お湯をかけて3分で茹でたての味が楽しめるフリーズドライ「鳥菜にゅう麺」つるんとした喉ごしと、しこしこの食感が◎!
2024/12/20
今回編集長アッキーが注目したのは、お湯をかけるだけで具だくさんのにゅう麺が食べられるフリーズドライの即席麺「鳥菜にゅう麺」。そのおいしさの秘密とは?ものづくりにかける想いとは?奈良県吉野地方で約40年にわたって手延べそうめんづくりを続ける株式会社坂利製麺所 代表の坂口利勝氏に取材陣がお話を伺ってきました!
株式会社坂利製麺所 代表の坂口利勝氏
―40年前からそうめんづくりをされているそうですね。
坂口 1984年に創業し、今年41年目に入りました。本社工場がある奈良県東吉野村は吉野川の最上流の一本が流れる、まわりを山に囲まれた場所です。もともとは村人とともに林業を生業としていました。けれどもそこは雪の多い土地で、冬になると山仕事ができなくなるんです。
41年前の日本は、今日より明日、必ず豊かになれると思えるような成長を続けていた時代でした。そんな時代に、今日の仕事がない。現金収入が得られない。「自分の子どもに同じ思いはさせられない」ということで、中山間地域に住む人たちは年間雇用を求めて都会へ流出し、どこの村も過疎化していきました。坂利製麺所を興したのは、そんな時です。
ー何かきっかけがあったのですか?
坂口 創業者である坂口良子は私の母で、当時3人の子を持つ専業主婦でした。「何故あんなに細くなるのだろう」という単純な疑問からそうめんづくりを習いはじめ、しばらく経ったある時、たまたまNHKの取材を受けたんです。習っている理由を聞かれた母は、村の現状とともに、地域の産業としたいとの想いを明かしました。それがテレビで放送されるとすぐ、「良子さん、そんなこと考えてくれていたの」「僕らもそうめんづくり習うわ」と、村の人たちが反応してくれたんです。
東吉野は何もない土地ですが、だからこそ綺麗な空気と水がある。標高が高いから冬も長いけれど、寒い時期ほどおいしいそうめんをつくることができる。それに、冬に仕事がないということは、人手の余剰を活かせるということですよね。これまでデメリットだった要素を逆手にとって、坂利製麺所のそうめんづくりがはじまりました。
奈良県東吉野村は日本有数のスギやヒノキの産地。
坂利製麺所は、木々が鬱蒼と茂る村のなかでも、最も奥まった場所にある。
―御社のそうめんは、どのような製法でつくられているのでしょうか?
坂口 乾麺には「乾麺類」と「手延べ麺類」の2種類があるのですが、弊社がつくるそうめんは後者にあたります。乾麺類は生地を平らにのばし、包丁で麺状に切ったもので、網目状に絡み合ったグルテンを断ち切ることでモチモチとした食感が生まれます。
対して手延べ麺類は、紐状に伸ばした生地に撚りをかけ、さらに細く細く引き伸ばしていくのが特徴です。うちではだいたい2mくらいに伸ばして乾燥させ、当社独自の細さに仕上げています。このようなつくり方をすると麺の中心にグルテン組織が形成されるため、ほかの製法では出ない手延べ麺独特のツルツルとした喉ごしと、しこしことしたコシのある麺ができるのです。
職人が早朝から丹精込めて練り上げる手延べそうめん。国産小麦粉に海水から生まれた塩を加え、ゆっくり熟成。
丁寧に手延べして、喉ごしよくコシのある理想的なそうめんに仕上げている。
―素材へのこだわりを教えてください。
坂口 原材料の90%以上を占める小麦も、麺同士がくっつかないよう表面に塗る油も、塩も、すべて自分たちが納得のいく素材だけを使用しています。たとえば、油は酸化しにくいごま油。それも、ミシュランの星付き料理店がこぞって使う、焙煎して圧搾しただけの上質な油を仕入れています。塩も日本の海域で採取された海水100%のもの。小麦粉は製粉会社さんにお願いして国産小麦を挽いてもらった専用粉を使用しています。
弊社のそうめんは、“母が子を思う心”でつくった麺なんですよ。幼い頃から当たり前に身近にあったそうめんにこんな思いが詰まっていたことを、母と一緒に働くようになるまでまったく知りませんでした。だからこそ今、自分の子どもに自信を持って食べさせられる食品づくりをしよう、商品を通じて吉野地方の魅力や文化を発信しよう。過疎対策の一環として安定的な雇用を生み、地域を維持していこうと強く考えています。
本葛を加えたオリジナル商品「手延べ葛そうめん」は奈良・吉野のメーカーならでは。
より一層つるんと軽やかな喉ごしと、コシのある食感が楽しめる。
―その実現のために、心がけていることはありますか?
