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蒸留酒の常識をくつがえす、個性あふれる味わい「AKAYANE 山椒クラフトスピリッツ」

2024/12/19

山椒や生姜を使った個性的な焼酎があると聞き、今回、編集長アッキーこと坂口明子が注目したのは、鹿児島県の有限会社佐多宗二商店です。従来の焼酎のイメージを覆す、革新的なお酒造りについて、同社代表取締役の佐多宗公氏に伺いました。

有限会社佐多宗二商店 代表取締役の佐多宗公氏

有限会社佐多宗二商店 代表取締役の佐多宗公氏

個性的な焼酎のラインナップですが、自らプロデュースされたのでしょうか?

佐多 私は1997年に27歳の時に社長に就任したのですが、若かったこともあり「うちの商品はダサい」と思っていたんです。それで、まずそこから脱却したくて、「晴耕雨読」という商品を作りました。それが1998年くらいですが、それまでは鹿児島県内を中心に販売していたのを、県外、東京を中心に商売を始めました。焼酎ブームの少し前のことです。

当時、カンパニーアイデンティティ(CI)を形成したいと考えていて、その一環としての取り組みでした。いろいろなものを一つの流れにしっかりと当てはめていく、といった作業を、その頃から始めました。

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同社の代表的な商品の一つである「晴耕雨読」。
鹿児島の銘菓「かるかん」やほのかにさつま芋の甘味を感じることができ、酸のキレも楽しむこともできる。

「晴耕雨読」は、どういった商品ですか?

佐多 焼酎造りについては、創業者の祖父と40年仕事をしてきた者がいましたから、基本的な造り方は全部その方に教えてもらいました。

ただ、原材料が違います。まず水源ですが、昔は数百メートル離れた場所からとっていましたのを、僕は、蔵の敷地の中の水にしたいと思い、井戸を掘りました。地下80メートルの岩盤の下まで掘ったので、井戸水というより温泉です。温度は高くないので、いわゆる冷泉というものですね。

もう一つ大きなこととして、芋の仕入れ先を変えました。すべて契約農家さんからの仕入れにして、どこの畑から来たかがわかる仕組みにしました。そもそもうちの蔵がある町は、日本一の芋の産地なんです。だから地元の芋を使いたかった。15分以内にある畑から仕入れられますから、品質の悪い芋はうちには入ってきません。芋農家の名誉にかけても、いいものしか入ってこないんです。そうして原材料を自分のところで完結できるようにしました。その流れもあって、酒造業界初のISO9001も取得しています。

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現在の同社とその周辺。広大な農地の中に立地している。

そこから世界にも進出を?

佐多 2000年くらいに、焼酎を海外に売り込みに行きたい、と考えました。焼酎ブームだったので国内消費だけでも商品自体は足りないくらいではあったのですが、フランスのような食の都で焼酎が有名にならないだろうか、と思っていたんです。

実は、僕は1989年ごろにイギリスに留学していました。その時に思ったのが、日本には洋のものってたくさんあるのに、ヨーロッパには日本のものってなにもないな、ということ。日本のバーやホテルのラウンジでは、ラムとかジン、ウォッカとか、テキーラなども置いてあります。それなのに、海外では、日本の酒類はほとんど置いていません。それはおかしいのではないか、と思ったんです。

それで、30代の頃、フランスに行って、5つ星ホテルやバーに突然電話したりして、弊社の「刀」という焼酎を紹介して回りました。パリ中の有名な酒屋はだいたい回ったのですが、その時に、ある有名酒店の店主に「フランスには蒸留所がたくさんあるけど、君は一度でも見に行ったことがあるのか?」というふうに言われました。その方が「もっと勉強しなさい」と言って、ある蒸溜所を紹介してくれたんです。

それが、ジャン・ポール・メッテですか?

佐多 はい。ジャン・ポール・メッテは、ミシュラン店や有名ホテルなどで欠かせない酒造メーカーなのですが、アルザスから1時間くらいのところにリボーヴィレという村があって、そこにその小さな蒸留所がありました。100リッターくらいの蒸留器が3つだけ並んでいました。焼酎の蒸留器は一番小さいのものでも2.5トンほどですから、本当に小さいです。そこでその時、メッテがペア(洋梨)かなにかを蒸留していました。なかなか喋ってくれない人でしたが、その彼が「今蒸留している酒は何年後に商品になると思うか」って聞いてきましてね。ウィスキーだと3年くらいだからそのくらいかと答えたら、なんと「7年後」っていうんです。それで、なるほど、そういう文化なんだな、と気づきました。日本の焼酎とは違う、それがヨーロッパの人の感覚なんです。

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「蒸留酒の魔術師」とも例えられるジャン・ポール・メッテ氏。
長く交流が続き、鹿児島の同社へも足を運んだ。惜しまれながら、2018年に急逝。

蒸留方法自体も日本とは違うのですか?

