完熟した有機ざくろを使用 飲みやすさが自慢のジュース
2024/12/09
半分に割ると、中にたくさんの甘酸っぱい赤い実が詰まったざくろ。近年では料理店で、前菜や肉料理などに取り入れるところも増え、日本でも少しずつ身近になりつつある果物です。編集長アッキーこと坂口明子が気になったのが、そんなざくろをギュッと搾った「ざくろ100%ジュース」。しかも使用しているざくろは“有機栽培”ということで、なかなかレアな商品です。製造までのお話を、野田ハニー食品工業株式会社 代表取締役社長の野田和博氏に取材陣が伺いました。
野田ハニー食品工業株式会社 代表取締役社長 野田和博氏
―御社の沿革について聞かせてください。
野田 祖父が養蜂場を運営しており、そこから父が飲料を手掛けてみたいということで独立し、野田ハニー食品工業を立ち上げました。ちょうどはちみつレモンがブームになった時期で、野田ハニーでは徳島らしく、はちみつすだちで商品開発を始め、96年からはそれまで委託生産をしていたものを自社生産にも切り替えて本格的に飲料製造業を開始しました。最初のざくろジュースの販売を開始したのはその3年後です。
私は2004年に入社したのですが、だんだんとすだちが下火になることが予想されました。すだちは徳島名物ということで観光客の方などに味わっていただく機会はありましたが、日常生活までは浸透せず、市場は縮小すると思われたのです。またすだちの良さは「香り」なのですが、一部では品種改良でそれを酸っぱい果汁に近づけていこうとする動きもありました。それならレモンでいいじゃないか、ということで、弊社はざくろ商品やネット販売に注力するようになりました。
―社長は工業系の企業にお勤めだったとのこと。家業に入られたきっかけは?
野田 私は完全に理系人間で、好きな学科は数学や物理。高校の頃は勉強と野球、大学ではバイクや車に明け暮れていました。そして工業系の企業に入社し、アメリカ勤務の希望も出していたのですが、転勤が決まる1年ほど前に母に説得され、家業に入ることになりました。おそらく一度出たら帰ってこないと思ったのでしょうね。徳島には同世代に経営者仲間がたくさんおりましたので、それも後押しになりました。
地元に戻るとまもなく父が亡くなりました。一緒に過ごせたのはひと月ぐらいだったでしょうか。私はまだ修行の身で、食品業界や販売やマーケティングについてもまだまだでしたので戸惑いました。
アクティブな毎日を過ごしていた大学時代の野田社長(左)。
―企業として大切にしていることは?
野田 食品が好きでこの業界に入ったわけではありませんでしたので、代表に就任しても、自分は何のためにこの仕事をやっているのだろうと、実は10年くらい悩んでいました。それが解消したのは、3人の娘たちに、「パパのジュース、おいしい!」と言ってもらえたこと。日本中の親子にもこの感動を届けたいと思いました。
弊社にはそれまで、添加物を使った商品もありました。ですがそれらをどんどん排除していく方向に舵を切ることにしました。無添加の製品はカビが生えやすいのでたくさんのクレームも受けました。でも、1週間とか10日も大丈夫なドリンクにどれだけ添加物が入っているかを知ると…。やはり自分は無添加にこだわりたいと思いました。
一丸となって良い製品づくりに努めている「野田ハニー食品工業」様。
―「有機ざくろ100%ジュース」の商品開発のきっかけについて教えてください。
野田 オーガニックにこだわる以前からざくろジュースを作っており、トルコにはずっと、原料を仕入れに行っていました。2016年ごろに現地の方から「EUではすでにオーガニックが主流になっているが日本は?」と聞かれたのですが、当時の日本でオーガニックの市場はそれほど大きくなく、私は商品を作っても売れないだろうと思っていました。ただ参考までに原料価格を出してもらったところ、10%高いくらい。私は1.5倍くらいを考えていたので驚きました。EUではオーガニックに転換することで補助金が出ているとのことでした。そこから日本で販売する場合、非有機と有機で何%の価格差ならお客さんは買ってくれるのかを調査し、20%以内であれば購入していただけるという結果がわかり、有機ざくろの輸入に向けて動き出しました。子供に安心安全なものを提供するために、いつかはオーガニック市場へと思っていましたが、思いの外早くチャンスがやってきました。
トルコは温暖で、農業人口も多く、肥料も安く、とてもおいしいオーガニックの作物が育ちます。ところがコンテナ単位で仕入れなければならず、いきなり24トン、3万本分ぐらいを買い付けることになりました。これは必死で販売しなければと思ったところ、弊社のウェブスタッフ3人が同時に産休に入ってしまい、まいったぞと。それで、私が制作会社に直接話をして、速攻でWEBページを作って販売しました。基礎デザインも私が作ったので、ページ全体のデザインがカクカクしているのですが…(笑)、そろそろ女性に好まれるようなデザインに変更したいと思っています。
手搾りできてしまうほどの完熟トルコ産「有機ざくろ」を使用。
甘酸っぱい味わいの果実をそのままジュースに。
―ざくろの魅力について教えてください。
野田 ざくろの種の中には、1960年代に発表された論文以来、女性ホルモンに似た物質が含まれていることがわかっています。女性も社会進出が当たり前となった今、ホルモンバランスの乱れによる体調不良なども話題に上っていますので、このジュースが少しでも助けになればと思っています。また2023年に、ざくろには長寿に作用する遺伝子を刺激する効果がある、という論文も発表され、話題となっています。弊社も発表先の大学にコンタクトを取り、ジュースの成分も調べていただいています。まだ体にどれだけ良い、という具体的な結果はわかりかねるのですが、ポリフェノール類が作用しているようです。
海外でざくろは、健康のために食べられている果物で、生活の一部となっています。スーパーでも販売していますし、町のジューススタンドでも見ることができます。あまり一般的でないのは実は日本と韓国くらいではないでしょうか。
すだちと一緒で、幼少期の食経験がないと私たちはその先に食べる機会を持ちにくくなります。つまり、市場が育たない。そこで私は5、6年前からざくろの産地を作る取り組みを始めています。徳島県内の農家さんに、すでに2,000本くらいの苗木を配布しているのですが、ざくろを商業栽培する地域が国内になく、手探りなので時間はかかりそうです。ただしゆくゆくは弊社から、徳島産のざくろを使ったジュースをお届けすることができるかもしれません。
―商品作りで最もこだわった点は?
