佐賀から国際ブランドへ 高級家具ARIAKEの「ラティステーブル」「アイゾメキャビネット」
2024/11/22
今回、編集長アッキーが気になったのは、佐賀県から世界へ展開する美しい家具です。商品を開発したレグナテック株式会社 専務取締役の樺島賢吾氏に商品の魅力を取材陣が伺いました。
レグナテック株式会社 専務取締役の樺島賢吾氏
―創業の経緯を教えてください。
樺島 祖父が創業したのが1964年、今年でちょうど60年になります。現社長である父が2代目で、私が3代目となる予定です。
祖父は福岡県大川市で生まれましたが、その地域は昔から家具の産地として知られていました。大分や宮崎から筑後川を経由して木材を福岡まで運び、船を作っていましたが、船大工さんが家具を作り始めて、家具の産地として発展していきました。祖父は東京で機械やバイクの修理の仕事をしていましたが、何かのタイミングで地元に戻った時に、大川市と我々が住む佐賀市諸富町に橋が架かったのです。それまでは船で行き来していましたが、橋が架かったタイミングで佐賀が企業を誘致し、大川で働いていた若い職人たちが佐賀で起業するという流れができました。それが70年ほど前で、祖父も起業したのです。
当時はオシャレなダイニングテーブルなどはなく、日本のインテリア文化も成熟していなかったので、安いものを大量生産していた時代で、祖父も収納ダンスなどを作っていました。バブルが崩壊したあたりで28歳だった父に事業承継し、そこから180度方向転換となりました。天然木を使った、高品質で高単価のこだわりのある家具作りに舵を切って、世界に通用するブランド「ARIAKE」も立ち上げ、今に至ります。
ARIAKE「ラティステーブル」、「アイゾメキャビネット」。
―小さい頃から家業を継がれるつもりでしたか。
樺島 小さい頃から家業は身近に感じていましたが、物心ついた時から野球に夢中でした。甲子園にも出場し、いずれは母校の監督になるつもりで、教員免許も取得しました。ただ、大学で野球は挫折し、教師になる夢は諦めて、家業に目を向けるようになりました。修行を兼ねて地元のハウスメーカーに就職し、1年後に家業に戻りました。
―ブランド「ARIAKE」が誕生した経緯を教えてください。
樺島 私が入社した2013年には、全都道府県に取引先ができていました。ただ、次の20年、30年と考えた時には人口も減っており、日本は市場が今後縮小されることが見込まれていました。そのため海外に何とかチャレンジしようというタイミングでした。
まずは今までのオリジナルのコレクションで展示会に出してフィードバックをもらおうということで、いろんな国のバイヤーが集まるシンガポールの展示会に出展しました。父について僕も行きましたが、ブランディングが全然できておらず、英語対応もできず、泣かず飛ばずでした。1年目、2年目は全くダメでしたが、2年目のときに若手にフィーチャーしたブースがあり、そこで今の「ARIAKE」のクリエイティブディレクターであるガブリエル・タンと出会いました。彼は独立してスタジオを立ち上げたばかりで、何か業界にインパクトを与えたいと考えていました。我々も海外展開を成功させたいと思っていたので、彼にイスやテーブルをデザインしてもらって、3年目はそれで勝負しようと考えたのです。
彼はすぐに佐賀の工場を見に来てくれ、「この品質と生産キャパがあるなら、僕が1、2個デザインしても業界にはインパクトを与えることはできない。友達のデザイナーをいっぱい呼ぶので、世界で通用する大きなブランドを立ち上げよう」と提案してくれたのです。それが「ARIAKE」のスタートでした。彼は大きなビジョンを持った、野心に溢れたデザイナーで、運命的な出会いとなりました。
気鋭のデザイナーが集まって製作。
―「ARIAKE」の特徴を教えてください。
樺島 海外には世界的に有名な家具ブランドがたくさんありますが、日本ではそこまで成功したブランドがなく、日本のデザイナーズ家具ブランドを世界に対して再定義しようとガブリエルと話をしました。
ブランド名は九州にある有明海にちなんで名づけました。「ARIAKE」とは日本語で夜明けを意味し、グローバル市場を目指し、海外のデザイナーたちとのコラボレーションを開始しました。
年に1回デザイナーが佐賀に来て、一緒の時間を過ごしたり、ご飯を食べたりしながら商品開発をするため、佐賀や日本の文化からインスパイアされた作品が誕生しました。工場のスタッフもデザイナーが求めていることを理解しやすく、士気も上がって、いいものづくりができるようになり、一定の評価をいただけています。
2017年にブランドを立ち上げ、現在、輸出先は26カ国、リッツ・カールトンでも採用されています。ようやく新しい景色が見えるようになった感じです。
