は長崎近海の魚を使ったすり身を製造しておりましたが、1967年5月に海苔事業を新たにスタートいたしました。また2011年の東日本大震災で、八戸にあったマルハニチロのグループ会社である大洋冷蔵たらこ工場が被災してしまい、その工場責任者に長崎に移住してもらう形で2012年に長崎工場がたらこ事業を引き継ぎました。現在は海苔事業の売り上げが全体の約3分の2、残り3分の1がたらこ事業となっています。
1967年より製造を始めた海苔。現在は長崎県大村市の大村工場で製造している。
―海苔に強いのは、土地柄も関係していますか?
上妻 そうですね。日本最大の産地である有明海が近いですし、海苔は入札権を持ってないと入札会に参加できないのですが、弊社は大洋漁業の時代から、瀬戸内海と有明海、2カ所の入札権を持っており原料の買い付けが可能でした。
―有明海の海苔の特徴について教えてください。
上妻 有明海は内海で、山や川から栄養素がたっぷりと流れ込み、海藻類である海苔の生育環境として恵まれた海域です。また海苔は胞子をつけて育てるのですが、有明海では干満の差が大きく変化するので、干潮時には水に浸からない状態で太陽の光をたっぷり浴びることができ、光合成が進むと旨み成分であるアミノ酸が増え、甘みが強い海苔に仕上がります。
アミノ酸をたっぷりと蓄えた、甘みのある有明海の海苔。
―御社の人気商品について教えてください。
上妻 海苔からご紹介しますと、「卓上一番摘みあごだし味付けのり50枚」、「有明産一番摘みの味付のり80枚」、「ごちそうNORI 有明海産一番摘み焼のり」の3つです。どれも「一番摘み」とありますが、海苔はまず、漁網に胞子をつけて芽吹かせます。それをシーズンの最初に摘んだものが「一番摘み」と呼ばれます。刈り取ってもまた芽生えるので2回、3回、4回目と摘めるのですが、回を重ねるたびに海苔は厚く、固くなります。一番摘みは非常に柔らかくて甘く、口に入れた時に口どけがよく、それを楽しめる製品がこの3つになります。
一番人気の「卓上あごだし味付のり50枚」。有明海産の一番摘み海苔を使用。
「卓上味付のり一番摘み80枚」は、馴染みのある程よい味付けが魅力。
「ごちそうNORI 有明海産一番摘み焼のり2切12枚」は、大洋食品の新ブランド。
―一番人気の「卓上一番摘みあごだし味付けのり50枚」はどのような経緯で生まれたのですか?
上妻 味付け海苔は、多くの会社で同じような味になりがちです。その中でなんとか長崎らしさが出せないものかと思い、長崎では誰もが知るチョーコー醤油さんというメーカーさんに相談をして、長崎ではメジャーな「あごだし」を取り入れるとよいのではないか、ということになりました。「あご」は、飛魚の長崎流の呼び方で、飛魚は「あご」が出ているように見えるので、その名が付いたとのことです。ただし非常に上品でソフトな味わいの出汁なので、原料との相性が難しく、産地や海苔の硬さや甘さも試行錯誤して、最終的に有明海の一番摘みが合う、ということになりました。
容器から取り出した瞬間にあごだしが香る海苔。パリッとした食感も魅力。
―その後、御社ではあごだしの明太子も人気となったとか。
上妻 そうなのです。たらこと明太子の違いについてご存知でしょうか。たらこは塩のみで味付けしたもの、明太子は唐辛子で味付けをしたものを指します。実は弊社でも明太子を作っていたのですが、明太子と聞くとみなさん「博多」を思い浮かべられます。そこでこちらでも、「長崎を感じられる明太子」、つまり「あごだし」バージョンを作ってみようと考え、取り掛かることにしました。
ところが弊社のたらこ工場はアレルゲンフリーとなっており、海苔と同じくチョーコー醤油さんに共同開発をお願いしたものの、大豆を使用する醤油が使えず大変苦労しました。それで1年以上試作を重ね、皆で試食してああでもないこうでもないと試行錯誤し、最終的に「これだ」となった時は、「やり遂げた!」という思いでした。ちなみに完成した「あごだし明太子 1本物 500g化粧箱入り」は、「卓上一番摘みあごだし味付けのり50枚」よりも1年前に「ジャパンフードセレクション」でグランプリを獲得することもできました。
長崎工場で丁寧に製造されている「あごだし明太子」。
―セレクショングランプリ受賞は非常にハードルが高いと耳にしたことがあります。
上妻 基準に沿って採点され、100点満点中、90点以上がグランプリ、80〜89点が金賞、70〜79点が銀賞、60〜69点が銅となります。弊社の明太子、海苔はともに高評価をいただき、グランプリを獲得しました。
2023年6月に、23,000人を超えるフードアナリストに審査、評価され、
ジャパン・フード・セレクション「最高評価 グランプリ」を受賞した「あごだし明太子 1本物 500g化粧箱入り」。
―社長の予想はいかがでしたか。
上妻 味には自信ありましたが、両方でグランプリが取れたことには驚きました。それぞれの製造工場で、従業員がプライドを持って作ってくれたおかげです。
―お客様の声で、印象的だったものはありますか?