野田 味です。私はものづくり人間で、セールストークだけで物を販売することが本当に嫌いですし、苦手です。弊社のざくろジュースは、日本人が飲み続けることができる味を目指し、ざくろの輸入前には私が必ず現地に出向いて官能検査を行なっています。なぜ現地の人に任せないのかというと、トルコの方、EUの方が好むものと日本人の好むものには違いがあるからです。出荷前に味が違うとなったらその場で出荷をストップし、2週間後にまた行きます。他の社長仲間から「そろそろ社員に任せたら」と言われることもありますが、これは社運に関わることなので、私が担当したいのです。コロナ以降は1泊4日の超弾丸になることもあり、体力的には大変なのですが…。
現地で自ら官能検査を行う野田社長。
―開発や販売で大変だったことは?
野田 日本、EU、アメリカは協定を結んでいるので、例えばEU、アメリカで認証されたものを日本に入れたら有機JAS、オーガニックと言ってもよいことになっています。しかしトルコのオーガニック作物を日本で有機JAS、オーガニックと言えるようにするためには、トルコの工場に有機JAS認証を取得していただかなければなりません。先方にとっては面倒なことなので消極的でしたが、認証費用を弊社が持つということで納得していただきました。
それでなんとか仕入れをスタートするものの、3年目にトルコの工場が間違ってEUオーガニック認証のざくろで果汁を搾ってしまいました。彼らの社会では、口約束こそ男の約束、という風潮があるのですが、そこでミスが生じたわけです。先方からはその果汁を買って欲しいと言われたのですが断り、それなら製造を辞めると言われたので急いで第2の工場を見つけました。その後、第2の工場でもミスがあったので第3の工場を探し、現在は、第2、3の工場の果汁をブレンドして使用しています。
現在は信頼できる工場と契約を結び、日本に有機ざくろを輸入している。
―こちらのジュースの他におすすめの商品はありますか?
野田 弊社には有機ではないざくろジュースもあります。オーガニックではありませんが、しっかりと検査したものですし、かつリーズナブルなのでおすすめです。またアメリカから直輸入しているブルーベリーのジュースも飲みやすいと好評です。それからはちみつにすだち、ゆず、レモンなどの柑橘の皮と果汁をブレンドした「フレーバーハニー」もギフトなどに喜ばれています。
砂糖不使用なのに驚きの甘さ。完熟ざくろ本来の甘みが楽しめる「ざくろ100%ジュース」。
ヨーグルトや牛乳に混ぜてもおいしい「ブルーベリージュース」。
フレーバーハニーより、徳島県産のすだちをはちみつに合わせた「フレーバーハニー徳島すだち」。
―今後のビジョンや展望についても聞かせてください。
野田 今後はアメリカ進出を視野に入れています。理由は2つあり、1つは日本では今以上の値上げが難しいかと思いますので、他で稼ぐことで日本市場にも供給し続けられるようにすること。そしてもう1つは、アメリカのざくろジュース市場が非常に大きく、オーガニック市場も日本の10倍強あり、まだまだ進出の余地があるということ。私は前職でもアメリカ転勤を希望したほどアメリカに興味がありますので、ぜひ現地で勝負したいと思っています。向こうの方はオーガニックでかつおいしいものもご存じで、厳しい目も持っていらっしゃると思いますので、そこで選ばれる商品にできれば、日本でも喜んでいただけるはずだと思っています。
―トルコでの様々なハプニングにも、ガッツで立ち向かい、よりよい商品作りのために奔走される野田社長のエピソードが印象的でした。お話をありがとうございました!
「有機ざくろ100%ジュース 2本詰合せ」(710ml×2本)
価格:¥3,780(税込)
店名:野田ハニー.com
電話:お問い合わせフォームにて対応
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.nodahoney.com/product/4989264820271-900/
オンラインショップ:https://www.nodahoney.com
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
野田和博(野田ハニー食品工業株式会社 代表取締役社長)
1974年徳島県生まれ。信州大学工学部卒業。日信工業株式会社に入社し、開発2ブロックメカトロチーム ハイドロリックユニット設計担当(自動ブレーキの油圧ユニット開発)。2003年4月、跡継ぎ修行を始めるために野田ハニーに入社。中小企業大学校後継者コースに入校し、10か月の経営、後継研修を受ける。
<文・撮影/鹿田吏子 MC/木村彩織 画像協力/野田ハニー食品工業>