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高級料亭御用達の昆布クオリティを家庭で味わう「昆布とかつおのだしパック」「ひとふり昆布」

2024/11/22

今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になったのは、高級料亭や海外のミシュラン星付きレストランに高級昆布を卸す老舗昆布司の一般家庭向け商品。株式会社奥井海生堂 代表取締役社長の奥井隆氏に、取材陣が伺いました。

株式会社奥井海生堂 代表取締役社長の奥井隆氏

株式会社奥井海生堂 代表取締役社長の奥井隆氏

1871(明治4)年からという長い歴史を少し振り返っていただけますか?

奥井 士族であった創業者が、明治に入って廃藩置県で禄(職)を失い、昆布商を始めました。敦賀は、江戸時代から松前貿易(北海道交易)における関西の玄関口でした。背後に控える琵琶湖の水運を利用して、京や大阪へと北の物資を届ける役割を担っていたんですね。北海道の松前藩の産品の中でも特に、昆布が重宝され、敦賀にも沢山の昆布が荷揚げされるようになったことに目を付け、昆布商のスタートを切りました。

初代は元士族ですから、商売をすることが得意ではなかったと思いますが、二代目の頃より大本山永平寺にお出入りをさせていただけるようになって、経営が安定したようです。日本の食文化の礎を育んだ京都では特に質のよい昆布が望まれたので、最高級昆布を扱うようになっていきました。

私が四代目を継いでからも、昆布細工などの伝統的な手仕事や、昆布の手すき加工といった職人の技は守り継承してきました。他方、組織を株式会社とし、社屋を新築したり東京に直営店をオープンさせたりと、時代に即した取り組みも行っています。2006年に、内閣府ジャパンブランドの要請を受け、パリの日本文化会館で、海外で初となる昆布の講演を行ったことは非常に印象深いできごとです。パリの三ツ星レストランに奥井海生堂の名を知ってもらい、パリのマルシェで弊社の製品が販売されるきっかけになりました。

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最高級昆布を料亭などに卸すほか、パリでも販売。

老舗昆布商にお生まれになり、継承する心づもりはいつごろから?

奥井 大学時代あまり勉強をした記憶はなく、良い就職先を学校に紹介されるチャンスもなく、最後は実家に帰ろうと家業に入ったというのが実情です。1970年代はうま味調味料が台頭し、昆布業界には逆風でした。入社早々、記録映画の取材に対応しましたが、テーマはなんと「消えゆく業界」。そのような時代背景でした。

その一方で、京料理の世界には新しい動きも出てくる時代と重なりました。従来の古い体質からの変化を求められる時代でもありました。京都の料亭からいろいろな方々が視察に来られて、やっぱり伝統的な文化を守る素材、素材を守る地方のメーカーにエールを送っていただく時代でした。頑張ってほしいとあたたかい叱咤激励をいただくようになりました。

京都の料亭から引き合いの強い高級昆布を求めて、私の代で初めて北海道に渡るようになりました。それまでは昆布業界ではしっかりとした流通経路ができ上がっており、北海道へ渡らなくても取引ができる状況でした。初めて渡る北海道。礼文や利尻といった最北端の島で、故郷「敦賀」の名をよく耳にしました。感動しましたね。弊社が長く付き合ってきた昆布の産地はこういうところだったのかと。そういった周囲の想いや歴史を感じるうちに、家業と真摯に向き合いたいと思うようになりました。

―ニーズや生産量など、昆布を取り巻く環境は変化していますか?