佐多 ヨーロッパでは間接加熱、日本は直接加熱という蒸留法の違いがあります。直接加熱蒸留とは、蒸気を直接もろみの中に入れて、希釈しながら温めるというやり方です。僕はこれが日本独自の文化だとも思うのですが、日本はもともと木の文化ですから、直接火にかけないんです。また、米や芋でつくったもろみはドロドロしたものですから、外からの火でぐつぐつ温めてしまうと焦げてしまいます。だから、直接蒸気を入れて70度で揮発したところを冷やしてアルコールにするわけです。それが、西洋のお酒、例えばブランデーなどの場合は、液体のワインを外から火にかけてぐつぐつ煮れば、焦げもせずに蒸留できるわけです。それで僕は、ヨーロッパ式の間接加熱で焼酎のもろみを温めてみたら、どんなものができるだろうと考え、イタリアで蒸留器に撹拌機をつけて持って帰ってきました。

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従来の本館に加え、間接加熱蒸留器を備えた赤屋根製造所を併設した。

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2006年(平成18年)に設置した6号機、7号機。
蒸留釜が2つに分かれており、揮発したアルコールが気体の状態で一緒になり、
冷却されて一つのアルコールになる珍しい蒸留器。

それが「AKAYANE クラフトスピリッツ」の始まりですか?

佐多 僕がこの業界に入る時、諸先輩たちからは「焼酎は蒸留するからだいたい味が似た感じになる」って言われたんです。僕はそれは乱暴だろうと思って、勉強しました。そして、ヨーロッパに行って、蒸留によってやっぱり酒質の違いが出てくるとわかった。

メッテのところにも年に2回は通って、いろんな技術を教えてもらいました。そこには120種類くらいの蒸留酒がありました。発酵させて蒸留したもの、リキュール、漬け込んだものなどなど。その中に、蒸留酒に生姜を漬け込んだものを蒸留した「ジャルジャンブル」という酒がありました。僕はこれを飲んだ時、「なんだこれは!」となったんです。

飲んだ瞬間に、ボタニカルの味がもうわかります。例えば、芋焼酎、米焼酎、麦焼酎、黒糖焼酎を飲んだとして、食材の味は当てきれないと思います。もちろんそれを否定するものではないのですが、メッテの作るものは、すごく直接的でした。僕は、いずれ日本でもこういうボタニカルなものをぜひ作りたいと思いました。日本にもこういう文化を作りたい、と思ったんです。

―そうして出来上がった商品が、「AKAYANE 山椒スピリッツ」ですか?

佐多 最初は、生姜に衝撃を受けたので、「AKAYANE 生姜スピリッツ」を造りました。その後、山椒は英語でジャパニーズ・ペッパーですから、日本の代表的な食材として作りたいと思い、商品化しました。赤屋根には、150リッターの蒸留機があるのですが、それで大体4時間くらい蒸留します。その時に、90秒ごとに試飲して味の変化を記録し、自分が欲しいものが何分から何分までにできたかを検証しました。ボタニカルの一番欲しい味が出てくる、この味が出てきたら終わりだね、という時間を決めるんですね。それを5、60種類はやりました。

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「AKAYANE 山椒スピリッツ」芋焼酎と山椒でつくられた唯一無二の薩摩スピリッツ。
目が覚めるようなクリアな香りで、舌にもピリリと心地よい刺激がある。
シャープでキレのある後味はさっぱりと心地よい。

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こちらは、「AKAYANE ORIENTAL山椒」。おしゃれなボトルでプレゼントにも喜ばれそう。化粧箱入り。
他に、生姜、赤山椒、七味唐辛子を使ったものなど、個性的なラインナップが並ぶ。

並々ならぬ探究心ですね。飲み方のおすすめがあれば、教えてください。

佐多 基本的には、炭酸でそのまま割っていただくだけで良いです。30ミリ弱に対して炭酸150ミリくらいで、ちょっと薄めがおすすめです。あとは何も加えなくていいです。食べ物の邪魔をしないですから、ぜひ食中酒として楽しんでください。焼酎とかスピリッツは、口の中に入れたものを軽くリセットしてくれるので、新しいものを食べた時にすっきりした状態で食べることができます。そういう意味合いでの食中酒ですから、日本の食習慣にすごく合っていると思います。

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ソーダ割を焼き鳥とともに。濃い味のおかずとの相性が非常に良いと感じる。
すっきりと食事を楽しむことができる。山椒ということで、鰻にもピッタリだそう。

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ピザやチーズともスパイシーな香りが好相性。パーティーなどで提供すれば盛り上がりそう。

―個性的なのにクリアで飲みやすいと感じました。焼酎の新天地ですね。

佐多 蒸留に幅を持たせることによって、酒質は今からでもいくらでも変えられます。色々な種類の蒸留酒ができる。それが、ひいてはお客様の選べるチャンスが増えることにもなります。そうすれば、焼酎というものの面白さがもっと広がるのではないか、と思っています。

―終始、情熱に圧倒されたインタビュー。現在は、シェリー樽ならぬ梅酒樽から仕込み、20年後に出来上がる酒の構想などもあるそう。「蒸溜こそが酒質の幅を広げる」という信念のもと、未来に向けて蒸留酒の可能性を広げ続けています。

AKAYANE CRAFT SPIRITS 山椒

「AKAYANE CRAFT SPIRITS 山椒」(スピリッツ/45° 720ml)
価格:¥5,500(税込)
店名:AKAYANE SHOP 赤屋根製造所
電話:0993-38-1121(8:00~17:00 土・日・祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://akayane.shop/?pid=177822274
オンラインショップ:https://akayane.shop/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>

佐多宗公(有限会社佐多宗二商店 代表取締役)
1970年鹿児島県生まれ。中央学院大学卒業後、協栄生命保険株式会社に入社し、その後、1997年に有限会社佐多宗二商店へ入社。1998年に同社代表と取締役に就任。1908年(明治41年)創業。2006年に赤屋根製造所を建設し、蒸留酒の可能性に挑戦中。

<撮影・文/尾崎真佐子 MC/田中香花 画像協力/佐多宗二商店>

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