―会社として大切に思われていることを教えてください。
樺島 原材料は外国産材も多いのですが、数年に一度は現地に出向いています。自分の足で確認し、いいなと思った人と仕事をする、いいなと思ったものを使う、いいなと思ったものをお客様にリリースする、そういったことを一番大切にしています。
―今回ご紹介させていただく「ラティステーブル」の特徴を教えてください。
樺島 デザイナーと一緒に佐賀城など日本の伝統的な建築を見て回る中で、やはり格子戸が非常に美しいという印象を彼らは受けたようです。それをなんとかテーブルで表現できないだろうかというところから生まれた商品です。強度とデザインを担保できる最適な厚みで構成されています。
有明海は干潟の泥に太陽の光が映るのですが、デザイナーはその美しさを製品で表現したいと話しました。着色料ではなく、墨汁を使って墨色に染め、日本らしさ、佐賀らしさを表現しました。一方、今の住環境に浸透しやすい色も必要なので、ホワイト、ナチュラルというカラーも加えました。
木で作られた格子脚の光と影が自然な空間を再現。
―お客様からの声で印象的なものはございますか。
樺島 女性のお客様からは「美しくて、食事の時間が楽しみです」「家が理想の空間に近づきました」といった声をいただいています。
―アイゾメキャビネットの特徴を教えてください。
樺島 ARIAKEの中でも数少ない女性デザイナーの作品です。有明海の景色や夕暮れ、朝焼けがヒントとなり、上と下で微妙に濃さが違うんです。ハンドルは黒で、太陽が昇る様を表していて、ドアを開けると赤が見えてきます。太陽が昇り、少しずつ黒がインディゴになり、それが薄くなって、最後太陽が出てくるイメージです。赤色も神社の鳥居を意識していて、日本や佐賀の要素が詰まったキャビネットです。藍染の染料を使った家具は珍しいと思います。
狭いスペースに適した高機能な収納。
―販売数を教えてください。
樺島 ラティステーブルが180本、アイゾメキャビネットが73本出ています。
―制作にあたってご苦労された点はございますか。
樺島 塗装はかなり苦労しました。家具に墨汁や藍色を使うのは初めてで、研究に研究を重ねました。通常使う塗料は油性ですが、藍色の染料や墨汁は水性なので定着しづらく、キレイな色がでるまで試行錯誤しました。また、ラインが細かいデザインは強度が厳しくなるので、見えない部分で金具で補強したりしています。
―今後の会社の目標やビジョンをお聞かせください。
樺島 ARIAKEをもっと世界に広めていきたいです。佐賀の伝統工芸とコラボレーションしながら新作を作ったりしていますが、世界がグローバル化していく中で地産地消が大事だと思っています。佐賀にルーツがあるブランドというのは共通認識のもと、たとえばヨーロッパの家具作りの文化のもとでARIAKEを展開するなど、世界のいろんな土地で、その土地の木材などを使って製作するのが目標です。仲間を増やしていければ、新しいブランドの形が作れるのではないかと思っています。家具はコンテナで輸出・輸入をしているので、CO2排出の観点から見ても、その土地で作ったものを消費していくのが正しいあり方だと思います。
―貴重なお話をありがとうございました。
「ラティステーブル」ホワイト・ナチュラル・スモーク・スミの4色
価格:¥429,000(税込)
店名:アリアケ オンラインショップ
電話:0952-47-6111(10:00~17:00 土日祝除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:ラティステーブル
オンラインショップ:https://ariake-jp.com/
「アイゾメキャビネット」
価格:¥253,000(税込)
店名:アリアケ オンラインショップ
電話:0952-47-6111(10:00~17:00 土日祝除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:アイゾメキャビネット
オンラインショップ:https://ariake-jp.com/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
樺島賢吾(レグナテック株式会社 専務取締役)
1990年佐賀県生まれ。9歳から14年間野球に打ち込み、2008年夏に甲子園出場。その後立正大学に進学し、卒業後、地元のハウスメーカーに就職。2013年にレグナテックへ入社し、2023年より専務取締役に就任。主に海外への事業展開と自社ブランドのブランディングを担当している。
<文/垣内栄 MC/伊藤マヤ 画像協力/レグナテック>