奥井 それはもう変わって来ています。まず仕入れのことで言えば、古い流通経路の問題から、従来からの規制もあり、ほしい銘柄が欲しい数量入手できない時代がありました。根気強く産地に通いましたし、数十年前から値決め方式が入札方式に変わったことで買えるようになりました。京都の料亭では、高級昆布の産地である礼文島の中でも香深(かふか)浜産の昆布が望まれますが、その入札方式に代わってからは、うちが一番高値を付け続け、ほぼ全量の買い付けに成功しています。

昆布の生産に関しても、大きな変化がありますね。1つには環境の変化。北海道が観光行政に舵を切り、多くの観光客が訪れるようになったことも大きいです。道路の整備や観光開発は海洋の生物にも影響します。礼文島や利尻島に観光客を誘致したことによって、やはり、漁場にも影響が出るようになりました。海洋環境を守るはずの法整備のおかげで、有機物の循環が途絶えて逆に海がやせてしまったり、海水温の上昇によって魚が減ってしまったりということもあります。

―それでも昆布は日本人、日本料理になくてはならないものですよね。

奥井 昆布ほど旨みを携えた植物はないと思うのです。昆布は北海道でしかとれないのですが、冬場に凍結を防ぐためにうまみ成分を蓄えるんじゃないかという説もあります。

私は40年と少し北海道に通っていますが、世界で唯一、北海道近海にしか自生していない植物です。逆に言えば北海道中の海に昆布が自生しています。ただ、北海道の地方地方で昆布の種類が違ってきます。宗谷岬を中心とした北部には利尻昆布、知床半島がある東部には羅臼昆布や長昆布、えりも岬を中心とした南部には日高昆布。函館近辺には山出し昆布と呼ばれる真昆布といった具合に。昆布を収獲してすぐに乾燥し、皆さんよくスーパーなどで目にする製品に仕上げます。私は、そういった、世界中探してもない日本独特の昆布を「うま味」として和食の中心に据えたことで、和食が世界中の料理と全く違う発展を遂げて来た、その独自性と世界にない魅力をとても感じています。

そして昆布は非常にサスティナブルでもあります。全く捨てるところがありません。例えば、おぼろ昆布の製造過程で、最後まで削り切った芯の部分は、鯖寿司に使われるバッテラ昆布や白板昆布として販売されています。昆布を長さごとに切り分け最後の切り落とし昆布も十分に用途があり、販売されています。弊社で出るゴミは、ヒモや段ボールなどがほどんどで、昆布はごみとして一切排出されません。非常に環境にやさしい食品と言えます。

昆布は胞子で増えていきます。生命体として途絶えることなく繁藻し続けます。繁藻する場所の環境に合わせ、姿かたちを変えていきます。潮の流れのはやいところで育つ昆布は幅が狭く肉厚になりますし、ゆったりした潮の環境では幅広く薄くなります。自分の身を環境になじませながら成長するのですね。どっちがおいしいかといえば幅広で薄い方。ゆらゆらとストレスなく育つ方がいいので、人と違って昆布は苦労させないほうがいいと言う方もおられます。

―昆布へのあふれる愛を感じます。味わいの魅力は?

奥井 昆布のだしの魅力は、素材とのマッチングだと思います。昆布のうま味成分がグルタミン酸というのは知られていると思いますが、うま味は、少なくても多くても良くないといわれます。京都の料理人さんによれば、カツオ出汁のうま味は、その素材をラッピングするようにまとわりつき、昆布出汁のうま味は、その素材も持ち味となじみ、中和するように美味しさを増していくといわれています。素材そのものが持つうま味を補完する役割を果たすので、昆布出汁自体が「おいしいな~」とはならなくても、しみじみとした満足感や幸福感を感じるのが、昆布出汁を使った料理だといわれています。

日本を代表するほどの料理人さんと何十年もお付き合いをさせてもらっていますが、彼らが毎日厨房で弊社の昆布を使って料理をして、「奥井さんとこの昆布しかこの味は出せないよ」とお褒め戴くと、昆布のクオリティを落とすわけにはいかないと改めて思います。和食はユネスコ無形文化遺産に登録されていますが、まさに文化だと思います。弊社もある意味文化事業を担っているのではないかと考えています。

最高級昆布のクオリティを保つという意味では、「蔵囲(くらがこい)昆布」も弊社にしかできないものだと自負しています。

―「蔵囲昆布」とは?