坂口 伝統って、後ろを振り向くことではないと思っているんです。革新を続け、今を生きる人々の生活の一部であり続けること。それが積もり積もって伝統になるのだと思っています。たとえば、100年の歴史を持つ自動車産業。100年も続いたらもう立派な伝統産業ですけれど、誰も自動車産業を伝統産業だとは言わないですよね。それは自動車が我々の生活に根付いた絶対不可欠なもので、業界的にも絶えず革新を続けているからだと思います。そうめんもそうなっていくべきだ、というのが私の考えです。
ーたとえば今、どんな革新に取り組んでいるのでしょうか?
坂口 手延べそうめんの基本的な製法はそのままに、自動化できる工程はどんどんロボットに任せています。従来は生地の運搬もすべて人の手でやっていましたが、1日何千本も運ぶとなるとそのために体力を温存しておかなければなりません。でも、そういった味に影響が出ない工程を自動化すれば、職人はこれまでよりももっと品質向上に注力できるようになりますよね。そういった変革によって、「クリエイティブで面白い仕事だよ」と次の世代の人たちに言えるような環境を整えています。
昆布、かつおをベースにあご粉末を加えた和風だしで味わう、上品であっさりとした「鳥菜にゅう麺」。
―今回ご紹介するフリーズドライ商品「鳥菜にゅう麺」も革新のひとつですね。
坂口 そうですね。これは、製造工程のなかでどうしても出てしまう短いそうめんや折れてしまったそうめんをどうにかして商品化したいという思いから生まれました。あご出汁のスープとかやくがついていて、お湯をかけるだけで簡単に食べられる、という商品です。
即席麺をつくる方法には、麺に風をあてて乾かすエアドライや油で揚げる方法もありますが、このにゅう麺の製法として選んだのはフリーズドライ。湯がいた麺を急速冷凍し、真空状態で乾燥させるという製法です。この方法だと熱変性が起こらないため、お湯をかけて麺を戻した時に湯がきたてに近い味わいに仕上げることができました。
お湯をかけて3分待つだけの手軽さがうれしい!
鶏肉、白菜、ねぎ、わかめ、チンゲン菜、ごぼう、ゆずなど、即席麺とは思えないほど具だくさんなかやく付き。
坂口 基本的に添加物は入れたくないのですが、この商品には酸化防止剤としてビタミンEを練り込んでいます。というのも、発売当初は保存性を高めるため、脱酸素剤を一緒に入れていました。そうしたら、年配のお客様がそれを七味と間違えて、にゅう麺にかけて食べてしまったんですよ。脱酸素剤の中身は鉄粉ですので害はないのですが、入っているものはすべて食べられる商品にしようということで、いろいろ調べた上でこれだったら納得できるというビタミンEをほんの少しだけ練り込んでつくっています。
ポットのお湯さえあれば、子どもからお年寄りまで誰でも簡単に湯がきたてのにゅう麺が味わえる。
いざという時の防災食や備蓄食などにもぴったり!
―最後に、今後の展望をお聞かせください。
坂口 2年前、本店のある場所にそうめんのコース料理を提供する完全予約制のレストランを開店したんです。いま「産業観光」がトレンドになっていますが、このレストランをきっかけに吉野に来てもらって、自分たちのものづくりを体感していただけるといいなと思っています。
これからも創業者の理念を大切にしながら、そういった革新を続けることで、雇用を生み出し、地域を守り、みんなで次の時代に向かっていきたいですね。
―本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!
「鳥菜にゅう麺袋(ふ鳥)」(1袋)
価格:¥643(税込)
店名:坂利製麺所オンラインショップ
電話:0743-67-0129(9:00~17:00 土・日・祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:http://sakari.shop18.makeshop.jp/view/item/000000000076
オンラインショップ:http://sakari.shop18.makeshop.jp/
お問い合わせ:お問い合わせフォームからのお問い合わせをお願いいたします。
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
坂口利勝(株式会社坂利製麺所 代表)
1972年奈良県生まれ。大学卒業後、建築関係の会社に就職。3年後、坂利製麺所に入社し、営業、製造を経て代表に就任、現在に至る。
<文・撮影/野村枝里奈 MC/田中香花 画像協力/坂利製麺所>