上妻 「長崎旅行の際に味わっておいしかったので、帰ってからも購入したいのですが、どうすればよいですか?」というお問い合わせをいただいた時は嬉しかったですね。コロナ禍でなかなか旅行ができなくなったタイミングでウェブショップも作りまして、今では全国どこからでも買っていただけるようになりました。
―今後手がけてみたい商品は?
上妻 少し前になりますが、長崎県特産の「ゆうこう」を取り入れたたらこ・明太子を開発しました。「ゆうこう」は長崎でのみ収穫されている柑橘類で、柚子よりも甘みが強いのが特徴です。またその昔、かくれキリシタンの方々が栽培していたという説もあり、歴史的な背景も長崎らしいと言えます。近年では地元の企業がゆうこうのクラフトビールやクラフトジンなども作っているのですよ。
こちらもチョーコー醬油との共同開発。
長崎の柑橘「ゆうこう」と「焼きあごの出し汁」をブレンドした調味液で漬け込んだ「ゆうこうゆずたらこ500g」。
切子タイプ(2,268 円)と1本物タイプ(3,240円)の2種類がある。
「ゆうこうゆず明太子」(切子・2,268円、1本物・3,240円)も好評だとか。
―今後のビジョンについても聞かせてください。
上妻 長崎は今、全国で唯一、一部上場企業の本社がない県です。だからこそ、弊社が少しでも県の活性化に貢献できたらと思っています。2022年には、長崎県の健康推進企業、SDGs登録企業に認定され、「あごだし明太子」、「あごだしたらこ」と「ごちそうNORI」が県の特産品に認定されました。2023年には長崎県の働きやすい企業を認定する「Nぴか」で、星3つをいただきました。こちらは従業員の年休や介護休暇の取得率、健康診断の受診率など細かい審査があり、認定されたということは、従業員にも感謝しなければなりません。
―3年前からは女性管理職の比率も上がっているとか。
長崎県を代表する企業へ。歩み続ける大洋食品。
上妻 様々な方が安心して働ける職場であってこそ、「おいしいものを作ろう」という発想が生まれてくると思います。従業員には新しいことにどんどん挑戦してもらって、これからも長崎らしいものをたくさん生み出してもらえたら嬉しいです。
―2024年10月には、長崎駅近くにサッカー競技場などを備えた「長崎スタジアムシティ」が完成し、盛り上がりを見せている長崎市。大洋食品は、サッカーJ2クラブ「V・ファーレン長崎」のブロンズサポートカンパニーでもあり、チームのマスコットキャラクターやエンブレムを入れた製品も製造・販売しているとのこと。「スタジアムに足を運んだ際にはぜひチェックしてみてください」と、上妻社長。お話をありがとうございました!
「卓上あごだし味付のり50枚」
価格:¥440(税込)
店名:大洋食品公式オンラインショップ
電話:0120-082-182(9:00~17:00 土日祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.taiyoshokuhin.shop/view/item/000000000002
オンラインショップ:https://www.taiyoshokuhin.shop
「あごだし明太子 1本物 500g化粧箱入り」
価格:¥3,024(税込)
店名:大洋食品公式オンラインショップ
電話:0120-082-182(9:00~17:00 土日祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.taiyoshokuhin.shop/view/item/000000000008
オンラインショップ:https://www.taiyoshokuhin.shop
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
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上妻洋幸(株式会社大洋食品 代表取締役社長)
1961年、東京都生まれ。1985年にマルハニチロの前身である大洋漁業に入社、主に海外事業を担当、長年海外駐在を経験し、2019年に大洋食品の代表取締役社長に就任。長崎らしさのある商品開発に力を注ぐ。
<文・撮影/鹿田吏子 MC/伊藤マヤ 画像協力/大洋食品>