奥井 昆布は夏しか採れません。海から引き上げ天日乾燥し、端を切り落としたり折りたたんだりと丁寧に成形するため、出荷までかなり時間を要します。北前船で運んでいた頃は、夏に収穫された昆布が敦賀に届くころ、すでに冬。昔は今と違って沢山の雪が降り積もり、運び流通させることができなくなってしまいます。そんな事情で敦賀の蔵で越冬させ、雪解けの頃、父がよく、桜の花の散る頃と言っていましたが、昆布蔵を開けてみると、昨年の入荷した昆布の香りと違って、蔵の中の、一冬越した昆布の香りが良くなっていたそうです。寝かせることによって新昆布の荒々しさや海藻臭さが抜けて昆布本来の旨みが際立つのでしょう。新昆布では白濁する出汁も、寝かせた昆布なら透き通った美しさとなります。

時は流れ、現代ではもちろん冬場に物流が滞ることはありませんが、弊社では、2年から3年は、蔵囲い専用蔵で寝かせてか出荷しています。弊社では現在4か所ある昆布蔵で昆布を管理しています。ほぼ買い付けと同時に、代金の支払いを済ませる昆布取引では、大量の在庫としての、高級昆布を抱える費用やリスク、蔵の環境整備など、コスト面では大変ですが、「蔵囲昆布」という伝統を守り続けることが大事です。お取引先の料理屋さんの1スタッフとして、しっかり昆布を管理しながら、そのお店の大切な昆布をお預かりしているんだという気持ちを忘れずに、頑張っております。

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「蔵囲昆布」は湿度や温度など厳重に管理された蔵で数年寝かせる。

奥井 奥井海生堂の昆布は高いと言われることもありますが、そういう工程を経て最上級の昆布をお届けしていると理解し喜んでくださる料亭やレストラン、お客様が多いのはありがたいですね。

―奥井海生堂クオリティを手軽に味わえる商品を続々と出されていますね。

奥井 私の代になって、百貨店さんなど流通業との取引が始まり、ある程度の簡便性がないと広く使ってもらえないことがわかりました。京都人だった妻とは見合い結婚なのですが、なぜ私と結婚したかを尋ねると、昆布が無料だからと言うんです(笑)。京都の人からすると、昆布は高級品だけれど使いたい食材なわけですよね。BtoC商品のほとんどは、妻が開発しています。自分が使いたいものを作っています。

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一般家庭で使いやすい昆布商品をラインナップ。

「海生堂のだしパック」についてお聞かせください。

奥井 料理屋さんの厨房で引いた(取った)お出汁がパックで、簡単にサッとできるというコンセプトで作りました。原材料は昆布と鰹節しか使用しておりません。当初考えた利尻昆布だけでは短時間に出汁を引けず、味を出すのが非常に難しくて、最終的には、すぐ美味しい出汁が楽しめる羅臼昆布を原材料として使いました。

京都のお取引先のミシュラン三ツ星料亭のご主人に協力を仰ぎ、いろいろとご意見をいただきましたし、妻も納得いくまでアイデアを出したので、完成までに時間がかかりました。シンプルなだけに素材にも、紙パックの形にもこだわり、もちろん素材のクオリティは一番大切にしました。ある料理研究家の先生からは「海生堂がつくるとこんなだしパックになるんだね」とお褒めの言葉をいただいています。

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信頼のおけるパックメーカーの勧めで、出汁の出やすいテトラ形に。

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500~600mlの水に1パック。沸騰後3~4分で透き通った美しい出汁が取れる。

出汁自体が主張しすぎない上品な味わい。

―おすすめの使い方は?

奥井 出汁は何にでもお使いになれますから、お浸しに、お吸い物に、茶碗蒸しに、寒い時季は鍋料理にどうぞ。出汁を取ったあとは中身を乾燥させてふりかけにもなります。鰹節と昆布以外、表示義務のないものも含めて余計なものは一切使っていませんから、小さなお子さんにも安心です。

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完全無添加、素材の力を感じられる。出汁を取ったあとはふりかけに。

「ひとふり昆布」についても教えてください。

奥井 一度昆布の佃煮を作って、その水分を飛ばして細かく刻んでいます。最近、ドライにするのが業界でちょっと流行っているんですよね。

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昆布の佃煮にひと手間ふた手間かけて使いやすく工夫。薬味やトッピング感覚で使える。

大変失礼ながら、余った昆布の切れ端を活用した商品ではないのですね。

奥井 とてもクオリティの高い昆布の佃煮を作って、使い勝手を考えてわざわざ粒にしています。白いごはんとの相性は抜群で、私は日本一のふりかけだと思っています。お茶漬け、お弁当、パスタやサラダなど、ひとふりするだけで昆布の旨みが加わって、手軽にひと味変わります。

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白いごはんとベストマッチ。その名の通りひとふりで料理の味に奥行きが出る。

昆布の魅力を、国内にとどまらず海外にも発信しておいでですね。

奥井 先述したパリでの昆布の講演で、大きな手ごたえを感じました。それまでフランス人にとって、海藻である昆布は食品のジャンルにはなく肥料や化学製品の原料素材の位置づけだったようです。初めて口にする昆布出汁を非常に喜び、佃煮昆布はチーズのようにコクがあると言ってくれました。昆布の繊細なおいしさがわかるフランス人は、さすが、味覚に長けた民族ですね。だからこそ、抵抗なく和食のエッセンスを取り込んでくれたのだと思います。それも、和食文化の背景ごと。現在は星付きレストランのほぼすべてが昆布を使っていると聞いております。

アメリカにある世界最大規模の料理学校、C.I.A(カリナリー・インスティテュート・オブ・アメリカ)のニューヨーク本校で2年にわたり昆布の授業をさせて頂きました。そのご縁で、今、C.I.Aで使う昆布にはすべて弊社の昆布をお送りしております。アメリカでも和食ブームは起きていますが、和食の持つ、その長い歴史や文化、背景までも理解してもらえるように取り組んでいきたいですね。和食の起源は、神様にお供えする御神饌として飾られる昆布と鰹節が下げられ、それを使用して料理が始まったと聞いております。和食料理の一つひとつの意味や繋がり、そういった和食道としての考え方まで理解して頂けるような和食ブームが世界で根付いていくのを楽しみにしております。

―昆布を入り口とした日本食文化の啓もうに意欲的な奥井社長。昆布への愛情や和食道へのリスペクトをたっぷり感じるお話をありがとうございました!

海生堂のだしパック

「海生堂のだしパック」(10g×7包/アルミパック小)
価格:¥810(税込)
店名:昆布の老舗 奥井海生堂オンラインショップ
電話:0120-520-091(平日 9:00〜17:00)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.konbu.co.jp/products/detail/2158
オンラインショップ:https://www.konbu.co.jp/

ひとふり昆布

「ひとふり昆布」(瓶入90g)
価格:¥1,404(税込)
店名:昆布の老舗 奥井海生堂オンラインショップ
電話:0120-520-091(平日 9:00〜17:00)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.konbu.co.jp/products/detail/1360
オンラインショップ:https://www.konbu.co.jp/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>

奥井隆(株式会社奥井海生堂 代表取締役社長)
立教大学経済学部を卒業後、1971年株式会社奥井海生堂に入社。1995年より現職。福井県選挙管理委員会委員長(2009.1.10~2013.1.9)、福井県公安委員会委員長(2020, 2021, 2023年)などを務め、現在は一般社団法人和食文化国民会議理事、公益財団法人福井県文化振興事業団理事、敦賀商工会議所会頭を兼務。昆布の講演依頼も多く、伝統の「蔵囲昆布」や昆布だしの「うま味」を子どもたちや世界に発信し和食文化の保護継承活動に取り組んでいる。

<文・撮影/植松由紀子 MC/木村彩織 画像協力/奥井海生堂>

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